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10年前。
夜会準備①
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王都に来てから1か月経ち、ついに社交界デビューの日が来た。
この1ヶ月は夜会の準備や、商会のための下調べなどをしていたらあっという間に過ぎていた。
お兄様はその間、週に何回かは王宮に顔を出していたがほとんど家で仕事をしており、私との時間を今まで以上にとってくれていたように思う。偶に、ティオ様やナル様が遊びに来たりしていた。始めは2人のことをティオドール王弟殿下、ナルシス様とお呼びしていたが堅すぎるということで、呼び方を変えるように言われた。
今までの会えなかった時間を埋められたような気がする。
夜会の日は朝から大忙しだ。ドレスも無事届き、開けてみたらとてもいい仕上がりになっていた。
「ベルタ、おはよう。今日はよろしくね。」
「おはようございます。アメリアお嬢様。ま、まさか…あの朝にものすごい弱いアメリアお嬢様が起きているなんて、ベルタは感激しております。」
今にも泣き出しそうなベルタに、「大袈裟なんだから」と返すと
「大袈裟ではございません。いつも何度起こしても起きないのですから…」
「ご、ごめんなさい。これからは頑張って起きるようにするわ…」
あまりのベルタの勢いに毎日相当迷惑をかけていたということを知った私は素直に謝った。
「リアルティア商会が出来て1年ちょっと…今まで玩具やお菓子などの販売はしてきたけど、服飾系には全然手をつけてこなかったから少し不安だったんだけれど…受け入れてもらえるかしら…」
今でとは全く違う雰囲気のデザインだ。あまり露出しないようには気をつけたけれど…
「アメリアお嬢様が考えられたのです。それにエルベルト様も人気が出るだろうとおっしゃっていたくらいですから、自信を持ってくださいませ。さぁお支度しますよ。今日はいくら時間があっても足りないですからね。」
お母様たちが亡くなってからずっとそばにいてくれたベルタはメイドでありながらも母と呼べるに近しい存在だ。そんなベルタに晴れの姿を見せられるのは少し嬉しい。もちろんお母様たちに見せたかったけれど、きっと天国から見てくれていることだろう。
私は頷いてベルタと一緒に夜会の準備を始めた。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
ベルタ視点
小さい頃からお嬢様を見てきましたが、そんなお嬢様もあっという間に15歳です。
本当は奥様たちもお嬢様の晴れ姿を見たかったと思いますが、きっと天国から見守ってくださっていることでしょう。
お嬢様の晴れ舞台を綺麗に飾るためにも、今日は腕がなりますね。
「お嬢様、まずは湯浴みからしていきますよ」
今日のお湯にはリアルティア商会で扱い出した香油というものを使っています。
今回はズーユーという柑橘系の果物の皮を使った香油です。花の香りもいいのですが、それよりも匂いがさっぱりとしているのが特徴でしょうか。
「ズーユーの香油は作って正解だったわね。あまりうちの領地では取れないのが難点だけれど…。花の匂いだときついと感じる方もいると思うからそういった方には人気が出そうだわ。」
どうやらお嬢様も気に入ってくださったご様子で良かったです。そして今回はまだできたばかりのもう一つの新商品。石けんなるものを使っていきます。
石鹸にはあえて香りをつけておりませんが今後つけていこうということも考えているようです。
今まで体の垢を取るために力強く擦っていて皮膚が赤くなってしまっていたのですが、石鹸を使い始めてからとても肌が綺麗になりました。
そのあとは念入りにお嬢様の体をお湯にも入れていたズーユーの香油を使ってマッサージしていきます。
「石鹸を使い始めてから、力強く擦ることも無くなったので肌がとても綺麗になりましたね。」
「そうなのよ!あとほしいのは髪の毛を洗うものかしら。石鹸だとギシギシになってしまうし…今日はズーユーの香油を使うとして今後の課題ね。」
お嬢様の発想力には度肝を抜かされます。まだ色々商品を開発していきたいようで、お嬢様が色々試作していく姿を見るのが楽しみの一つでもあるのです。
ゆっくりと湯浴みをしたあとはメイクをしていきます。今回はドレスに合わせたメイクにいたしました。
「今回のメイクは、赤い口紅がセクシーかと思いましてそれに合わせたメイクにいたしました。ドレスも紅がメインのドレスですし、シャドウも少しピンクに近いお色にしております。」
「さすがベルタね!とても素敵。ちょっと大人っぽいかもしれないと思っていたけれど…15歳になったしそんなことはないわよね…?」
「はい!とてもお似合いですよ。アメリアお嬢様。」
私の代わりに娘のラルダが返事をしてくれました。ラルダとアメリア様の歳が近いからか感性も似ておりますのでラルダの言葉を聞けばお嬢様も安心できるのではないかと思います。
メイクを終えたあとはヘアメイクに入っていきます。お嬢様の髪色は綺麗な金髪で、光の当たり具合で色が変わって見えるのでとても綺麗です。
今回は着物ドレスという少しうなじを綺麗に見せるようなドレスとなっておりますので髪はアップにいたしました。サイドを少し残して、お団子にしていきます。高い位置でのお団子よりは低めの位置のお団子の方が髪飾りが生えそうでしたので今回は低めの位置でまとめました。
お団子にしたところに髪飾りをつけて完成です。髪飾りは赤い花柄を模した飾りに髪全体にキラキラ光るダイヤモンドダストをあしらいました。
「髪型はシンプルだけれど、その分赤い髪飾りが生えてとても綺麗。ベルタは流石ね!」
顔の前で手を合わせてすごく綺麗に微笑むアメリアお嬢様を見て私は涙が出そうになりました。ダメですね。歳をとると涙もろくなります。
この1ヶ月は夜会の準備や、商会のための下調べなどをしていたらあっという間に過ぎていた。
お兄様はその間、週に何回かは王宮に顔を出していたがほとんど家で仕事をしており、私との時間を今まで以上にとってくれていたように思う。偶に、ティオ様やナル様が遊びに来たりしていた。始めは2人のことをティオドール王弟殿下、ナルシス様とお呼びしていたが堅すぎるということで、呼び方を変えるように言われた。
今までの会えなかった時間を埋められたような気がする。
夜会の日は朝から大忙しだ。ドレスも無事届き、開けてみたらとてもいい仕上がりになっていた。
「ベルタ、おはよう。今日はよろしくね。」
「おはようございます。アメリアお嬢様。ま、まさか…あの朝にものすごい弱いアメリアお嬢様が起きているなんて、ベルタは感激しております。」
今にも泣き出しそうなベルタに、「大袈裟なんだから」と返すと
「大袈裟ではございません。いつも何度起こしても起きないのですから…」
「ご、ごめんなさい。これからは頑張って起きるようにするわ…」
あまりのベルタの勢いに毎日相当迷惑をかけていたということを知った私は素直に謝った。
「リアルティア商会が出来て1年ちょっと…今まで玩具やお菓子などの販売はしてきたけど、服飾系には全然手をつけてこなかったから少し不安だったんだけれど…受け入れてもらえるかしら…」
今でとは全く違う雰囲気のデザインだ。あまり露出しないようには気をつけたけれど…
「アメリアお嬢様が考えられたのです。それにエルベルト様も人気が出るだろうとおっしゃっていたくらいですから、自信を持ってくださいませ。さぁお支度しますよ。今日はいくら時間があっても足りないですからね。」
お母様たちが亡くなってからずっとそばにいてくれたベルタはメイドでありながらも母と呼べるに近しい存在だ。そんなベルタに晴れの姿を見せられるのは少し嬉しい。もちろんお母様たちに見せたかったけれど、きっと天国から見てくれていることだろう。
私は頷いてベルタと一緒に夜会の準備を始めた。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
ベルタ視点
小さい頃からお嬢様を見てきましたが、そんなお嬢様もあっという間に15歳です。
本当は奥様たちもお嬢様の晴れ姿を見たかったと思いますが、きっと天国から見守ってくださっていることでしょう。
お嬢様の晴れ舞台を綺麗に飾るためにも、今日は腕がなりますね。
「お嬢様、まずは湯浴みからしていきますよ」
今日のお湯にはリアルティア商会で扱い出した香油というものを使っています。
今回はズーユーという柑橘系の果物の皮を使った香油です。花の香りもいいのですが、それよりも匂いがさっぱりとしているのが特徴でしょうか。
「ズーユーの香油は作って正解だったわね。あまりうちの領地では取れないのが難点だけれど…。花の匂いだときついと感じる方もいると思うからそういった方には人気が出そうだわ。」
どうやらお嬢様も気に入ってくださったご様子で良かったです。そして今回はまだできたばかりのもう一つの新商品。石けんなるものを使っていきます。
石鹸にはあえて香りをつけておりませんが今後つけていこうということも考えているようです。
今まで体の垢を取るために力強く擦っていて皮膚が赤くなってしまっていたのですが、石鹸を使い始めてからとても肌が綺麗になりました。
そのあとは念入りにお嬢様の体をお湯にも入れていたズーユーの香油を使ってマッサージしていきます。
「石鹸を使い始めてから、力強く擦ることも無くなったので肌がとても綺麗になりましたね。」
「そうなのよ!あとほしいのは髪の毛を洗うものかしら。石鹸だとギシギシになってしまうし…今日はズーユーの香油を使うとして今後の課題ね。」
お嬢様の発想力には度肝を抜かされます。まだ色々商品を開発していきたいようで、お嬢様が色々試作していく姿を見るのが楽しみの一つでもあるのです。
ゆっくりと湯浴みをしたあとはメイクをしていきます。今回はドレスに合わせたメイクにいたしました。
「今回のメイクは、赤い口紅がセクシーかと思いましてそれに合わせたメイクにいたしました。ドレスも紅がメインのドレスですし、シャドウも少しピンクに近いお色にしております。」
「さすがベルタね!とても素敵。ちょっと大人っぽいかもしれないと思っていたけれど…15歳になったしそんなことはないわよね…?」
「はい!とてもお似合いですよ。アメリアお嬢様。」
私の代わりに娘のラルダが返事をしてくれました。ラルダとアメリア様の歳が近いからか感性も似ておりますのでラルダの言葉を聞けばお嬢様も安心できるのではないかと思います。
メイクを終えたあとはヘアメイクに入っていきます。お嬢様の髪色は綺麗な金髪で、光の当たり具合で色が変わって見えるのでとても綺麗です。
今回は着物ドレスという少しうなじを綺麗に見せるようなドレスとなっておりますので髪はアップにいたしました。サイドを少し残して、お団子にしていきます。高い位置でのお団子よりは低めの位置のお団子の方が髪飾りが生えそうでしたので今回は低めの位置でまとめました。
お団子にしたところに髪飾りをつけて完成です。髪飾りは赤い花柄を模した飾りに髪全体にキラキラ光るダイヤモンドダストをあしらいました。
「髪型はシンプルだけれど、その分赤い髪飾りが生えてとても綺麗。ベルタは流石ね!」
顔の前で手を合わせてすごく綺麗に微笑むアメリアお嬢様を見て私は涙が出そうになりました。ダメですね。歳をとると涙もろくなります。
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