上 下
11 / 29
10年前。

夜会準備①

しおりを挟む
王都に来てから1か月経ち、ついに社交界デビューの日が来た。
この1ヶ月は夜会の準備や、商会のための下調べなどをしていたらあっという間に過ぎていた。

お兄様はその間、週に何回かは王宮に顔を出していたがほとんど家で仕事をしており、私との時間を今まで以上にとってくれていたように思う。偶に、ティオ様やナル様が遊びに来たりしていた。始めは2人のことをティオドール王弟殿下、ナルシス様とお呼びしていたが堅すぎるということで、呼び方を変えるように言われた。

今までの会えなかった時間を埋められたような気がする。


夜会の日は朝から大忙しだ。ドレスも無事届き、開けてみたらとてもいい仕上がりになっていた。

「ベルタ、おはよう。今日はよろしくね。」

「おはようございます。アメリアお嬢様。ま、まさか…あの朝にものすごい弱いアメリアお嬢様が起きているなんて、ベルタは感激しております。」

今にも泣き出しそうなベルタに、「大袈裟なんだから」と返すと

「大袈裟ではございません。いつも何度起こしても起きないのですから…」

「ご、ごめんなさい。これからは頑張って起きるようにするわ…」
あまりのベルタの勢いに毎日相当迷惑をかけていたということを知った私は素直に謝った。

「リアルティア商会が出来て1年ちょっと…今まで玩具やお菓子などの販売はしてきたけど、服飾系には全然手をつけてこなかったから少し不安だったんだけれど…受け入れてもらえるかしら…」

今でとは全く違う雰囲気のデザインだ。あまり露出しないようには気をつけたけれど…

「アメリアお嬢様が考えられたのです。それにエルベルト様も人気が出るだろうとおっしゃっていたくらいですから、自信を持ってくださいませ。さぁお支度しますよ。今日はいくら時間があっても足りないですからね。」

お母様たちが亡くなってからずっとそばにいてくれたベルタはメイドでありながらも母と呼べるに近しい存在だ。そんなベルタに晴れの姿を見せられるのは少し嬉しい。もちろんお母様たちに見せたかったけれど、きっと天国から見てくれていることだろう。

私は頷いてベルタと一緒に夜会の準備を始めた。


⟡.·*.··············································⟡.·*.


ベルタ視点


小さい頃からお嬢様を見てきましたが、そんなお嬢様もあっという間に15歳です。
本当は奥様たちもお嬢様の晴れ姿を見たかったと思いますが、きっと天国から見守ってくださっていることでしょう。

お嬢様の晴れ舞台を綺麗に飾るためにも、今日は腕がなりますね。

「お嬢様、まずは湯浴みからしていきますよ」

今日のお湯にはリアルティア商会で扱い出した香油というものを使っています。

今回はズーユーという柑橘系の果物の皮を使った香油です。花の香りもいいのですが、それよりも匂いがさっぱりとしているのが特徴でしょうか。

「ズーユーの香油は作って正解だったわね。あまりうちの領地では取れないのが難点だけれど…。花の匂いだときついと感じる方もいると思うからそういった方には人気が出そうだわ。」

どうやらお嬢様も気に入ってくださったご様子で良かったです。そして今回はまだできたばかりのもう一つの新商品。石けんなるものを使っていきます。
石鹸にはあえて香りをつけておりませんが今後つけていこうということも考えているようです。

今まで体の垢を取るために力強く擦っていて皮膚が赤くなってしまっていたのですが、石鹸を使い始めてからとても肌が綺麗になりました。

そのあとは念入りにお嬢様の体をお湯にも入れていたズーユーの香油を使ってマッサージしていきます。

「石鹸を使い始めてから、力強く擦ることも無くなったので肌がとても綺麗になりましたね。」


「そうなのよ!あとほしいのは髪の毛を洗うものかしら。石鹸だとギシギシになってしまうし…今日はズーユーの香油を使うとして今後の課題ね。」

お嬢様の発想力には度肝を抜かされます。まだ色々商品を開発していきたいようで、お嬢様が色々試作していく姿を見るのが楽しみの一つでもあるのです。

ゆっくりと湯浴みをしたあとはメイクをしていきます。今回はドレスに合わせたメイクにいたしました。

「今回のメイクは、赤い口紅がセクシーかと思いましてそれに合わせたメイクにいたしました。ドレスも紅がメインのドレスですし、シャドウも少しピンクに近いお色にしております。」


「さすがベルタね!とても素敵。ちょっと大人っぽいかもしれないと思っていたけれど…15歳になったしそんなことはないわよね…?」


「はい!とてもお似合いですよ。アメリアお嬢様。」


私の代わりに娘のラルダが返事をしてくれました。ラルダとアメリア様の歳が近いからか感性も似ておりますのでラルダの言葉を聞けばお嬢様も安心できるのではないかと思います。

メイクを終えたあとはヘアメイクに入っていきます。お嬢様の髪色は綺麗な金髪で、光の当たり具合で色が変わって見えるのでとても綺麗です。

今回は着物ドレスという少しうなじを綺麗に見せるようなドレスとなっておりますので髪はアップにいたしました。サイドを少し残して、お団子にしていきます。高い位置でのお団子よりは低めの位置のお団子の方が髪飾りが生えそうでしたので今回は低めの位置でまとめました。

お団子にしたところに髪飾りをつけて完成です。髪飾りは赤い花柄を模した飾りに髪全体にキラキラ光るダイヤモンドダストをあしらいました。

「髪型はシンプルだけれど、その分赤い髪飾りが生えてとても綺麗。ベルタは流石ね!」

顔の前で手を合わせてすごく綺麗に微笑むアメリアお嬢様を見て私は涙が出そうになりました。ダメですね。歳をとると涙もろくなります。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

【完結】好きでもない私とは婚約解消してください

里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。 そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。 婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。

【完結】義妹と婚約者どちらを取るのですか?

里音
恋愛
私はどこにでもいる中堅の伯爵令嬢アリシア・モンマルタン。どこにでもあるような隣の領地の同じく伯爵家、といってもうちよりも少し格が上のトリスタン・ドクトールと幼い頃に婚約していた。 ドクトール伯爵は2年前に奥様を亡くし、連れ子と共に後妻がいる。 その連れ子はトリスタンの1つ下になるアマンダ。 トリスタンはなかなかの美貌でアマンダはトリスタンに執着している。そしてそれを隠そうともしない。 学園に入り1年は何も問題がなかったが、今年アマンダが学園に入学してきて事態は一変した。

【完結】円満婚約解消

里音
恋愛
「気になる人ができた。このまま婚約を続けるのは君にも彼女にも失礼だ。だから婚約を解消したい。 まず、君に話をしてから両家の親達に話そうと思う」 「はい。きちんとお話ししてくださってありがとうございます。 両家へは貴方からお話しくださいませ。私は決定に従います」 第二王子のロベルトとその婚約者ソフィーリアの婚約解消と解消後の話。 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 主人公の女性目線はほぼなく周囲の話だけです。番外編も本当に必要だったのか今でも悩んでます。 コメントなど返事は出来ないかもしれませんが、全て読ませていただきます。

【完結】身分に見合う振る舞いをしていただけですが…ではもう止めますからどうか平穏に暮らさせて下さい。

まりぃべる
恋愛
私は公爵令嬢。 この国の高位貴族であるのだから身分に相応しい振る舞いをしないとね。 ちゃんと立場を理解できていない人には、私が教えて差し上げませんと。 え?口うるさい?婚約破棄!? そうですか…では私は修道院に行って皆様から離れますからどうぞお幸せに。 ☆★ 全21話です。 出来上がってますので随時更新していきます。 途中、区切れず長い話もあってすみません。 読んで下さるとうれしいです。

婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました

Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、 あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。 ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。 けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。 『我慢するしかない』 『彼女といると疲れる』 私はルパート様に嫌われていたの? 本当は厭わしく思っていたの? だから私は決めました。 あなたを忘れようと… ※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。

(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?

青空一夏
恋愛
公爵令嬢の私は婚約者の王太子殿下と優しい家族に、気の合う親友に囲まれ充実した生活を送っていた。それは完璧なバランスがとれた幸せな世界。 けれど、それは一人の女のせいで歪んだ世界になっていくのだった。なぜ私がこんな思いをしなければならないの? 中世ヨーロッパ風異世界。魔道具使用により現代文明のような便利さが普通仕様になっている異世界です。

田舎娘をバカにした令嬢の末路

冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。 それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。 ――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。 田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。

(完)イケメン侯爵嫡男様は、妹と間違えて私に告白したらしいー婚約解消ですか?嬉しいです!

青空一夏
恋愛
私は学園でも女生徒に憧れられているアール・シュトン候爵嫡男様に告白されました。 図書館でいきなり『愛している』と言われた私ですが、妹と勘違いされたようです? 全5話。ゆるふわ。

処理中です...