上 下
32 / 53
ブルームーン国

手紙 エレアーデ視点

しおりを挟む
「奥様、旦那様、お手紙が届いております。」

執事のセバスタが手紙の束を持ってきた。その中には、ユナリーからの現状報告についての手紙、ミュール辺境伯からの手紙、そしてメーデからの手紙が入っていた。

私はまず、ユナリーからの現状報告についての手紙を読み始める。娘のが一番気になるところではあるものの、楽しみは最後に取っておくことにした。ユナリーからの手紙には無事、公爵邸にたどり着いたことをはじめそれまでの出来事が事細かに書かれていた。

「エドから何も聞いていないけど、崩落に巻き込まれたみたい。けが人は出たそうだけどミュール辺境伯がたまたまた近くに来ていたこともあり皆助かったみたいよ。」

エドはあまり心配をかけないためか、自分で収束できたことについては言わない節がある。こういったときユナリーから聞けるのはとても助かるのだ。今回ミュール辺境伯邸に何日かお世話になったこと。その間にミュール辺境伯とメーデが少しずつ心を通わせていることなどが書かれていた。

私がユナリーからの手紙を読んでいる横で、メナードがミュール辺境伯からの手紙を読み始める。メーデとミル王太子殿下の婚約は王命ということもあり断るができなかったけど、白紙になったことで事態はいい方向に進んでいるようだ。手紙を読み終えたころ、メナードが私に声をかけた。

「エディ。急だがミュール辺境伯が私たちに用があるそうだ。手紙を出しているのがおそらく二日前だから、早ければ明日には到着するかもしれん。エドと一緒に来ると書かれていたから恐らく領地によってから来るだろう。準備を頼む。」

ユナリーからの手紙を読んだところ、辺境伯はメーデのことが好きなように感じたし、もしかしたら婚約したいことを伝えに来るのかもしれない。メナードは今回の件で、少し過保護になっている部分もあるためミュール辺境伯から直接伝えてもらおうとこのことについてはあえて報告しないことにした。

そして最後に娘からの手紙を読み始める。
手紙には、無事に公爵邸にたどり着いたこと。お父様、お母さま、お兄様も元気だということ。あとはミュール辺境伯のことが書かれていた。

「これで自分の気持ちに気づいていないんだもの。さすが私の娘ね。」

手紙を読みながらくすくす笑っていると、隣から「エディ。どうしたんだい?」と声をかけられた。

「なんでもないわ。少し昔のことを思い出していただけなの。」
そう伝えてまた手紙を読み始めた。

いつか娘が恋だと気づくことを祈って、手紙の返事を書く。

「早く今の状況がよくなりますように」と願いながら...
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

嫌われ皇后は子供が可愛すぎて皇帝陛下に構っている時間なんてありません。

しあ
恋愛
目が覚めるとお腹が痛い! 声が出せないくらいの激痛。 この痛み、覚えがある…! 「ルビア様、赤ちゃんに酸素を送るためにゆっくり呼吸をしてください!もうすぐですよ!」 やっぱり! 忘れてたけど、お産の痛みだ! だけどどうして…? 私はもう子供が産めないからだだったのに…。 そんなことより、赤ちゃんを無事に産まないと! 指示に従ってやっと生まれた赤ちゃんはすごく可愛い。だけど、どう見ても日本人じゃない。 どうやら私は、わがままで嫌われ者の皇后に憑依転生したようです。だけど、赤ちゃんをお世話するのに忙しいので、構ってもらわなくて結構です。 なのに、どうして私を嫌ってる皇帝が部屋に訪れてくるんですか!?しかも毎回イラッとするとこを言ってくるし…。 本当になんなの!?あなたに構っている時間なんてないんですけど! ※視点がちょくちょく変わります。 ガバガバ設定、なんちゃって知識で書いてます。 エールを送って下さりありがとうございました!

「不吉な子」と罵られたので娘を連れて家を出ましたが、どうやら「幸運を呼ぶ子」だったようです。

荒瀬ヤヒロ
恋愛
マリッサの額にはうっすらと痣がある。 その痣のせいで姑に嫌われ、生まれた娘にも同じ痣があったことで「気味が悪い!不吉な子に違いない」と言われてしまう。 自分のことは我慢できるが娘を傷つけるのは許せない。そう思ったマリッサは離婚して家を出て、新たな出会いを得て幸せになるが……

夫の書斎から渡されなかった恋文を見つけた話

束原ミヤコ
恋愛
フリージアはある日、夫であるエルバ公爵クライヴの書斎の机から、渡されなかった恋文を見つけた。 クライヴには想い人がいるという噂があった。 それは、隣国に嫁いだ姫サフィアである。 晩餐会で親し気に話す二人の様子を見たフリージアは、妻でいることが耐えられなくなり離縁してもらうことを決めるが――。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

〖完結〗死にかけて前世の記憶が戻りました。側妃? 贅沢出来るなんて最高! と思っていたら、陛下が甘やかしてくるのですが?

藍川みいな
恋愛
私は死んだはずだった。 目を覚ましたら、そこは見知らぬ世界。しかも、国王陛下の側妃になっていた。 前世の記憶が戻る前は、冷遇されていたらしい。そして池に身を投げた。死にかけたことで、私は前世の記憶を思い出した。 前世では借金取りに捕まり、お金を返す為にキャバ嬢をしていた。給料は全部持っていかれ、食べ物にも困り、ガリガリに痩せ細った私は路地裏に捨てられて死んだ。そんな私が、側妃? 冷遇なんて構わない! こんな贅沢が出来るなんて幸せ過ぎるじゃない! そう思っていたのに、いつの間にか陛下が甘やかして来るのですが? 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

悪役令嬢に転生したら病気で寝たきりだった⁉︎完治したあとは、婚約者と一緒に村を復興します!

Y.Itoda
恋愛
目を覚ましたら、悪役令嬢だった。 転生前も寝たきりだったのに。 次から次へと聞かされる、かつての自分が犯した数々の悪事。受け止めきれなかった。 でも、そんなセリーナを見捨てなかった婚約者ライオネル。 何でも治癒できるという、魔法を探しに海底遺跡へと。 病気を克服した後は、二人で街の復興に尽力する。 過去を克服し、二人の行く末は? ハッピーエンド、結婚へ!

【 完 】転移魔法を強要させられた上に婚約破棄されました。だけど私の元に宮廷魔術師が現れたんです

菊池 快晴
恋愛
公爵令嬢レムリは、魔法が使えないことを理由に婚約破棄を言い渡される。 自分を虐げてきた義妹、エリアスの思惑によりレムリは、国民からは残虐な令嬢だと誤解され軽蔑されていた。 生きている価値を見失ったレムリは、人生を終わらせようと展望台から身を投げようとする。 しかし、そんなレムリの命を救ったのは他国の宮廷魔術師アズライトだった。 そんな彼から街の案内を頼まれ、病に困っている国民を助けるアズライトの姿を見ていくうちに真実の愛を知る――。 この話は、行き場を失った公爵令嬢が強欲な宮廷魔術師と出会い、ざまあして幸せになるお話です。

私が公爵の本当の娘ではないことを知った婚約者は、騙されたと激怒し婚約破棄を告げました。

Mayoi
恋愛
ウェスリーは婚約者のオリビアの出自を調べ、公爵の実の娘ではないことを知った。 そのようなことは婚約前に伝えられておらず、騙されたと激怒しオリビアに婚約破棄を告げた。 二人の婚約は大公が認めたものであり、一方的に非難し婚約破棄したウェスリーが無事でいられるはずがない。 自分の正しさを信じて疑わないウェスリーは自滅の道を歩む。

処理中です...