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ブルームーン国

王都④ ジンニック視点

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メレナーデ嬢と別れた後、俺は急いで王宮に向かった。父上と、母上に会うためだ。
住み慣れた王宮を歩き謁見の間へ向かう。ここで育ってはいるものの、今はカルーア国の辺境伯だ。そのため執務室にそのまま行くということはできなかった。

謁見の間につくと、すでに父上、母上、兄上がそろっていた。レッドカーペットの上を歩き父上の前に進み膝をついて挨拶する。
「お久しぶりでございます。ブルームーン国王におかれましてはご健勝そうで何よりでございます。」

「よい。お前は私たちの息子なんだ、いつも通り話してくれ。」
顔を上げると皆が笑顔でこちらを向いていた。皆元気そうでよかった。

早速本題に入るため、今までの出来事を伝える。

「カルーア国ではそんなことが起きていたか。そしてやはり国民の暮らしはいい状態ではないのだな...」
実はここ数か月でカルーア国からこちらに移住してくる国民が増えていることを父上は教えてくれた。特に移住希望者が多いのが、王都に住む人々や、カンパリ領など圧政を行っている領民らしい。

なんでも、仕事がないというのが一番つらい状態らしかった。それも仕事がないのがすべてメレナーデ嬢が悪いということになっているらしかった。

彼女はあくまでも試作品しか作っておらずその先については国民たちにお願いをして仕事を回していると聞いていた・そのおかげもあり、バイヤー領では仕事がないという領民のほうが少ないのだ。それに税金なども収入に合わせて変わっていて払えない金額になっているということもない。これらは全てメレナーデ嬢が考えた案だそうだ。

それらを国王へ伝えたところ

「やっぱりか...ギムレット公爵もうちの孫がそんなことをするわけないと怒っていた。とりあえず今すぐに鎮静化するというのは難しいが、このままいくとこちらの国に人が流れ込んできて悪循環になってしまう可能性がある。まずはカルーア国をどうするかだが。その前にお前はどうしたいんだ?」

「こんな状態ですが、私は・・・」

兄上や母上の顔がにやにやしているのがわかる。

「メレナーデ嬢と一緒になりたいと思っております!そのための許可をもらいに戻ってまいりました。」

父上は「やはり...そうだったか...」と頭を抱えた。


そして色々話をしていくうえで、今回の結婚に条件を付けられた。
一つ目は公爵領に行って自分でギムレット公爵とバイヤー侯爵に返事をもらってくるということ。
二つ目はメレナーデ嬢へ自分から思いを伝え断られたらあきらめるということだった。

まずは公爵家たちから返事をもらうことが先決だ。明日公爵家に行った際に話をしようと心に決めた。

そして無事婚約がまとまった暁にはカルーア国についてどうしていくか話がしたいとのことだった。これからのことを思うと少し気が重くなりそうだが、まずはメレナーデ嬢に振り向いてもらうにはどうしたらいいか考えなくてはならない。

これからバイヤー侯爵にも会いに行かなくてはならないためオーソドックスに文通してこことを縮めていくのがいいのか色々頭の中で考えていた。
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