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二部
手紙。
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デューク視点
昨日のお茶会でニーナが来なかったことよりもアントンが来なかったことに違和感を覚えた。
確かに昼間収穫祭でニーナと一緒のところを見たときはニーナに似ているのかと思ったが、ウィッグ店で会ったときだろうか。思っていたより常識人だなと思ったのは...
「レナード。知っていたらでいいんだが、ムーラン家のことって何か知っていたりするか?」
俺は留学をしている身で、この国の王子ではないためそこまで貴族の詳しいことは知らない。なのでレナードに聞いてみることにした。
「ムーラン家か。知っているよ。あそこは少し特殊でね。商いだけで爵位を得ているんだ。」
騎士爵からスタートをしているとかであれば、鍛錬をしてのし上がっていく可能性もあるが、そういったわけではないらしい。
「今の当主の2代前かな。50年近く前の話になる。この国にリューリュー熱が流行ったのは知っているだろう。」
確か、その時代はうちの国でも流行っていたはずだ。うちの国では自生している薬草で感染拡大前に事なきを得たがこの国でその薬草を手に入れるのが難しかったと聞いている。そのため対処が遅れてしまったといっていた...
「その時に薬草を他国からかき集めてくれたのがムーラン家なんだよ。その時に爵位を与えられた。ただ、商人で色々な国に行くため領地はいらないといって王都の家しかなかったはずだよ。」
50年前から爵位を持っていたということはそれなりに歴史があるはずだ。なのに領地がないということはそう言った事情があったからなのか。
と、いうことはやはりある程度常識について教えられてきたはず。
それに何より馬術であれだけの成績をとれているのだ。
「ありがとう。少し、ムーランについてわかった気がするよ。」
「ムーランって、昨日お茶会に来なかったアントン・ムーランのことかい?」
レナードに聞かれたので俺はうなずいて、ウィッグ屋で会った時のことや、収穫祭で見かけたときのことに少し違和感をおぼえたということを話した。
「あれから、やはり連絡が来なかったようでね。ノヴァ家の方が爵位が上だしウィッグ屋で会った時に話した感じ常識がそこまで内容には見えなかったからね...何か裏があるのではないかと思って...」
レナードは少し考えてから
「なるほどね...確かにそれは少し引っかかるね。ムーラン商会は王家御用達の商会でもある。そんなムーラン家が約束を違えるというのはあり得ないだろう。ムーラン家の当主にもあったことがあるが、よく商人は信頼が命だと仰っていた。「約束を違えるということは信頼を失うも同然。だから絶対約束は守らねばならないのです」とね...そんな家訓がある家だからこそ教育には力を入れているだろう。」
確かに、きちんと教育はされてそうだ。
俺の名前を聞いてすぐアーノルド国の王子だと気づいたくらいだし...
髪がなくなっていたことも含めて、一度アントンとは話した方がいいかもしれない。
「ありがとう、レナード。一度男同士で話してみるよ。ニーナがいると話が進まなさそうだしね。」
「いいじゃないか。是非俺も誘ってくれ。ムーラン家とはぜひ今後も懇意にしていきたいからね。あとはエリオットもよんで男同士の茶会を行うのはどうだろうか。」
確かに1対1で話すよりはムーランも話がしやすいだろう。俺はレナードに礼をいって、ムーランに手紙を送ることにした。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
アントン視点。
「アントン様。お手紙が届いております。」
僕宛に手紙が届くのは珍しい。寧ろ最近は手紙といっても請求書ばかりだったからか見るのも嫌になっていた。
「また請求書かい...?」
思わずため息をつきながら話してしまう。
「いえ...。それがデューク・アーノルド殿下からです。」僕は名前を聞いて思わず吃驚する。
「ですから、デューク・アーノルド殿下からです。」
従者も僕の動きに吃驚したのかもう一度同じ言葉を言い放った。僕は従者から手紙を受け取り、手紙の封を開けた。
『アントン・ムーラン殿。急な手紙できっと驚いたことだろう。先日、ティアナ嬢の茶会で会えることを楽しいにしていたのだが、来られなかったので少し心配になりこの手紙を書いている。』
そこからはニーナのことをはじめ、色々なことが手紙に書いてあった。
そして手紙の最後には、『できれば一度会って話をしたいと思っているのだが、二人だと気が引けるだろう。レナード王子とエリオット・ハーツ殿で男同士の茶会を開催しようと思っている。できればニーナにばれないよう参加していただきたい。君と話ができるのを楽しみにしているよ。デューク・アーノルド』
と書かれていた。
もしかしたら、ニーナとの関係に違和感を感じてくれているのだろうか。
このまま毎日のように請求書が届いていれば、いくら家でもまかないきれなくなるだろう。
今でも決して愛していないわけではないし、僕の恋人でもあるニーナのことであまり迷惑をかけたくはなかったが...
僕は意を決して茶会に参加する旨を手紙にしたためた。
昨日のお茶会でニーナが来なかったことよりもアントンが来なかったことに違和感を覚えた。
確かに昼間収穫祭でニーナと一緒のところを見たときはニーナに似ているのかと思ったが、ウィッグ店で会ったときだろうか。思っていたより常識人だなと思ったのは...
「レナード。知っていたらでいいんだが、ムーラン家のことって何か知っていたりするか?」
俺は留学をしている身で、この国の王子ではないためそこまで貴族の詳しいことは知らない。なのでレナードに聞いてみることにした。
「ムーラン家か。知っているよ。あそこは少し特殊でね。商いだけで爵位を得ているんだ。」
騎士爵からスタートをしているとかであれば、鍛錬をしてのし上がっていく可能性もあるが、そういったわけではないらしい。
「今の当主の2代前かな。50年近く前の話になる。この国にリューリュー熱が流行ったのは知っているだろう。」
確か、その時代はうちの国でも流行っていたはずだ。うちの国では自生している薬草で感染拡大前に事なきを得たがこの国でその薬草を手に入れるのが難しかったと聞いている。そのため対処が遅れてしまったといっていた...
「その時に薬草を他国からかき集めてくれたのがムーラン家なんだよ。その時に爵位を与えられた。ただ、商人で色々な国に行くため領地はいらないといって王都の家しかなかったはずだよ。」
50年前から爵位を持っていたということはそれなりに歴史があるはずだ。なのに領地がないということはそう言った事情があったからなのか。
と、いうことはやはりある程度常識について教えられてきたはず。
それに何より馬術であれだけの成績をとれているのだ。
「ありがとう。少し、ムーランについてわかった気がするよ。」
「ムーランって、昨日お茶会に来なかったアントン・ムーランのことかい?」
レナードに聞かれたので俺はうなずいて、ウィッグ屋で会った時のことや、収穫祭で見かけたときのことに少し違和感をおぼえたということを話した。
「あれから、やはり連絡が来なかったようでね。ノヴァ家の方が爵位が上だしウィッグ屋で会った時に話した感じ常識がそこまで内容には見えなかったからね...何か裏があるのではないかと思って...」
レナードは少し考えてから
「なるほどね...確かにそれは少し引っかかるね。ムーラン商会は王家御用達の商会でもある。そんなムーラン家が約束を違えるというのはあり得ないだろう。ムーラン家の当主にもあったことがあるが、よく商人は信頼が命だと仰っていた。「約束を違えるということは信頼を失うも同然。だから絶対約束は守らねばならないのです」とね...そんな家訓がある家だからこそ教育には力を入れているだろう。」
確かに、きちんと教育はされてそうだ。
俺の名前を聞いてすぐアーノルド国の王子だと気づいたくらいだし...
髪がなくなっていたことも含めて、一度アントンとは話した方がいいかもしれない。
「ありがとう、レナード。一度男同士で話してみるよ。ニーナがいると話が進まなさそうだしね。」
「いいじゃないか。是非俺も誘ってくれ。ムーラン家とはぜひ今後も懇意にしていきたいからね。あとはエリオットもよんで男同士の茶会を行うのはどうだろうか。」
確かに1対1で話すよりはムーランも話がしやすいだろう。俺はレナードに礼をいって、ムーランに手紙を送ることにした。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
アントン視点。
「アントン様。お手紙が届いております。」
僕宛に手紙が届くのは珍しい。寧ろ最近は手紙といっても請求書ばかりだったからか見るのも嫌になっていた。
「また請求書かい...?」
思わずため息をつきながら話してしまう。
「いえ...。それがデューク・アーノルド殿下からです。」僕は名前を聞いて思わず吃驚する。
「ですから、デューク・アーノルド殿下からです。」
従者も僕の動きに吃驚したのかもう一度同じ言葉を言い放った。僕は従者から手紙を受け取り、手紙の封を開けた。
『アントン・ムーラン殿。急な手紙できっと驚いたことだろう。先日、ティアナ嬢の茶会で会えることを楽しいにしていたのだが、来られなかったので少し心配になりこの手紙を書いている。』
そこからはニーナのことをはじめ、色々なことが手紙に書いてあった。
そして手紙の最後には、『できれば一度会って話をしたいと思っているのだが、二人だと気が引けるだろう。レナード王子とエリオット・ハーツ殿で男同士の茶会を開催しようと思っている。できればニーナにばれないよう参加していただきたい。君と話ができるのを楽しみにしているよ。デューク・アーノルド』
と書かれていた。
もしかしたら、ニーナとの関係に違和感を感じてくれているのだろうか。
このまま毎日のように請求書が届いていれば、いくら家でもまかないきれなくなるだろう。
今でも決して愛していないわけではないし、僕の恋人でもあるニーナのことであまり迷惑をかけたくはなかったが...
僕は意を決して茶会に参加する旨を手紙にしたためた。
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