上 下
49 / 54
二部

取り敢えず事故に巻き込まれていなくて安心しました。

しおりを挟む
昨日のお茶会は知人のみの招待だったこともありうまく終わって良かった。

準備などを含めて思っていたより疲れていたようでぐっすり眠ることができた。

アマンダがカーテンを開けて部屋に光を入れる。
「ティアナお嬢様、おはようございます。」

「アマンダ、おはよう。今日もいい天気ね。そういえばあの後ニーナから連絡あったりしたのかしら…」

アマンダは首を横に振り、連絡がなかったことを教えてくれた。
ニーナだけなら忘れていだなんてことありそうだけれど、アントン様もとなると何かあったのではないかと少し心配になってしまう。
ウィッグ屋であったアントン様を見る限り、そこまで常識が外れている人には見えなかった。

「そう…ありがとう。取り敢えず今日学院に行ったらクラスの前を通ってみましょう。」
恐らくクラスを通り過ぎるくらいであれば気付かれずに済むだろう。学院にきていれば事故や事件に巻き込まれたわけではないと少し安心できる。

学院に行く準備、朝食を終えて少しゆっくりしているとデューク様が迎えにきてくれた。

「デューク様、おはようございます。」

「ティアナ、おはよう。昨日のお茶会はとても楽しかったよ。準備大変だっただろう。昨夜はゆっくり休めたかい?」
デューク様が昨日のお茶会を楽しいと感じてくれていたようで少しホッとした。

昨日のお茶会は知人であってもほとんどが自分より家格が上の方ばかりだったからすごく不安だったのだ。

「こちらこそ、昨日はお茶会にご参加くださりありがとうございました。楽しかったと言っていただけて安心いたしました。昨夜は思っていた以上に疲れていたのかぐっすり眠ることができました。」

そう伝えるとなら良かったと笑顔で返してくれる。
最近デューク様に笑顔が増えたような気がする。そしてこの笑顔を見たらやたらドキドキする。私はきっとこの気持ちを知っている。好きなおやつを食べる時の感覚に似ているからだ。

「この気持ちを伝えるのはもうしばらくさきになりそうね…」
小さい声で呟き私は馬車に乗って、デューク様と一緒に学院に向かった。

学院につくと私たちは別々に校舎内を歩く。この時間が最近少し寂しく感じる。
近くにいるのに少し遠くにいるような感じだ。

自分の教室に行く前に一度ニーナの教室に寄りたかったので、軽く会釈をしてデューク様と別れた。

廊下を進みニーナのクラスの前を通るとクラスの中からニーナの声が聞こえてくる。
「ニーナはお姫様なのよ。だからあなたたちは私のいうことを聞きなさい!」
いつも通りのニーナに少しホッとした反面、クラスでも変わらないのかと思った。

廊下を歩く他の人たちもいつものことなのか気にも留めないようだ。

それにしても前よりもわがまま度が増しているのではないだろうか。

「ニーナのいうことを聞かないとパパがあなた達の家なんて簡単に取り壊しちゃうんだから!」

廊下に聞こえるニーナの声が小さい子の癇癪に聞こえてくる…
「今まで当事者だったから気付かなかったのかも知れないけれど、第三者として聞いていれば駄々っ子のわがままにしか聞こえないわね。」
真正面からばかり見ていたら見れないこともある。色々な角度からもっとニーナを見るべきだった。私はもう少し早くニーナと向き合うべきだったのだろう。
そしたら少しは変わっていたのかも知れない…。

私はそのまま廊下を進んで教室に向かった。


⟡.·*.··············································⟡.·*.

アントン・ムーラン視点。

ニーナと付き合い始めてから5ヶ月が経った。始めは僕のことを王子様と言ってくれる姿がとても可愛く、僕自身も王子様に憧れがあったためニーナに王子様と言われるのがとても嬉しかった。男爵家の三男ということもあり今まで見向きもされなかった僕は少し調子に乗ってしまっていたのもあるのかもしれない。

ムーラン家は男爵家であるものの考え方は平民に近い。
商人はお客様がいてこそ成り立つ職業でもある。そして約束は絶対だ。
約束を守れなければ信頼を失うことだと小さい頃から教えられている。

「ニーナ、今日はティアナ・ノヴァ嬢からお茶会の招待状が届いていたはずだ。それに参加することを書いて返信したのだが、もう時間になる。準備しないと…」

このままだとお茶会の時間に遅れてしまうことになるためニーナに準備するように伝える。

「うるさいわね!私に指図しないでよ。私はお姫様なのよ。行くも行かないも自由じゃない。それにあのモブ。私よりイケメンの恋人を連れていたわ。私より目立つなんて本当に許せないんだから。」

付き合い始めてから初めの頃はただの可愛いお姫様に見えていたのだが、いつからか傲慢さが増した様な気がする。

ドレスも買っていいと言ってもいないのにどんどん買って請求書ばかりがうちに届く。
そのせいで僕が父上から怒られる。ただ買った以上払わない訳にいかないからと父は仕方なく支払いをしていた。

ルルー家には父上から何度かニーナが買ったドレスの件で連絡をしていたが、
「そちらの息子と恋人になったのだからそちらが支払うのが当たり前だ。」と連絡が来るのみで取り合ってくれなかった様だ。

外にいる時のニーナは周りに見られているからか少し機嫌がいい。
ただ気づいているのだろうか。
周りの目線は羨望の眼差しではなく迷惑そうな眼差しで見ていることに…

僕はそれに気づいてからニーナと一緒にいるのが不安になった。

そのせいか、髪がどんどん抜けてきて困っている。綺麗に整えていただけにショックが大きい…

誰かに相談できないかと悩んでいた頃、デューク殿下から一通の手紙が届いた。

しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

モブですが、婚約者は私です。

伊月 慧
恋愛
 声高々に私の婚約者であられる王子様が婚約破棄を叫ぶ。隣に震える男爵令嬢を抱き寄せて。  婚約破棄されたのは同年代の令嬢をまとめる、アスラーナ。私の親友でもある。そんな彼女が目を丸めるのと同時に、私も目を丸めた。  待ってください。貴方の婚約者はアスラーナではなく、貴方がモブ認定している私です。 新しい風を吹かせてみたくなりました。 なんかよく有りそうな感じの話で申し訳ございません。

正妃として教育された私が「側妃にする」と言われたので。

水垣するめ
恋愛
主人公、ソフィア・ウィリアムズ公爵令嬢は生まれてからずっと正妃として迎え入れられるべく教育されてきた。 王子の補佐が出来るように、遊ぶ暇もなく教育されて自由がなかった。 しかしある日王子は突然平民の女性を連れてきて「彼女を正妃にする!」と宣言した。 ソフィアは「私はどうなるのですか?」と問うと、「お前は側妃だ」と言ってきて……。 今まで費やされた時間や努力のことを訴えるが王子は「お前は自分のことばかりだな!」と逆に怒った。 ソフィアは王子に愛想を尽かし、婚約破棄をすることにする。 焦った王子は何とか引き留めようとするがソフィアは聞く耳を持たずに王子の元を去る。 それから間もなく、ソフィアへの仕打ちを知った周囲からライアンは非難されることとなる。 ※小説になろうでも投稿しています。

[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・

青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。 婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。 「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」 妹の言葉を肯定する家族達。 そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。 ※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。

……モブ令嬢なのでお気になさらず

monaca
恋愛
……。 ……えっ、わたくし? ただのモブ令嬢です。

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! ★恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 連載希望のコメントをいただきましたので、 連載に向け準備中です。 *他サイトでも公開中 日間総合ランキング2位に入りました!

婚約者が不倫しても平気です~公爵令嬢は案外冷静~

岡暁舟
恋愛
公爵令嬢アンナの婚約者:スティーブンが不倫をして…でも、アンナは平気だった。そこに真実の愛がないことなんて、最初から分かっていたから。

【完結】せっかくモブに転生したのに、まわりが濃すぎて逆に目立つんですけど

monaca
恋愛
前世で目立って嫌だったわたしは、女神に「モブに転生させて」とお願いした。 でも、なんだか周りの人間がおかしい。 どいつもこいつも、妙にキャラの濃いのが揃っている。 これ、普通にしているわたしのほうが、逆に目立ってるんじゃない?

婚約破棄された悪役令嬢にはヤンデレ婚約者が宛がわれました

荷居人(にいと)
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢の結末って死ぬ運命にあるか国外追放か。で、乙女ゲーム転生で悪役令嬢になっちゃったといえば死なないためにふんばるか、国外追放やっほーいな気分でそれを目指して平民になろうとするかだと私は思ってる。 大抵転生悪役令嬢はなんだかんだいいポジション枠で幸せになるよね! なのに私は悪役令嬢に転生してると記憶を取り戻したのはいいとして既に断罪される直前。お決まりの婚約破棄後に言われたのは強制的な次の婚約先!その相手は悪役令嬢のストーカーモブで………。 「あれ?意外にいい男だ」 乙女ゲームでは声のみ出演だったモブは悪役令嬢側からしたらなしでも、私からすればありありの婚約者でした。 寧ろ推しより好みです!ストーカー、ヤンデレ、束縛上等!だってそれだけ愛されてるってことだもんね!

処理中です...