44 / 54
二部
急遽デューク様が屋敷に来ることになりました②
しおりを挟む
「着替えておいで」と言われてすぐに着替えにいこうとはならなかった。お父様のことだ、きっと裏があると思いアマンダに確認する。
「アマンダ。お父様が着替えておいでと仰ったけど、本当に着替えてきなさいって言っているようには聞こえなかったのよ。もしかして扉の外で聞いていなさいということかしら…」
「お嬢様。よくお気づきになられましたね。旦那様からお嬢様が気付いたならば外で聞いているようにと仰せつかっております。」
少し遠回りをして応接室へ向かった。遠回りしたのはデューク様に気づかれないようにするためだろう。
よくよく考えればお父様やお母様に私とデューク様のことはまだ伝えていない。
お母様あたりは目敏いから気付いてそうだけど。応接室の扉が閉じた音が聞こえたので私はゆっくり応接室の前に向かった。
扉がそんなに分厚いわけではないが、部屋が広めのためか所々しか声が聞こえない。
そんな中で一つの言葉だけはっきり聞こえた。
『婚約』という言葉だ。
まさかそんなに話が進むとは思ってもいなかった。
デューク様は以前ゆっくり進めたいこうと言っていたのに何がどうなったら婚約になるのだろうか…
扉のところで耳を澄ませていると扉からガチャリとドアノブを回す音が聞こえた。
扉が開く前に私は姿勢を元に戻す。時を見計ったようにゆっくりと扉が開いた。
「ティアナ…」
「デューク様。」
「じゃぁ、ハリーと私は一度席を離れるわ。そうね…30分後に戻るから2人できちんと今後について話し合いなさい。その後、ティアナが話したいことがあると言っていた内容について話しましょう。」お父様の手を引っ張ったお母様が応接室から出て行った。
2人になって5分くらいだろうか…どちらも話すことなく沈黙が続いている。
「ティアナ。すまない。本当はもっとゆっくり進めていこうと思っていたんだ。」自分の手を握りしめて話すデューク様はすごく辛そうだ。きっと私がお昼に色々話したから考えてくれたんだろうということはわかる。
「デューク様はきっと私のことを考えて婚約の話をしてくださったんですよね…」ニーナのことが起因しているのは間違いないと思う。
「婚約することで俺がいないところでも守れると思ったんだ。学年も違うから学院でもずっと一緒にいれるわけではないし、ニーナのことを聞いてからいても立ってもいられなくて。」
自分がいないところでなにか起きた時のことを考えてくれたのね。確かに婚約するというのも一つなのかもしれないけど、ニーナのことはなるべく自分で解決したいと思っているし、デューク様とのことはニーナのことが終わったらと考えていた。
決して後回しにした訳では無い。ニーナから卒業することで前を向いて歩けるようになると思っているからだ。
でもデューク様の捨てられた猫のような顔を見ると凄く言いづらいかった。
私はデューク様の手を取って目を見ながら伝える。
「色々考えてくださってありがとうございます。その気持ちがすごく嬉しいです。ですが…」
私はありのままの気持ちを伝える。色々考えてくれたデューク様だからこそ私の気持ちもわかってくれるだろう。
「デューク様に守られているよりは、お互いを守り合える存在になりたいのです。お姫様になれなくて申し訳ございません。」
辺境伯家の一員として守られているよりはお父様たちのような背中を預けられる存在になりたい。
全ての気持ちを伝えると、デューク様が笑い出した。
「ククッ…」
真剣な話をしていたのだが可笑しいところがあっただろうか。
「私何かいいました?」
「いや、ティアナはやっぱり俺が好きになっただけのことはあるなと思っただけだ。」
収穫祭で私が騎士や勇者に憧れていたと言っていたことと、姫にはなれないという言葉が結びついたらしい。
「確かに気持ちが急いていたかもしれない。ティアナ。もう大丈夫だ!お互い背中を預けられる、そんな2人を目指そう。だから全て終わったら婚約してくれないか?」
デューク様の顔が以前よりも晴れやかになっている気がする。
私はデューク様の言葉をきいて、きちんと気持ちを伝えることが大切なんだなということが痛いほどわかった。自分で思っているだけだの何も変わらない。
「勿論です!ですので、もう少しだけお待ちください。」
そう伝えると笑顔で頷いた。
ニーナにももっと早く自分の気持ちを伝えるべきだったかも知れない。伝えたところで変わったかはわからないけれど…
私は卒業パーティーまでに一度はニーナへ自分の気持ちを伝えようと心に決めた。
「アマンダ。お父様が着替えておいでと仰ったけど、本当に着替えてきなさいって言っているようには聞こえなかったのよ。もしかして扉の外で聞いていなさいということかしら…」
「お嬢様。よくお気づきになられましたね。旦那様からお嬢様が気付いたならば外で聞いているようにと仰せつかっております。」
少し遠回りをして応接室へ向かった。遠回りしたのはデューク様に気づかれないようにするためだろう。
よくよく考えればお父様やお母様に私とデューク様のことはまだ伝えていない。
お母様あたりは目敏いから気付いてそうだけど。応接室の扉が閉じた音が聞こえたので私はゆっくり応接室の前に向かった。
扉がそんなに分厚いわけではないが、部屋が広めのためか所々しか声が聞こえない。
そんな中で一つの言葉だけはっきり聞こえた。
『婚約』という言葉だ。
まさかそんなに話が進むとは思ってもいなかった。
デューク様は以前ゆっくり進めたいこうと言っていたのに何がどうなったら婚約になるのだろうか…
扉のところで耳を澄ませていると扉からガチャリとドアノブを回す音が聞こえた。
扉が開く前に私は姿勢を元に戻す。時を見計ったようにゆっくりと扉が開いた。
「ティアナ…」
「デューク様。」
「じゃぁ、ハリーと私は一度席を離れるわ。そうね…30分後に戻るから2人できちんと今後について話し合いなさい。その後、ティアナが話したいことがあると言っていた内容について話しましょう。」お父様の手を引っ張ったお母様が応接室から出て行った。
2人になって5分くらいだろうか…どちらも話すことなく沈黙が続いている。
「ティアナ。すまない。本当はもっとゆっくり進めていこうと思っていたんだ。」自分の手を握りしめて話すデューク様はすごく辛そうだ。きっと私がお昼に色々話したから考えてくれたんだろうということはわかる。
「デューク様はきっと私のことを考えて婚約の話をしてくださったんですよね…」ニーナのことが起因しているのは間違いないと思う。
「婚約することで俺がいないところでも守れると思ったんだ。学年も違うから学院でもずっと一緒にいれるわけではないし、ニーナのことを聞いてからいても立ってもいられなくて。」
自分がいないところでなにか起きた時のことを考えてくれたのね。確かに婚約するというのも一つなのかもしれないけど、ニーナのことはなるべく自分で解決したいと思っているし、デューク様とのことはニーナのことが終わったらと考えていた。
決して後回しにした訳では無い。ニーナから卒業することで前を向いて歩けるようになると思っているからだ。
でもデューク様の捨てられた猫のような顔を見ると凄く言いづらいかった。
私はデューク様の手を取って目を見ながら伝える。
「色々考えてくださってありがとうございます。その気持ちがすごく嬉しいです。ですが…」
私はありのままの気持ちを伝える。色々考えてくれたデューク様だからこそ私の気持ちもわかってくれるだろう。
「デューク様に守られているよりは、お互いを守り合える存在になりたいのです。お姫様になれなくて申し訳ございません。」
辺境伯家の一員として守られているよりはお父様たちのような背中を預けられる存在になりたい。
全ての気持ちを伝えると、デューク様が笑い出した。
「ククッ…」
真剣な話をしていたのだが可笑しいところがあっただろうか。
「私何かいいました?」
「いや、ティアナはやっぱり俺が好きになっただけのことはあるなと思っただけだ。」
収穫祭で私が騎士や勇者に憧れていたと言っていたことと、姫にはなれないという言葉が結びついたらしい。
「確かに気持ちが急いていたかもしれない。ティアナ。もう大丈夫だ!お互い背中を預けられる、そんな2人を目指そう。だから全て終わったら婚約してくれないか?」
デューク様の顔が以前よりも晴れやかになっている気がする。
私はデューク様の言葉をきいて、きちんと気持ちを伝えることが大切なんだなということが痛いほどわかった。自分で思っているだけだの何も変わらない。
「勿論です!ですので、もう少しだけお待ちください。」
そう伝えると笑顔で頷いた。
ニーナにももっと早く自分の気持ちを伝えるべきだったかも知れない。伝えたところで変わったかはわからないけれど…
私は卒業パーティーまでに一度はニーナへ自分の気持ちを伝えようと心に決めた。
654
お気に入りに追加
2,216
あなたにおすすめの小説
モブですが、婚約者は私です。
伊月 慧
恋愛
声高々に私の婚約者であられる王子様が婚約破棄を叫ぶ。隣に震える男爵令嬢を抱き寄せて。
婚約破棄されたのは同年代の令嬢をまとめる、アスラーナ。私の親友でもある。そんな彼女が目を丸めるのと同時に、私も目を丸めた。
待ってください。貴方の婚約者はアスラーナではなく、貴方がモブ認定している私です。
新しい風を吹かせてみたくなりました。
なんかよく有りそうな感じの話で申し訳ございません。
正妃として教育された私が「側妃にする」と言われたので。
水垣するめ
恋愛
主人公、ソフィア・ウィリアムズ公爵令嬢は生まれてからずっと正妃として迎え入れられるべく教育されてきた。
王子の補佐が出来るように、遊ぶ暇もなく教育されて自由がなかった。
しかしある日王子は突然平民の女性を連れてきて「彼女を正妃にする!」と宣言した。
ソフィアは「私はどうなるのですか?」と問うと、「お前は側妃だ」と言ってきて……。
今まで費やされた時間や努力のことを訴えるが王子は「お前は自分のことばかりだな!」と逆に怒った。
ソフィアは王子に愛想を尽かし、婚約破棄をすることにする。
焦った王子は何とか引き留めようとするがソフィアは聞く耳を持たずに王子の元を去る。
それから間もなく、ソフィアへの仕打ちを知った周囲からライアンは非難されることとなる。
※小説になろうでも投稿しています。
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
★恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
連載希望のコメントをいただきましたので、
連載に向け準備中です。
*他サイトでも公開中
日間総合ランキング2位に入りました!
私の魔力を全て奪って婚約破棄するようですが、奪えるのは1週間だけです
天宮有
恋愛
婚約者ジェイクが、魔法が使えなくなった私セリスに婚約破棄を言い渡してくる。
私の妹ローナを新たな婚約者にするために、ジェイクが私の魔力を奪ったことは把握していた。
奪えるのは1週間だけだと知っていたから、私は冷静に婚約破棄を受け入れる。
魔力を奪ってくる婚約者なんて、私の方からお断りだ。
そして数日後――ジェイクは真相を知ることとなる。
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
【完結】せっかくモブに転生したのに、まわりが濃すぎて逆に目立つんですけど
monaca
恋愛
前世で目立って嫌だったわたしは、女神に「モブに転生させて」とお願いした。
でも、なんだか周りの人間がおかしい。
どいつもこいつも、妙にキャラの濃いのが揃っている。
これ、普通にしているわたしのほうが、逆に目立ってるんじゃない?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる