上 下
34 / 54

変化。

しおりを挟む
デューク様服飾屋さんを巡っているとあっという間に夕方になっていた。
自分の服を選ぶ時は動きやすさ重視で選んでしまうことが多く、見た目まで考えて選ぶことはあまりなかったけど、デューク様のことを考えながら選ぶのは楽しかった。
特に布の種類が豊富で、同じ色でも少しずつ色が違ったり、光の当たり方で色が変わって見えたりする物もあったりしてみていて飽きなかった。
「今日は楽しかったですね。私、誰かに服を選ぶのは初めてだったので、デューク様のことを考えながら一つ一つ決めていくのが楽しかったです。」
いつも以上にデューク様を見たきがする。どんな色が似合うか、どんな形の物が似合うかデューク様を見ていると、不思議と同じ動きをしているのかデューク様もこちらを見ていてよく目が合った。

「お互い選んだものはできてきてからのお楽しみにしましょう!」できてからのお楽しみにすることで、それまでは友人としてもデューク様との関係が続くということだ。我ながらいいアイデアだと思う。

「そうだね!お互いの服ができたら見せ合おうか。」
始めはぎこちなかったけどいつの間にか腕を組んで歩くのに慣れて朝よりも距離が近づいた気がする。今日1日でデューク様の色々な顔が見れて良かった。私が一人で思い出し笑いをしていると隣から声がかけられた。

「そんなに笑ってどうしたんだい?」

「いえ…ただ、今日1日でデューク様の色々な姿が見れて楽しかったなと思ったんです。まだあと1日ありますけど、たくさん思い出つくりましょうね!」
なんだか、この関係があと1日で終わると思うと少し寂しい気持ちになるけど、いっときの夢だと思って思い出として心の中にしまっておこう。

「ティアナ。俺も楽しかったよ。ティアナの色々な顔が見れてよかった。実はティアナに………んだ!」

蝋燭流しで人が多くなってきたこともあり最後の方が聞こえなかったけど、デューク様も楽しんでくれたようで良かった。

「デューク様、最後何か言いました?周りの声で聞こえなくて…」

「あ、あぁ、明日話したいことがあるんだ。少し時間くれないか?」話したいこととはなんだろうか…少し気にはなったけど明日話してくれるということだったので、私は「わかりました!」と伝えた。

二人で歩いていると川にたくさんの人が集まってきた。
よく見ると反対側の岸にビアンカとレナード様がいる。ビアンカがこちらに気づいたようで手を振ってきたので私も手を振りかえした。そして何かに気づいたのかレナード様の耳元でレナード様に伝えている。
始めはぎこちなかった二人も今では仲のいい恋人同士にしか見えなかった。

⟡.·*.··············································⟡.·*.

ビアンカ視点

朝アナたちと別れてからなかなか二人に会うことはなく、いつの間にか夕方になっていた。
「結局アナたちに会わなかったですね…」

「二人で楽しく過ごしているんだろう。今日はきっと迷惑な二人組に会わなくてゆっくり過ごせたんじゃないか?」
たしかにニーナたちは私たちに絡んではこないものの近くで恋人とわちゃわちゃしていた。大体あの2人がいるところは人だかりができているからすぐわかる。あと派手な服装だから、いやでも見つけてしまうのだ。

「でも私たちには気づいていないようで安心しました。自分のことをお姫様と言っているくらいですし、その…レナード様の方がお相手の方よりかっこいいので…「私の王子様はあなただったのね」って寄ってこられるのではないかとヒヤヒヤしました。」

「なんだ。ヤキモチか?そういうビアンカも可愛いな。でも安心してくれ。俺はビアンカ以外興味ないからな。それにあれはタイプじゃない。」

アレって…きっと名前も覚えていないんだろう。でもレナード様の言葉がすごくうれしかった。
アナから前もって蝋燭流しが行われることを聞いていた私たちは皆が歩いていく方向に向かって一緒に歩き始めた。

「蝋燭流し、楽しみですね。どんな感じなんでしょうか。」

「俺も初めて見るんだが、以前お爺様から話を聞いたことがある。たくさんの光が川を流れてくる姿はすごく綺麗だそうだよ。そして最後は少しずつ火が消えていく。一気に消えるわけじゃなく一つ一つ消えていくそうだ。それがまた神秘的だと言っていた。」

話を聞くだけだと想像しかできないけど、これだけの人がいるのだ。きっと綺麗なんだろうなと思いながら歩く。

2人で話しながら歩いているとレナード様が向こう岸にデューク様たちが見えると教えてくれた。レナード様が見ている方向を見るとデューク様とアナが腕を組んで楽しそうに話している。
アナもこちらに気づいたようでお互い手を振った。すごく幸せそうなアナの顔をみて、2人にして正解だったなと思った。

「レナード様。あの2人腕を組んで歩いてますけど。もしかして付き合うことになったんでしょうか?」

「1日ですごい進展したんだな。まだ付き合うことはなさそうだっただけにびっくりだよ。」
耳元で2人で話しているとまたアナたちと目があった。私たちは2人でニコニコしながら手を振った。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい

矢口愛留
恋愛
【全11話】 学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。 しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。 クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。 スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。 ※一話あたり短めです。 ※ベリーズカフェにも投稿しております。

【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~

イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」   どごおおおぉっ!! 5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略) ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。 …だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。 それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。 泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ… 旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは? 更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!? ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか? 困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語! ※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください… ※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください… ※小説家になろう様でも掲載しております ※イラストは湶リク様に描いていただきました

【完結】記憶を失くした貴方には、わたし達家族は要らないようです

たろ
恋愛
騎士であった夫が突然川に落ちて死んだと聞かされたラフェ。 お腹には赤ちゃんがいることが分かったばかりなのに。 これからどうやって暮らしていけばいいのか…… 子供と二人で何とか頑張って暮らし始めたのに…… そして………

【完】前世で種を疑われて処刑されたので、今世では全力で回避します。

112
恋愛
エリザベスは皇太子殿下の子を身籠った。産まれてくる我が子を待ち望んだ。だがある時、殿下に他の男と密通したと疑われ、弁解も虚しく即日処刑された。二十歳の春の事だった。 目覚めると、時を遡っていた。時を遡った以上、自分はやり直しの機会を与えられたのだと思った。皇太子殿下の妃に選ばれ、結ばれ、子を宿したのが運の尽きだった。  死にたくない。あんな最期になりたくない。  そんな未来に決してならないように、生きようと心に決めた。

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。

たろ
恋愛
わたしの愛する人の隣には、わたしではない人がいる。………彼の横で彼を見て微笑んでいた。 わたしはそれを遠くからそっと見て、視線を逸らした。 ううん、もう見るのも嫌だった。 結婚して1年を過ぎた。 政略結婚でも、結婚してしまえばお互い寄り添い大事にして暮らしていけるだろうと思っていた。 なのに彼は婚約してからも結婚してからもわたしを見ない。 見ようとしない。 わたしたち夫婦には子どもが出来なかった。 義両親からの期待というプレッシャーにわたしは心が折れそうになった。 わたしは彼の姿を見るのも嫌で彼との時間を拒否するようになってしまった。 そして彼は側室を迎えた。 拗れた殿下が妻のオリエを愛する話です。 ただそれがオリエに伝わることは…… とても設定はゆるいお話です。 短編から長編へ変更しました。 すみません

不妊を理由に離縁されて、うっかり妊娠して幸せになる話

七辻ゆゆ
恋愛
「妊娠できない」ではなく「妊娠しづらい」と診断されたのですが、王太子である夫にとってその違いは意味がなかったようです。 離縁されてのんびりしたり、お菓子づくりに協力したりしていたのですが、年下の彼とどうしてこんなことに!?

【完結】薔薇の花をあなたに贈ります

彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。 目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。 ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。 たが、それに違和感を抱くようになる。 ロベルト殿下視点がおもになります。 前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!! 11話完結です。

処理中です...