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男装。
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私が何に出ようか、どうやって出場しようか考えていると、ビアンカが男装してみたらどうかという案をくれた。
確かにお兄様やお祖父様たちに鍛えられてている分、その辺の男の人たちには負けない自信があるけれど、勝ち抜けるかと言われたらわからない…でも自分がどこまでできるか力比べができると思うと心が躍る。
「今回のために運動祭までお父様に特訓してもらうのもありかもしれないわね!」
学院からの帰り道、馬車から外を眺めながら運動祭までのことを考えているとあっという間に自宅に着いた。
自宅は王都と辺境伯領に2つある。貴族院に通っている間は王都にある自宅から通って休暇中は辺境伯領に戻ることが多い。今は貴族院を卒業しているお兄様たちと、お祖父様が辺境伯領にいるため、お母様やお父様は辺境伯領を任せて私と一緒に王都に来ている。
自宅の中に入るとお父様とお母様が出迎えてくれた。
「ティア、おかえりなさい。」
「お父様、お母様ただいま戻りました。」挨拶をして取り敢えず一度部屋に戻る。お母様たちに予定がない時は大抵帰ってきたあと挨拶をして部屋に戻って着替えてからご飯というのがルーティンだ。
部屋につくと三つ編みを解きメガネを外していつも通りの自分に戻る。最近やっと三つ編み姿に慣れてきたけれどやっぱりこっちの姿の方が落ち着く。
シンプルなAラインのワンピースに着替えてダイニングルームに向かった。
「お父様、お母様お待たせいたしました。」軽く一礼をしてから席に着く。
「最近ティアは学院が楽しそうね。」
「はい!クラスの皆もとても優しい方々ばかりでいつも助けられてるんです。」
そう言って今日あった話をした。
「それで、次の運動祭なんですけど男装して男子の部の剣術、馬術に出たいと思っているんですがいいでしょうか?」
お母様は目をぱちぱちさせながら、
「あら、面白そうじゃない!早速準備しないといけないわね。」とすごい乗り気なひと言をくれる。
お父様はお父様で、「その辺の男どもには負けるわけにはいかんな。運動祭まで特訓しよう。」
今にもダイニングルームから出ていきそうな勢いだったので慌てて「明日からお願いいたします。」とその場を落ち着かせた。
2人とも反対しないでくれてよかったなとホッとした気持ちでいっぱいだ。
運動祭までの間、男装についてはビアンカやお母様にお願いしておけばなんとでもなりそうだし、私はお父様と一緒に稽古に励んだ。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
お父様と稽古を始めて3週間が経ち、あっという間に運動祭が明日へと迫っていた。
辺境伯家領主ということもあり、やはりお父様はすごく強い。
「ティアナ。いいかい、明日の試合についてだが、剣術で勝つにはなかなか難しいぞ。でもお前は辺境伯家の娘だ。そう簡単には負けてはならぬ。どう足掻いても力では勝てないからな、どうやって戦うか工夫をしなければならない。」
「はい!お父様。」剣を振り合いながら話し続ける。
「まずティアナが勝つためにどうするべきか。一つ一つの技で戦うんだ。そのために力技に持っていかれないように気をつけるんだぞ。」
力技にもったいかれたら下手したら一撃で負ける可能性もあるだろう。特に自分より体のの大きい方のほうが多いはず…お父様の話に相鎚をうち、明日の剣術に向けて稽古を続けた。
馬術は馬の障害競技だし、自分の馬に乗っていいとのことだったので、自分の慣れた馬に乗って走る予定だ。
目標は優勝じゃなくてもいいけどできれば3位以内に入りたいところ。せっかくみんなが男装でいいって言ってくれたから、気持ちに応えられるように頑張るだけだ。
そして当日になり、メイドに連れられて応接室に行くとお母様だけでなく、なぜか、ビアンカとヘレナが来てみんなで楽しそうに会話をしていた。正直結構遅くまで起きていたので眠いのだけど…大きなあくびをしながら3人の元に向かう。
「おはようございます。お母様。ビアンカ、ヘレナが来ていることにもびっくりしたけれどとても楽しそうね。」
ヘレナとお母様はいつも通り「おはよう」と返してくれたけれどビアンカからなんの反応もなかった。ビアンカを見て不思議に思っていると、
「ビアンカはティアの普通の姿を始めてみるからびっくりしたんじゃないかしら?」
「アナ。おはようございます!すみません。あまりにも美しくてびっくりしてしまいました。」ビアンカは少し照れながら私に話しかけてきた。同性でも異性でも美しいと言ってもらえるだけですごく嬉しい。
私も「ありがとう。」と返事をし早速今日の変装を始めていく。
「いつもおさげにメガネだから今回はイケメンな男装にしましょう!」というテーマらしい。私は3人に任せて人形になりきった。
今回、担任の先生からの力添えもあり男装として参加できることになったけれど、一つだけ条件が名前を変えて出場するということだったので、皆んなが色々準備してくれている間に私は名前を考えることにした。
確かにお兄様やお祖父様たちに鍛えられてている分、その辺の男の人たちには負けない自信があるけれど、勝ち抜けるかと言われたらわからない…でも自分がどこまでできるか力比べができると思うと心が躍る。
「今回のために運動祭までお父様に特訓してもらうのもありかもしれないわね!」
学院からの帰り道、馬車から外を眺めながら運動祭までのことを考えているとあっという間に自宅に着いた。
自宅は王都と辺境伯領に2つある。貴族院に通っている間は王都にある自宅から通って休暇中は辺境伯領に戻ることが多い。今は貴族院を卒業しているお兄様たちと、お祖父様が辺境伯領にいるため、お母様やお父様は辺境伯領を任せて私と一緒に王都に来ている。
自宅の中に入るとお父様とお母様が出迎えてくれた。
「ティア、おかえりなさい。」
「お父様、お母様ただいま戻りました。」挨拶をして取り敢えず一度部屋に戻る。お母様たちに予定がない時は大抵帰ってきたあと挨拶をして部屋に戻って着替えてからご飯というのがルーティンだ。
部屋につくと三つ編みを解きメガネを外していつも通りの自分に戻る。最近やっと三つ編み姿に慣れてきたけれどやっぱりこっちの姿の方が落ち着く。
シンプルなAラインのワンピースに着替えてダイニングルームに向かった。
「お父様、お母様お待たせいたしました。」軽く一礼をしてから席に着く。
「最近ティアは学院が楽しそうね。」
「はい!クラスの皆もとても優しい方々ばかりでいつも助けられてるんです。」
そう言って今日あった話をした。
「それで、次の運動祭なんですけど男装して男子の部の剣術、馬術に出たいと思っているんですがいいでしょうか?」
お母様は目をぱちぱちさせながら、
「あら、面白そうじゃない!早速準備しないといけないわね。」とすごい乗り気なひと言をくれる。
お父様はお父様で、「その辺の男どもには負けるわけにはいかんな。運動祭まで特訓しよう。」
今にもダイニングルームから出ていきそうな勢いだったので慌てて「明日からお願いいたします。」とその場を落ち着かせた。
2人とも反対しないでくれてよかったなとホッとした気持ちでいっぱいだ。
運動祭までの間、男装についてはビアンカやお母様にお願いしておけばなんとでもなりそうだし、私はお父様と一緒に稽古に励んだ。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
お父様と稽古を始めて3週間が経ち、あっという間に運動祭が明日へと迫っていた。
辺境伯家領主ということもあり、やはりお父様はすごく強い。
「ティアナ。いいかい、明日の試合についてだが、剣術で勝つにはなかなか難しいぞ。でもお前は辺境伯家の娘だ。そう簡単には負けてはならぬ。どう足掻いても力では勝てないからな、どうやって戦うか工夫をしなければならない。」
「はい!お父様。」剣を振り合いながら話し続ける。
「まずティアナが勝つためにどうするべきか。一つ一つの技で戦うんだ。そのために力技に持っていかれないように気をつけるんだぞ。」
力技にもったいかれたら下手したら一撃で負ける可能性もあるだろう。特に自分より体のの大きい方のほうが多いはず…お父様の話に相鎚をうち、明日の剣術に向けて稽古を続けた。
馬術は馬の障害競技だし、自分の馬に乗っていいとのことだったので、自分の慣れた馬に乗って走る予定だ。
目標は優勝じゃなくてもいいけどできれば3位以内に入りたいところ。せっかくみんなが男装でいいって言ってくれたから、気持ちに応えられるように頑張るだけだ。
そして当日になり、メイドに連れられて応接室に行くとお母様だけでなく、なぜか、ビアンカとヘレナが来てみんなで楽しそうに会話をしていた。正直結構遅くまで起きていたので眠いのだけど…大きなあくびをしながら3人の元に向かう。
「おはようございます。お母様。ビアンカ、ヘレナが来ていることにもびっくりしたけれどとても楽しそうね。」
ヘレナとお母様はいつも通り「おはよう」と返してくれたけれどビアンカからなんの反応もなかった。ビアンカを見て不思議に思っていると、
「ビアンカはティアの普通の姿を始めてみるからびっくりしたんじゃないかしら?」
「アナ。おはようございます!すみません。あまりにも美しくてびっくりしてしまいました。」ビアンカは少し照れながら私に話しかけてきた。同性でも異性でも美しいと言ってもらえるだけですごく嬉しい。
私も「ありがとう。」と返事をし早速今日の変装を始めていく。
「いつもおさげにメガネだから今回はイケメンな男装にしましょう!」というテーマらしい。私は3人に任せて人形になりきった。
今回、担任の先生からの力添えもあり男装として参加できることになったけれど、一つだけ条件が名前を変えて出場するということだったので、皆んなが色々準備してくれている間に私は名前を考えることにした。
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