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自称ヒロイン。

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いつからだろうか。
私の後ろをついて歩く女の子が1人いる。

ニーナ・ルルー。ルルー子爵の娘で、赤い髪に緑色の目。少し小柄なぱっと見、明るい女の子だ。

ただ一つ難点なのは頭がお花畑で構成されており、いつも自分のことを「ニーナはヒロインなのよ!」と言って全く人の話を聞かないことである。

15歳になった今、少しは変わるのではないかと私ばかりでなく周りの人も期待したのだが、変わることはなかった…

そしてニーナにはもう一つ口癖がある。なぜか私に対してのみ、「あなたはモブよ!」と言うのだ…。小さい頃はモブの意味がよくわからずお母様たちに意味を聞いてみたことがあった。しかしこの辺の言葉ではないのかお母様も意味はわからないと首を傾げていたのを覚えている。
最近ではニーナ語がわかるようになって来たこともあり、モブというのは恐らく…表舞台に立つことはない、影の薄い人のことを指すのではないかと思っている。

ニーナの話を聞く限り私的にはモブでいる方がよっぽどヒロインとやらよりいいのではないかと思うのだけれど…。
なぜニーナがそこまでヒロインに固執するのかわからないのが現状だ。試しに何度か、「ニーナはなぜ、ヒロインになりたいの?」と聞いてみたことがある。

返ってきた言葉は
「ニーナはヒロインだからよ!」だった…

そんなニーナも私も今日から貴族院に通うことになる。できればニーナとはあまり関わりたくない気持ちのほうが大きい。
今までも…お茶会についてきたり、招待されてもいないのにパーティーについてきたりと、散々な目にあうことが多かったからだ。だからこそ学院に通うときは静かに穏便に過ごしたい…


色々考えているとあっという間に学院に行く時間になった。
私は真新しい制服に身を包み身支度を整えて部屋を出る。
貴族院の制服は形だけ決まっているものの色は自由だ。私はあまり目立ちたくないと言うこともあり黒を基調とした色合いにした。本当はもう少し明るいをとも思ったけれど、明るい色にしたらニーナがまた絡んでくる可能性が高いと思ったからだ。そして髪型も、三つ編みにして眼鏡をかけて目立たない令嬢(モブ)になりきる。

「ティア。本当にその色でいいの?あなたなら他の色でも似合うのに…」お母様が心配そうにこちらを見る。

「いいんです…色のついたものにするとまたニーナがうるさそうですし…」

お母様はため息をつきながら何かいいたそうに「…そう…」と目を伏せて言った。
おそらく言いたいことがたくさんあるんだろうけれど…こればかりは穏便な学院生活を送るためなので、譲れなかった。3年間ニーナにバレず、できれば恋愛もしたい。それが私の目標だ!


「お父様、お母様行ってまいります。」馬車に乗り込み2人に手を振って私は家を出た。


⟡.·*.··············································⟡.·*.


ティアナが家を出た後、わたしは旦那様と一緒に談話室に向かった。

「ハリソン、本当に良かったんですか?」

「メイシー、ティアナも良いと言っているし、少しでも静かに過ごしたいんだろう。」

2人で紅茶を飲みながら話す。
ティアは昔からニーナがうるさかったからかすごく静かな子に育ったと思う。

正直、ニーナは子爵家で、ノヴァ家は辺境伯家なので言うことを聞く必要は一切なかったと思うのだけれど、どこに行ってもついてくるのが煩わしかったのもあるのだろう。途中からティアは何も言わなくなっていた。

あとは話が通じないと言うのも大きな要因だろう。

ニーナと初めてお茶会で会ったとき、挨拶もせず「わたしはヒロインなのよ!」と言ってきた時は思わずわたしも呆気に取られてしまった。

そして可愛い娘に向かってやたらモブという少女。初めは意味も分からなかったのでニックネームなのかと思っていたけれど最近ではあまり良い言葉でないことを知った。お世辞抜きにして親のわたしから見てもティアは可愛い。
本当はもっと早く婚約者ができてもおかしくはなかったのに…お茶会やパーティーに行くとどこから嗅ぎつけたのか呼んでもないのにやってくるルルー家夫妻とニーナをみてティアはいつからかお茶会にもあまり顔を出さなくなった。

「ティアの学院生活が少しでも平和に過ごせるといいわね。」

「そうだね。こればかりは見守ることしかできないな…」

2人で話しながら娘の学院生活の無事を願った。


メイシー・ノヴァ
ハリソン・ノヴァ
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