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フィオーレ国
マーレ国に戻る前に…
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まさか、ルーカス様とのフィオーレ国で再開できるとは思っていなかった。
ルイ王太子殿下との婚約が決まった頃、ルーカス様がマーレ国からいなくなったと聞かされていたからだ。
そしてもう一つ、お母様がフィオーレ国の元王女であることにも吃驚だ。今まで誰もお母様のことを教えてくれなかったから…家にはお母様の絵姿などもなくお母様の顔すら覚えていない…
今思えば、お父様とお義母様は知っていて隠していたのだろう。
色々ルーカス様達から話を聞いた後、ルーカス様とリーンハルトお兄様は先にマーレ国へ向かうことになった。
「ルーカス様、リーンハルトお兄様。道中お気をつけて。」
「ありがとう。キャロルは少しゆっくりしてからおいで。」
リーンハルトお兄様に頭を撫でられ少し擽ったい気持ちになった。2人の乗った馬車を送り、私とクラウド様は一度屋敷の中に入った。
「さて、今度は少し私たちと話をしようか。」
フラージア公爵が真剣な面持ちで私たちに話しかける。その横でフラージア公爵夫人がこちらを見てニヤニヤしている。
「それで、あなた達はお互いのことどう思っているのかしら?」
クラウド様が突然の言葉に吃驚して紅茶を吹き出しそうになったいた。
「き、急に何を言うんです。母上。」
今まで、魔獣討伐も顔色すら変えずに行っていたクラウド様が珍しくも感じる。
「あら、いいじゃない。それにこの話はとても重要な話なのよ。ね、マルセル?」
フラージア公爵は頷き、話し始めた。
「そうだな…一つ一つ話していこうか。」
マーレ国は今後私をマーレ国に連れ戻そうとするのではないかと言うことだった。あんなに黒持ちだと忌避しているのに…
マーレ国では結界が重要であること。ここ数年、全ての結界石に魔力を注いでいたのは私だ。聖魔法を使えるものはいるがそこまで力が強い人はいないらしい。
そして結界が弱まれば自ずと魔獣たちが領地を襲うことになる。魔獣に対抗できる領地がどのくらいあるかと言われれば…
「おそらくべナール領くらいでしょうか。」
べナール領は元々辺境の地ということもあり隣国から攻められる可能性も高い。そのため兵士たちがかなり鍛えられている。
魔獣討伐も余裕だと言っていた。
それにべナール領を出る時にべナール領の結界石には少し魔力を注いできている。
クラウド様は公爵達が何を言いたいのかわかったようだ。私も何を言いたいのかわかる。
「今までルイ王太子殿下の代わりに執務をこなしてきたのは私ですし、聖女の力がないのは困る。ルーカス様を戻したということはルイ王太子殿下を廃嫡する…という可能性が高いということでしょうか?」
今日知った話だが、私にはフィオーレ国の王族の血も流れている…
と、言うことは
「ルーカス様と婚約…なんて事にも…」
「あるかもしれないわね。まぁルーカス様が断ると思うけど…」
扇子を口元に持っていきながら話す夫人はすごく絵になる。
「私はもうマーレ国に戻りたいとは思っていません。まだこの国にきて数日ですが、黒持ちの私にも優しく接してくれました。」
確かにこの国とマーレ国の考え方が違うとも言われているけど、それでも今まで避けられてきた分とても嬉しかったのだ。
「だからこそこの国の皆さんに還元したい。そのためにもだれでも通える治療院を開設したいんです。」
この国にはそこまで貧富の差は無いように感じたがそれでも色々困っている方はいるだろう。治療費はそれぞれ値段を変えるなどまだまだその辺は考えないといけないが、自分がやりたいことは崩したくない。
「じゃあ、丁度いいわね。あとはクラウド次第よ。頑張りなさい。私とマルセルからの話はここまで。2人で話し合いなさいな。」
扇子を閉じて2人は部屋を出ていった。
少しの間沈黙の時間が続く。
屋敷の前でクラウド様が言っていた話を少し思い出していた。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
マルセル視点。
この家では何だかんだシャルロッテの右に出るものはいない。恐らく1番のやり手だ。
「シャルロッテ。よかったのかい?」
「いいのよ。クラウドも子供じゃないし、ここは私たちが入っていい話ではないわ。大人同士2人で話をしてもらいましょう。」
シャルロッテはなんだか楽しそうだ。
でも、もしあの2人がくっつくとなると、黒持ち同士の結婚となる。
昔から黒持ち同士の結婚には精霊の祝福があると言われているが、本当のことはわからない。
御伽話のような話だから全てを信じるのは難しいが、そんな御伽話を間近で見れると思うと少しばかり楽しみだ。
「そうだね。2人で納得した答えを出してもらおう。私たちは2人でゆっくりお茶でもしようか。」
シャルロッテの肩を抱きしめ私達は庭先に出た。ふたりでガゼボに座りお茶を飲む。
少しでも2人が幸せになる道を選ぶように祈りながら…
ルイ王太子殿下との婚約が決まった頃、ルーカス様がマーレ国からいなくなったと聞かされていたからだ。
そしてもう一つ、お母様がフィオーレ国の元王女であることにも吃驚だ。今まで誰もお母様のことを教えてくれなかったから…家にはお母様の絵姿などもなくお母様の顔すら覚えていない…
今思えば、お父様とお義母様は知っていて隠していたのだろう。
色々ルーカス様達から話を聞いた後、ルーカス様とリーンハルトお兄様は先にマーレ国へ向かうことになった。
「ルーカス様、リーンハルトお兄様。道中お気をつけて。」
「ありがとう。キャロルは少しゆっくりしてからおいで。」
リーンハルトお兄様に頭を撫でられ少し擽ったい気持ちになった。2人の乗った馬車を送り、私とクラウド様は一度屋敷の中に入った。
「さて、今度は少し私たちと話をしようか。」
フラージア公爵が真剣な面持ちで私たちに話しかける。その横でフラージア公爵夫人がこちらを見てニヤニヤしている。
「それで、あなた達はお互いのことどう思っているのかしら?」
クラウド様が突然の言葉に吃驚して紅茶を吹き出しそうになったいた。
「き、急に何を言うんです。母上。」
今まで、魔獣討伐も顔色すら変えずに行っていたクラウド様が珍しくも感じる。
「あら、いいじゃない。それにこの話はとても重要な話なのよ。ね、マルセル?」
フラージア公爵は頷き、話し始めた。
「そうだな…一つ一つ話していこうか。」
マーレ国は今後私をマーレ国に連れ戻そうとするのではないかと言うことだった。あんなに黒持ちだと忌避しているのに…
マーレ国では結界が重要であること。ここ数年、全ての結界石に魔力を注いでいたのは私だ。聖魔法を使えるものはいるがそこまで力が強い人はいないらしい。
そして結界が弱まれば自ずと魔獣たちが領地を襲うことになる。魔獣に対抗できる領地がどのくらいあるかと言われれば…
「おそらくべナール領くらいでしょうか。」
べナール領は元々辺境の地ということもあり隣国から攻められる可能性も高い。そのため兵士たちがかなり鍛えられている。
魔獣討伐も余裕だと言っていた。
それにべナール領を出る時にべナール領の結界石には少し魔力を注いできている。
クラウド様は公爵達が何を言いたいのかわかったようだ。私も何を言いたいのかわかる。
「今までルイ王太子殿下の代わりに執務をこなしてきたのは私ですし、聖女の力がないのは困る。ルーカス様を戻したということはルイ王太子殿下を廃嫡する…という可能性が高いということでしょうか?」
今日知った話だが、私にはフィオーレ国の王族の血も流れている…
と、言うことは
「ルーカス様と婚約…なんて事にも…」
「あるかもしれないわね。まぁルーカス様が断ると思うけど…」
扇子を口元に持っていきながら話す夫人はすごく絵になる。
「私はもうマーレ国に戻りたいとは思っていません。まだこの国にきて数日ですが、黒持ちの私にも優しく接してくれました。」
確かにこの国とマーレ国の考え方が違うとも言われているけど、それでも今まで避けられてきた分とても嬉しかったのだ。
「だからこそこの国の皆さんに還元したい。そのためにもだれでも通える治療院を開設したいんです。」
この国にはそこまで貧富の差は無いように感じたがそれでも色々困っている方はいるだろう。治療費はそれぞれ値段を変えるなどまだまだその辺は考えないといけないが、自分がやりたいことは崩したくない。
「じゃあ、丁度いいわね。あとはクラウド次第よ。頑張りなさい。私とマルセルからの話はここまで。2人で話し合いなさいな。」
扇子を閉じて2人は部屋を出ていった。
少しの間沈黙の時間が続く。
屋敷の前でクラウド様が言っていた話を少し思い出していた。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
マルセル視点。
この家では何だかんだシャルロッテの右に出るものはいない。恐らく1番のやり手だ。
「シャルロッテ。よかったのかい?」
「いいのよ。クラウドも子供じゃないし、ここは私たちが入っていい話ではないわ。大人同士2人で話をしてもらいましょう。」
シャルロッテはなんだか楽しそうだ。
でも、もしあの2人がくっつくとなると、黒持ち同士の結婚となる。
昔から黒持ち同士の結婚には精霊の祝福があると言われているが、本当のことはわからない。
御伽話のような話だから全てを信じるのは難しいが、そんな御伽話を間近で見れると思うと少しばかり楽しみだ。
「そうだね。2人で納得した答えを出してもらおう。私たちは2人でゆっくりお茶でもしようか。」
シャルロッテの肩を抱きしめ私達は庭先に出た。ふたりでガゼボに座りお茶を飲む。
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