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フィオーレ国
ルーカス様との再会。
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クーさんから話を聞く前からなんとなく貴族であることはわかっていた。
所作や言葉の端々から出る言葉遣いが貴族そののだったからだ。必死に隠しているので私も見ないフリをしていた。
まさか、フィオーレ国の公爵家だとは思わなかったけれど。なんでそんなすごい家の人が私を助けてくれたのかとても気になった。
「なんで助けてくれたんですか?」
そう聞くと、はじめは知人に様子を見てきてほしいと言う言葉から始まったとのことだった。
そこで、私に興味を持ってくれたそうだ。
正直、マーレ国の貴族たちから嫌われていたのは知っている。
だからこそ、デビュタントで話しかけてくれる人を忘れることはできなかった。
髪の色が違ったからもしかしたら違うかもとも思っていたけど、髪の色を変えていたことを教えてくれた時に同じ人だと確信が持てたのは言うまでもない。
この国に来てからそこまで時間は経っていないが、マーレ国にいたときよりも伸び伸びと生活ができている。恐らく、黒持ちに対しての考え方が全く違うからだろう。隣国なのにこんなにも考え方が違うと思うとはじめは信じられなかったものだ。
それでも周りの人たちが向ける視線や、同じ黒髪で堂々と歩いているクーさんをみて、この国に来てよかったなと思った。
一人でだったらもしかしたらマーレ国を出ることができなかったかもしれないが、クーさんが一緒に来てくれたことで世界が大きく広がった気がする。
そんなクーさんに”好いている”と言ってもらえて嫌な気持ちになることはなかった。
クーさんに背中を押されてフラージア邸の中に入ると、たくさんの人たちが出迎えてくれた。
「おかえりなさいませ。」メイドさんたちがずらっと並び挨拶してくれるので私も挨拶をしながら進んでいく。
一番奥には恐らくクーさんのお父様と、お母様だろうか。二人で寄り添いながら迎えてくれた。
「父上、母上。ただいま戻りました。」
クーさんの言葉に合わせて私も挨拶をする。
「初めまして。キャロル・アウローラと申します。マーレ国ではキャロル・ロビンソンと名乗っておりましたが、ロビンソンの名は捨てました。よろしくお願いいたします。」
「おかえりなさい。二人とも。無事帰還できて何よりだ。かえって来て早々悪いが、二人にお会いしてほしい方々いる。クラウドは急いで支度して応接室に来なさい。キャロル嬢はゆっくりで構わないからね。部屋を準備させているからメイドについていくといい。」
そう言ってクーさんのお父様がメイドを連れて戻ってきたので、私はメイドと一緒に部屋へ向かった。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
クラウド視点
父上に言われて俺は急いで準備をしてから応接室に向かった。
応接室に向かうと、リーンハルトと、ルーカスがなぜかくつろいでいる。
「お前たち、なぜここにきているんだ!?」
王都からある程度距離があるというのに、いつからここに来ていたのだろうか…
「やぁ、クラウド。無事帰ってこれてよかったよ。キャロルは無事かい?」
肩を叩きながら、無言の圧力をかけてくるのはリーンハルトだ。
「キャロルなら今部屋で着替えてもらっている。それより何か用事が合ってここまで来たんだろう?」
リーンハルトも、ルーカスも手紙で済ませられることであれば領地を超えてまで来ないだろう。
それでなくても忙しい二人だ。
「あぁ。話すならキャロルが来てから話そう。キャロルに一番関係がある話だからな。それまでは今回の旅の話を教えてくれ!二人に進展はあったかな?」
身を乗り出しながら聞いてくるリーンハルトに、親戚のおじさんか何かなのかと思ってしまった。
俺はため息を吐きながら、今回あった話を一つ一つ伝えた。
魔蛇に会ったことや、なぜか途中から魔獣が全然出てこなかった話などだ。
勿論精霊について話してもよかったがこればかりはキャロルと二人の秘密にしておきたい。
「クラウドが楽しそうでよかったよ。クラウドがそれだけ楽しんでたんだ、キャロルも楽しかっただろう。」
リーンハルトとルーカスが後ろに視線を見やるので俺も一緒になって後ろを振り向いた。
「クラウド様、お待たせいたしました。そして、ルーカス様お久しぶりです。えっと、申し訳ございません。お名前を存じませんで...」
リーンハルトとは従兄妹と聞いていたが、キャロルは何も知らないようだった。
リーンハルトも苦虫をかんだ顔で「やはりな…」と小さな声で言い、そのあと笑顔でキャロルに挨拶をする。
「キャロル嬢。お初にお目にかかります、フィオーレ国王太子 リーンハルト・フィオーレと申します。」
キャロルも慌ててリーンハルトに向かって挨拶をした。二人を見ていて、どことなく目元や口元、鼻の形など顔のパーツが似ているなと思った。
挨拶もほどほどに、ルーカスが真剣な顔で話し始める。
「キャロル。よく聞いてほしい。君はここにいるリーンハルトと従兄妹同士なんだ。君は母親のことを覚えていないかもしれないが…今回の話と、君の母親の話をできればマーレ国で行おうと思っている。そして俺の母親についてもだ。こちらについて早々申し訳ないが、一緒にマーレ国へ行ってもらえないか。」
本当に急な話で、ゆっくりする時間もないのかとため息がでた。
キャロルもなぜ戻らなければならないのかと不思議そうな顔で見ている。
「できれば、マーレ国には戻りたくないのですが…」
折角マーレ国から出れたんだ。当たり前だろう…
「その気持ちは痛いほどわかる。なんて言ったって私も戻りたくないからね…でもお互い前に進むために、向き合ってみないか…?」
キャロルは少し考えてから、「わかりました」と一言重い口を開いた。
所作や言葉の端々から出る言葉遣いが貴族そののだったからだ。必死に隠しているので私も見ないフリをしていた。
まさか、フィオーレ国の公爵家だとは思わなかったけれど。なんでそんなすごい家の人が私を助けてくれたのかとても気になった。
「なんで助けてくれたんですか?」
そう聞くと、はじめは知人に様子を見てきてほしいと言う言葉から始まったとのことだった。
そこで、私に興味を持ってくれたそうだ。
正直、マーレ国の貴族たちから嫌われていたのは知っている。
だからこそ、デビュタントで話しかけてくれる人を忘れることはできなかった。
髪の色が違ったからもしかしたら違うかもとも思っていたけど、髪の色を変えていたことを教えてくれた時に同じ人だと確信が持てたのは言うまでもない。
この国に来てからそこまで時間は経っていないが、マーレ国にいたときよりも伸び伸びと生活ができている。恐らく、黒持ちに対しての考え方が全く違うからだろう。隣国なのにこんなにも考え方が違うと思うとはじめは信じられなかったものだ。
それでも周りの人たちが向ける視線や、同じ黒髪で堂々と歩いているクーさんをみて、この国に来てよかったなと思った。
一人でだったらもしかしたらマーレ国を出ることができなかったかもしれないが、クーさんが一緒に来てくれたことで世界が大きく広がった気がする。
そんなクーさんに”好いている”と言ってもらえて嫌な気持ちになることはなかった。
クーさんに背中を押されてフラージア邸の中に入ると、たくさんの人たちが出迎えてくれた。
「おかえりなさいませ。」メイドさんたちがずらっと並び挨拶してくれるので私も挨拶をしながら進んでいく。
一番奥には恐らくクーさんのお父様と、お母様だろうか。二人で寄り添いながら迎えてくれた。
「父上、母上。ただいま戻りました。」
クーさんの言葉に合わせて私も挨拶をする。
「初めまして。キャロル・アウローラと申します。マーレ国ではキャロル・ロビンソンと名乗っておりましたが、ロビンソンの名は捨てました。よろしくお願いいたします。」
「おかえりなさい。二人とも。無事帰還できて何よりだ。かえって来て早々悪いが、二人にお会いしてほしい方々いる。クラウドは急いで支度して応接室に来なさい。キャロル嬢はゆっくりで構わないからね。部屋を準備させているからメイドについていくといい。」
そう言ってクーさんのお父様がメイドを連れて戻ってきたので、私はメイドと一緒に部屋へ向かった。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
クラウド視点
父上に言われて俺は急いで準備をしてから応接室に向かった。
応接室に向かうと、リーンハルトと、ルーカスがなぜかくつろいでいる。
「お前たち、なぜここにきているんだ!?」
王都からある程度距離があるというのに、いつからここに来ていたのだろうか…
「やぁ、クラウド。無事帰ってこれてよかったよ。キャロルは無事かい?」
肩を叩きながら、無言の圧力をかけてくるのはリーンハルトだ。
「キャロルなら今部屋で着替えてもらっている。それより何か用事が合ってここまで来たんだろう?」
リーンハルトも、ルーカスも手紙で済ませられることであれば領地を超えてまで来ないだろう。
それでなくても忙しい二人だ。
「あぁ。話すならキャロルが来てから話そう。キャロルに一番関係がある話だからな。それまでは今回の旅の話を教えてくれ!二人に進展はあったかな?」
身を乗り出しながら聞いてくるリーンハルトに、親戚のおじさんか何かなのかと思ってしまった。
俺はため息を吐きながら、今回あった話を一つ一つ伝えた。
魔蛇に会ったことや、なぜか途中から魔獣が全然出てこなかった話などだ。
勿論精霊について話してもよかったがこればかりはキャロルと二人の秘密にしておきたい。
「クラウドが楽しそうでよかったよ。クラウドがそれだけ楽しんでたんだ、キャロルも楽しかっただろう。」
リーンハルトとルーカスが後ろに視線を見やるので俺も一緒になって後ろを振り向いた。
「クラウド様、お待たせいたしました。そして、ルーカス様お久しぶりです。えっと、申し訳ございません。お名前を存じませんで...」
リーンハルトとは従兄妹と聞いていたが、キャロルは何も知らないようだった。
リーンハルトも苦虫をかんだ顔で「やはりな…」と小さな声で言い、そのあと笑顔でキャロルに挨拶をする。
「キャロル嬢。お初にお目にかかります、フィオーレ国王太子 リーンハルト・フィオーレと申します。」
キャロルも慌ててリーンハルトに向かって挨拶をした。二人を見ていて、どことなく目元や口元、鼻の形など顔のパーツが似ているなと思った。
挨拶もほどほどに、ルーカスが真剣な顔で話し始める。
「キャロル。よく聞いてほしい。君はここにいるリーンハルトと従兄妹同士なんだ。君は母親のことを覚えていないかもしれないが…今回の話と、君の母親の話をできればマーレ国で行おうと思っている。そして俺の母親についてもだ。こちらについて早々申し訳ないが、一緒にマーレ国へ行ってもらえないか。」
本当に急な話で、ゆっくりする時間もないのかとため息がでた。
キャロルもなぜ戻らなければならないのかと不思議そうな顔で見ている。
「できれば、マーレ国には戻りたくないのですが…」
折角マーレ国から出れたんだ。当たり前だろう…
「その気持ちは痛いほどわかる。なんて言ったって私も戻りたくないからね…でもお互い前に進むために、向き合ってみないか…?」
キャロルは少し考えてから、「わかりました」と一言重い口を開いた。
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