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婚約破棄
婚約破棄
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「皆、今日は集まってくれてありがとう。そしてデビュタントを迎えられた皆、おめでとう。今日から晴れて成人の仲間入りだ。これからはこの国のためにも皆で力を合わせながら盛り上げていってほしい。今日は国王と、王妃が隣国への外交のため留守にしている。国王と王妃がいないことで不安に思うこともあるかもしれないがこの場を借りて挨拶とさせていただきたい。」
ルイ王太子殿下の言葉に皆が拍手を送る。私も皆に合わせて拍手を送った。拍手が鳴り終わり少し経った頃、演奏を流そうと交響楽団の人が楽器を演奏する姿勢に入った。
「そして、皆にももう一つ伝えたいことがある。キャロル・ロビンソン前へ」
話は終わったのだろうと少しゆっくりしていたら自分の名前を呼ばれて思わず吃驚してしまった。手に持っていたコップを近くのテーブルに置き私は前へ向かう。
正直、この黒いドレスと黒いベールが恥ずかしい。周りからは奇異の目で見られているし、私の格好をみてくすくす笑っている人も見かけた。でもそんな人たちに負けるわけにはいかないと思い、下を向くことなく前を向いて進んでいく。
「ルイ王太子殿下の命によりキャロル・ロビンソン参りました。」
深めにカーテシーをする。普通であれば面を上げよとか言ってくれるが、そういった言葉がないため、私はずっと下を向いたままだ。
「キャロルよ。そのままよく聞け!お前は今までベレニスをいじめてきたらしいな。ドレスを破いたり、顔ではないところを殴ったり、蹴ったりしてきたと聞いた。それだけではない、お茶会や交流会に参加できぬよう反省室に入れたりしたそうじゃないか。さらには執務などをベレニスに任せ自分は男と遊んでいたと聞いたぞ!」
周りからざわざわと声が聞こえる。
私はルイ王太子殿下が何を言っているかがわからなかった。寧ろすべてベレニスが私に対して行ってきたことだ。
それに13歳を過ぎたあたりから私はほとんど王妃教育、王太子の代わりの執務に、この国の結界維持のため領地を歩き回っていてほとんど家にいることがなかった。
「あの、おっしゃっている意味がよくわからないのですが…」
思わず反論してしまう。
「嘘を言うな!ベレニスが泣きながら話してくれたぞ!お前がそんな奴だとは思わなかった。この話は国王、王妃にも伝えせさせていただく。キャロル・ロビンソンとは本日をもって婚約破棄、そして私ルイ・マーレはベレニス・ロビンソンと婚約することをここで発表する。キャロルよ。これ以降は私の前に顔を出すことは許さん。衛兵よ連れていけ!」
衛兵が私に駆け寄ってくる。顔を上げることなくそのまま続けて私は話した。
「承知いたしました。国王にはきちんとお伝えいただけるとのこと。ありがとうございます。ですが、本当にいいんですね?」
きっと私がいなくなればこの国は結界が弱まることだろう。そうすれば魔物が多くこの国に入ってくることになる。今までは聖女の力で守られてきた国だ。それに恐らく、これだけのことを言われたら明日には侯爵家を追い出されるに違いない…
「ふん。お前などいなくてもどうとでもなるわ。いいから連れていけ!」
衛兵が私の腕をつかもうとしたが、私はそれを制し
「結構です。自分で歩けますので。今まで大変お世話になりました。」
と一言伝えてこの宮殿を出た。
色々あったけれど、なんだか気持ちはすごくすっきりしている。
私がいなくなることでどうなるか理解できたのはほんの一部の貴族のみだろう。それ以外は黒持ちがいなくなることと皆の前で婚約破棄された娘という好奇な目で見ていた。
正直、国王は私によくしてくださったし、国全体が悪いというわけではないが、屋敷に帰ればすぐに追い出される可能性が高いだろう。荷物をまとめて皆が返ってくる前に出てしまおうと思い私は急いで屋敷に戻った。いつもと変わらない夜空がいつもより澄んで見えたことは間違いない。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
???視点
精霊眼を持っている子が王太子の婚約者だが、婚約破棄されてその妹と婚約すると言い出した王太子を俺は驚愕してしまった。ルーカスが何か事件が起こりそうといっていたのはこういうことだったのだろうか。
「ディ。精霊たちに話を聞いてきたのだけど、いじめられていたのはあの子じゃなくお姉さんの方みたいよ。話していた内容も妹や母親がお姉さんに対して行ったことみたいね。それとあの黒いドレスと黒いベールも母親が勝手に選んで買ってきたものだったみたい…」
やっぱりか…こういう時は精霊に聞いた方が確実な答えが聞ける。精霊はわがままだったり、いたずらが好きだったりするが、嘘だけはつかないのだ。
「アオ。ありがとう、助かったよ。それだけのことをされて婚約破棄もされたんだ。恐らくあの王太子も今まで忌避していたんだろう。あの顔を見ていればわかる…とりあえずかえってルーカスに今日あったことを話そう」
俺は急いでフィオーレ国に戻った。
ルイ王太子殿下の言葉に皆が拍手を送る。私も皆に合わせて拍手を送った。拍手が鳴り終わり少し経った頃、演奏を流そうと交響楽団の人が楽器を演奏する姿勢に入った。
「そして、皆にももう一つ伝えたいことがある。キャロル・ロビンソン前へ」
話は終わったのだろうと少しゆっくりしていたら自分の名前を呼ばれて思わず吃驚してしまった。手に持っていたコップを近くのテーブルに置き私は前へ向かう。
正直、この黒いドレスと黒いベールが恥ずかしい。周りからは奇異の目で見られているし、私の格好をみてくすくす笑っている人も見かけた。でもそんな人たちに負けるわけにはいかないと思い、下を向くことなく前を向いて進んでいく。
「ルイ王太子殿下の命によりキャロル・ロビンソン参りました。」
深めにカーテシーをする。普通であれば面を上げよとか言ってくれるが、そういった言葉がないため、私はずっと下を向いたままだ。
「キャロルよ。そのままよく聞け!お前は今までベレニスをいじめてきたらしいな。ドレスを破いたり、顔ではないところを殴ったり、蹴ったりしてきたと聞いた。それだけではない、お茶会や交流会に参加できぬよう反省室に入れたりしたそうじゃないか。さらには執務などをベレニスに任せ自分は男と遊んでいたと聞いたぞ!」
周りからざわざわと声が聞こえる。
私はルイ王太子殿下が何を言っているかがわからなかった。寧ろすべてベレニスが私に対して行ってきたことだ。
それに13歳を過ぎたあたりから私はほとんど王妃教育、王太子の代わりの執務に、この国の結界維持のため領地を歩き回っていてほとんど家にいることがなかった。
「あの、おっしゃっている意味がよくわからないのですが…」
思わず反論してしまう。
「嘘を言うな!ベレニスが泣きながら話してくれたぞ!お前がそんな奴だとは思わなかった。この話は国王、王妃にも伝えせさせていただく。キャロル・ロビンソンとは本日をもって婚約破棄、そして私ルイ・マーレはベレニス・ロビンソンと婚約することをここで発表する。キャロルよ。これ以降は私の前に顔を出すことは許さん。衛兵よ連れていけ!」
衛兵が私に駆け寄ってくる。顔を上げることなくそのまま続けて私は話した。
「承知いたしました。国王にはきちんとお伝えいただけるとのこと。ありがとうございます。ですが、本当にいいんですね?」
きっと私がいなくなればこの国は結界が弱まることだろう。そうすれば魔物が多くこの国に入ってくることになる。今までは聖女の力で守られてきた国だ。それに恐らく、これだけのことを言われたら明日には侯爵家を追い出されるに違いない…
「ふん。お前などいなくてもどうとでもなるわ。いいから連れていけ!」
衛兵が私の腕をつかもうとしたが、私はそれを制し
「結構です。自分で歩けますので。今まで大変お世話になりました。」
と一言伝えてこの宮殿を出た。
色々あったけれど、なんだか気持ちはすごくすっきりしている。
私がいなくなることでどうなるか理解できたのはほんの一部の貴族のみだろう。それ以外は黒持ちがいなくなることと皆の前で婚約破棄された娘という好奇な目で見ていた。
正直、国王は私によくしてくださったし、国全体が悪いというわけではないが、屋敷に帰ればすぐに追い出される可能性が高いだろう。荷物をまとめて皆が返ってくる前に出てしまおうと思い私は急いで屋敷に戻った。いつもと変わらない夜空がいつもより澄んで見えたことは間違いない。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
???視点
精霊眼を持っている子が王太子の婚約者だが、婚約破棄されてその妹と婚約すると言い出した王太子を俺は驚愕してしまった。ルーカスが何か事件が起こりそうといっていたのはこういうことだったのだろうか。
「ディ。精霊たちに話を聞いてきたのだけど、いじめられていたのはあの子じゃなくお姉さんの方みたいよ。話していた内容も妹や母親がお姉さんに対して行ったことみたいね。それとあの黒いドレスと黒いベールも母親が勝手に選んで買ってきたものだったみたい…」
やっぱりか…こういう時は精霊に聞いた方が確実な答えが聞ける。精霊はわがままだったり、いたずらが好きだったりするが、嘘だけはつかないのだ。
「アオ。ありがとう、助かったよ。それだけのことをされて婚約破棄もされたんだ。恐らくあの王太子も今まで忌避していたんだろう。あの顔を見ていればわかる…とりあえずかえってルーカスに今日あったことを話そう」
俺は急いでフィオーレ国に戻った。
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