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1章.現代
25.残酷な描写あり
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初めてあの人の胸の中にいる。この人も温かったんだ。その後、背中に衝撃があった。ナイフが刺さった場所が焼けるように熱い。
「ああぁ…あなた何で…」
「木根さんが…悲しみます。あなたのことしか考えてなかったから…。」
上手く息が出来なくて苦しい。後ろで二人が慌てているけど僕はこの人に死んでほしくなかった。
「私なんて助ける意味なんてないのよ…死んでしまった方が隆司さんに会えるから…。」
「…自殺なんかさせませんよ。あなたは僕に対して罪を償ってませんから…。今までの僕に対する罪を償って下さい…。」
息が苦しい。
「優、優。」
晴一が抱き締めてくれる。
「救急車くるから。もう喋るな。」
晴一の匂いに包まれると安心する。
「なによ…なんで庇うのよ…あんたにずっとあんな酷いことしてたのよ。」
「僕にも…わかりません。僕も運命の番のフェロモン感じないからかも。…晴一からは、美味しい料理の匂いしかしない。これはフェロモンではないでしょ。」
「…何であなたまで?あなたは私の子供じゃないのに…?」
「どう言うことだ?智美!!」
「あんたは、優斗と友華の子供なのよ…一週間遅れで産まれた陽向を私入れ替えの。友華の病院に入っても誰にも気付かれなかった。私達双子ですもの。子供をすり替えたけど誰も気付かなかった。自分の子供だけでも愛して欲しかった。あんたなんて憎くて憎くてしょうがなかった。愛されて産まれてきたあんたが大嫌いだったのに…。」
そうかだからあんなに藤崎のことが気になっていたんだ。そうかだから僕が憎くて仕方なかったんだ。愛してほしくて唯一の番にも気付かなくて。この人はただ愛されたかっただけなんだ。
「優が、俺と友華の子供だったと言うのか?お前はどこまで…そんな…あぁ、優…優。俺達の子供…俺は一体今まで…」
藤崎さんが膝から崩れ落ちた。その場に呆然と座り込んでる。僕の親が友華さんだったから?そんなこと今さら言ったところで何が変わると言うのだろう。あなたは何もしてこなかった。自分達の子供だったからあなたは泣いているの?
「もう…遅いんだ…何もかも。あなたは僕をずっと見捨ててたんだ、見てみないふりをして…智美さんも…今さらもう何もいらない…」
藤崎さんが息を飲んだ。
「僕は…ずっと助けてって言った…晴一だけだった…手を差し出してくれたのは…でも、僕が運命の番だったから…。」
そうだ晴一も運命の番じゃなかったらきっと僕に気がつかなかった。
「ずっと不思議だった…何故僕はこんなに嫌われているんだろうって…あなたは…僕と一緒だったんだ…僕も愛されたかった…」
「優。俺は優を愛してる。」
優しい嘘。僕にとっては残酷な嘘。可哀想な僕を愛してくれた晴一が泣いている。
「泣かないで…」
「逝かないでくれ。俺の魂の片割れ…お願いだ…。」
もう、さっきから痛くないんだ。大丈夫だから。
「せいい…ち。きーすがね、ちぎれちゃったんだ…僕のたからもの…大切なおもいでなのに…。」
「あぁ、今度は杖を買ってやる。お前好きだろあの魔法を使うシーン。」
「ふふっ…まほう…つかえちゃうかも…っ。」
口から血が出てきた。
「ゆう…待ってくれ…まだ、まだ逝くな…。」
「せいいちは、運命のつがいじゃないひとと…幸せになっ…て。かわいそうなぼくなんかじゃなく…」
「無理だ。お前しか愛せない…。」
「ううん。きっと…いるから…情だけじゃなくこころから…あいせるひとと…ぐっ…。」
もうきっと助からない。晴一の顔を覚えておきたいのにもう暗くて何も見えない。
「違うんだ。俺は運命の番は関係なく…愛してるんだ。心から愛してる。」
僕はその言葉を大切に持っていくよ。
「ありがと…う。うそでも…うれしい…な。」
「ゆう!!ダメだ…」
「おむら…いす…もういちど………。」
食べたかったなぁ。
悲鳴のような声が小さく聞こえた。真っ暗で寂しいけど晴一の愛してるって言葉で僕の心が温かくなった。
僕は18歳でこの世を去った。
「ああぁ…あなた何で…」
「木根さんが…悲しみます。あなたのことしか考えてなかったから…。」
上手く息が出来なくて苦しい。後ろで二人が慌てているけど僕はこの人に死んでほしくなかった。
「私なんて助ける意味なんてないのよ…死んでしまった方が隆司さんに会えるから…。」
「…自殺なんかさせませんよ。あなたは僕に対して罪を償ってませんから…。今までの僕に対する罪を償って下さい…。」
息が苦しい。
「優、優。」
晴一が抱き締めてくれる。
「救急車くるから。もう喋るな。」
晴一の匂いに包まれると安心する。
「なによ…なんで庇うのよ…あんたにずっとあんな酷いことしてたのよ。」
「僕にも…わかりません。僕も運命の番のフェロモン感じないからかも。…晴一からは、美味しい料理の匂いしかしない。これはフェロモンではないでしょ。」
「…何であなたまで?あなたは私の子供じゃないのに…?」
「どう言うことだ?智美!!」
「あんたは、優斗と友華の子供なのよ…一週間遅れで産まれた陽向を私入れ替えの。友華の病院に入っても誰にも気付かれなかった。私達双子ですもの。子供をすり替えたけど誰も気付かなかった。自分の子供だけでも愛して欲しかった。あんたなんて憎くて憎くてしょうがなかった。愛されて産まれてきたあんたが大嫌いだったのに…。」
そうかだからあんなに藤崎のことが気になっていたんだ。そうかだから僕が憎くて仕方なかったんだ。愛してほしくて唯一の番にも気付かなくて。この人はただ愛されたかっただけなんだ。
「優が、俺と友華の子供だったと言うのか?お前はどこまで…そんな…あぁ、優…優。俺達の子供…俺は一体今まで…」
藤崎さんが膝から崩れ落ちた。その場に呆然と座り込んでる。僕の親が友華さんだったから?そんなこと今さら言ったところで何が変わると言うのだろう。あなたは何もしてこなかった。自分達の子供だったからあなたは泣いているの?
「もう…遅いんだ…何もかも。あなたは僕をずっと見捨ててたんだ、見てみないふりをして…智美さんも…今さらもう何もいらない…」
藤崎さんが息を飲んだ。
「僕は…ずっと助けてって言った…晴一だけだった…手を差し出してくれたのは…でも、僕が運命の番だったから…。」
そうだ晴一も運命の番じゃなかったらきっと僕に気がつかなかった。
「ずっと不思議だった…何故僕はこんなに嫌われているんだろうって…あなたは…僕と一緒だったんだ…僕も愛されたかった…」
「優。俺は優を愛してる。」
優しい嘘。僕にとっては残酷な嘘。可哀想な僕を愛してくれた晴一が泣いている。
「泣かないで…」
「逝かないでくれ。俺の魂の片割れ…お願いだ…。」
もう、さっきから痛くないんだ。大丈夫だから。
「せいい…ち。きーすがね、ちぎれちゃったんだ…僕のたからもの…大切なおもいでなのに…。」
「あぁ、今度は杖を買ってやる。お前好きだろあの魔法を使うシーン。」
「ふふっ…まほう…つかえちゃうかも…っ。」
口から血が出てきた。
「ゆう…待ってくれ…まだ、まだ逝くな…。」
「せいいちは、運命のつがいじゃないひとと…幸せになっ…て。かわいそうなぼくなんかじゃなく…」
「無理だ。お前しか愛せない…。」
「ううん。きっと…いるから…情だけじゃなくこころから…あいせるひとと…ぐっ…。」
もうきっと助からない。晴一の顔を覚えておきたいのにもう暗くて何も見えない。
「違うんだ。俺は運命の番は関係なく…愛してるんだ。心から愛してる。」
僕はその言葉を大切に持っていくよ。
「ありがと…う。うそでも…うれしい…な。」
「ゆう!!ダメだ…」
「おむら…いす…もういちど………。」
食べたかったなぁ。
悲鳴のような声が小さく聞こえた。真っ暗で寂しいけど晴一の愛してるって言葉で僕の心が温かくなった。
僕は18歳でこの世を去った。
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