幸せはあなたと

ヒイロ

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1章.現代

21.

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それからもヒートに付き合ってもらったり、話をしたりして過ごした。近くにいるようで遠いのが寂しく感じた。

木根さんに言われた運命の番についても話した。

「僕は、晴一に何も感じないよ。運命の番ではないと思う。ごめんなさい。」

「何で謝るんだ?別に俺は優が運命の番だろうが、そうでなかろうが、どっちだっていいんだ。優であればそれでいい。」

純粋に嬉しかった。僕自身を好きと言ってくれてる。

「運命の番って本能的な結び付きが強いって言うけど、最初から嫌な態度しか取ってなかったと思うけど。ごめんね。」

「初めて優に会った日、実はあのホテルに初勤務だったんだよ。」

「僕は、熊が出たと思ったんだ。」

今思い出しても可笑しくなる。熊?と言って眉間に皺が寄ってる。

「もともとホテルのレストランの勤務なんだよ俺は。カフェがあるって聞いてはいたんだ。でも、何だかあの日カフェに行かないといけない気がしたんだ。不思議な気分だった。朝から落ち着かなくてな。早く屋上に行きたくて仕方なかった。レストランには挨拶だけしてカフェに行ったんだ。」

有名なシェフって木根さんは言ってたけど正直、普通の店員だと思ってた。

「優に会って俺は、お前に会うためにこの為にここに来たんだと思ったんだ。」

僕には分からない感情だった。初めて会ったときも何とも思わなかった。迷惑な人としか。

「優が何とも思ってないことは分かったんだ。俺もまさか子供だとは思わなかったしな。でも、惹かれた。この子を失うときっと俺はどうにかなってしまうと思った。運命とは怖いと思ったよ。だけど俺は、優の父親が運命の番に惹かれ会うのを目の前で見た。俺はお前に自分を押し付けることはしたくなかった。運命の番だといっても。」

僕が藤崎さんの子供ということも気付いてたらしい。

「虐待を受けてるのは気付いてた。優の両親も昔から知ってたし、だから俺は大人としてお前を守ろうと思ったんだ。きっと他の子供が同じような目に合っていても同じことをしたと思う。俺は、運命とは関係なく優と接して俺はお前に惹かれたんだ。きっかけは運命だとしても。最初は葛藤したぞ。親子ほど歳が離れてるんだ。」

「でも晴一は、運命の番じゃなかったら僕には気付かなかったってことでしょ。じゃあ、どこも惹かれるような所がないじゃない。運命の番が僕なんかでごめんね。こんな面倒くさい子供じゃなくもっといい人がいると思うよ。晴一には。」

卑屈ではなく、本当にそう思った。僕が運命の番じゃなかったら、晴一に似合うもっと綺麗な人もいっぱい、いると思う。

「そうだな。いるかもしれない。」

自分で言っといて、晴一にそう言われると心が引き裂かれるように痛む。

「それでも、俺は優を選ぶよ。運命とかじゃないんだ。もう優と知り合って6年だぞ。普通に出会っても情がわくんだよ。優もそうだろ。俺に恋愛感情ではなく助けてくれる人、優しくしてくれる人だから俺に惹かれるんじゃないか?」

違うって言いたかった。優しくしてくれるから晴一が好きになっんじゃないって。好きじゃなかったらあんな風に晴一を求めたりしない。でも、晴一は僕を恋愛として見てくれてはいないことが分かった。可哀想な子供に対する親のような愛情なんだ。僕の心が粉々に砕け散った。当たり前だ、こんな子供誰だって可哀想だと思うだろう。一緒にいれば見捨てられなくなるのも分かる。好きの意味は色々ある。晴一は他の大人が誰も見向きもしなかったのに、優しくしてくれるし、助けてくれるじゃないか。そうだ、それでいいじゃないか。これ以上求めるのは贅沢だ。好きって愛してるって言ってくれている。情だけで僕のヒートにも付き合ってくれる。そういえば晴一はヒートの時、一回もイッてない。そういう意味で僕をみれないんだろう。そういうことなんだ。本当に僕のことは、可哀想な子供だと思ってるんだと思った。でも、こんないい人はいない。僕の好きと違っても…。

「優?」

何も言わない僕を心配してくれる。

「僕は…晴一が好きだよ。世界中の誰よりも。」

恋愛感情の好きと伝わらなくても、僕の初めての告白に晴一はとても喜んでくれた。今日は、僕の失恋した日になった。運命の番ってなんなんだろうか。僕は、運命の番とわからなくても晴一が好きになったんだよ。伝わらなくても、晴一の好きとは違っても僕は晴一を愛してる。
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