当たり前の幸せ

ヒイロ

文字の大きさ
上 下
23 / 33

21.煇

しおりを挟む
あれから火災のこともだがオリンピックが北海道で出来るのかと連日テレビは賑わっている。ホテルの周りにもたくさんの報道陣が詰めかけて現場に行こうものなら大行列の報道陣付いてくる。

国の方としては俺に全責任を押し付けて国はなにも悪くないという方向に持っていこうとしているのが見え見えだった。

とりあえず会場を見る限り屋根部分の修復作業で大丈夫そうなのだが消火活動で会場は水浸しで電気系統が全く使えない状態なのでどちらかというとそちらが大問題だった。しかもグッズ販売の建物も会場の横にあったのだがそこも火の元に近く焼けてしまっていた。

しかも頼んでいた志賀さんの所の作業員に負傷者が多くいるので圧倒的に人が足りない。今佐野が色々な所に話を持ち込んでいるがなかなかやってくれる所がない。まぁ、火災の原因の元と仕事はしたくないというのが本音だろう。
拓を迎えに行くためにはこんな所にいつまでもいるわけにはいかない。

一週間になっても拓は見つかっていない。毎日電話をしているが何も新しい情報はない。あの後一緒に拓と仕事をしていた矢野先輩に連絡を取った。何か拓のことについて知らないかと。

「様子がおかしかったな。とにかく僕なんかを気にしてくれるとか僕なんかが番で申し訳ないとか言っていたから話し合いをしろと言って別れたんだが。それにチョーカーもしていたな。」

「…そうですか。どこかに行くとか言ってませんでしたか?」

「いやそれっきりで。あっ、そう言えばその後電話がきてお願いしたいことがあるから会えないかと言われたんだ。拓の方から連絡すると言われたんだがそれから連絡は来ていない。」

「すみません。ありがとうございます。」

「俺も気になってたんだ。俺ももっと話を聞いてあげればよかったな。すまない。」

「いえ、俺が全面的に悪いので。すみませんありがとうございます。」

拓は何をお願いしたかったのだろう。

僕なんかが番で申し訳ないなんて言わせて。違うよ拓。俺なんかが番で申し訳ないんだよ。

その日朝から資材の発注や電気関係者に連絡を取り仕事の依頼をお願いするも断られてなかなか仕事が進まないことにイラついていた。

「どいつもこいつも火災があるまでは俺の所を使ってくれと言っていたのに。」

「まぁ、仕方ないよね。でもこのまま北海道で開催出来ないと困るのは国の方なのにね。」

「国としてはお前が頭を下げてお願いするのを待っているんだよ。そうすれば火災は設計ミスでお前のせいになりそれを助けた国は逆に称賛を受けるだろうな。」

「ばかばかしい。」

まぁ、解決策が見つからなければそうなるだろう。それでは拓を迎えにいけないし真幸さんに俺は切られるだろう。拓は一生手に入らない。

「もっとリストを上げてくれないか?直接会いに行ける所にはアポを取ってくれ。」

「「「了解。」」」

そんな時携帯が鳴る。真幸さんからだ。

「何かあったんですか!!」

「ああ、拓から連絡があった。今から駅に迎えに行く。」

「あーぁ、拓が拓が…ありがとうございます。」

「とりあえず会ってからまた連絡をする。」

「わかりました。何時でもいいので連絡お願いします!!」

拓が見つかった…拓が。

「見つかったのか。」

「あぁ。」

「お前迎えに行くか。」

「いやまだ行けない。俺はまだ駄目だ。迎えに行く資格がない。」

「まぁ、そうだな」

「仕事早く終わらせて拓くんを迎えにいけるようにしよう。仕事仕事。」

それから拓と合流したと連絡があった。

拓はシェルターに入ってたらしい。そのまま死ぬまで1人でいることを決意させたかと思うと胸が張り裂けそうだった。

「こちらもまだ落ち着かなくて拓にこれ以上つらい思いをしてほしくないんです。家の方にも報道陣がいると思います。実家の方で拓をお願い出来ないでしょうか。」

「まぁ、そうだな。拓はこっちでみるから煇くんは仕事を優先してくれ。春人が離さないと思うし。なるべく早く頼むよ。春人が拓にべったりなんだ。」

「はい。ありがとうございます。よろしくお願いいたします。」

あれから何とか一緒に仕事をしてくれる業者が見つかり明日から取りかかれそうだ。

もし最悪の結果になったとしても俺は受け入れるしかない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

既成事実さえあれば大丈夫

ふじの
BL
名家出身のオメガであるサミュエルは、第三王子に婚約を一方的に破棄された。名家とはいえ貧乏な家のためにも新しく誰かと番う必要がある。だがサミュエルは行き遅れなので、もはや選んでいる立場ではない。そうだ、既成事実さえあればどこかに嫁げるだろう。そう考えたサミュエルは、ヒート誘発薬を持って夜会に乗り込んだ。そこで出会った美丈夫のアルファ、ハリムと意気投合したが───。

僕は貴方の為に消えたいと願いながらも…

夢見 歩
BL
僕は運命の番に気付いて貰えない。 僕は運命の番と夫婦なのに… 手を伸ばせば届く距離にいるのに… 僕の運命の番は 僕ではないオメガと不倫を続けている。 僕はこれ以上君に嫌われたくなくて 不倫に対して理解のある妻を演じる。 僕の心は随分と前から血を流し続けて そろそろ限界を迎えそうだ。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 傾向|嫌われからの愛され(溺愛予定) ━━━━━━━━━━━━━━━ 夢見 歩の初のBL執筆作品です。 不憫受けをどうしても書きたくなって 衝動的に書き始めました。 途中で修正などが入る可能性が高いので 完璧な物語を読まれたい方には あまりオススメできません。

【完結】あなたの妻(Ω)辞めます!

MEIKO
BL
本編完結しています。Ωの涼はある日、政略結婚の相手のα夫の直哉の浮気現場を目撃してしまう。形だけの夫婦だったけれど自分だけは愛していた┉。夫の裏切りに傷付き、そして別れを決意する。あなたの妻(Ω)辞めます!  すれ違い夫婦&オメガバース恋愛。 ※少々独自のオメガバース設定あります (R18対象話には*マーク付けますのでお気を付け下さい。)

【R18/短編】僕はただの公爵令息様の取り巻きAなので!

ナイトウ
BL
傾向: ふんわり弟フェチお坊ちゃま攻め、鈍感弟受け、溺愛、義兄弟、身分差、乳首責め、前立腺責め、結腸責め、騎乗位

【完結】瑕疵あり出戻りΩな僕に求婚なんて……本気ですか?

兎卜 羊
BL
「ウォレン、君の妹が身籠ったんだ。やっと私に子供が出来たんだよ。これほど喜ばしい事は無いだろう?」 「なにを、言って……意味が分からない」 「だから、君の妹ジョセリンと僕の間に子供が出来たんだよ。なかなか子供が出来なかった僕に待望の子供だよ? 君だって嬉しいだろう?」 僕の妹との間に子供? それって、不倫であり不義の子では無いのか?———夫に裏切られ、家族からも疎まれた主人公ウォレンが兄の友人から求婚され…… ◆◆ 長年の片思いα×流されΩ ◆◆ なんちゃって中世のオメガバースものです。独自設定のご都合設定ありですのでご注意下さい。R18には※印 【第11回BL小説大賞】奨励賞を頂きました。応援して下さった方、ありがとうございました。

深窓オメガのお見合い結婚

椎名サクラ
BL
深窓の令息を地でいくオメガの碧(あおい)は見合い相手のアルファの一輝(かずき)に一目惚れをした。断られると思っていたのになぜか正式に交際の申し込みをされ戸惑いながらデートを重ねていく。紆余曲折のあるお付き合いをしながら結婚した二人だが、碧があまりにも性的なことに無知すぎて、一輝を翻弄していきながら心も身体も結ばれていく話。 かつて遊び人だったアルファと純粋培養無自覚小悪魔オメガのお見合い→新婚話となっております。 ※Rシーンには☆がついています ※オメガバース設定ですが色々と作者都合で改ざんされております。 ※ラブラブ甘々予定です。 ※ムーンライトノベルズと同時掲載となっております。

愛しいアルファが擬態をやめたら。

フジミサヤ
BL
「樹を傷物にしたの俺だし。責任とらせて」 「その言い方ヤメロ」  黒川樹の幼馴染みである九條蓮は、『運命の番』に憧れるハイスペック完璧人間のアルファである。蓮の元恋人が原因の事故で、樹は蓮に項を噛まれてしまう。樹は「番になっていないので責任をとる必要はない」と告げるが蓮は納得しない。しかし、樹は蓮に伝えていない秘密を抱えていた。 ◇同級生の幼馴染みがお互いの本性曝すまでの話です。小学生→中学生→高校生→大学生までサクサク進みます。ハッピーエンド。 ◇オメガバースの設定を一応借りてますが、あまりそれっぽい描写はありません。ムーンライトノベルズにも投稿しています。

βのくせに巣作りしてみたら

ぽぽ
BL
 αの婚約者がいるβの瑛太。Ωでないことを気にしているが、婚約者は毎日愛を囁いてくれるため満足していた。  しかし、ある日ふと婚約者が「巣作りって可愛いよね」と話しているのを聞き、巣作りをしてみた。けれども結局恥ずかしくなり婚約者が来る前に片付けようとしたが、婚約者が帰ってきてしまった。   ━━━━━━━━ 執着美形α×平凡β 表紙はくま様からお借りしました。 https://www.pixiv.net/artworks/86767276 R18には☆を付けてます。

処理中です...