当たり前の幸せ

ヒイロ

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6.煇

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三年生になり拓はオメガという性を受け入れた感じがした。何故なら拓がまた笑ってくれるようになったから。

三年生でクラスが分かれてしまったが昼休みなどは弁当持参で拓のクラスに向かう。帰りもできる限り一緒に帰った。部活を引退すれば毎日一緒に帰れる。今から楽しみだった。

「拓今度の休み一緒に出掛けない?あの映画見たいって言ってたよね?」

シリーズ物の三部作が先週から始まっていた。1.2とも拓と見に行っていた。

「行く~絶対行く。でも、17時には帰らないといけないんだけどいい?」

「17時ね。映画の時間早くしてランチゆっくり食べながら感想会やろうか。」


うんうん。とはしゃいでる拓を見て可愛すぎだろと天を仰ぐ。拓が17時に帰る理由は知っている。誕生日だからだ。家でお祝いをするのだろう。9月27日今年は日曜日でラッキーだった。1日一緒にいれるから。今年やっとプレゼントが渡せる。一年の時から準備はしていた。ただ、男同士で友達なのにプレゼントを渡すと拓はまたオメガだからと変な風に受けとるかもしれないと思っていた。だから渡せずに今年の分を入れて3つになっている。


そして27日に告白しようと決めていた。

日曜日朝から緊張していた。こんなに緊張することは今まで経験したことがなかった。

待ち合わせ場所に一時間前には着いた。早すぎるとは思ったけど家にいても落ち着かない。

「煇?」

すでに拓がいた。

「えっ?9時待ち合わせだったよね?あれ??俺間違えた?」

「違う違う。僕楽しみすぎて早く起きちゃって家にいても落ち着かないし。」

早く来ちゃったら煇が来るし。びっくりしたよと笑ってる。嬉しい誤算だ。一時間も前から拓に会えるなんて。映画まで時間があるので二人でファーストフード店に入って今から行く映画の話で盛り上がった。

「二部の終わりがあれだったでしょ。絶対あの魔法騎士があやしいと思うんだ。」

「いや俺は途中から転入してきた生徒のマインがあやしいね。あの魔法騎士の子供だと思ってる。」

本当に拓といると幸せの気持ちになれる。このまま時が止まればいいのに。

映画が終わり興奮したままファミリーレストランでランチにした。ドリンクバーがあるから長居が出来るし安上がりだ。

「「まさかねー。」」

二人の予想を大きく裏切りまったく違う生徒が裏でみんなを操ってた。一部で死んだと思われていた人物が魔法で顔を変え成り済ましていたなんて。お互いに話が尽きない。
気付くと15時が回っていた。すでに3時間ほど居座っている。

「そろそろ出る?」

俺が言うとそうだね~って拓がドリンクを飲み干す。

「声ガラガラ~しゃべりすぎたー。」

笑いながら並んで歩く。拓に告白。俺の家は反対方向なのできっと拓はここでいいよって言うだろう。告白の場所は決めている。

「拓もう少し歩かない?」

いいよ~。歩きながらさりげなく告白が上手くいくと言われてる公園の方へ誘導する。公園のトイレの奥の三本の木が並んでて真ん中に大きな石が…あった。
女子達が話してるのを聞いて告白の場所はここに決めていた。

「ここの公園見かけるけど入ったの初めて。何か静かでいい場所だね。」

トイレで三本の木が公園入り口から見えなくなっている。

「拓ここに座って。」

石がいい感じで座れるようになっている。拓に座ってもらうと緊張からか喉が乾く。何度か深呼吸を繰り返し目線を合わす為に膝をつく。

「汚れるよ。」

石を譲ろうとする拓の肩を押さえ

「誕生日おめでとう。」

鞄からずっと渡したかった3年分のプレゼントを手に乗せる。えっ?って顔をしている。
一年の時のプレゼントはペン。6色選べて入れ替えが出来る当時流行っていたやつだ。その時拓だったら何色選ぶ?って聞いてその色が入れてある。
二年は今日行った映画の二部の時に映画館で売っていたキーホルダー。主人公の魔法騎士が召還する使い魔の白猫モーリス。主人公のキーホルダーが売り切れていて買えなかったから隣町の大きな映画館まで買いに行った。
三年の今年はマフラー。これから寒くなるし拓の項は誰にも見せたくないから。

「何で3つも?僕の誕生日知ってたの?」

知ってるよ。ずっと知ってた。

深く深呼吸して

「拓。好きです。付き合ってください。」

えっ?ってびっくりしている。

「俺は入学式の日に一目惚れしました。ずっと好きでした。」

プレゼントを握りしめている手が意味なく開いたり閉じたりしている。

「俺は入野拓が好きです。入野拓が好きなんです。」

「オメガの拓も大好きです。」

拓が泣き出してしまった。きっと受け入れられないんだろう。フラれたと思った。でも諦めるきはない。

「ごめんね拓。フラれても諦められないんだ。好きでいさせてほしい。好きになってもらえるよう努力するから拓の近くにいることを許してほしい。」

拓が首を横に振る。

「ぼくっオメガだよ。うっ…っ男なのに子供も産めてフェロモンで煇を誘惑しちゃったんだよ…っ。」

「違うよ。聞いてた?入学式の日に一目惚れしたって。」

「僕は、オメガっ…だしぃ…。」

「聞いてオメガの拓がいいんだよ。」

「本当に?気持ち悪くないっ…?」

「最高。」

「拓オメガに産まれてきてくれてありがとう。」

ひくってしゃっくりまで出始めた。背中を擦ってみると抱き付いてきて俺の胸で声をあげて泣き出した。両手を背中に回して抱き締める。拓が泣き止むまで背中をポンポンと叩いたり擦ったりしていた。長い間膝立ちだったのでさすがに痺れてきた。それでもいい格好をしたかったので我慢した。それもさすがに限界になり肩に手を掛けて拓?って顔を覗き込んだら

「寝てる…。」

うっ…。可愛すぎ。キス…したい。さすがにヤバいよな。あらぬ所が反応しそうで深呼吸を繰り返す。今日早起きしてたみたいだし泣いて体力使ったんだよなきっと。俺の告白は保留かな。

とりあえず顔を拭いてプレゼントをとりあえず自分の鞄に入れるが起きる気配がない。17時までには家に帰さないときっと家族が心配するだろうし。

「拓?たーく。」

むずかるように顔を俺の鎖骨辺りに押し付けてくる。髪が当たってくすぐったい。また、ヤバくなってきた。このままでは変態だ。

「拓起きて。帰るよ」

すると俺の脇の下に手を入れて抱き付いてきた。もぞもぞと動いていたがいいポジションに収まったのか寝息を立てて安心したように寝ている。長い睫毛が目に入る。こんなに近くで拓を見ることは初めてだ。拓は両親に似てなくて平凡な顔でとよくいうけどお父さん似の長い睫毛にお母さん似の目と口で鼻はお父さんにそっくりだ。全体的に幼い印象になっていて可愛いのに平凡と言うが拓は周りにどんな風に見られているか分かってない。
どんだけ俺が苦労しているか分かってない。

「た~く。」

知らないぞ俺は何度も起こしたからな。

両手で拓の顔を持ち上げるとキスをした。俺のファーストキス。何人か付き合ったがキスもしたことはなかった。ふぁっと香りがした。拓のフェロモンだ。甘く爽やかな香りが俺を包み込む。

マジで立つ。そろそろ本気でヤバい。

拓を抱き抱え立ち上がる。無意識に拓が足を絡ませてくる。足早に公園を抜けてタクシーに乗り込んで拓の家に向かった。
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