1 / 22
第一章 発明家と選ばれたパイロット
第1話 怪獣の現れた世界
しおりを挟む
平和の国、日本。
長く戦争が起きることもなく人々はそれぞれに安心した暮らしを送っていたが、数年前から現れてそんな平穏な日常を脅かす存在があった。
「グギャアァアアオオオオウ!!」
大きな咆哮を上げ、奴らは自分勝手に大地を踏み荒らす。それは巨大なモンスターの姿をしていた。
そう、怪獣が出現したのだ。この現代の日本に。
人々は最初のうちこそびっくり仰天してこの世の終わりか天変地異が来たかと怯え、恐怖に我を失う人もいたぐらいだったが、人間とは何にでも慣れるものなのだろうか。
怪獣の出現が幾度となく繰り返されているうちに、人々は段々と落ち着いて今の状況と向かい合えるようになっていった。
現れる災厄に対し立ち向かう決意をし、怪獣と戦うための様々な武器や技術が開発された。
人々の叡智と努力はやがて困難を克服していった。過去もずっとそうしてきたように。
時が経つとともに怪獣のもたらす被害はずっと小さく抑えられるようになっていった。
現在では怪獣の出現は火事や地震や台風がごく普通の日常に起こる自然災害だと認識されているように、これもまた日常に現れる災害だと認識されるようになった。
人々はその怪獣達を災害を撒き散らす者という意味を込めて、災獣ディザスターと呼ぶようになった。
奴らがどこに出現するのか。研究が進んである程度は予測できるようになった。降水確率や台風の進路が予想できるように。
出現しては国土に被害を撒き散らしていく災獣に対し、政府は国防軍を結成した。
優秀な技術者が集められ、戦うための二足の巨大人型兵器が開発された。またそれに搭乗して戦うパイロットの育成も行われていった。
彼らの活躍によって災獣ディザスターはもう人類を脅かす脅威ではなく、処理しないといけない自然現象、災害となった。
人々は自然の敵を克服していった。国防軍の巨大ロボット達は現れる災獣達を次々と順調に退けていき、人々の暮らしには元の安心が戻ってきた。
だが、今のままでは足りないと直感する者がいた。災獣はあくまでも退けられているだけで完全に根絶するには至っていないのだから。
もう還暦を越えた年でありながら、空崎博士は天才的な頭脳を持っていると彼を知る者は評している。だが、それは変人と紙一重だとも言われている。
天才である彼は国防軍から新兵器の開発に関わってくれとスカウトを受けていたがそれを全部断って、町の自分の工場で自分の趣味で巨大ロボットを造っていた。
大勢で協力して作業に当たるよりも、自分の力だけで何者にも邪魔されることなく、自分の思う物を全力で造りたい。そう願う人だった。
隼人はそんな祖父の背中をずっと見て育ってきた。そして、いつか祖父の造ったそのロボットに乗って自分が活躍するのだと信じて、彼は小学生の頃からパイロットとして戦えるよう体を鍛えてきた。
隼人が高校を卒業してからも就職せずにトレーニングに励んできたのも、全ては祖父の開発している凄いロボットに乗るためだった。
国防軍からスカウトが来て、みんなが凄いと絶賛するだけあって、祖父の技術力の高さは隼人も実感できることだった。
代わり映えのしない日が続いたある時のことだった。
「ロボットが完成したぞ!」
祖父がそう地下の秘密工場で歓喜の声を上げたのは。近くでトレーニングをしていた隼人はその手を止めて、憧れの少年の眼差しをして、いよいよ完成した地下の工場の広間に立つその巨大ロボットを見上げた。
まるでアニメで見るような無骨だがかっこいいヒーロー型のロボットだ。地味で飾り気のない国防軍の量産ロボットとは格が違う。その凄さが突出した技術者ではない素人に過ぎない隼人の目からでも見ただけで分かった。
まさに威風堂々、問答無用。そのロボットはまさにヒーローが乗るのにふさわしい主人公の風格があった。
高校を卒業したニートでありながら隼人の心は少年のようにわくわくしてしまった。この日の為に鍛えてきた拳を熱く握って彼は言った。
「爺さん、ついにロボットが完成したんだな」
「ああ、ついに完成したわい。これで国防軍の奴らにわしの実力を見せつけてやれるぞ」
「じゃあ、さっそく乗り方を教えてくれよ。俺の鍛え上げてきたテクニックと実力で災獣の一匹や二匹すぐに退治してきてやるぜ!」
「あ? 何でお前を乗せねばならんのだ?」
「え? 俺が乗るんじゃないのか?」
あまりにも意外な言葉に隼人はぽかんとしてしまう。ここにこんなにパイロットとして優れた頭脳と肉体と精神(こころ)を持ったロボットに乗るのにふさわしい優秀な人間がいるというのに、他に誰を乗せるというのだろう。隼人には祖父の考えが読めなかった。
隼人は驚きながら、思いつく可能性を考えながら訊ねた。
「まさか爺さんが乗るのか?」
そんな孫の素朴な疑問に、博士は首を横に振って答えた。
「馬鹿を言うな。そんなわけなかろう。わしはもう年じゃし、自分が乗ったら活躍が外から見れんじゃないか。優れたパイロットを見つけねばなるまい」
「それならここにいるだろう?」
隼人は自分こそがふさわしいと歯を爽やかに煌めかせ、鍛えた腕で自分の胸元に親指を立てて見せるが、その自己アピールに博士は対して興味無さそうだった。彼は完成したロボットを見上げた。
「それはロボットのコンピューターが選ぶことじゃ。わしは最高のロボットを造った。後は最高のロボットが最高の乗り手を選ぶ」
そう言って、博士はリモコンのスイッチを押した。
コンピューターが演算を開始する。そこには全世界の人間のデータが集まっているようだった。モニター画面に様々な人間の写真とデータが表示され、次々と目まぐるしい速さで切り替わっていく。
「さすがは爺さんだ。やる事に抜かりが無いな」
隼人は感心しながら、次々と切り替わっていくモニター画面の表示を見つめ続けた。
選ばれるのはプロの軍人か優秀なスポーツ選手だろうか。世界のトップアスリート達が相手だとしたらさすがに分が悪いと隼人は思ったが、それでも自分が選ばれる可能性を信じて結論が出るのを待った。
「どんな凄い男が相手でも俺は負けないぜ……」
「おっ」
祖父が短く声を漏らす。
コンピューターの計算が終わったようだ。モニター画面が一人の写真とデータを映し出して止まった。
隼人は祖父と一緒にじっとその画面を見た。
この人物がロボットが自分の乗り手に最も適していると判断した最高の人間なのだろうか。
隼人には信じられない思いだった。だってそうだろう。
そこに表示されていたのはプロの軍人でも優秀なスポーツ選手でも何でも無い、戦いともロボットとも無縁そうな平和そうな人物だったのだから。
隼人は拳を震わせて苦そうに言った。
「おい、爺さん。本当にこいつがロボットのパイロットにふさわしいのか……?」
「そうだとも。この者こそがロボットが自ら選んだ最高のパイロットなのじゃ!」
祖父は堂々と宣言する。自分の作った最高のロボットのコンピューターが出した結論に何の疑問も持っていないようだった。
さすがは変人。思考が常人と違う。隼人は今頃になって人々が言う祖父の人間性を実感してしまうが、今はそんなことに気を取られている場合ではない。
長い時間をロボットのパイロットになるためのトレーニングに費やしてきたのだ。学校を卒業しても就職せずに頑張ってきたのはこんな受け入れがたい結論を受け入れるためではない。
こんなトレーニングもしたことが無さそうな平和で呑気そうな奴にパイロットの座を渡すためでは断じてないのだ。
隼人は唾を飛ばして祖父に詰め寄った。
「正気なのか爺。だって、こいつって……こいつってよう……」
彼はモニター画面を指さして叫んだ。
「ただのガキじゃねえかあああ!!」
隼人が叫んだ通り、そこに映されていたのはただの子供だった。それも熱血でスポーツが得意そうな少年ですらなく、呑気そうにサンドイッチを頬張っている普通の小学生の女の子だった。
祖父はどこまでも冷静でマイペースだった。自分の最高のロボットが出した結論に何の疑問も持っていなかった。
「スパイメカがちょうど食事の時を撮ったようだな。ブレも無くよく撮れとるわい。だが、気づかれているな。さすがはパイロット適正のある少女じゃ」
祖父がどうでもいいことをコメントする。博士にとっては自分のメカの働きの方が興味があるのだろう。選ばれたパイロットがこんな少女ということよりも。
隼人は信じられない思いだったが、祖父の態度はしっかりして落ち着いていた。
博士はもうすっかり終わった気楽な足取りで傍にあったチェアに座ってコーヒーを啜った。
「結論は出た。後は彼女を連れてくるだけじゃな。それは隼人、お前に任せよう」
「爺さんが迎えに行かないのか?」
「わしは今まで働いておったのじゃぞ。お前はずっと遊んでおっただろう」
「遊んでねえよ!!」
パイロットになるためのトレーニングに励んできたのを遊びと言われるのは心外だった。だが、祖父には何を言っても無駄だ。そう悟る。
こうなったら現実を見せるしかない。隼人はいつまでもウジウジとはせずに前を向いて決めた。
「いいぜ、俺がこのガキを連れてきてやる。そして、爺さんとロボットに教えてやるぜ! こいつをパイロットに選んだ計算は間違いだったとな!」
指を突きつけて宣言する。
祖父はどこ吹く風だった。ロボットは答えはしない。
隼人は指を下ろして踵を返す。その瞳は強い意思に燃えていた。
この少女がパイロットとして無能だと分かれば、この結果は間違いだと博士とロボットも認めざるを得ないだろう。
自らの過ちを悔やんで態度を改めてあやまるなら、その時にしてもらえばいい。
ならば早くこいつを連れてきて、証明してやるのが得策だ。
隼人はそう決意して、鼻息を荒くして足音を立てながら工場を後にした。
長く戦争が起きることもなく人々はそれぞれに安心した暮らしを送っていたが、数年前から現れてそんな平穏な日常を脅かす存在があった。
「グギャアァアアオオオオウ!!」
大きな咆哮を上げ、奴らは自分勝手に大地を踏み荒らす。それは巨大なモンスターの姿をしていた。
そう、怪獣が出現したのだ。この現代の日本に。
人々は最初のうちこそびっくり仰天してこの世の終わりか天変地異が来たかと怯え、恐怖に我を失う人もいたぐらいだったが、人間とは何にでも慣れるものなのだろうか。
怪獣の出現が幾度となく繰り返されているうちに、人々は段々と落ち着いて今の状況と向かい合えるようになっていった。
現れる災厄に対し立ち向かう決意をし、怪獣と戦うための様々な武器や技術が開発された。
人々の叡智と努力はやがて困難を克服していった。過去もずっとそうしてきたように。
時が経つとともに怪獣のもたらす被害はずっと小さく抑えられるようになっていった。
現在では怪獣の出現は火事や地震や台風がごく普通の日常に起こる自然災害だと認識されているように、これもまた日常に現れる災害だと認識されるようになった。
人々はその怪獣達を災害を撒き散らす者という意味を込めて、災獣ディザスターと呼ぶようになった。
奴らがどこに出現するのか。研究が進んである程度は予測できるようになった。降水確率や台風の進路が予想できるように。
出現しては国土に被害を撒き散らしていく災獣に対し、政府は国防軍を結成した。
優秀な技術者が集められ、戦うための二足の巨大人型兵器が開発された。またそれに搭乗して戦うパイロットの育成も行われていった。
彼らの活躍によって災獣ディザスターはもう人類を脅かす脅威ではなく、処理しないといけない自然現象、災害となった。
人々は自然の敵を克服していった。国防軍の巨大ロボット達は現れる災獣達を次々と順調に退けていき、人々の暮らしには元の安心が戻ってきた。
だが、今のままでは足りないと直感する者がいた。災獣はあくまでも退けられているだけで完全に根絶するには至っていないのだから。
もう還暦を越えた年でありながら、空崎博士は天才的な頭脳を持っていると彼を知る者は評している。だが、それは変人と紙一重だとも言われている。
天才である彼は国防軍から新兵器の開発に関わってくれとスカウトを受けていたがそれを全部断って、町の自分の工場で自分の趣味で巨大ロボットを造っていた。
大勢で協力して作業に当たるよりも、自分の力だけで何者にも邪魔されることなく、自分の思う物を全力で造りたい。そう願う人だった。
隼人はそんな祖父の背中をずっと見て育ってきた。そして、いつか祖父の造ったそのロボットに乗って自分が活躍するのだと信じて、彼は小学生の頃からパイロットとして戦えるよう体を鍛えてきた。
隼人が高校を卒業してからも就職せずにトレーニングに励んできたのも、全ては祖父の開発している凄いロボットに乗るためだった。
国防軍からスカウトが来て、みんなが凄いと絶賛するだけあって、祖父の技術力の高さは隼人も実感できることだった。
代わり映えのしない日が続いたある時のことだった。
「ロボットが完成したぞ!」
祖父がそう地下の秘密工場で歓喜の声を上げたのは。近くでトレーニングをしていた隼人はその手を止めて、憧れの少年の眼差しをして、いよいよ完成した地下の工場の広間に立つその巨大ロボットを見上げた。
まるでアニメで見るような無骨だがかっこいいヒーロー型のロボットだ。地味で飾り気のない国防軍の量産ロボットとは格が違う。その凄さが突出した技術者ではない素人に過ぎない隼人の目からでも見ただけで分かった。
まさに威風堂々、問答無用。そのロボットはまさにヒーローが乗るのにふさわしい主人公の風格があった。
高校を卒業したニートでありながら隼人の心は少年のようにわくわくしてしまった。この日の為に鍛えてきた拳を熱く握って彼は言った。
「爺さん、ついにロボットが完成したんだな」
「ああ、ついに完成したわい。これで国防軍の奴らにわしの実力を見せつけてやれるぞ」
「じゃあ、さっそく乗り方を教えてくれよ。俺の鍛え上げてきたテクニックと実力で災獣の一匹や二匹すぐに退治してきてやるぜ!」
「あ? 何でお前を乗せねばならんのだ?」
「え? 俺が乗るんじゃないのか?」
あまりにも意外な言葉に隼人はぽかんとしてしまう。ここにこんなにパイロットとして優れた頭脳と肉体と精神(こころ)を持ったロボットに乗るのにふさわしい優秀な人間がいるというのに、他に誰を乗せるというのだろう。隼人には祖父の考えが読めなかった。
隼人は驚きながら、思いつく可能性を考えながら訊ねた。
「まさか爺さんが乗るのか?」
そんな孫の素朴な疑問に、博士は首を横に振って答えた。
「馬鹿を言うな。そんなわけなかろう。わしはもう年じゃし、自分が乗ったら活躍が外から見れんじゃないか。優れたパイロットを見つけねばなるまい」
「それならここにいるだろう?」
隼人は自分こそがふさわしいと歯を爽やかに煌めかせ、鍛えた腕で自分の胸元に親指を立てて見せるが、その自己アピールに博士は対して興味無さそうだった。彼は完成したロボットを見上げた。
「それはロボットのコンピューターが選ぶことじゃ。わしは最高のロボットを造った。後は最高のロボットが最高の乗り手を選ぶ」
そう言って、博士はリモコンのスイッチを押した。
コンピューターが演算を開始する。そこには全世界の人間のデータが集まっているようだった。モニター画面に様々な人間の写真とデータが表示され、次々と目まぐるしい速さで切り替わっていく。
「さすがは爺さんだ。やる事に抜かりが無いな」
隼人は感心しながら、次々と切り替わっていくモニター画面の表示を見つめ続けた。
選ばれるのはプロの軍人か優秀なスポーツ選手だろうか。世界のトップアスリート達が相手だとしたらさすがに分が悪いと隼人は思ったが、それでも自分が選ばれる可能性を信じて結論が出るのを待った。
「どんな凄い男が相手でも俺は負けないぜ……」
「おっ」
祖父が短く声を漏らす。
コンピューターの計算が終わったようだ。モニター画面が一人の写真とデータを映し出して止まった。
隼人は祖父と一緒にじっとその画面を見た。
この人物がロボットが自分の乗り手に最も適していると判断した最高の人間なのだろうか。
隼人には信じられない思いだった。だってそうだろう。
そこに表示されていたのはプロの軍人でも優秀なスポーツ選手でも何でも無い、戦いともロボットとも無縁そうな平和そうな人物だったのだから。
隼人は拳を震わせて苦そうに言った。
「おい、爺さん。本当にこいつがロボットのパイロットにふさわしいのか……?」
「そうだとも。この者こそがロボットが自ら選んだ最高のパイロットなのじゃ!」
祖父は堂々と宣言する。自分の作った最高のロボットのコンピューターが出した結論に何の疑問も持っていないようだった。
さすがは変人。思考が常人と違う。隼人は今頃になって人々が言う祖父の人間性を実感してしまうが、今はそんなことに気を取られている場合ではない。
長い時間をロボットのパイロットになるためのトレーニングに費やしてきたのだ。学校を卒業しても就職せずに頑張ってきたのはこんな受け入れがたい結論を受け入れるためではない。
こんなトレーニングもしたことが無さそうな平和で呑気そうな奴にパイロットの座を渡すためでは断じてないのだ。
隼人は唾を飛ばして祖父に詰め寄った。
「正気なのか爺。だって、こいつって……こいつってよう……」
彼はモニター画面を指さして叫んだ。
「ただのガキじゃねえかあああ!!」
隼人が叫んだ通り、そこに映されていたのはただの子供だった。それも熱血でスポーツが得意そうな少年ですらなく、呑気そうにサンドイッチを頬張っている普通の小学生の女の子だった。
祖父はどこまでも冷静でマイペースだった。自分の最高のロボットが出した結論に何の疑問も持っていなかった。
「スパイメカがちょうど食事の時を撮ったようだな。ブレも無くよく撮れとるわい。だが、気づかれているな。さすがはパイロット適正のある少女じゃ」
祖父がどうでもいいことをコメントする。博士にとっては自分のメカの働きの方が興味があるのだろう。選ばれたパイロットがこんな少女ということよりも。
隼人は信じられない思いだったが、祖父の態度はしっかりして落ち着いていた。
博士はもうすっかり終わった気楽な足取りで傍にあったチェアに座ってコーヒーを啜った。
「結論は出た。後は彼女を連れてくるだけじゃな。それは隼人、お前に任せよう」
「爺さんが迎えに行かないのか?」
「わしは今まで働いておったのじゃぞ。お前はずっと遊んでおっただろう」
「遊んでねえよ!!」
パイロットになるためのトレーニングに励んできたのを遊びと言われるのは心外だった。だが、祖父には何を言っても無駄だ。そう悟る。
こうなったら現実を見せるしかない。隼人はいつまでもウジウジとはせずに前を向いて決めた。
「いいぜ、俺がこのガキを連れてきてやる。そして、爺さんとロボットに教えてやるぜ! こいつをパイロットに選んだ計算は間違いだったとな!」
指を突きつけて宣言する。
祖父はどこ吹く風だった。ロボットは答えはしない。
隼人は指を下ろして踵を返す。その瞳は強い意思に燃えていた。
この少女がパイロットとして無能だと分かれば、この結果は間違いだと博士とロボットも認めざるを得ないだろう。
自らの過ちを悔やんで態度を改めてあやまるなら、その時にしてもらえばいい。
ならば早くこいつを連れてきて、証明してやるのが得策だ。
隼人はそう決意して、鼻息を荒くして足音を立てながら工場を後にした。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
春花国の式神姫
石田空
キャラ文芸
春花国の藤花姫は、幼少期に呪われたことがきっかけで、成人と同時に出家が決まっていた。
ところが出家当日に突然体から魂が抜かれてしまい、式神に魂を移されてしまう。
「愛しておりますよ、姫様」
「人を拉致監禁したどの口でそれを言ってますか!?」
春花国で起こっている不可解な事象解決のため、急遽春花国の凄腕陰陽師の晦の式神として傍付きにされてしまった。
藤花姫の呪いの真相は?
この国で起こっている事象とは?
そしてこの変人陰陽師と出家決定姫に果たして恋が生まれるのか?
和風ファンタジー。
・サイトより転載になります。
胡蝶の夢に生け
乃南羽緒
キャラ文芸
『栄枯盛衰の常の世に、不滅の名作と謳われる──』
それは、小倉百人一首。
現代の高校生や大学生の男女、ときどき大人が織りなす恋物語。
千年むかしも人は人──想うことはみな同じ。
情に寄りくる『言霊』をあつめるために今宵また、彼は夢路にやってくる。
シャ・ベ クル
うてな
キャラ文芸
これは昭和後期を舞台にしたフィクション。
異端な五人が織り成す、依頼サークルの物語…
夢を追う若者達が集う学園『夢の島学園』。その学園に通う学園主席のロディオン。彼は人々の幸福の為に、悩みや依頼を承るサークル『シャ・ベ クル』を結成する。受ける依頼はボランティアから、大事件まで…!?
主席、神様、お坊ちゃん、シスター、893?
部員の成長を描いたコメディタッチの物語。
シャ・ベ クルは、あなたの幸せを応援します。
※※※
この作品は、毎週月~金の17時に投稿されます。
2023年05月01日 一章『人間ドール開放編』
~2023年06月27日
二章 … 未定
速達配達人 ポストアタッカー 旧1 〜ポストアタッカー狩り〜
LLX
キャラ文芸
主人公サトミが、除隊してポストアタッカーになるまでの再生物語。
時代は第4次世界大戦の戦後。
ガソリンが枯渇して移動の主流が馬に、インフラ破壊されて電話は政府が運営する衛星通信しかない高級品になり果てた、文明が少し戻った感じの、近未来アクション。
特殊部隊の少年兵だったサトミ・ブラッドリーは、銃社会でなぜか日本刀使い。
戦後、除隊して両親が居るはずの実家を目指したが、彼の家族は行き先を告げず引っ越したあと。
探すすべを失い、とりあえず旅の途中で出会った、なぜか喋る馬?のビッグベンと家で暮らすことに。
平和〜な日々が漫然と続く……かと思ったら。
15才なのにヒマでボケそうな彼を郵便局がスカウト。
それは速達業務のポストアタッカー、早馬で盗賊を蹴散らし、荒野を越えて荷物を届ける仕事。
しかしそんな彼らはその時、地雷強盗で重大な危機を迎えていたのでした。
血で血を洗う特殊な部隊にいた彼が、一般の普通〜の人々に囲まれ、普通を目指すポストマンのあまり普通じゃないお話。
危機って聞くと腕が鳴る、困った元少年兵の、荒廃したどこかの国の未来の物語。
表紙絵、ご @go_e_0000 様
あやかしびより 境界のトンボとあやかしたち
大月 けい
キャラ文芸
あの世とこの世の境目はどこにあるのだろう?
新しい家族とぎくしゃくする菜月は夏休みに叔父の旅館に一人旅に出る。
そこは小さな田舎町。九十九町。
出会う住民はちょっと変わっていて一癖も二癖もあるヒトばかり。
それもそのはずそこは人間に化けたあやかしが暮らす境界の町だった。
九十九町の一大イベント「お盆」あの世とこの世がつながる日。
なにやら一波乱ありそうです。
他サイトで公開中。表紙はCanvaにて作成しました。
古からの侵略者
久保 倫
キャラ文芸
永倉 有希は漫画家志望の18歳。高校卒業後、反対する両親とケンカしながら漫画を描く日々だった。
そんな状況を見かねた福岡市在住で漫画家の叔母に招きに応じて福岡に来るも、貝塚駅でひったくりにあってしまう。
バッグを奪って逃げるひったくり犯を蹴り倒し、バッグを奪い返してくれたのは、イケメンの空手家、壬生 朗だった。
イケメンとの出会いに、ときめく永倉だが、ここから、思いもよらぬ戦いに巻き込まれることを知る由もなかった。
パワハラ女上司からのラッキースケベが止まらない
セカイ
ライト文芸
新入社員の『俺』草野新一は入社して半年以上の間、上司である椿原麗香からの執拗なパワハラに苦しめられていた。
しかしそんな屈辱的な時間の中で毎回発生するラッキースケベな展開が、パワハラによる苦しみを相殺させている。
高身長でスタイルのいい超美人。おまけにすごく巨乳。性格以外は最高に魅力的な美人上司が、パワハラ中に引き起こす無自覚ラッキースケベの数々。
パワハラはしんどくて嫌だけれど、ムフフが美味しすぎて堪らない。そんな彼の日常の中のとある日の物語。
※他サイト(小説家になろう・カクヨム・ノベルアッププラス)でも掲載。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる