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第16話 ポセイドンとの謁見
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「取り次いでくるからここでちょっと待ってて」
マリナちゃんからそう言われてわたし達は宮殿の部屋で待つ事にした。先に準備しておくと言っていたのに一緒にお風呂に入ろうと引き留めたのはこちらなのだから待つのは仕方がない。
彼女が出て行ってしばらくして、わたしは艦長達に相談した。
「ポセイドンってどんな人なんでしょうか」
「知らんな」
「神話では聞いたことがあるけど会ったことはないものね」
「あたしもアニメでしか見た事ないよ」
「ポセイドンとはいったいどのような人物なのだろうか」
「きっと、神の中でも一番偉いんだろうなぁ」
「おいおい、このマルス様を差し置いてそれはないだろう」
「ポセイドンはゼウスの兄よ」
「じゃあ、やっぱり偉そうだ」
「でも、意外に普通の人だったりしてね」
「普通か。まあ、そういう事なら俺様も安心だぜ」
そんな事を話していると扉が開いた。
「待たせたわね」
そこにはマリナちゃんがいた。
「あの方が人間とお会いになるなんて大変名誉な事よ。ほら、失礼のないようにきびきび向かうわよ」
そして、謁見の間まで一緒に向かう事になった。
彫刻や絵画の並んだ長い廊下を歩いていく。ポセイドンとは学もある神様のようだ。
こんな時でも無ければマリナちゃんに質問していたところだが、今はみんなと一緒に歩いていく事にする。
やがて突き当たりの部屋に辿り着いた。
「ここがポセイドン様のおわせられるお部屋よ。くれぐれも失礼の無いようにするのよ。怒らせたら三日三晩の嵐じゃ済まないから」
マリナちゃんが大きな扉を開ける。すると、その先には海が広がっていた。まるで海の神様だからという理由で用意されたような場所だが、実際そうなのかもしれない。わたし達は中へと入っていく。
「お邪魔しまーす」
「声が軽い!」
「雑用係なので」
「失礼する」
「おお、さすが艦長は貫禄があるなあ」
「茶化すなよ。ほら、先に進むぞ。みんな俺についてこい。花子は真ん中だ」
「はい、わかりました」
わたし達は緊張しながら進んだ。実際に会うのかと思ったが、奥にあった滝のような巨大スクリーンに彼の姿が映し出された。結構イケメンの神様だ。
「よく来たな。俺はポセイドン。海の神だ。俺様に会いたいと願った物好きな人間とはお前達か?」
その一言だけで、その場の空気がピリっと張りつめる。やはりかなり偉い神様のようだ。しかし、艦長も負けてはいない。堂々と言い返した。
「ああ、そうだ。俺の名前はたかし。艦長としてみんなの身を預かる者だ。お前と話がしたくてマリナに謁見を取り次いでもらった」
「ほう、いい度胸をしているじゃないか。俺様に喧嘩を売るつもりなのか?」
「戦いに来たわけではない。マリナからは話が通じる神だと聞いているが」
マリナちゃんが激しく首を横に振っている。あまり自分の名前を出すな、怒られるからと言っているのだ。
だが、わたしには助けてあげる事はできない。こういう時は雑用係らしく影を薄くしておこう。ポセイドンさんは一息吐いてから話を続けた。
「まあいい。それで用件は何だ?」
「会ってもらったのは他でもない。あなたの神の力で俺達に手を貸してもらいたいのだ」
「神に手を貸せと? 人間が随分と図々しい事を言うのだな」
ポセイドンさんの不満そうな目がマリナちゃんに向けられる。何でこんな奴らを連れてきたんだと言いたげな目線にマリナちゃんは慌てて答えた。
「こいつら見掛けはあれだけど結構頼れる奴らなんですよ。きっと今ポセイドン様をわずらわせている問題の解決にも役に立つと思います」
「はい、わたし達を頼ってください」
「もう雑用係は黙ってて」
「マリナちゃんを助けてあげようと思ったのに」
二人で言い合っているとポセイドンさんは面白そうに笑った。
「あ、今笑いましたよ」
「笑われてんのよ。恥ずかしい」
「随分とマリナには気にいられているようだが……」
ポセイドンさんの目が一同を見る。マルスさんは不満そうに鼻を鳴らし、ヴィーナスさんは笑顔で手を振った。
それを見てポセイドンさんは決めたようだ。
「貸せる物なら貸してやりたいが、あいにくとこちらも忙しくてね」
滝のスクリーンに地球の海の映像が映し出される。海は荒れていた。普通ならAIによって海の環境は平穏に保たれているはずだ。
つまりこれはAIの暴走が起こしているのだ。
「見ての通り地球の海を抑えるのに忙しいのだよ。こうして君達と会う時間さえ惜しいのだ」
マリナちゃんがさっさと巻きに入れと合図を送ってくる。そんな事を雑用係のわたしに言われても困る。
艦長はポセイドンさんの方しか見ていない。
「では、力は貸せないと? これはあなたの利益、はては地球を救うことにもなるのだが」
「いや、力は貸そう。マルスとヴィーナスを連れてアポロンに挑もうというのだろう? ならば力は少しでも必要なはずだ」
ポセイドンさんが手をかざすと滝の水が集まって三又の鉾が現れた。
わたしが「アポロンって誰?」と聞くと、マリナちゃんは「太陽の神よ」と答えてくれた。ポセイドンさんの話は続く。
「これは海神の鉾だ。このポセイドンの力が込められている。これを持って人間に協力してあげなさい、マリナ」
「え? あたしがこれを使うんですか?」
海神の鉾はマリナちゃんの手に収まった。
「うむ、水星を警備する時間は終わりだ。ここからは勝負に打って出る。お前が役目を果たせる事を期待しているぞ」
「はい、このマリナにお任せください」
こうして謁見は終わった。マリナちゃんが鉾を振り上げて高らかに号令を下す。
「さあ、あんた達。ちゃっちゃっと太陽に乗り込んで目的を果たすわよ。アポロンなんて所詮はポセイドン様に比べれば小者。土下座でも何でもさせて言う事を聞かせればいいんだからね」
「おお、心強い」
わたしは拍手する。しかし、考えが甘かったと知るのはこれからだった。
マリナちゃんからそう言われてわたし達は宮殿の部屋で待つ事にした。先に準備しておくと言っていたのに一緒にお風呂に入ろうと引き留めたのはこちらなのだから待つのは仕方がない。
彼女が出て行ってしばらくして、わたしは艦長達に相談した。
「ポセイドンってどんな人なんでしょうか」
「知らんな」
「神話では聞いたことがあるけど会ったことはないものね」
「あたしもアニメでしか見た事ないよ」
「ポセイドンとはいったいどのような人物なのだろうか」
「きっと、神の中でも一番偉いんだろうなぁ」
「おいおい、このマルス様を差し置いてそれはないだろう」
「ポセイドンはゼウスの兄よ」
「じゃあ、やっぱり偉そうだ」
「でも、意外に普通の人だったりしてね」
「普通か。まあ、そういう事なら俺様も安心だぜ」
そんな事を話していると扉が開いた。
「待たせたわね」
そこにはマリナちゃんがいた。
「あの方が人間とお会いになるなんて大変名誉な事よ。ほら、失礼のないようにきびきび向かうわよ」
そして、謁見の間まで一緒に向かう事になった。
彫刻や絵画の並んだ長い廊下を歩いていく。ポセイドンとは学もある神様のようだ。
こんな時でも無ければマリナちゃんに質問していたところだが、今はみんなと一緒に歩いていく事にする。
やがて突き当たりの部屋に辿り着いた。
「ここがポセイドン様のおわせられるお部屋よ。くれぐれも失礼の無いようにするのよ。怒らせたら三日三晩の嵐じゃ済まないから」
マリナちゃんが大きな扉を開ける。すると、その先には海が広がっていた。まるで海の神様だからという理由で用意されたような場所だが、実際そうなのかもしれない。わたし達は中へと入っていく。
「お邪魔しまーす」
「声が軽い!」
「雑用係なので」
「失礼する」
「おお、さすが艦長は貫禄があるなあ」
「茶化すなよ。ほら、先に進むぞ。みんな俺についてこい。花子は真ん中だ」
「はい、わかりました」
わたし達は緊張しながら進んだ。実際に会うのかと思ったが、奥にあった滝のような巨大スクリーンに彼の姿が映し出された。結構イケメンの神様だ。
「よく来たな。俺はポセイドン。海の神だ。俺様に会いたいと願った物好きな人間とはお前達か?」
その一言だけで、その場の空気がピリっと張りつめる。やはりかなり偉い神様のようだ。しかし、艦長も負けてはいない。堂々と言い返した。
「ああ、そうだ。俺の名前はたかし。艦長としてみんなの身を預かる者だ。お前と話がしたくてマリナに謁見を取り次いでもらった」
「ほう、いい度胸をしているじゃないか。俺様に喧嘩を売るつもりなのか?」
「戦いに来たわけではない。マリナからは話が通じる神だと聞いているが」
マリナちゃんが激しく首を横に振っている。あまり自分の名前を出すな、怒られるからと言っているのだ。
だが、わたしには助けてあげる事はできない。こういう時は雑用係らしく影を薄くしておこう。ポセイドンさんは一息吐いてから話を続けた。
「まあいい。それで用件は何だ?」
「会ってもらったのは他でもない。あなたの神の力で俺達に手を貸してもらいたいのだ」
「神に手を貸せと? 人間が随分と図々しい事を言うのだな」
ポセイドンさんの不満そうな目がマリナちゃんに向けられる。何でこんな奴らを連れてきたんだと言いたげな目線にマリナちゃんは慌てて答えた。
「こいつら見掛けはあれだけど結構頼れる奴らなんですよ。きっと今ポセイドン様をわずらわせている問題の解決にも役に立つと思います」
「はい、わたし達を頼ってください」
「もう雑用係は黙ってて」
「マリナちゃんを助けてあげようと思ったのに」
二人で言い合っているとポセイドンさんは面白そうに笑った。
「あ、今笑いましたよ」
「笑われてんのよ。恥ずかしい」
「随分とマリナには気にいられているようだが……」
ポセイドンさんの目が一同を見る。マルスさんは不満そうに鼻を鳴らし、ヴィーナスさんは笑顔で手を振った。
それを見てポセイドンさんは決めたようだ。
「貸せる物なら貸してやりたいが、あいにくとこちらも忙しくてね」
滝のスクリーンに地球の海の映像が映し出される。海は荒れていた。普通ならAIによって海の環境は平穏に保たれているはずだ。
つまりこれはAIの暴走が起こしているのだ。
「見ての通り地球の海を抑えるのに忙しいのだよ。こうして君達と会う時間さえ惜しいのだ」
マリナちゃんがさっさと巻きに入れと合図を送ってくる。そんな事を雑用係のわたしに言われても困る。
艦長はポセイドンさんの方しか見ていない。
「では、力は貸せないと? これはあなたの利益、はては地球を救うことにもなるのだが」
「いや、力は貸そう。マルスとヴィーナスを連れてアポロンに挑もうというのだろう? ならば力は少しでも必要なはずだ」
ポセイドンさんが手をかざすと滝の水が集まって三又の鉾が現れた。
わたしが「アポロンって誰?」と聞くと、マリナちゃんは「太陽の神よ」と答えてくれた。ポセイドンさんの話は続く。
「これは海神の鉾だ。このポセイドンの力が込められている。これを持って人間に協力してあげなさい、マリナ」
「え? あたしがこれを使うんですか?」
海神の鉾はマリナちゃんの手に収まった。
「うむ、水星を警備する時間は終わりだ。ここからは勝負に打って出る。お前が役目を果たせる事を期待しているぞ」
「はい、このマリナにお任せください」
こうして謁見は終わった。マリナちゃんが鉾を振り上げて高らかに号令を下す。
「さあ、あんた達。ちゃっちゃっと太陽に乗り込んで目的を果たすわよ。アポロンなんて所詮はポセイドン様に比べれば小者。土下座でも何でもさせて言う事を聞かせればいいんだからね」
「おお、心強い」
わたしは拍手する。しかし、考えが甘かったと知るのはこれからだった。
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