14 / 29
第二章 学校に来た
彼女のいる学校風景
しおりを挟む
休み時間になるとクラスメイト達が正樹に質問に来る。
それもいつもの光景だが今日は質問の内容に、勉強とは違う事が加わっていた。
「なあ、隣の席の者として、相沢はミンティシアちゃんのことどう思う?」
「感想聞かせてくれよ」
ミンティシアのことだった。どうと聞かれても正樹は困ってしまうのだが。
彼女はいつも通りだ。いつも通りにクラスメイト達に囲まれて明るく話をしていた。
今日が初日だから、クラスのみんなに囲まれているのはいつも通りではないか。少し考えを修正する。それでも明るく楽しそうに笑って話しているのはいつも通りだった。
彼女はいつも楽しそうにしている。優とも楽しく喋って仲良くしている。
困らされることもあるが、彼女はいつも自分の使命に一生懸命だ。その笑顔に惹かれてしまう。
正樹は考えて答えた。
「ええと、可愛いと思うよ」
当たり障りのない正直な答えだ。クラスの男子達からは不満の声が上がった。
「えー、それだけかよー」
「相沢って女の子に興味無さそうだもんなあ」
「いや、別にそんなことは」
興味が無いと言われても困ってしまうのだが。正樹には初恋の人もいれば、今気になっている人もいる。
困りながら隣を見ると、ミンティシアがこっちを見ているのと目が合ってしまった。
『可愛い』と言ってしまったのを聞かれただろうか。正樹はやばいと思ったのだが。
ミンティシアはすぐに笑顔になった。
「このクラスのみんなも可愛いと思いますよ。言ってあげたらどうですか?」
ミンティシアはあっけらかんと気のない答えをするだけだった。
正樹は安堵の息を吐き、可愛いと言われた女の子達の機嫌はよくなった。
「ミンティシアちゃんは良い子ねえ」
「ミンちゃんって呼んでいい?」
「友達にはみっちゃんって呼ばれています」
「じゃあ、みっちゃんで」
対して男子は
「このクラスの女子が可愛いって?」
「プププ、ご冗談を」
何だか受け入れられない考えを持っているようだった。
正樹にとってはどうでもいいことだが、ミンティシアが男子から嫌われないといいなと思ったのだった。
学校のいつもの授業が始まった。授業の内容なんていつもとそう変わらない。
要点や問題に出そうなところだけ気にすればいい話だ。
正樹はずっと隣の少女を気にしていた。
ミンティシアは意外と勉強が出来るようだった。
「むむむ、お、解けた」
時折難しそうに唸りながらも問題が解けた時には嬉しそうにし、
「それじゃあ、ここを。みっちゃんさん」
「はい」
先生の質問にははっきりと答え、
「コツコツコツ……」
ノートもしっかりと取っていた。
何だか意外な一面を見ているようだったが、ミンティシアは天使の使命にも真面目に取り組んでいる。
元からこういう性格なのだろうと思った。
正樹はそっと隣の席から様子を見ていたが。
「あ」
ミンティシアが不意に小さく声を漏らした。見ると消しゴムが落ちていく。
気づいた正樹は素早く床に落ちる前にそれをキャッチして、ミンティシアの手に渡した。
触れた暖かい手に思わず緊張してしまう。
「ほらよ」
「ありがとうございます」
ミンティシアが笑顔で礼を言う。女の子を手伝って礼を言われるなんてよくあることなのに。
彼女が笑顔なのもいつものことなのに。
よくあるいつものことが妙に恥ずかしくなって。
「勉強しなくちゃな」
正樹は前を向いて黒板に集中することにした。
今日の体育はバスケットボールをやった。男子と女子で別々のコートに別れて試合する。
正樹はいつものように最前線で活躍しながら、いつもと違って女子のコートの方を気にしていた。
長い空色の髪をポニーテールにして纏め、体操服を着たミンティシアがボールをドリブルして走っていた。
始めて会った時も思ったが、彼女はとても素早くて運動神経がいい。始めて出会った時に正樹を翻弄した運動能力が今、相手チームを困らせていた。
真面目な彼女はとても綺麗に見えた。正樹が思わず足を止めてしまうほどに。
ミンティシアが鮮やかにシュートを決める。まるで天使のような綺麗なフォームだ。天使だけど。
試合をしているみんなからは感嘆と驚きの声が上がっていた。
これはもう勝負は付いたなと正樹は思ったのだが、
「おい、相沢。ぼーっとするなよ」
「ああ、悪い」
慌てて仲間からのパスを受け取った。
こっちの勝負はまだ付いていない。仲間から声を掛けられる。
「みっちゃんのことを気にしているのかい?」
「いや、別に。……って、みっちゃん!?」
「ああ、友達からはそう呼ばれているって言ってたろ」
「確かにそうだけど……」
自分はまだミンティシアって呼んでいるのに。
そんなどうでもいいことにいらだちを感じてしまう。
「あの運動能力はお前も気になるんだろうが、今はこっちに集中しようぜ!」
「ああ!」
真面目なスポーツ選手の男子の声に答え、正樹も自分の勝負に集中することにした。
ドリブルで相手を抜き去り、ミンティシアほど鮮やかでは無いかもしれないが、力強くシュートを決めた。
場が歓声で沸き立った。
それもいつもの光景だが今日は質問の内容に、勉強とは違う事が加わっていた。
「なあ、隣の席の者として、相沢はミンティシアちゃんのことどう思う?」
「感想聞かせてくれよ」
ミンティシアのことだった。どうと聞かれても正樹は困ってしまうのだが。
彼女はいつも通りだ。いつも通りにクラスメイト達に囲まれて明るく話をしていた。
今日が初日だから、クラスのみんなに囲まれているのはいつも通りではないか。少し考えを修正する。それでも明るく楽しそうに笑って話しているのはいつも通りだった。
彼女はいつも楽しそうにしている。優とも楽しく喋って仲良くしている。
困らされることもあるが、彼女はいつも自分の使命に一生懸命だ。その笑顔に惹かれてしまう。
正樹は考えて答えた。
「ええと、可愛いと思うよ」
当たり障りのない正直な答えだ。クラスの男子達からは不満の声が上がった。
「えー、それだけかよー」
「相沢って女の子に興味無さそうだもんなあ」
「いや、別にそんなことは」
興味が無いと言われても困ってしまうのだが。正樹には初恋の人もいれば、今気になっている人もいる。
困りながら隣を見ると、ミンティシアがこっちを見ているのと目が合ってしまった。
『可愛い』と言ってしまったのを聞かれただろうか。正樹はやばいと思ったのだが。
ミンティシアはすぐに笑顔になった。
「このクラスのみんなも可愛いと思いますよ。言ってあげたらどうですか?」
ミンティシアはあっけらかんと気のない答えをするだけだった。
正樹は安堵の息を吐き、可愛いと言われた女の子達の機嫌はよくなった。
「ミンティシアちゃんは良い子ねえ」
「ミンちゃんって呼んでいい?」
「友達にはみっちゃんって呼ばれています」
「じゃあ、みっちゃんで」
対して男子は
「このクラスの女子が可愛いって?」
「プププ、ご冗談を」
何だか受け入れられない考えを持っているようだった。
正樹にとってはどうでもいいことだが、ミンティシアが男子から嫌われないといいなと思ったのだった。
学校のいつもの授業が始まった。授業の内容なんていつもとそう変わらない。
要点や問題に出そうなところだけ気にすればいい話だ。
正樹はずっと隣の少女を気にしていた。
ミンティシアは意外と勉強が出来るようだった。
「むむむ、お、解けた」
時折難しそうに唸りながらも問題が解けた時には嬉しそうにし、
「それじゃあ、ここを。みっちゃんさん」
「はい」
先生の質問にははっきりと答え、
「コツコツコツ……」
ノートもしっかりと取っていた。
何だか意外な一面を見ているようだったが、ミンティシアは天使の使命にも真面目に取り組んでいる。
元からこういう性格なのだろうと思った。
正樹はそっと隣の席から様子を見ていたが。
「あ」
ミンティシアが不意に小さく声を漏らした。見ると消しゴムが落ちていく。
気づいた正樹は素早く床に落ちる前にそれをキャッチして、ミンティシアの手に渡した。
触れた暖かい手に思わず緊張してしまう。
「ほらよ」
「ありがとうございます」
ミンティシアが笑顔で礼を言う。女の子を手伝って礼を言われるなんてよくあることなのに。
彼女が笑顔なのもいつものことなのに。
よくあるいつものことが妙に恥ずかしくなって。
「勉強しなくちゃな」
正樹は前を向いて黒板に集中することにした。
今日の体育はバスケットボールをやった。男子と女子で別々のコートに別れて試合する。
正樹はいつものように最前線で活躍しながら、いつもと違って女子のコートの方を気にしていた。
長い空色の髪をポニーテールにして纏め、体操服を着たミンティシアがボールをドリブルして走っていた。
始めて会った時も思ったが、彼女はとても素早くて運動神経がいい。始めて出会った時に正樹を翻弄した運動能力が今、相手チームを困らせていた。
真面目な彼女はとても綺麗に見えた。正樹が思わず足を止めてしまうほどに。
ミンティシアが鮮やかにシュートを決める。まるで天使のような綺麗なフォームだ。天使だけど。
試合をしているみんなからは感嘆と驚きの声が上がっていた。
これはもう勝負は付いたなと正樹は思ったのだが、
「おい、相沢。ぼーっとするなよ」
「ああ、悪い」
慌てて仲間からのパスを受け取った。
こっちの勝負はまだ付いていない。仲間から声を掛けられる。
「みっちゃんのことを気にしているのかい?」
「いや、別に。……って、みっちゃん!?」
「ああ、友達からはそう呼ばれているって言ってたろ」
「確かにそうだけど……」
自分はまだミンティシアって呼んでいるのに。
そんなどうでもいいことにいらだちを感じてしまう。
「あの運動能力はお前も気になるんだろうが、今はこっちに集中しようぜ!」
「ああ!」
真面目なスポーツ選手の男子の声に答え、正樹も自分の勝負に集中することにした。
ドリブルで相手を抜き去り、ミンティシアほど鮮やかでは無いかもしれないが、力強くシュートを決めた。
場が歓声で沸き立った。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
パイナップル番長 あるある川柳大全(中年童貞の世界)
パイナップル番長研究所
キャラ文芸
進学するように、時期がくれば、ある程度の努力で、自然とパートナーと巡り合えて初体験して結婚できると思っていたら、現実は甘くないのですね。
我が研究所は、20年以上にわたって、特殊生物パイナップル番長を研究してきました。
パイナップル番長とは、ずばり中年童貞を具現化した姿そのものです。
今回は、パイナップル番長を吐いた川柳の収集及び研究の成果を公表したいと思います。
中年童貞ならではの切なさや滑稽さを感じていただけましたら幸いです。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
高校生なのに娘ができちゃった!?
まったりさん
キャラ文芸
不思議な桜が咲く島に住む主人公のもとに、主人公の娘と名乗る妙な女が現われた。その女のせいで主人公の生活はめちゃくちゃ、最初は最悪だったが、段々と主人公の気持ちが変わっていって…!?
そうして、紅葉が桜に変わる頃、物語の幕は閉じる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる