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第5話
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昔々、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでおりました。二人は毎日のんびりと暮らしておりましたので、特にこれといった悩み事はありませんでした。
しかし、一つだけ気になることがありました。それは二人の家の庭に生えた柿の木のことです。実がなる時期になっても一向に熟す気配がありません。それどころか葉っぱすら付けていなかったのです。さすがにおかしいと思い、近所の人たちに聞いて回ってみると、次のような噂話を聞きつけました。
なんでも、この辺りには昔から鬼が出るという噂があったのだそうです。しかも、その鬼というのは人食いであるとも伝えられていました。
それを聞いたおじいさんは思わず身震いしました。なぜなら、もしもそれが本当だとしたら大変だと思ったからです。
そこでおじいさんは知り合いの猟師さんにお願いして、鬼退治に向かうことにしました。
さっそく二人で山へ入り、しばらく歩いていると、一匹の小さな犬と出会いました。どうやら道に迷っているらしく、しきりに辺りを見回しています。それを見たおじいさんは尋ねました。
「どうしたんだい?」
すると犬はこう答えます。
「実は山のふもとまで行きたいのだが、迷ってしまって困っているんだ」
それを聞いたおじいさんは言いました。
「それなら私が案内しよう。さあ、ついてきなさい」
こうして三人で山道を進んでいきます。しばらくすると、前方に大きな屋敷が見えてきました。それは立派なお屋敷で、庭にある柿の木が印象的でした。ふと気になったので近づいて見てみると、なんとそこにはたくさんの実がなっているではありませんか! それを見ていた犬が嬉しそうにしっぽを振りながら駆け寄ってきます。
「おお、これだこれだ! これこそが求めていたものだ!」
そう言うと、いきなり柿の実を食べ始めました。あまりの食べっぷりに呆気にとられていると、あっという間に全て平らげてしまったのです。さらに続けてこう言ったのです。
「いやぁ、おかげで元気が出たよ。お礼といっては何だが、いいものを見せてあげよう」
そう言って手招きするのでついていくと、今度は裏手の山に連れて行かれました。そして、とある場所にたどり着くと、おもむろに地面を掘りはじめました。
何をしているのだろうと思っているうちに、急に手を休めると穴から出てきました。その手には小さな壺のようなものがあります。それを差し出しながら言いました。
「これをやろう。中に薬が入っているから飲むといい」
受け取ったおじいさんはそれをまじまじと見つめます。見たところ何の変哲もない普通の瓶にしか見えません。少し迷ったものの、せっかくなのでいただくことにしました。
早速蓋を開けてみると、中から何とも言えない匂いが漂ってきます。顔をしかめながらも思い切って飲んでみました。
するとどうでしょう。今まで悩んでいたことが嘘のように吹き飛んでいったのです。それどころか頭もすっきりとして、まるで生まれ変わったような気分になりました。
「これはすごいぞ! こんなに効果があるなんて思わなかった!」
驚く二人をよそに、その犬はさらに話を続けます。
「どうだ、気に入ったか?」
「ああ、もちろんだとも」
「それは良かった。では約束通り、もうじき雨が降るだろう。そうしたらすぐに家に帰るんだぞ」
そう言い残すと、どこかへ走り去って行きました。残された二人は首を傾げつつも、言われた通りにすることにしました。
それからしばらくして空を見上げてみると、いつの間にか雲が広がっています。そればかりかゴロゴロと雷の音まで聞こえ始めました。
間もなくして雨が降り出し、瞬く間に土砂降りになってしまいました。これでは帰れそうにもありません。仕方なくその場で雨宿りをすることにしました。
しかし、一つだけ気になることがありました。それは二人の家の庭に生えた柿の木のことです。実がなる時期になっても一向に熟す気配がありません。それどころか葉っぱすら付けていなかったのです。さすがにおかしいと思い、近所の人たちに聞いて回ってみると、次のような噂話を聞きつけました。
なんでも、この辺りには昔から鬼が出るという噂があったのだそうです。しかも、その鬼というのは人食いであるとも伝えられていました。
それを聞いたおじいさんは思わず身震いしました。なぜなら、もしもそれが本当だとしたら大変だと思ったからです。
そこでおじいさんは知り合いの猟師さんにお願いして、鬼退治に向かうことにしました。
さっそく二人で山へ入り、しばらく歩いていると、一匹の小さな犬と出会いました。どうやら道に迷っているらしく、しきりに辺りを見回しています。それを見たおじいさんは尋ねました。
「どうしたんだい?」
すると犬はこう答えます。
「実は山のふもとまで行きたいのだが、迷ってしまって困っているんだ」
それを聞いたおじいさんは言いました。
「それなら私が案内しよう。さあ、ついてきなさい」
こうして三人で山道を進んでいきます。しばらくすると、前方に大きな屋敷が見えてきました。それは立派なお屋敷で、庭にある柿の木が印象的でした。ふと気になったので近づいて見てみると、なんとそこにはたくさんの実がなっているではありませんか! それを見ていた犬が嬉しそうにしっぽを振りながら駆け寄ってきます。
「おお、これだこれだ! これこそが求めていたものだ!」
そう言うと、いきなり柿の実を食べ始めました。あまりの食べっぷりに呆気にとられていると、あっという間に全て平らげてしまったのです。さらに続けてこう言ったのです。
「いやぁ、おかげで元気が出たよ。お礼といっては何だが、いいものを見せてあげよう」
そう言って手招きするのでついていくと、今度は裏手の山に連れて行かれました。そして、とある場所にたどり着くと、おもむろに地面を掘りはじめました。
何をしているのだろうと思っているうちに、急に手を休めると穴から出てきました。その手には小さな壺のようなものがあります。それを差し出しながら言いました。
「これをやろう。中に薬が入っているから飲むといい」
受け取ったおじいさんはそれをまじまじと見つめます。見たところ何の変哲もない普通の瓶にしか見えません。少し迷ったものの、せっかくなのでいただくことにしました。
早速蓋を開けてみると、中から何とも言えない匂いが漂ってきます。顔をしかめながらも思い切って飲んでみました。
するとどうでしょう。今まで悩んでいたことが嘘のように吹き飛んでいったのです。それどころか頭もすっきりとして、まるで生まれ変わったような気分になりました。
「これはすごいぞ! こんなに効果があるなんて思わなかった!」
驚く二人をよそに、その犬はさらに話を続けます。
「どうだ、気に入ったか?」
「ああ、もちろんだとも」
「それは良かった。では約束通り、もうじき雨が降るだろう。そうしたらすぐに家に帰るんだぞ」
そう言い残すと、どこかへ走り去って行きました。残された二人は首を傾げつつも、言われた通りにすることにしました。
それからしばらくして空を見上げてみると、いつの間にか雲が広がっています。そればかりかゴロゴロと雷の音まで聞こえ始めました。
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