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第1話
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俺は無職の童貞。女の子には縁がないと思っていたのにいきなり小学生の女の子に告白されてしまった。
「好きです。私と付き合ってください」
「は? なんで?」
小学生の女の子にいきなり告白されて戸惑わないはずがない。俺のどこに惚れる要素があるわけ?
「一目惚れです」
そんな言葉を信じられるだろうか。恥ずかしそうに言われてもピンと来ない。俺の無駄に長く生きてきただけの脳はフルパワーで回転を始める。
あれか。今日は天気が良いからと人のいない公園のベンチに座って一人ゲームに興じていたからだろうか。
つまりこの子の狙いは俺のスイッチとぶつもりなんだな。そうと分かれば話は早い。
俺はきっぱりとぶつもりで遊んでいたスイッチを彼女の手の届かない高さに持ち上げて言ってやる。
「君が何のつもりか知らないけど俺のニンテンドースイッチは渡さないぞ」
すると何言ってんだこいつって目で見られてしまった。ちょっとゾクッとした。
彼女は表情を緩めると少し頬を赤らめて言う。
「いや、何を勘違いしてるんですか。私はゲーム機を貸してなんて一言も言ってないですよ」
「これが狙いじゃないって言うのか?」
「それにスイッチなんて男の子の玩具じゃないですか」
「はあああ?」
俺は文句を言いたくなったが、ここで語りだすと止まらなくなるので黙っておいた。
それに相手は何も知らない子供なのだ。ここは大人の俺が譲歩してやろうじゃないか。
小学生の女の子は呆れる様にため息を一つ吐いてから俺に向かって言った。
「ゲーム機の事じゃなくてあなたの事を好きだと言っているんです。それを子どもだからって馬鹿にしてるんですか?」
「え? 本気で言ってるの?」
「だから好きだって言ってるじゃないですかー!」
「お、吠えた」
「冗談でこんな恥ずかしい事を言えるほどメンタル強くないですよ私は……」
「と思ったら引っ込んだ」
どうやら本気らしい……。
まじか。この女の子……男を見る目がなさすぎるだろ。とりあえず話を伺ってみた。
今の公園には誰もいないけど誰か来たらすぐに退散する心づもりで。
「ちなみにだけどさ。君は俺のどこが好きになったの?」
「全部好きですよ。あなたは私が今まで見て来た男の人の中で一番素敵です」
「あ、はい」
「照れてますね。そういうところも素敵なんです」
「あ、そうですか……」
女の子に正面から素敵だと言われて照れない男はいないと思う。言った彼女自身も照れてるし、さらに大胆な事も言ってくる。
「今度の日曜、一緒にデートに行きませんか?」
「あ、うん……え?」
「じゃあ、約束ですよー」
「あ、ちょっと」
彼女は走り去ってしまう。もう断れなくなってしまった。まあいいか。可愛い子だし。
俺はたいして気にせず、そしてすっかり忘れて日曜日がやってきた。
成人男性の日曜日の朝といえばやる事は決まっている。
「さて、もうすぐわんだふるぷりきゅあの始まる時間だな。待機待機っと」
ぴんぽーん!
「くそっ、誰だよこんな時間に」
居留守を使ってもよかったが、アマゾンに帰られても面倒だ。何か注文してたっけと思いながら玄関を開けるとそこにいたのは前に公園で会った女の子だった。
「おはようございます」
「まじで来たの!?」
「はい、約束しましたからね」
彼女は子供ながらにお洒落をしていて俺の心拍数は上がっていく。
どうしよう、こんなところを誰かに見つかって通報されてしまったら。
俺は何も悪くねえ! 彼女が来たから迎えたんだ! 俺は何も悪くねえ!
「上がっていいですか?」
「どうぞ」
言ってしまってからしまったと気づいてももう遅い。
「お邪魔します」
女の子は靴を脱いで上がってしまう。俺にはその背中を見送ることしかできなかった。
リビングに来てお互いに緊張しながら腰を下ろす。すると彼女が言った。
「お茶を入れましょうか?」
「あ、お構いなく」
って、なんで客に言わせてるんだ俺。こういうところがモテないんだろうなぁ……。
断ってしまって彼女も手持無沙汰のようだ。
俺は心を落ち着かせ、もじもじと落ち着かない様子の彼女に声を掛けた。
「随分と早く来たんだね。まだ店とか開いてないよ」
「はい、楽しみだったんで早く来てしまいました」
こんな家に来て何が楽しいのか分からないが……俺はとりあえずリモコンを操作してテレビを付ける。
すると画面に映ったのは女児向けアニメ『わんだふるぷりきゅあ』だ。
女の子はきょとんとした顔でそれを見る。俺は慌てるが、女の子はくすりと笑って言った。
「あ、お構いなく。もうこういうのを見る年じゃないんで。プリキュアって園児の子が見る番組ですよね?」
この女児は何を言っているんだ? 俺は文句を言いたかったがそれも大人げないと思って息を吐いた。
「でも、小学生が見ても面白いかもしれないよ? ほら、ペットとか可愛いじゃないか」
「ふぅん、そうなんですか? 周りの子もみんな見なくなったんで今のはよく分からなくて」
「世間に迎合するなんて良くないね。自分の目で確かめなくちゃ」
「じゃあ見てみようかな」
こうして俺たちは並んでニチアサを見た。ブンブンジャーまで見て隣を見ると女の子はスマホのような物を見ていた。
「あ、終わりましたか?」
「なんか静かだと思ったら何やってんの?」
「ネットで動画を見てました」
「ネットで動画!」
今時の小学生は進んでいると聞くが、リアルで見ると驚いてしまう。
「スマホを持ってたんだね」
「あ、これスマホじゃなくてタブレットです。スマホはこっちに」
「まさかの二刀流!」
俺は今時の小学生に舌を巻くしかない。彼女が帰る様子もないのでとにかくデートに出るしかないようだった。
俺は彼女と玄関を出た。日差しが眩しいな。
「さて、今日はどこに……」
「どこに連れていってもらえるか楽しみです」
「……」
俺が決めないといけないようだった。とりあえず歩いてすぐの近所の公園にやってきた。
「ここは近所の公園だよ」
「知ってます。お兄さんがよく一人でいる場所ですよね」
「ああ、日曜日でもここには誰も来ないんだ。俺が来る前からそうだから俺のせいではないと思う、多分」
「ここから出発ですね」
「お、おう……」
出発と言ってもこれからどこへ行けばいいんだ。まさか小学生を連れて電車に乗って映画館に行くわけもいくまい。
「この前のガンダムSEED面白かったね」
「ガンダムSEED?」
「くっ」
無理に話題を振るのは止めておこう。タブレットを出して調べようとする彼女を止めて、とりあえず知っている道を歩き出す。
やがてコンビニに辿り着いた。
「ここはセブンイレブンだよ」
「コンビニですよね?」
「ローソンじゃないよ」
「知ってます」
「……」
どうしよう、小学生と何を話せばいいか分からないぞ。俺が困っているのを見かねたのか彼女の方から助け舟を出してきた。
「お腹も空いてきましたし、お昼ご飯を買っていきませんか?」
「ああ、うん、そうだね……」
何だかんだで十一時を過ぎていたし、言われてみると自分もお腹が空いた気分になってきた。
ここで昼食を買っていくのもなんだかデートというには何なんだと思ったが、彼女からの意見だったので俺は全力で乗っかることにした。
「サンドイッチ二つでいいかな?」
「はい」
彼女は素直にうなずく。俺はサンドイッチ二つを持つとレジに向かう。彼女もとことこついてくる。
財布を出すと少女が驚いた顔を見せた。
「財布……」
「財布が珍しいのかな?」
「はい、スマホでしか払った事がありません」
「そ、そう……」
今時の小学生ならそうなのかもしれないな。俺がお金を出して払うのを彼女は興味深そうに見ていた。
その後、公園に戻って二人ベンチに座って昼食にする事にした。
「はい、これは君の分だよ」
「ありがとうございます」
コンビニで買ったサンドイッチを彼女は美味しそうに食べていた。
「今日のデートはどうだった?」
「楽しかったです」
「そりゃ良かった」
「来週も行きましょうね」
「えっ!?」
俺は驚いてしまうが、楽しそうな彼女を見ると断る選択肢なんて見つからなかった。
「約束ですよー」
「あ、はい……」
俺は思わず了承してしまった。来週の日曜日がちょっと怖くなったが、まあいいかと思い直す。
「俺にドーンと任せとけ!」
どうやら苦労の日々がやってきそうだ。
「好きです。私と付き合ってください」
「は? なんで?」
小学生の女の子にいきなり告白されて戸惑わないはずがない。俺のどこに惚れる要素があるわけ?
「一目惚れです」
そんな言葉を信じられるだろうか。恥ずかしそうに言われてもピンと来ない。俺の無駄に長く生きてきただけの脳はフルパワーで回転を始める。
あれか。今日は天気が良いからと人のいない公園のベンチに座って一人ゲームに興じていたからだろうか。
つまりこの子の狙いは俺のスイッチとぶつもりなんだな。そうと分かれば話は早い。
俺はきっぱりとぶつもりで遊んでいたスイッチを彼女の手の届かない高さに持ち上げて言ってやる。
「君が何のつもりか知らないけど俺のニンテンドースイッチは渡さないぞ」
すると何言ってんだこいつって目で見られてしまった。ちょっとゾクッとした。
彼女は表情を緩めると少し頬を赤らめて言う。
「いや、何を勘違いしてるんですか。私はゲーム機を貸してなんて一言も言ってないですよ」
「これが狙いじゃないって言うのか?」
「それにスイッチなんて男の子の玩具じゃないですか」
「はあああ?」
俺は文句を言いたくなったが、ここで語りだすと止まらなくなるので黙っておいた。
それに相手は何も知らない子供なのだ。ここは大人の俺が譲歩してやろうじゃないか。
小学生の女の子は呆れる様にため息を一つ吐いてから俺に向かって言った。
「ゲーム機の事じゃなくてあなたの事を好きだと言っているんです。それを子どもだからって馬鹿にしてるんですか?」
「え? 本気で言ってるの?」
「だから好きだって言ってるじゃないですかー!」
「お、吠えた」
「冗談でこんな恥ずかしい事を言えるほどメンタル強くないですよ私は……」
「と思ったら引っ込んだ」
どうやら本気らしい……。
まじか。この女の子……男を見る目がなさすぎるだろ。とりあえず話を伺ってみた。
今の公園には誰もいないけど誰か来たらすぐに退散する心づもりで。
「ちなみにだけどさ。君は俺のどこが好きになったの?」
「全部好きですよ。あなたは私が今まで見て来た男の人の中で一番素敵です」
「あ、はい」
「照れてますね。そういうところも素敵なんです」
「あ、そうですか……」
女の子に正面から素敵だと言われて照れない男はいないと思う。言った彼女自身も照れてるし、さらに大胆な事も言ってくる。
「今度の日曜、一緒にデートに行きませんか?」
「あ、うん……え?」
「じゃあ、約束ですよー」
「あ、ちょっと」
彼女は走り去ってしまう。もう断れなくなってしまった。まあいいか。可愛い子だし。
俺はたいして気にせず、そしてすっかり忘れて日曜日がやってきた。
成人男性の日曜日の朝といえばやる事は決まっている。
「さて、もうすぐわんだふるぷりきゅあの始まる時間だな。待機待機っと」
ぴんぽーん!
「くそっ、誰だよこんな時間に」
居留守を使ってもよかったが、アマゾンに帰られても面倒だ。何か注文してたっけと思いながら玄関を開けるとそこにいたのは前に公園で会った女の子だった。
「おはようございます」
「まじで来たの!?」
「はい、約束しましたからね」
彼女は子供ながらにお洒落をしていて俺の心拍数は上がっていく。
どうしよう、こんなところを誰かに見つかって通報されてしまったら。
俺は何も悪くねえ! 彼女が来たから迎えたんだ! 俺は何も悪くねえ!
「上がっていいですか?」
「どうぞ」
言ってしまってからしまったと気づいてももう遅い。
「お邪魔します」
女の子は靴を脱いで上がってしまう。俺にはその背中を見送ることしかできなかった。
リビングに来てお互いに緊張しながら腰を下ろす。すると彼女が言った。
「お茶を入れましょうか?」
「あ、お構いなく」
って、なんで客に言わせてるんだ俺。こういうところがモテないんだろうなぁ……。
断ってしまって彼女も手持無沙汰のようだ。
俺は心を落ち着かせ、もじもじと落ち着かない様子の彼女に声を掛けた。
「随分と早く来たんだね。まだ店とか開いてないよ」
「はい、楽しみだったんで早く来てしまいました」
こんな家に来て何が楽しいのか分からないが……俺はとりあえずリモコンを操作してテレビを付ける。
すると画面に映ったのは女児向けアニメ『わんだふるぷりきゅあ』だ。
女の子はきょとんとした顔でそれを見る。俺は慌てるが、女の子はくすりと笑って言った。
「あ、お構いなく。もうこういうのを見る年じゃないんで。プリキュアって園児の子が見る番組ですよね?」
この女児は何を言っているんだ? 俺は文句を言いたかったがそれも大人げないと思って息を吐いた。
「でも、小学生が見ても面白いかもしれないよ? ほら、ペットとか可愛いじゃないか」
「ふぅん、そうなんですか? 周りの子もみんな見なくなったんで今のはよく分からなくて」
「世間に迎合するなんて良くないね。自分の目で確かめなくちゃ」
「じゃあ見てみようかな」
こうして俺たちは並んでニチアサを見た。ブンブンジャーまで見て隣を見ると女の子はスマホのような物を見ていた。
「あ、終わりましたか?」
「なんか静かだと思ったら何やってんの?」
「ネットで動画を見てました」
「ネットで動画!」
今時の小学生は進んでいると聞くが、リアルで見ると驚いてしまう。
「スマホを持ってたんだね」
「あ、これスマホじゃなくてタブレットです。スマホはこっちに」
「まさかの二刀流!」
俺は今時の小学生に舌を巻くしかない。彼女が帰る様子もないのでとにかくデートに出るしかないようだった。
俺は彼女と玄関を出た。日差しが眩しいな。
「さて、今日はどこに……」
「どこに連れていってもらえるか楽しみです」
「……」
俺が決めないといけないようだった。とりあえず歩いてすぐの近所の公園にやってきた。
「ここは近所の公園だよ」
「知ってます。お兄さんがよく一人でいる場所ですよね」
「ああ、日曜日でもここには誰も来ないんだ。俺が来る前からそうだから俺のせいではないと思う、多分」
「ここから出発ですね」
「お、おう……」
出発と言ってもこれからどこへ行けばいいんだ。まさか小学生を連れて電車に乗って映画館に行くわけもいくまい。
「この前のガンダムSEED面白かったね」
「ガンダムSEED?」
「くっ」
無理に話題を振るのは止めておこう。タブレットを出して調べようとする彼女を止めて、とりあえず知っている道を歩き出す。
やがてコンビニに辿り着いた。
「ここはセブンイレブンだよ」
「コンビニですよね?」
「ローソンじゃないよ」
「知ってます」
「……」
どうしよう、小学生と何を話せばいいか分からないぞ。俺が困っているのを見かねたのか彼女の方から助け舟を出してきた。
「お腹も空いてきましたし、お昼ご飯を買っていきませんか?」
「ああ、うん、そうだね……」
何だかんだで十一時を過ぎていたし、言われてみると自分もお腹が空いた気分になってきた。
ここで昼食を買っていくのもなんだかデートというには何なんだと思ったが、彼女からの意見だったので俺は全力で乗っかることにした。
「サンドイッチ二つでいいかな?」
「はい」
彼女は素直にうなずく。俺はサンドイッチ二つを持つとレジに向かう。彼女もとことこついてくる。
財布を出すと少女が驚いた顔を見せた。
「財布……」
「財布が珍しいのかな?」
「はい、スマホでしか払った事がありません」
「そ、そう……」
今時の小学生ならそうなのかもしれないな。俺がお金を出して払うのを彼女は興味深そうに見ていた。
その後、公園に戻って二人ベンチに座って昼食にする事にした。
「はい、これは君の分だよ」
「ありがとうございます」
コンビニで買ったサンドイッチを彼女は美味しそうに食べていた。
「今日のデートはどうだった?」
「楽しかったです」
「そりゃ良かった」
「来週も行きましょうね」
「えっ!?」
俺は驚いてしまうが、楽しそうな彼女を見ると断る選択肢なんて見つからなかった。
「約束ですよー」
「あ、はい……」
俺は思わず了承してしまった。来週の日曜日がちょっと怖くなったが、まあいいかと思い直す。
「俺にドーンと任せとけ!」
どうやら苦労の日々がやってきそうだ。
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