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第2章
第27話
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それから数日後のある日の午後、私はアリシアと庭の散歩をしていた。偶然出会った彼女に私から声をかけたのだ。
「ねえ、アリシア。今日はどんな日かな?」
「はい、シャーロット様。そうですね……殿下は休日だからお部屋におられるんじゃないでしょうか?」
「そうよね! それじゃあさ……」
彼女と顔を見合わせると私たちはイタズラっぽく笑った。それから走り出したのだった。
(早く殿下のところに行こう!)
「シャーロット様、楽しそうですね」
「アリシアこそ」
廊下を駆け抜けながら話しているとあっという間に目的地へ到着した。そこで私たちは息を切らせながら声をかけた。
「殿下、失礼いたします!」
中に入ると、そこには椅子に座っている彼がいた。どうやら読書中だったらしい。彼はこちらに気づくと声をかけてきた。
「やあ、アリシアにシャーロットじゃないか。僕に何か用でもあったのかい?」
私は大きく深呼吸をすると本題を切り出した。
「殿下、今日はどんな日でしょうか?」
彼は少し考えると答えてくれた。
「うーん、そうだね……僕たちが出会った記念日かな」
(えっ?)
予想していなかった答えに戸惑いながらも、私は殿下の答えを反芻した。
(出会った記念日か……確かにそうかもしれないわね)
「そうですね、その通りです! 私たちの出会いを記念して祝うべきです」
私が同意するように頷くと、隣にいたアリシアも頷いた。彼女も同意してくれるようだ。
「そうかい? なら、早速準備をしないとね。そうだ、いっそ両親も呼んで盛大にお祝いしないかい?」
「え……?」
思わぬ提案に固まってしまったが、それでもなんとか返事をすることができた。
「えっ!? あ、いえ、そこまでは遠慮しておきますわ……」
慌てて断ると、アリシアを連れてその場から逃げ出したのだった。
その後、私たちは二人でのんびりお茶を飲んでいた。
「ねえ、アリシア? さっきの話だけど……」
「はい、なんでしょうか?」
「さっきはごめんなさいね。せっかくの話を断ったりして。なんだか恥ずかしくなっちゃって……」
「大丈夫ですよ! それよりも私まで誘ってくださって嬉しかったです」
「そ、そうかしら……」
照れ臭くなって顔を背けたが、ふと気になったことがあったので聞いてみた。
「ねえ、あなたは殿下のことをどう思ってるのかしら?」
アリシアは少し考えてから口を開いた。
「私にとって一番大切な方ですね」
彼女の瞳はとても澄んでいて嘘偽りのない言葉だと分かると嬉しくなった。それと同時に羨ましくもなる。私もこんな風になりたいものだと思いながらカップに口をつけたのだった。
その日の午後、王宮にある庭園ではお茶会が開かれていた。
両親までは呼ばないにしても身内だけではやろうと殿下が慎ましやかなパーティーを準備されたのだ。
参加メンバーは私とアリシアを含めて五人である。まずは主催者の王太子殿下とその婚約者の公爵令嬢の私だ。次に私の親友となったアリシアとメイド長のエマがいる。今日は彼女達もドレスを着ていた。
最後に私の姉のエルナというメンバーだ。私達は同じテーブルについて紅茶を飲みながら談笑していた。
(ああ、幸せだわ……)
こうして大切な人達に囲まれて過ごす時間はとても充実していた。何より大好きな人達に囲まれているのだから尚更だ。
(本当に幸せ……)
それからしばらくして話題が尽きたのか誰も何も喋らなくなった時、不意に姉が話しかけてきた。
「おめでとう。それにしても婚約破棄と聞いた時はどうしたのかと思ったけど無事によりを戻せて良かったわね」
それを聞いて私は苦笑した。
(ああ、そういえばあの時は大変だったなあ……)
あれももう今から一年ほど前のことになる。ある日突然、殿下から言われたのだ。
『婚約を破棄する』
と……最初は何を言っているのか理解できなかったが、徐々に頭が理解していくにつれて涙が止まらなかった。
悲しくて悔しくて……その日は一日中泣き続けたのだ。
しかし、それから数日経つと今度は怒りが込み上げてきた。あんなに好きだったのにどうして簡単に捨てられるのか理解できないからだ。
あんなに尽くしていたのにどうして捨てられたのか納得できないからだ。それ以来、私は彼に対して不信感を抱くようになった。
家を飛び出し冒険者になってこんな国は滅びればいいと思った事さえあった。
しかし、それももう終わった過去の話だ。今はこうして一緒に過ごしているだけで満足できるのだからそれでいいと思っている。それに今の私にはもっと大事なものがあるから……
そう思っていると、隣に座るアリシアが言った。
「殿下ったら大袈裟ですよ!」
(あら?)
不思議に思って首を傾げると続けて言った。
「婚約を破棄するなんて軽々しく言っていいことじゃないんですからね!」
「悪かったよ……」
「でもまあ、結果的にはこれで良かったですけどね」
「……どういうことだい?」
すると彼女は頬を赤く染めながら言った。
「だって……今の方がずっとお二人とも幸せそうですから」
それを聞いた瞬間、私の心は喜びに満ち溢れた。そして同時に確信する。やはり私は殿下と結ばれる運命なのだと……
(アリシア……あなたも祝福してくれるのね!!)
嬉しくて涙が出そうになるがぐっと堪える。ここで泣いたりしたらせっかくのムードが崩れてしまうと思ったからだ。
そんなことを考えているうちに話は進んでいく。いつの間にか話題は変わっていたようだ。皆で楽しくおしゃべりしていると時間はあっという間に過ぎていったのだった。
「ねえ、アリシア。今日はどんな日かな?」
「はい、シャーロット様。そうですね……殿下は休日だからお部屋におられるんじゃないでしょうか?」
「そうよね! それじゃあさ……」
彼女と顔を見合わせると私たちはイタズラっぽく笑った。それから走り出したのだった。
(早く殿下のところに行こう!)
「シャーロット様、楽しそうですね」
「アリシアこそ」
廊下を駆け抜けながら話しているとあっという間に目的地へ到着した。そこで私たちは息を切らせながら声をかけた。
「殿下、失礼いたします!」
中に入ると、そこには椅子に座っている彼がいた。どうやら読書中だったらしい。彼はこちらに気づくと声をかけてきた。
「やあ、アリシアにシャーロットじゃないか。僕に何か用でもあったのかい?」
私は大きく深呼吸をすると本題を切り出した。
「殿下、今日はどんな日でしょうか?」
彼は少し考えると答えてくれた。
「うーん、そうだね……僕たちが出会った記念日かな」
(えっ?)
予想していなかった答えに戸惑いながらも、私は殿下の答えを反芻した。
(出会った記念日か……確かにそうかもしれないわね)
「そうですね、その通りです! 私たちの出会いを記念して祝うべきです」
私が同意するように頷くと、隣にいたアリシアも頷いた。彼女も同意してくれるようだ。
「そうかい? なら、早速準備をしないとね。そうだ、いっそ両親も呼んで盛大にお祝いしないかい?」
「え……?」
思わぬ提案に固まってしまったが、それでもなんとか返事をすることができた。
「えっ!? あ、いえ、そこまでは遠慮しておきますわ……」
慌てて断ると、アリシアを連れてその場から逃げ出したのだった。
その後、私たちは二人でのんびりお茶を飲んでいた。
「ねえ、アリシア? さっきの話だけど……」
「はい、なんでしょうか?」
「さっきはごめんなさいね。せっかくの話を断ったりして。なんだか恥ずかしくなっちゃって……」
「大丈夫ですよ! それよりも私まで誘ってくださって嬉しかったです」
「そ、そうかしら……」
照れ臭くなって顔を背けたが、ふと気になったことがあったので聞いてみた。
「ねえ、あなたは殿下のことをどう思ってるのかしら?」
アリシアは少し考えてから口を開いた。
「私にとって一番大切な方ですね」
彼女の瞳はとても澄んでいて嘘偽りのない言葉だと分かると嬉しくなった。それと同時に羨ましくもなる。私もこんな風になりたいものだと思いながらカップに口をつけたのだった。
その日の午後、王宮にある庭園ではお茶会が開かれていた。
両親までは呼ばないにしても身内だけではやろうと殿下が慎ましやかなパーティーを準備されたのだ。
参加メンバーは私とアリシアを含めて五人である。まずは主催者の王太子殿下とその婚約者の公爵令嬢の私だ。次に私の親友となったアリシアとメイド長のエマがいる。今日は彼女達もドレスを着ていた。
最後に私の姉のエルナというメンバーだ。私達は同じテーブルについて紅茶を飲みながら談笑していた。
(ああ、幸せだわ……)
こうして大切な人達に囲まれて過ごす時間はとても充実していた。何より大好きな人達に囲まれているのだから尚更だ。
(本当に幸せ……)
それからしばらくして話題が尽きたのか誰も何も喋らなくなった時、不意に姉が話しかけてきた。
「おめでとう。それにしても婚約破棄と聞いた時はどうしたのかと思ったけど無事によりを戻せて良かったわね」
それを聞いて私は苦笑した。
(ああ、そういえばあの時は大変だったなあ……)
あれももう今から一年ほど前のことになる。ある日突然、殿下から言われたのだ。
『婚約を破棄する』
と……最初は何を言っているのか理解できなかったが、徐々に頭が理解していくにつれて涙が止まらなかった。
悲しくて悔しくて……その日は一日中泣き続けたのだ。
しかし、それから数日経つと今度は怒りが込み上げてきた。あんなに好きだったのにどうして簡単に捨てられるのか理解できないからだ。
あんなに尽くしていたのにどうして捨てられたのか納得できないからだ。それ以来、私は彼に対して不信感を抱くようになった。
家を飛び出し冒険者になってこんな国は滅びればいいと思った事さえあった。
しかし、それももう終わった過去の話だ。今はこうして一緒に過ごしているだけで満足できるのだからそれでいいと思っている。それに今の私にはもっと大事なものがあるから……
そう思っていると、隣に座るアリシアが言った。
「殿下ったら大袈裟ですよ!」
(あら?)
不思議に思って首を傾げると続けて言った。
「婚約を破棄するなんて軽々しく言っていいことじゃないんですからね!」
「悪かったよ……」
「でもまあ、結果的にはこれで良かったですけどね」
「……どういうことだい?」
すると彼女は頬を赤く染めながら言った。
「だって……今の方がずっとお二人とも幸せそうですから」
それを聞いた瞬間、私の心は喜びに満ち溢れた。そして同時に確信する。やはり私は殿下と結ばれる運命なのだと……
(アリシア……あなたも祝福してくれるのね!!)
嬉しくて涙が出そうになるがぐっと堪える。ここで泣いたりしたらせっかくのムードが崩れてしまうと思ったからだ。
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