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第2章
第22話
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決意を新たにした後で部屋に戻ると殿下が待ち構えており、先程の件について問い詰められることになった。最初は適当に誤魔化そうとしたのだが陛下との会話の一部始終を知っている殿下が相手では隠し通すことができず、洗いざらい白状させられた私はついに覚悟を決めることにした。
「……わかりました。もう隠しても無駄でしょうし、正直に申し上げましょう」
そう前置きしてから、私は自分が転生者であることやこの国の未来について知っていることを包み隠さずに伝えた。
「そっか……じゃあ、やっぱり君は僕達の敵だったということだね」
それを聞いた殿下は冷めた目つきでこちらを見つめながらそう言った。
「はい、その通りです。私はあなたのことが嫌いなので殺したいと思っています」
私がはっきりとそう告げると、彼は驚いたような表情を浮かべた後にどこか寂しげに微笑みながら言った。
「そうか……残念だけど仕方ないね。でも、できればもう少し早く教えて欲しかったかな……そうすればこんなに悩まなくて済んだかもしれないのにさ……」
「それは……申し訳ありません。でもよく考えてください。仮にあなたが真実を知ったところで何かが変わるわけではないはずですよ? それに、あなたには何もできないと思いますし……」
「うん、確かに君の言う通りだと思うよ。でも、それでも知りたかったんだ。たとえ意味が無いとわかっていても自分の意思で選択してみたかったんだ。そうしなければ、きっと後悔してしまうと思ったから……」
そう言いながら俯く姿を見ていると胸が締め付けられるような気がしたが、私はあえて冷たい態度を取ることに決めた。
「……そうですか。でしたら、どうぞご自由に。ただし、邪魔だけはしないでくださいね? 私も全力で阻止しますので」
「ああ、もちろんだとも。君に危害を加えるつもりは無いけど、もし邪魔をするなら容赦はしないから安心してくれていいよ」
お互いに笑顔で牽制し合っていると不意に扉をノックする音が響いたので振り返ると、そこには殿下の専属メイドであるアリシアの姿があった。
どことなくかつてのアリスを思い出す背格好でドキッとしてしまうが知らない間柄ではない。
彼女はこちらの様子を窺うように見つめていたので、私は慌てて取り繕いながら話しかけることにした。
「あら、アリシアじゃない。どうかしたの?」
すると、アリシアは躊躇いがちに口を開いた。
「はい、実はシャーロット様にお渡ししたいものがありまして……今よろしいでしょうか?」
「ええ、構わないわ。何なのかしら?」
「ありがとうございます。こちらをシャーロット様に差し上げたくて持ってきたのですが、受け取って頂けますか……?」
そう言って彼女が差し出してきたものを受け取ると、綺麗に包装された箱のようなものだった。
「これは?」
「はい、クッキーです。お口に合うと良いのですが……」
「そうなのね……ありがとう、とても嬉しいわ」
素直な気持ちを伝えるとアリシアはとても嬉しそうな笑みを浮かべたので、つられて笑っていると横から冷ややかな視線を感じたためそちらを見ると殿下が不機嫌そうな顔をしながらじっと睨んでいたので、仕方なく彼にも勧めることにしてみた。
「殿下もいかがですか?」
「……いや、遠慮しておくよ」
「そうですか……せっかく作ってきてくれたというのに、もったいないですね」
「……は?」
「えっ!?」
私がわざとらしくそう言うと二人は揃って間の抜けた声を上げた後で硬直してしまっていたので、私は笑いを堪えるのに必死だった。そして、ようやく二人が我に返ったのを見計らって声を掛けた。
「ふふっ、冗談ですよ。本当は私より殿下に食べて欲しいんですよね?」
「えっ!? ち、違います! 私は別にそんなつもりでは……!」
「そうかい? 僕はむしろアリシアの作ったものなら食べたいと思っているんだけど」
「えっ!?」
「へぇ、意外ですね。殿下は甘いものが苦手だと思っていたんですが」
「まぁ、どちらかと言えばそうかもね。でも、折角だから貰おうかな」
「はい、わかりました。では、お皿を用意しますので少々お待ちください」
そうしてお皿に盛り付けてから手渡すと、彼は黙々と美味しそうに食べ始めたので私は満足げに見つめていた。
「うん、これはおいしいね。ありがとう、アリシア」
「いえ、喜んで頂けたようで何よりです」
「本当にありがとうね。殿下のためにわざわざ用意してくれたなんて、感激だわ」
「いえ、大したことではありませんので気になさらないでください」
「そう……ちなみに、私の分はないのかしら……?」
恐る恐る尋ねると、彼女は呆れたような表情を浮かべながら答えてくれた。
「え? あれ? もうない? いえ、ちゃんとお作りしていますから。ただ、厨房に置いてきてしまっただけなので、すぐに取って参りますから待っていてください」
「あ、ありがとう! 無理を言ったかしら……」
それからしばらくして戻ってきた彼女に渡されたクッキーを口に運ぶと、優しい甘さが広がって幸せな気分になった。
「ん~! やっぱりアリシアのお菓子は最高だわ! 店でも開けるんじゃない?」
「そう言っていただけると嬉しいです。またいつでもお持ちしますから、遠慮せずに仰ってください」
「本当? その時はぜひお願いするわね!」
「はい、わかりました」
こうして和気あいあいとした雰囲気の中でお茶会を終えた私は部屋に戻ることにしたのだが、廊下に出るなり殿下が真剣な表情で話しかけてきた。
「ねえ、一つ聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「はい、なんでしょう?」
「君はどうして帰ってきたんだい? はっきり言って、僕のことを憎んでいるはずだよね?」
「……そうですね。正直に言えば今でも殺したいと思っていますし、この国を滅ぼしたいとさえ思っています」
「それなら、何故なんだ? 正直に言って理解に苦しむよ……」
彼は困惑している様子だったが、私にも彼のことが理解できるとは思えなかったのでそのまま話を続けることにした。
「……それはきっと、あなたがこの国の王子で私がその婚約者だったからでしょう。きっと、それだけのことですよ。あなたにとってはくだらないことかもしれませんが、私には重要なことだったのです。だって、私はあなたのことが嫌いでしたけどそれ以上に好きだったから……」
「そうか……君は僕のことを愛してくれていたというわけだね」
「……そうですね。でも、今はもうどうでもいいことですけど」
「……そっか。それなら良かったよ」
彼はどこかほっとしているような表情を浮かべていたので不思議に思いながらも、私は自室へと戻った。
「……わかりました。もう隠しても無駄でしょうし、正直に申し上げましょう」
そう前置きしてから、私は自分が転生者であることやこの国の未来について知っていることを包み隠さずに伝えた。
「そっか……じゃあ、やっぱり君は僕達の敵だったということだね」
それを聞いた殿下は冷めた目つきでこちらを見つめながらそう言った。
「はい、その通りです。私はあなたのことが嫌いなので殺したいと思っています」
私がはっきりとそう告げると、彼は驚いたような表情を浮かべた後にどこか寂しげに微笑みながら言った。
「そうか……残念だけど仕方ないね。でも、できればもう少し早く教えて欲しかったかな……そうすればこんなに悩まなくて済んだかもしれないのにさ……」
「それは……申し訳ありません。でもよく考えてください。仮にあなたが真実を知ったところで何かが変わるわけではないはずですよ? それに、あなたには何もできないと思いますし……」
「うん、確かに君の言う通りだと思うよ。でも、それでも知りたかったんだ。たとえ意味が無いとわかっていても自分の意思で選択してみたかったんだ。そうしなければ、きっと後悔してしまうと思ったから……」
そう言いながら俯く姿を見ていると胸が締め付けられるような気がしたが、私はあえて冷たい態度を取ることに決めた。
「……そうですか。でしたら、どうぞご自由に。ただし、邪魔だけはしないでくださいね? 私も全力で阻止しますので」
「ああ、もちろんだとも。君に危害を加えるつもりは無いけど、もし邪魔をするなら容赦はしないから安心してくれていいよ」
お互いに笑顔で牽制し合っていると不意に扉をノックする音が響いたので振り返ると、そこには殿下の専属メイドであるアリシアの姿があった。
どことなくかつてのアリスを思い出す背格好でドキッとしてしまうが知らない間柄ではない。
彼女はこちらの様子を窺うように見つめていたので、私は慌てて取り繕いながら話しかけることにした。
「あら、アリシアじゃない。どうかしたの?」
すると、アリシアは躊躇いがちに口を開いた。
「はい、実はシャーロット様にお渡ししたいものがありまして……今よろしいでしょうか?」
「ええ、構わないわ。何なのかしら?」
「ありがとうございます。こちらをシャーロット様に差し上げたくて持ってきたのですが、受け取って頂けますか……?」
そう言って彼女が差し出してきたものを受け取ると、綺麗に包装された箱のようなものだった。
「これは?」
「はい、クッキーです。お口に合うと良いのですが……」
「そうなのね……ありがとう、とても嬉しいわ」
素直な気持ちを伝えるとアリシアはとても嬉しそうな笑みを浮かべたので、つられて笑っていると横から冷ややかな視線を感じたためそちらを見ると殿下が不機嫌そうな顔をしながらじっと睨んでいたので、仕方なく彼にも勧めることにしてみた。
「殿下もいかがですか?」
「……いや、遠慮しておくよ」
「そうですか……せっかく作ってきてくれたというのに、もったいないですね」
「……は?」
「えっ!?」
私がわざとらしくそう言うと二人は揃って間の抜けた声を上げた後で硬直してしまっていたので、私は笑いを堪えるのに必死だった。そして、ようやく二人が我に返ったのを見計らって声を掛けた。
「ふふっ、冗談ですよ。本当は私より殿下に食べて欲しいんですよね?」
「えっ!? ち、違います! 私は別にそんなつもりでは……!」
「そうかい? 僕はむしろアリシアの作ったものなら食べたいと思っているんだけど」
「えっ!?」
「へぇ、意外ですね。殿下は甘いものが苦手だと思っていたんですが」
「まぁ、どちらかと言えばそうかもね。でも、折角だから貰おうかな」
「はい、わかりました。では、お皿を用意しますので少々お待ちください」
そうしてお皿に盛り付けてから手渡すと、彼は黙々と美味しそうに食べ始めたので私は満足げに見つめていた。
「うん、これはおいしいね。ありがとう、アリシア」
「いえ、喜んで頂けたようで何よりです」
「本当にありがとうね。殿下のためにわざわざ用意してくれたなんて、感激だわ」
「いえ、大したことではありませんので気になさらないでください」
「そう……ちなみに、私の分はないのかしら……?」
恐る恐る尋ねると、彼女は呆れたような表情を浮かべながら答えてくれた。
「え? あれ? もうない? いえ、ちゃんとお作りしていますから。ただ、厨房に置いてきてしまっただけなので、すぐに取って参りますから待っていてください」
「あ、ありがとう! 無理を言ったかしら……」
それからしばらくして戻ってきた彼女に渡されたクッキーを口に運ぶと、優しい甘さが広がって幸せな気分になった。
「ん~! やっぱりアリシアのお菓子は最高だわ! 店でも開けるんじゃない?」
「そう言っていただけると嬉しいです。またいつでもお持ちしますから、遠慮せずに仰ってください」
「本当? その時はぜひお願いするわね!」
「はい、わかりました」
こうして和気あいあいとした雰囲気の中でお茶会を終えた私は部屋に戻ることにしたのだが、廊下に出るなり殿下が真剣な表情で話しかけてきた。
「ねえ、一つ聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「はい、なんでしょう?」
「君はどうして帰ってきたんだい? はっきり言って、僕のことを憎んでいるはずだよね?」
「……そうですね。正直に言えば今でも殺したいと思っていますし、この国を滅ぼしたいとさえ思っています」
「それなら、何故なんだ? 正直に言って理解に苦しむよ……」
彼は困惑している様子だったが、私にも彼のことが理解できるとは思えなかったのでそのまま話を続けることにした。
「……それはきっと、あなたがこの国の王子で私がその婚約者だったからでしょう。きっと、それだけのことですよ。あなたにとってはくだらないことかもしれませんが、私には重要なことだったのです。だって、私はあなたのことが嫌いでしたけどそれ以上に好きだったから……」
「そうか……君は僕のことを愛してくれていたというわけだね」
「……そうですね。でも、今はもうどうでもいいことですけど」
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彼はどこかほっとしているような表情を浮かべていたので不思議に思いながらも、私は自室へと戻った。
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