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第1章
第14話
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その後、私達は食堂へ向かうと既に両親達が席に座っていたので挨拶をしてから席についた。そして食事を始めたのだが、そこでふとあることに気がついた。
なぜかアリスと名乗ったあの少女も一緒に席に着いているのだ。しかも、さも当たり前のように振る舞っている姿を見て戸惑っていると、父が口を開いた。
「そういえばシャ―ロット、あの子は一体誰なのかな? お前について入ってきたのだが」
父の質問にどう答えたものか迷った私は言葉に詰まってしまったが、代わりに姉が質問に答えてくれた。
「あの子なら私の知り合いですよお父様。ちょっと訳あってしばらく屋敷で預かることになったんです」
それを聞いて納得したのか父は頷いていた。だが、内心では納得していないように思えたので不安になっていると、不意に声をかけられた。
振り向くとそこには満面の笑みを浮かべているアリスの姿があった。それを見た私はドキッとした。というのも、その笑顔がとても可愛らしく見えたからだ。思わず見惚れていると、彼女が再び声をかけてきた。
「どうかしたの?」
首を傾げながら聞いてくる姿が愛らしくてつい見とれてしまったが、何とか平静を装って返事をした。
「いえ……何でもないわ」
すると、彼女は微笑みながら言った。
「そっか、それならいいんだけど……」
それからしばらくの間沈黙が続いたのだが、その間もずっと見つめられていたので落ち着かなかった。それに気づいた母が咳払いをすると、皆の視線が一斉にそちらを向いた。母は私達を見回した後で静かに告げた。
「二人とも仲良くするのはいいけど、今は食事をしている最中だということを忘れないようにね」
その言葉に私達は素直に謝罪の言葉を述べた。すると、母は笑顔を浮かべて許してくれたのでホッと胸を撫で下ろしていた。そしてその後は何事もなく食事を終えた後で皆でお茶をすることになった。
ちなみにアリスはというと、当然のように私の隣に座っていた。最初は戸惑っていたが、今ではすっかり慣れてしまっていた。それどころか居心地の良さすら感じている自分がいて不思議に思っていたが、悪い気はしなかったので気にしないことにした。
それからしばらくの間談笑していたのだが、ふいに扉がノックされたかと思うとメイド長のエマが入ってきた。その手には大きな箱を持っているのが見えたので気になって声をかけた。
「エマさん、それは何ですか?」
そう訊ねると、彼女は微笑みを浮かべながら答えてくれた。
「これはお嬢様への贈り物でございます」
そう言うと、テーブルの上に置いた箱をゆっくりと開けた。その中には真っ白なドレスが入っていた。それを見た私は驚きのあまり固まってしまっていたが、すぐに我に返ると訊ねてみた。
「あの……もしかしてこのドレスは私にですか?」
すると、エマは静かに頷いた後で説明してくれた。
なんでも、今朝方届いたばかりの物らしくサイズもピッタリだということだったので早速着てみることにした。着替えを手伝ってもらいながら自分の姿を確認したのだが、鏡に映るその姿はまるで別人のように感じられた。
今まで着ていた服とは比べものにならないくらい綺麗なドレスに見惚れていると、いつの間にか隣に立っていた姉が声をかけてきた。
「よく似合っているわよシャ―ロット」
「あ、ありがとうございます……」
照れながら礼を言うと、姉はクスクスと笑った後で言った。
「さあ、そろそろ時間だから行きましょうか」
その言葉を合図に皆が立ち上がったのを見て私も慌てて立ち上がると、姉の後について行った。部屋を出る前に振り返ってみると、そこには笑みを浮かべて立っているアリスの姿があった。その姿を見た瞬間、胸が高鳴るのを感じた私は動揺しながらも心の中で言い聞かせた。
(落ち着け私……相手は子供なんだから変なことを考えるんじゃない)
そう自分に言い聞かせることでなんとか冷静さを取り戻すことに成功した私は前を向いて歩き始めた。これから何が起きるのかわからないまま……。
なぜかアリスと名乗ったあの少女も一緒に席に着いているのだ。しかも、さも当たり前のように振る舞っている姿を見て戸惑っていると、父が口を開いた。
「そういえばシャ―ロット、あの子は一体誰なのかな? お前について入ってきたのだが」
父の質問にどう答えたものか迷った私は言葉に詰まってしまったが、代わりに姉が質問に答えてくれた。
「あの子なら私の知り合いですよお父様。ちょっと訳あってしばらく屋敷で預かることになったんです」
それを聞いて納得したのか父は頷いていた。だが、内心では納得していないように思えたので不安になっていると、不意に声をかけられた。
振り向くとそこには満面の笑みを浮かべているアリスの姿があった。それを見た私はドキッとした。というのも、その笑顔がとても可愛らしく見えたからだ。思わず見惚れていると、彼女が再び声をかけてきた。
「どうかしたの?」
首を傾げながら聞いてくる姿が愛らしくてつい見とれてしまったが、何とか平静を装って返事をした。
「いえ……何でもないわ」
すると、彼女は微笑みながら言った。
「そっか、それならいいんだけど……」
それからしばらくの間沈黙が続いたのだが、その間もずっと見つめられていたので落ち着かなかった。それに気づいた母が咳払いをすると、皆の視線が一斉にそちらを向いた。母は私達を見回した後で静かに告げた。
「二人とも仲良くするのはいいけど、今は食事をしている最中だということを忘れないようにね」
その言葉に私達は素直に謝罪の言葉を述べた。すると、母は笑顔を浮かべて許してくれたのでホッと胸を撫で下ろしていた。そしてその後は何事もなく食事を終えた後で皆でお茶をすることになった。
ちなみにアリスはというと、当然のように私の隣に座っていた。最初は戸惑っていたが、今ではすっかり慣れてしまっていた。それどころか居心地の良さすら感じている自分がいて不思議に思っていたが、悪い気はしなかったので気にしないことにした。
それからしばらくの間談笑していたのだが、ふいに扉がノックされたかと思うとメイド長のエマが入ってきた。その手には大きな箱を持っているのが見えたので気になって声をかけた。
「エマさん、それは何ですか?」
そう訊ねると、彼女は微笑みを浮かべながら答えてくれた。
「これはお嬢様への贈り物でございます」
そう言うと、テーブルの上に置いた箱をゆっくりと開けた。その中には真っ白なドレスが入っていた。それを見た私は驚きのあまり固まってしまっていたが、すぐに我に返ると訊ねてみた。
「あの……もしかしてこのドレスは私にですか?」
すると、エマは静かに頷いた後で説明してくれた。
なんでも、今朝方届いたばかりの物らしくサイズもピッタリだということだったので早速着てみることにした。着替えを手伝ってもらいながら自分の姿を確認したのだが、鏡に映るその姿はまるで別人のように感じられた。
今まで着ていた服とは比べものにならないくらい綺麗なドレスに見惚れていると、いつの間にか隣に立っていた姉が声をかけてきた。
「よく似合っているわよシャ―ロット」
「あ、ありがとうございます……」
照れながら礼を言うと、姉はクスクスと笑った後で言った。
「さあ、そろそろ時間だから行きましょうか」
その言葉を合図に皆が立ち上がったのを見て私も慌てて立ち上がると、姉の後について行った。部屋を出る前に振り返ってみると、そこには笑みを浮かべて立っているアリスの姿があった。その姿を見た瞬間、胸が高鳴るのを感じた私は動揺しながらも心の中で言い聞かせた。
(落ち着け私……相手は子供なんだから変なことを考えるんじゃない)
そう自分に言い聞かせることでなんとか冷静さを取り戻すことに成功した私は前を向いて歩き始めた。これから何が起きるのかわからないまま……。
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