AIの書いた婚約破棄

けろよん

文字の大きさ
上 下
9 / 28
第1章

第9話

しおりを挟む
(嘘だ……)

 心の中でそう呟いた時、ある光景が脳裏に浮かんだ。それはウィルの最期の姿だった。あの時、確かに目の前で息絶えていく彼をこの目で見ていたのだ。それを思い出した瞬間、涙が溢れてきた。あの時のことを思い出してしまったのだ。

(ああ、そうか……そういう事だったんだ……)

 そこでようやく理解した。今までの違和感の正体が何だったのかを――。なぜ気づかなかったのだろうと思うくらい単純なことだった。今までの出来事は全て夢だったのだ。そうでなければ説明がつかないことばかりだったからだ。その証拠にこうして生きているのだから間違いないだろう。つまりこれは悪夢なのだ。
 そうとわかれば一刻も早く目覚めなければならないと思った私は必死に目を覚まそうとしたが無駄に終わった。何故なら目覚めることができなかったからだ。いくら試しても目が覚める気配すら感じられず途方に暮れていると、突然声が聞こえてきた。

『目が覚めたら全てが終わっているでしょう』

 その声とともに視界が暗転した。その瞬間、私は目を覚ました。そこはベッドの上であり、見覚えのある天井が見えたことから自分の部屋だということがわかった。どうやら眠っていたようだ。
 ゆっくりと起き上がると周囲を見回してみたのだが特に変わった様子はなかった。そのことに安堵しつつも、ふと窓の外を見るとすっかり暗くなっていたのでかなりの時間寝ていたことがわかる。しかし、それよりも気になることがあったため急いで着替えを済ませると部屋を飛び出した。
 向かう先は屋敷の中である。途中すれ違う使用人たちの挨拶を適当に返しつつ急いで向かったのは姉の自室だった。勢いよく扉を開けると驚いた様子の姉と目が合ったのだが構わず詰め寄った。

「姉さん!! ウィル様はどうなったの!?」

 開口一番そう尋ねると、彼女は怪訝そうな顔をしながらも答えてくれた。

「一体どうしたって言うのよ? ウィルなら昨日から遠征に行っていてまだ帰ってきていないわよ」

 それを聞いて愕然とするしかなかった。

(やっぱりあれは夢じゃなかったんだ……)

 ウィルは戦場に行ってしまった。そこでの運命を私はもう知っている。
 絶望に打ちひしがれていると、その様子を見ていた彼女が心配そうに声をかけてきた。

「大丈夫なの? 顔色が悪いみたいだけど……」

 そう言われて顔を上げると、そこには心配そうな表情の彼女の姿があった。その姿を見た瞬間、堪えきれなくなった私は彼女に抱きついて泣きじゃくってしまった。
 いきなりの行動に驚いたのか困惑している様子だったが、それでも何も言わずに優しく抱きしめてくれたので余計に涙が止まらなくなってしまう。
 しばらくして落ち着いたところで改めて聞いてみたのだが、やはり彼女は何も聞かされていないようだった。

(どうしよう……)

 困り果てていると、彼女は苦笑しながら言ってきた。

「何があったのか知らないけど元気出しなさいよね」

 そう言って慰めてくれる姿に嬉しさを覚えつつも、これ以上迷惑をかけるわけにはいかないと思い立ち上がった時だった。
 突然目眩に襲われて倒れそうになったところを彼女に支えられたのである。

「ちょっと本当に大丈夫なの?」

 心配そうな声で聞いてくるので大丈夫だと答えたかったのだが、上手く声が出せなかったので頷くことしかできなかった。それを見た彼女は呆れ顔で言った。

「今日はもう休みなさい。話は明日聞くから」

 そう言って私をベッドまで運んでくれると、そのまま部屋を出て行ってしまった。一人残された私は、これからどうすればいいのかと考えながら眠りについたのだった――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈 
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

【完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...