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第1章
第9話
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(嘘だ……)
心の中でそう呟いた時、ある光景が脳裏に浮かんだ。それはウィルの最期の姿だった。あの時、確かに目の前で息絶えていく彼をこの目で見ていたのだ。それを思い出した瞬間、涙が溢れてきた。あの時のことを思い出してしまったのだ。
(ああ、そうか……そういう事だったんだ……)
そこでようやく理解した。今までの違和感の正体が何だったのかを――。なぜ気づかなかったのだろうと思うくらい単純なことだった。今までの出来事は全て夢だったのだ。そうでなければ説明がつかないことばかりだったからだ。その証拠にこうして生きているのだから間違いないだろう。つまりこれは悪夢なのだ。
そうとわかれば一刻も早く目覚めなければならないと思った私は必死に目を覚まそうとしたが無駄に終わった。何故なら目覚めることができなかったからだ。いくら試しても目が覚める気配すら感じられず途方に暮れていると、突然声が聞こえてきた。
『目が覚めたら全てが終わっているでしょう』
その声とともに視界が暗転した。その瞬間、私は目を覚ました。そこはベッドの上であり、見覚えのある天井が見えたことから自分の部屋だということがわかった。どうやら眠っていたようだ。
ゆっくりと起き上がると周囲を見回してみたのだが特に変わった様子はなかった。そのことに安堵しつつも、ふと窓の外を見るとすっかり暗くなっていたのでかなりの時間寝ていたことがわかる。しかし、それよりも気になることがあったため急いで着替えを済ませると部屋を飛び出した。
向かう先は屋敷の中である。途中すれ違う使用人たちの挨拶を適当に返しつつ急いで向かったのは姉の自室だった。勢いよく扉を開けると驚いた様子の姉と目が合ったのだが構わず詰め寄った。
「姉さん!! ウィル様はどうなったの!?」
開口一番そう尋ねると、彼女は怪訝そうな顔をしながらも答えてくれた。
「一体どうしたって言うのよ? ウィルなら昨日から遠征に行っていてまだ帰ってきていないわよ」
それを聞いて愕然とするしかなかった。
(やっぱりあれは夢じゃなかったんだ……)
ウィルは戦場に行ってしまった。そこでの運命を私はもう知っている。
絶望に打ちひしがれていると、その様子を見ていた彼女が心配そうに声をかけてきた。
「大丈夫なの? 顔色が悪いみたいだけど……」
そう言われて顔を上げると、そこには心配そうな表情の彼女の姿があった。その姿を見た瞬間、堪えきれなくなった私は彼女に抱きついて泣きじゃくってしまった。
いきなりの行動に驚いたのか困惑している様子だったが、それでも何も言わずに優しく抱きしめてくれたので余計に涙が止まらなくなってしまう。
しばらくして落ち着いたところで改めて聞いてみたのだが、やはり彼女は何も聞かされていないようだった。
(どうしよう……)
困り果てていると、彼女は苦笑しながら言ってきた。
「何があったのか知らないけど元気出しなさいよね」
そう言って慰めてくれる姿に嬉しさを覚えつつも、これ以上迷惑をかけるわけにはいかないと思い立ち上がった時だった。
突然目眩に襲われて倒れそうになったところを彼女に支えられたのである。
「ちょっと本当に大丈夫なの?」
心配そうな声で聞いてくるので大丈夫だと答えたかったのだが、上手く声が出せなかったので頷くことしかできなかった。それを見た彼女は呆れ顔で言った。
「今日はもう休みなさい。話は明日聞くから」
そう言って私をベッドまで運んでくれると、そのまま部屋を出て行ってしまった。一人残された私は、これからどうすればいいのかと考えながら眠りについたのだった――。
心の中でそう呟いた時、ある光景が脳裏に浮かんだ。それはウィルの最期の姿だった。あの時、確かに目の前で息絶えていく彼をこの目で見ていたのだ。それを思い出した瞬間、涙が溢れてきた。あの時のことを思い出してしまったのだ。
(ああ、そうか……そういう事だったんだ……)
そこでようやく理解した。今までの違和感の正体が何だったのかを――。なぜ気づかなかったのだろうと思うくらい単純なことだった。今までの出来事は全て夢だったのだ。そうでなければ説明がつかないことばかりだったからだ。その証拠にこうして生きているのだから間違いないだろう。つまりこれは悪夢なのだ。
そうとわかれば一刻も早く目覚めなければならないと思った私は必死に目を覚まそうとしたが無駄に終わった。何故なら目覚めることができなかったからだ。いくら試しても目が覚める気配すら感じられず途方に暮れていると、突然声が聞こえてきた。
『目が覚めたら全てが終わっているでしょう』
その声とともに視界が暗転した。その瞬間、私は目を覚ました。そこはベッドの上であり、見覚えのある天井が見えたことから自分の部屋だということがわかった。どうやら眠っていたようだ。
ゆっくりと起き上がると周囲を見回してみたのだが特に変わった様子はなかった。そのことに安堵しつつも、ふと窓の外を見るとすっかり暗くなっていたのでかなりの時間寝ていたことがわかる。しかし、それよりも気になることがあったため急いで着替えを済ませると部屋を飛び出した。
向かう先は屋敷の中である。途中すれ違う使用人たちの挨拶を適当に返しつつ急いで向かったのは姉の自室だった。勢いよく扉を開けると驚いた様子の姉と目が合ったのだが構わず詰め寄った。
「姉さん!! ウィル様はどうなったの!?」
開口一番そう尋ねると、彼女は怪訝そうな顔をしながらも答えてくれた。
「一体どうしたって言うのよ? ウィルなら昨日から遠征に行っていてまだ帰ってきていないわよ」
それを聞いて愕然とするしかなかった。
(やっぱりあれは夢じゃなかったんだ……)
ウィルは戦場に行ってしまった。そこでの運命を私はもう知っている。
絶望に打ちひしがれていると、その様子を見ていた彼女が心配そうに声をかけてきた。
「大丈夫なの? 顔色が悪いみたいだけど……」
そう言われて顔を上げると、そこには心配そうな表情の彼女の姿があった。その姿を見た瞬間、堪えきれなくなった私は彼女に抱きついて泣きじゃくってしまった。
いきなりの行動に驚いたのか困惑している様子だったが、それでも何も言わずに優しく抱きしめてくれたので余計に涙が止まらなくなってしまう。
しばらくして落ち着いたところで改めて聞いてみたのだが、やはり彼女は何も聞かされていないようだった。
(どうしよう……)
困り果てていると、彼女は苦笑しながら言ってきた。
「何があったのか知らないけど元気出しなさいよね」
そう言って慰めてくれる姿に嬉しさを覚えつつも、これ以上迷惑をかけるわけにはいかないと思い立ち上がった時だった。
突然目眩に襲われて倒れそうになったところを彼女に支えられたのである。
「ちょっと本当に大丈夫なの?」
心配そうな声で聞いてくるので大丈夫だと答えたかったのだが、上手く声が出せなかったので頷くことしかできなかった。それを見た彼女は呆れ顔で言った。
「今日はもう休みなさい。話は明日聞くから」
そう言って私をベッドまで運んでくれると、そのまま部屋を出て行ってしまった。一人残された私は、これからどうすればいいのかと考えながら眠りについたのだった――。
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