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第1章
第6話
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それからというもの、毎日のように彼と会うようになっていたのだが、その度に体を重ね合ったりしていたせいですっかり虜になってしまっていた。今ではもう彼から与えられる快楽なしでは生きていけないくらいだ。しかし、それを不快に思うことなど一切なく、むしろ幸せを感じていたほどだった。今日もいつものように愛し合っていたのだが、不意に彼に尋ねられた。
「ねえ、君は僕のこと好きかい?」
その問いに私は迷わず答えた。
「うん、大好きだよ!」
それを聞いた彼は満足げな笑みを浮かべた後、再び覆い被さってきた。そのまま行為に及ぼうとしたその時、突然扉が開いて誰かが入ってきた。
驚いてそちらに目を向けると、そこには二人の人物が立っていた。一人は見覚えのある顔だったのですぐに誰なのかわかったが、もう一人は全く知らない人だった。
その女性は私たちの姿を目にするや否や驚きの声を上げた。
「え!? ちょっと、あなた何をしているの!?」
彼女は慌てた様子で近づいてきたかと思うと私と彼を引き離した。それを見てムッとした表情になった彼は抗議するように言った。
「何をするんだよ! せっかくいいところだったのに邪魔しないでくれるかな?」
怒りを含んだ声で言うが、彼女は全く動じていないようだ。それどころか呆れたような表情で言った。
「あのね、ここどこだかわかってる? あなたの家じゃないでしょ? それに、この子は嫌がってるように見えるけど?」
彼女に言われて我に返った私は慌てて否定した。
「ち、違います! 私が望んでしたことですから……」
だが、それでも納得していない様子だった。そんな彼女に対して彼は苛立ったように言う。
「君には関係ないだろ? 早く出て行ってくれないかな?」
それに対し、彼女も負けじと言い返した。
「いいえ、そういうわけにはいかないわ。だってこの子は私の妹なんだから」
その言葉に衝撃を受けた私は思わず叫んでしまった。
「嘘です! 私、あなたのことなんて知りません!」
必死に否定するも無駄だった。なぜなら彼女の言葉が真実だからだ。その証拠に、彼が笑いを堪えているのが見えたからである。
その様子を見て確信に変わった。やはり間違いないようだ。目の前の女性が実の姉なのだと――。
その事実を知ったことで絶望感に苛まれていると、いつの間にか彼女が近づいてきて耳元で囁いた。
「ごめんね、騙すつもりはなかったのよ」
そう言って優しく頭を撫でてくれるその手つきに安心感を覚えると同時に疑問を抱いた。何故、こんなことをしたのだろうか?
理由を尋ねようとしたところで先に彼女が口を開いた。
「実はね、前からあなたのことが気になっていたのよ。それで調べてみたらあなたがあの人の娘だとわかって、どうしても欲しくなっちゃったのよね……でも安心してちょうだい。これからはずっと一緒にいてあげるからね」
そう言いながら抱きしめられる。その温もりはどこか懐かしい感じがした。まるで母親に抱かれているような心地良さを感じてしまい、自然と身を委ねていた。
しばらくそうしていたが、ふと我に返って慌てて離れようとするも既に遅かったようでしっかりと抱きつかれてしまっていた。
抜け出そうと藻掻いている間に、今度は背後から別の声が聞こえてきた。振り返るとそこにいたのはもう一人の男性だった。
「やあ、こんにちは」
にこやかに話しかけてくるその人物に見覚えはなかった。戸惑っていると彼女から紹介があった。
「紹介するわね。この人は私たちの新しいご主人様よ」
その言葉に愕然とするしかなかった。まさかこんなことになるなんて思いもしなかったのだ。ショックのあまり言葉を失っている私に向かって彼は言った。
「これからよろしくね」
その言葉を聞いた瞬間、目の前が真っ暗になった気がした――。
「ねえ、君は僕のこと好きかい?」
その問いに私は迷わず答えた。
「うん、大好きだよ!」
それを聞いた彼は満足げな笑みを浮かべた後、再び覆い被さってきた。そのまま行為に及ぼうとしたその時、突然扉が開いて誰かが入ってきた。
驚いてそちらに目を向けると、そこには二人の人物が立っていた。一人は見覚えのある顔だったのですぐに誰なのかわかったが、もう一人は全く知らない人だった。
その女性は私たちの姿を目にするや否や驚きの声を上げた。
「え!? ちょっと、あなた何をしているの!?」
彼女は慌てた様子で近づいてきたかと思うと私と彼を引き離した。それを見てムッとした表情になった彼は抗議するように言った。
「何をするんだよ! せっかくいいところだったのに邪魔しないでくれるかな?」
怒りを含んだ声で言うが、彼女は全く動じていないようだ。それどころか呆れたような表情で言った。
「あのね、ここどこだかわかってる? あなたの家じゃないでしょ? それに、この子は嫌がってるように見えるけど?」
彼女に言われて我に返った私は慌てて否定した。
「ち、違います! 私が望んでしたことですから……」
だが、それでも納得していない様子だった。そんな彼女に対して彼は苛立ったように言う。
「君には関係ないだろ? 早く出て行ってくれないかな?」
それに対し、彼女も負けじと言い返した。
「いいえ、そういうわけにはいかないわ。だってこの子は私の妹なんだから」
その言葉に衝撃を受けた私は思わず叫んでしまった。
「嘘です! 私、あなたのことなんて知りません!」
必死に否定するも無駄だった。なぜなら彼女の言葉が真実だからだ。その証拠に、彼が笑いを堪えているのが見えたからである。
その様子を見て確信に変わった。やはり間違いないようだ。目の前の女性が実の姉なのだと――。
その事実を知ったことで絶望感に苛まれていると、いつの間にか彼女が近づいてきて耳元で囁いた。
「ごめんね、騙すつもりはなかったのよ」
そう言って優しく頭を撫でてくれるその手つきに安心感を覚えると同時に疑問を抱いた。何故、こんなことをしたのだろうか?
理由を尋ねようとしたところで先に彼女が口を開いた。
「実はね、前からあなたのことが気になっていたのよ。それで調べてみたらあなたがあの人の娘だとわかって、どうしても欲しくなっちゃったのよね……でも安心してちょうだい。これからはずっと一緒にいてあげるからね」
そう言いながら抱きしめられる。その温もりはどこか懐かしい感じがした。まるで母親に抱かれているような心地良さを感じてしまい、自然と身を委ねていた。
しばらくそうしていたが、ふと我に返って慌てて離れようとするも既に遅かったようでしっかりと抱きつかれてしまっていた。
抜け出そうと藻掻いている間に、今度は背後から別の声が聞こえてきた。振り返るとそこにいたのはもう一人の男性だった。
「やあ、こんにちは」
にこやかに話しかけてくるその人物に見覚えはなかった。戸惑っていると彼女から紹介があった。
「紹介するわね。この人は私たちの新しいご主人様よ」
その言葉に愕然とするしかなかった。まさかこんなことになるなんて思いもしなかったのだ。ショックのあまり言葉を失っている私に向かって彼は言った。
「これからよろしくね」
その言葉を聞いた瞬間、目の前が真っ暗になった気がした――。
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