今年もハロウィン

けろよん

文字の大きさ
上 下
1 / 1

トリックオアトリート

しおりを挟む
 今年もハロウィンの季節がやってきた。去年は脅しに屈してお菓子をあげてしまったが、今年は絶対にあげないぞ。
 そう決意する僕のところへ早速仮装した女の子がやってきた。
 行動が早いな。そんなにお菓子が欲しいのか。彼女は無邪気な明るい顔で僕に向かって言ってきた。

「トリックオアトリート! お菓子をくれなきゃいたずらしちゃうぞ!」

 ここで『お菓子はやらんぞ! いたずらするならしてみやがれ!』と強気に言えればいいのだが、臆病な僕は

「お菓子はありません……」

 と弱気になってしまう。すると女の子は少し困ったような挑発的な顔をして言った。

「ふーん。じゃあ、いたずらしちゃおうかなあ」

 そしてその子は悪戯っぽく微笑みながら僕に近づいてきた。

「何をするつもりなんだ。やるならやってみるといい。でも、優しくして……」
「大丈夫大丈夫、私のいたずらは優しいからね」
「本当か?」
「うん。ほらそこにしゃがんで……」

 これは悪魔の囁きだ。彼女は仮装ではなく本物の魔女なんだ。僕はそうと察していながらも逆らう事はできず、彼女の言う通りにしてしまう。
 彼女がしゃがんだ僕の耳元に口を近づけて囁く。

「お兄さんが悪いんだよ。私にお菓子をくれないからいたずらされちゃうんだ」
「くっ……」

 お菓子ならそこのテーブルの上にあるが……僕は今年は絶対に渡さないと決めてるんだ。覚悟してぎゅっと目を閉じるが、恐れているいたずらはなかなか来ない。
 恐る恐る目を開けると、彼女の姿が消えていた。

「いない。あの子はどこに行ったんだ……?」

 辺りをうかがい背後を振り返ると彼女はそこにいた。テーブルの上にあったお菓子を意気揚々と取り上げていた。

「お菓子ここにあるじゃない。もらっていくね!」
「待て! お菓子を返せ!」
「だーめ、お菓子をくれなきゃいたずらするって言ったじゃん」
「奪われてたまるか!」
「それじゃあお菓子ありがたく頂戴します。バイバーイ!」

 彼女は颯爽と立ち去っていった。

「お菓子取られた……」

 僕は呆然と立ち尽くし、

「それじゃあ、いたずらしまーす」

 いつの間にか背後に回り込んでいた彼女の仲間達にいたずらまでされていったのだった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

入れ替わり家族

廣瀬純一
大衆娯楽
家族の体が毎日入れ替わる話

私とHしませんか?

あかせ2
大衆娯楽
夏休み目前の7月上旬のある日。坂巻 登(さかまき のぼる)がいつも通り登校してから机の中を確認すると、そこにHのお誘いのメモが入っていて…。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

5行で終わる短編笑い話

てんしゅー
大衆娯楽
ふと浮かんだちょっとしたアイデアを全部5行にまとめます。初期設定のままならちゃんと5行になっているはずです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

兄になった姉

廣瀬純一
大衆娯楽
催眠術で自分の事を男だと思っている姉の話

赤毛の行商人

ひぐらしゆうき
大衆娯楽
赤茶の髪をした散切り頭、珍品を集めて回る行商人カミノマ。かつて父の持ち帰った幻の一品「虚空の器」を求めて国中を巡り回る。 現実とは少し異なる19世紀末の日本を舞台とした冒険物語。

処理中です...