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トリックオアトリート
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今年もハロウィンの季節がやってきた。去年は脅しに屈してお菓子をあげてしまったが、今年は絶対にあげないぞ。
そう決意する僕のところへ早速仮装した女の子がやってきた。
行動が早いな。そんなにお菓子が欲しいのか。彼女は無邪気な明るい顔で僕に向かって言ってきた。
「トリックオアトリート! お菓子をくれなきゃいたずらしちゃうぞ!」
ここで『お菓子はやらんぞ! いたずらするならしてみやがれ!』と強気に言えればいいのだが、臆病な僕は
「お菓子はありません……」
と弱気になってしまう。すると女の子は少し困ったような挑発的な顔をして言った。
「ふーん。じゃあ、いたずらしちゃおうかなあ」
そしてその子は悪戯っぽく微笑みながら僕に近づいてきた。
「何をするつもりなんだ。やるならやってみるといい。でも、優しくして……」
「大丈夫大丈夫、私のいたずらは優しいからね」
「本当か?」
「うん。ほらそこにしゃがんで……」
これは悪魔の囁きだ。彼女は仮装ではなく本物の魔女なんだ。僕はそうと察していながらも逆らう事はできず、彼女の言う通りにしてしまう。
彼女がしゃがんだ僕の耳元に口を近づけて囁く。
「お兄さんが悪いんだよ。私にお菓子をくれないからいたずらされちゃうんだ」
「くっ……」
お菓子ならそこのテーブルの上にあるが……僕は今年は絶対に渡さないと決めてるんだ。覚悟してぎゅっと目を閉じるが、恐れているいたずらはなかなか来ない。
恐る恐る目を開けると、彼女の姿が消えていた。
「いない。あの子はどこに行ったんだ……?」
辺りをうかがい背後を振り返ると彼女はそこにいた。テーブルの上にあったお菓子を意気揚々と取り上げていた。
「お菓子ここにあるじゃない。もらっていくね!」
「待て! お菓子を返せ!」
「だーめ、お菓子をくれなきゃいたずらするって言ったじゃん」
「奪われてたまるか!」
「それじゃあお菓子ありがたく頂戴します。バイバーイ!」
彼女は颯爽と立ち去っていった。
「お菓子取られた……」
僕は呆然と立ち尽くし、
「それじゃあ、いたずらしまーす」
いつの間にか背後に回り込んでいた彼女の仲間達にいたずらまでされていったのだった。
そう決意する僕のところへ早速仮装した女の子がやってきた。
行動が早いな。そんなにお菓子が欲しいのか。彼女は無邪気な明るい顔で僕に向かって言ってきた。
「トリックオアトリート! お菓子をくれなきゃいたずらしちゃうぞ!」
ここで『お菓子はやらんぞ! いたずらするならしてみやがれ!』と強気に言えればいいのだが、臆病な僕は
「お菓子はありません……」
と弱気になってしまう。すると女の子は少し困ったような挑発的な顔をして言った。
「ふーん。じゃあ、いたずらしちゃおうかなあ」
そしてその子は悪戯っぽく微笑みながら僕に近づいてきた。
「何をするつもりなんだ。やるならやってみるといい。でも、優しくして……」
「大丈夫大丈夫、私のいたずらは優しいからね」
「本当か?」
「うん。ほらそこにしゃがんで……」
これは悪魔の囁きだ。彼女は仮装ではなく本物の魔女なんだ。僕はそうと察していながらも逆らう事はできず、彼女の言う通りにしてしまう。
彼女がしゃがんだ僕の耳元に口を近づけて囁く。
「お兄さんが悪いんだよ。私にお菓子をくれないからいたずらされちゃうんだ」
「くっ……」
お菓子ならそこのテーブルの上にあるが……僕は今年は絶対に渡さないと決めてるんだ。覚悟してぎゅっと目を閉じるが、恐れているいたずらはなかなか来ない。
恐る恐る目を開けると、彼女の姿が消えていた。
「いない。あの子はどこに行ったんだ……?」
辺りをうかがい背後を振り返ると彼女はそこにいた。テーブルの上にあったお菓子を意気揚々と取り上げていた。
「お菓子ここにあるじゃない。もらっていくね!」
「待て! お菓子を返せ!」
「だーめ、お菓子をくれなきゃいたずらするって言ったじゃん」
「奪われてたまるか!」
「それじゃあお菓子ありがたく頂戴します。バイバーイ!」
彼女は颯爽と立ち去っていった。
「お菓子取られた……」
僕は呆然と立ち尽くし、
「それじゃあ、いたずらしまーす」
いつの間にか背後に回り込んでいた彼女の仲間達にいたずらまでされていったのだった。
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