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第2話 一緒に散歩に行く
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さて、せっかくの貴重な休日だ。散歩に行こう。
いつもなら休みの日は家でごろごろしていたところだが、リューが元気そうなので私も出かけたい気分になった。着替えて外に出ると、朝の涼しい風が私の頬を撫でた。
「朝の空気ってこんなだっけ。なんか懐かしい」
今日は天気が良い。気温もちょうど良くて過ごしやすい一日になりそうだ。
「じゃあ、いこうか。リュー」
「ニャーニャー」
私はリューを連れてアパートを出てぶらりと歩き出した。
住宅街を出てこの辺りはのどかな田園風景が広がって、神社や公園などもあるため散歩コースとして最適である。
それはさておき、サラマンダーを連れていて騒ぎにならないだろうか。
パッと見た感じ、ちょっと大きい変わった動物にしか見えないから大丈夫かもしれない。
念のために帽子や軽い布なんかも被せておいたから平気だろう。気にしない事にする。
そんな事を思いつつ歩いていると、やがて神社に辿り着いた。
「ここでは竜神様を祀っているんだよ。もしかしたらお前のご先祖様かもしれないね」
「ニャー」
リューに説明してやると、どうやら興味があるらしく、しきりに境内を見回している。
「お、気になるのかな? じゃあ、お参りしていこうか」
神社は静かでちょうど誰もいない。リューを見られて騒ぎになる心配は無さそうだ。
私は神社に入って賽銭箱の前に立つと小銭を投げ入れて柏手を打った。
「どうかリューと健やかに過ごせますように」
ありふれたどこにでもある細やかな願いだ。私にはこれぐらいが身の丈にあっている。
すると隣にいたリューも頭を下げて尻尾を丸める仕草をした。
「どうしたの?」
尋ねると、しばらくして目を開けて見上げてきた。
「ニャーニャー」
「ああ、そういうことか」
どうやらリューにも何か願う事があったようだ。
「じゃあ、お前の分のお賽銭も入れておかないとね」
私はポケットに入っていた五円玉を取り出すと、再び投げ入れる。
そして、もう一度手を合わせて祈りを捧げる。隣のリューも真似をして頭を垂れていた。
「よし、帰ろうか。そろそろ散歩は満足したでしょ?」
「ニャー!」
リューも元気に鳴いたので帰ることにする。
家に帰ってから部屋で簡単な遊びをする事にした。
「お昼までまだ時間があるし、これで遊ぼうか」
私はきまぐれで買った軽いゴムボールを投げてやった。リューはそそくさと拾いに行って戻ってくると、それを前足と鼻先を使って放り投げるように私に返す。
「ニャッ、ニャッ、ニャー」
「ふむ、君はキャッチボールが出来るんだね。いいよ、それなら受けて立とう」
私も子供の頃はよく友達とやっていたものだ。今では仕事ばかりでろくに遊ぶ事もしなくなったけど。
「いくぞー、そいっ」
「ニャーン」
ボールを軽く投げるとリューはそれを口で受け止める。それから床に置いてまた投げ返してくる。
「おお、上手いぞ。サラマンダーってこんなに動けるんだ。でも、私だって負けないぞ」
「ニャッ、ニャーン」
その動作を繰り返すうちにお互い楽しくなってきた。
「ほれ、もういっちょー」
「ニャン、ニャン」
今度は私が投げたボールをリューがジャンプして空中で捕える。そのまま尻尾を振りながら着地すると、そのまま尻尾でボールを打ち返した。
スパアアアン! 私は良い手ごたえを感じながらボールを受け止めた。
「うわぁ、凄いなリュー! 段々と上手くなってる。これは将来はメジャーリーガーになれるかもね」
私は興奮しながらそう言った。だが、リューは不思議そうな顔をしていた。
「どうやらリューにはまだメジャーリーグは早かったようだね」
「ニャーニャー!」
そんな事よりもっとやってとせがんでくる。
「よーし」
それからもボールを投げ合って遊んでいると時計がいつの間にか正午を回っていた。
「お、もうこんな時間か。カップラーメンにする? それとも……」
私は冷蔵庫を開けて確認するが、野菜は昨日リューに食べさせたし、あまり残っていなかった。
「よし、買いだしに行くか」
私はリューの方を振り返って決断する。
「一緒にスーパーに行く?」
「ニャーニャー」
リューは喜んでついていくと答えた。これも散歩だ。別に構わなかった。
私は自転車に乗ってリューを前の籠に乗せると、そのままペダルを漕いで買い物に出かけた。
いつもなら休みの日は家でごろごろしていたところだが、リューが元気そうなので私も出かけたい気分になった。着替えて外に出ると、朝の涼しい風が私の頬を撫でた。
「朝の空気ってこんなだっけ。なんか懐かしい」
今日は天気が良い。気温もちょうど良くて過ごしやすい一日になりそうだ。
「じゃあ、いこうか。リュー」
「ニャーニャー」
私はリューを連れてアパートを出てぶらりと歩き出した。
住宅街を出てこの辺りはのどかな田園風景が広がって、神社や公園などもあるため散歩コースとして最適である。
それはさておき、サラマンダーを連れていて騒ぎにならないだろうか。
パッと見た感じ、ちょっと大きい変わった動物にしか見えないから大丈夫かもしれない。
念のために帽子や軽い布なんかも被せておいたから平気だろう。気にしない事にする。
そんな事を思いつつ歩いていると、やがて神社に辿り着いた。
「ここでは竜神様を祀っているんだよ。もしかしたらお前のご先祖様かもしれないね」
「ニャー」
リューに説明してやると、どうやら興味があるらしく、しきりに境内を見回している。
「お、気になるのかな? じゃあ、お参りしていこうか」
神社は静かでちょうど誰もいない。リューを見られて騒ぎになる心配は無さそうだ。
私は神社に入って賽銭箱の前に立つと小銭を投げ入れて柏手を打った。
「どうかリューと健やかに過ごせますように」
ありふれたどこにでもある細やかな願いだ。私にはこれぐらいが身の丈にあっている。
すると隣にいたリューも頭を下げて尻尾を丸める仕草をした。
「どうしたの?」
尋ねると、しばらくして目を開けて見上げてきた。
「ニャーニャー」
「ああ、そういうことか」
どうやらリューにも何か願う事があったようだ。
「じゃあ、お前の分のお賽銭も入れておかないとね」
私はポケットに入っていた五円玉を取り出すと、再び投げ入れる。
そして、もう一度手を合わせて祈りを捧げる。隣のリューも真似をして頭を垂れていた。
「よし、帰ろうか。そろそろ散歩は満足したでしょ?」
「ニャー!」
リューも元気に鳴いたので帰ることにする。
家に帰ってから部屋で簡単な遊びをする事にした。
「お昼までまだ時間があるし、これで遊ぼうか」
私はきまぐれで買った軽いゴムボールを投げてやった。リューはそそくさと拾いに行って戻ってくると、それを前足と鼻先を使って放り投げるように私に返す。
「ニャッ、ニャッ、ニャー」
「ふむ、君はキャッチボールが出来るんだね。いいよ、それなら受けて立とう」
私も子供の頃はよく友達とやっていたものだ。今では仕事ばかりでろくに遊ぶ事もしなくなったけど。
「いくぞー、そいっ」
「ニャーン」
ボールを軽く投げるとリューはそれを口で受け止める。それから床に置いてまた投げ返してくる。
「おお、上手いぞ。サラマンダーってこんなに動けるんだ。でも、私だって負けないぞ」
「ニャッ、ニャーン」
その動作を繰り返すうちにお互い楽しくなってきた。
「ほれ、もういっちょー」
「ニャン、ニャン」
今度は私が投げたボールをリューがジャンプして空中で捕える。そのまま尻尾を振りながら着地すると、そのまま尻尾でボールを打ち返した。
スパアアアン! 私は良い手ごたえを感じながらボールを受け止めた。
「うわぁ、凄いなリュー! 段々と上手くなってる。これは将来はメジャーリーガーになれるかもね」
私は興奮しながらそう言った。だが、リューは不思議そうな顔をしていた。
「どうやらリューにはまだメジャーリーグは早かったようだね」
「ニャーニャー!」
そんな事よりもっとやってとせがんでくる。
「よーし」
それからもボールを投げ合って遊んでいると時計がいつの間にか正午を回っていた。
「お、もうこんな時間か。カップラーメンにする? それとも……」
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「よし、買いだしに行くか」
私はリューの方を振り返って決断する。
「一緒にスーパーに行く?」
「ニャーニャー」
リューは喜んでついていくと答えた。これも散歩だ。別に構わなかった。
私は自転車に乗ってリューを前の籠に乗せると、そのままペダルを漕いで買い物に出かけた。
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