1 / 26
平凡な日常
しおりを挟む
ごく普通の高校二年生、時坂光輝にとって日常とは取るに足らない変わり映えのしない毎日の連続だった。
朝起きると両親や妹と一緒に朝食を取り、学校に行って勉強をして、帰ったら宿題をしたりテレビを見たりする。そんなどこにでもあるごく普通のありふれた毎日の繰り返しだ。
今日も平凡な一日の学校生活が終わり、光輝は家に帰って自分の部屋の机で勉強をする。
コツコツとペンを動かしていると、自分の部屋があるくせに人の部屋に来て人のベッドに寝転んで持参した漫画を読んでいた妹の希美が世間話を振ってきた。
「お兄ちゃん、テレビで言ってたんだけど前世ってあるのかな?」
「無いだろ」
「カッパっていると思う?」
「いないだろ」
光輝は面倒だと思いながら返事をする。希美は不満そうに唸った。
「うー、つまらない人間だね、お兄ちゃんは。もっと面白い返しをしてよ」
「お前は高校生にもなって何を期待しているんだよ」
「例えばね~……『クッ、その怪異なる存在に気づいたか。さすがは希美。我が崇高なる妹よ』みたいな」
「別にお前を面白がらせるつもりはないし。崇高な妹って何だよ。宿題の邪魔しないでくれる?」
ここには崇高どころか普通の成績の妹しかいません。変な知識を得るよりもっと真面目な勉強をすればいいと思う。その平凡な妹が幼い頃から変わらない変な事を口走る。
「われが前世を思い出してカッパを召喚出来さえすれば……」
「馬鹿言ってないでお前も宿題しろよ。ほらこの部屋から出ていけー」
「ちょっとお兄ちゃん、あたしの本を取らないでよ」
光輝は希美の手から本を取り上げ、それで釣りながら部屋の外まで誘導していく。
「ほら、自分の部屋に帰って勉強しろ」
そして、出たところで希美の背中を押して本を渡し、ドアを閉めて部屋から追い出すことに成功した。
ドアの向こうから希美の不満の声がする。
「もう、お兄ちゃん。今そんなことを言っているといつか思い知ることになるよ」
「俺が何を思い知るって言うんだ?」
「自らに課されし運命を! だよ。運命からは逃げられない」
「勝手に言ってろ」
この妹はやっぱり普通では無いのかもしれない。
言いたい事だけ言い残すと希美はパタパタと廊下を歩き去っていった。
高校一年生にもなって夢物語を語っている妹を部屋から追い出すことに成功した光輝は宿題を片づけていく。
終わらせて真面目な本を読んでその日は休むことにした。
妹は空想の話が好きでよく非現実的な妄想を語っていたが、光輝は真面目で現実的な高校二年の少年だった。
明日も変わらない生活が始まるだろう。カッパや前世なんて無くていい。
普通なのが一番だと思っていた。
朝起きると両親や妹と一緒に朝食を取り、学校に行って勉強をして、帰ったら宿題をしたりテレビを見たりする。そんなどこにでもあるごく普通のありふれた毎日の繰り返しだ。
今日も平凡な一日の学校生活が終わり、光輝は家に帰って自分の部屋の机で勉強をする。
コツコツとペンを動かしていると、自分の部屋があるくせに人の部屋に来て人のベッドに寝転んで持参した漫画を読んでいた妹の希美が世間話を振ってきた。
「お兄ちゃん、テレビで言ってたんだけど前世ってあるのかな?」
「無いだろ」
「カッパっていると思う?」
「いないだろ」
光輝は面倒だと思いながら返事をする。希美は不満そうに唸った。
「うー、つまらない人間だね、お兄ちゃんは。もっと面白い返しをしてよ」
「お前は高校生にもなって何を期待しているんだよ」
「例えばね~……『クッ、その怪異なる存在に気づいたか。さすがは希美。我が崇高なる妹よ』みたいな」
「別にお前を面白がらせるつもりはないし。崇高な妹って何だよ。宿題の邪魔しないでくれる?」
ここには崇高どころか普通の成績の妹しかいません。変な知識を得るよりもっと真面目な勉強をすればいいと思う。その平凡な妹が幼い頃から変わらない変な事を口走る。
「われが前世を思い出してカッパを召喚出来さえすれば……」
「馬鹿言ってないでお前も宿題しろよ。ほらこの部屋から出ていけー」
「ちょっとお兄ちゃん、あたしの本を取らないでよ」
光輝は希美の手から本を取り上げ、それで釣りながら部屋の外まで誘導していく。
「ほら、自分の部屋に帰って勉強しろ」
そして、出たところで希美の背中を押して本を渡し、ドアを閉めて部屋から追い出すことに成功した。
ドアの向こうから希美の不満の声がする。
「もう、お兄ちゃん。今そんなことを言っているといつか思い知ることになるよ」
「俺が何を思い知るって言うんだ?」
「自らに課されし運命を! だよ。運命からは逃げられない」
「勝手に言ってろ」
この妹はやっぱり普通では無いのかもしれない。
言いたい事だけ言い残すと希美はパタパタと廊下を歩き去っていった。
高校一年生にもなって夢物語を語っている妹を部屋から追い出すことに成功した光輝は宿題を片づけていく。
終わらせて真面目な本を読んでその日は休むことにした。
妹は空想の話が好きでよく非現実的な妄想を語っていたが、光輝は真面目で現実的な高校二年の少年だった。
明日も変わらない生活が始まるだろう。カッパや前世なんて無くていい。
普通なのが一番だと思っていた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
早贄は、彼岸の淵で龍神様に拾われる
束原ミヤコ
キャラ文芸
六谷蜜葉(むつたにみつは)は、六谷家の長女として生まれた。
父が早くに亡くなり、母の朱海が新しい父と再婚してから全てが変わってしまった。
母は妹の朱鷺子(ときこ)ばかりを可愛がり、蜜葉は使用人のように扱われるようになった。
そんな生活を続けていたある日、とうとう蜜葉は、古くからの村のしきたりである、龍神様の贄に捧げられることになる。
死を覚悟した蜜葉を拾い上げたのは、不器用で口数は少ないけれど、心根の優しい、かくりよに住まう龍神族の王、蓮華(れんか)だった。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
悪意の海を泳ぐ
コトナガレ ガク
キャラ文芸
父親が詐欺に遭い破産し全てを失った少女「セウ」。
ヤクザに拉致され地獄ような日々を送る中チャンスを見て逃げ出した。
しかしあえなく失敗、屋上に追い詰められる。
セウは己の尊厳だけは失いたくないと自決を決意する。
飛び降りる直前、彼女の魂は魂を複写して集めるのが趣味の麝候によって
打ち抜かれた。
麝候の持つ魔術の力に魅入られたセウは、魂を複写した代償に自分を
助けろと麝候に迫る。
対して麝候はセウに試練を与える。
見事試練を乗り越えたセウは麝候に気に入られた。
そして契約する。
麝候はセウの復讐に協力し、
その達成の暁にはセウは麝候に最高の魂の輝きを見せると。
こうしてセウは麝候の弟子として悪意渦巻く世界に入るのであった。
そして少女は徐々に己の魔を覚醒させていく。
やる気ない天使ちゃんニュース
白雛
キャラ文芸
私は間違っているが、世間はもっと間違っている——!
Vに沼ったビッチ天使ミカ
腐り系推し活女子マギ
夢の国から帰国子女リツ
鬼女化寸前ギリギリの年齢で生きるレイ
弱さ=可愛さだ! 不幸の量が私らを(特定の人種向けにのみ)可愛くするんだ!
『生きづらさでもごもごしてる奴なんか可愛くね……? オレ、そーゆーの、ほっとけないんだよね!』って禁断の扉を開いてしまう人続出!
この不憫可愛さを理解させられろ! 受け止めてみせろ、世の男子!
ブーメラン上等!
厄介の厄介による厄介のための歯に絹着せぬ、そして自分も傷付く、おちゃらけトークバラエティー!
始まってます。
パロ、時事、政治、下ネタ豊富です。
異世界でゆるゆる生活を満喫す
葉月ゆな
ファンタジー
辺境伯家の三男坊。数か月前の高熱で前世は日本人だったこと、社会人でブラック企業に勤めていたことを思い出す。どうして亡くなったのかは記憶にない。ただもう前世のように働いて働いて夢も希望もなかった日々は送らない。
もふもふと魔法の世界で楽しく生きる、この生活を絶対死守するのだと誓っている。
家族に助けられ、面倒ごとは優秀な他人に任せる主人公。でも頼られるといやとはいえない。
ざまぁや成り上がりはなく、思いつくままに好きに行動する日常生活ゆるゆるファンタジーライフのご都合主義です。
ドジな天使のせいで異世界転生したのでこの天使に仕返ししようとしたら幼馴染まで追いかけてきてこの世界で生き抜こうと思った件について
tai-bo
ファンタジー
ゲームを買いに行った帰り道、ひょんなことから空から落ちてきたものに当たって、死んでしまった琢磨は天界で天使ガブリエルにあった。どこか頼りなさそうでドジだったが自分が死んだ原因はガブリエルのせいだとわかり、異世界まで連れてって仕返しをしようと思うけどはたから見るとしょうもない嫌がらせにしか見えない。そんな二人が冒険者として新しい人生を謳歌しようとすると、天使がいるんだから当然とばかりに悪魔が出てきたり、悪魔によって異世界召喚された琢磨の幼馴染が追いかけてきたり休まる暇がない。果たして琢磨の第二の人生はどうなるのか?・・・・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる