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第三章
第24話 ラストバトル
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戦いの喧騒の音を遠くに聞きながら、勇一は会場から少し離れた芝生の上に寝転んで空を見上げていた。
敵は戦っている連中のところに集まっていくので、勇一はのんびりと一人を楽しむことが出来ていた。
「みんな、よくやるよな。真面目な連中ばかりだぜ」
「何言ってるの。あなたも戦うのよ」
そこに昴がやってきて、勇一を見下ろして声を掛けてきた。勇一は寝転んだまま、めんどくさそうに答えた。
「戦いなんざやる気のある馬鹿に任せておけばいいのさ。有能な俺は悠々とおいしいところだけ持っていくぜ」
「そんなさぼりをお姉ちゃんが許すと思う?」
昴からはどす黒いオーラが立ち昇っていた。勇一は頬を引きつらせながら起き上がった。
「やれやれ、仕方ねえな。本当はやりたくねえんだがな。姉貴は眠れる獅子を起こしちまったらしい」
「ほら、車出すからさっさと来なさい。送っていってあげるから」
「言っておくが、俺に出来るのは影からこっそりあいつらの妖魔討伐を助けることぐらいだぜ」
「はいはい、何でもいいから早く来なさい」
「やれやれ」
勇一は肩をすくめながらも、先を歩く昴の後をついていった。
キンキンキンキンキンキン。
妖魔王との激しいバトルが続いていた。
ズガガガガアッ!
妖魔王の激しく振る尻尾が地面を薙ぎ払う。
剣で戦っていた武芸者達は一旦距離を取って下がった。
さすがは妖魔王ダークヴァル。伝説に語られるだけあって手強い相手だった。
「やはり、天剣で無ければ有効手にはならないのでしょうか」
璃々が頬に流れる汗を拭う。
迫る竜の手を豪の叩き付ける斧が迎撃する。
吠える口に兎が氷の矢を放つが、出来た氷は竜の強靭な牙にすぐに噛み砕かれてしまった。
楓は剣を構えながらも、掛かる隙を見つけられないでいた。
こんな時こそ冷静に。道花は相手を見る。
「なんとか弱点を見つけることが出来れば……」
「我に弱点など無いわ!」
ダークヴァルが吠える。その凶暴な王者の目が天剣を見る。
「かつて我を打ち倒した天剣! それを打ち砕くために我は力を蓄えて再びこの地に戻ってきたのだ!」
竜の振る爪を道花は天剣で受けた。痺れるような手応えだった。
「道花さん!」
「大丈夫だよ、璃々ちゃん。わたしはまだまだ戦えるよ!」
「だが、打つ手があるまい人間ども! ここで我はさらにスキルを発動するぞ!」
「ええ!?」
驚く人間達の前で、ダークヴァルは手のひらを大地に叩き付け、目を怪しく光らせた。
「永遠のダークゾーンに落ちるがいい!」
道花は剣で防御しようとするが、その行為は何の意味も持たなかった。
妖魔王から広がる闇が周囲を侵食していく。
なすすべもなく、人間達もその中へと呑み込まれていった。
道花は気が付くとたった一人、何も見えない闇の中にいた。
どこからともなく妖魔王ダークヴァルの声がする。
「ここは何も存在しない闇の領域。何も見えず! 何も感じず! 何も聞こえぬ中を! 滅びるまで永遠に在り続けるがいい!」
それっきり道花の耳には何も聞こえなくなってしまう。
闇の中で、自分がどこにいるのか、どの方角に向かって立っているのかも掴めない。
だが、道花は何も不安に感じなかった。手に温もりがあるから。こんな時でもともに戦う仲間がいるから。
「天剣道花!」
道花の剣が光を灯す。
「氷天弓!」
闇の中に吹雪が舞い、
「鬼岩斬!」
揺れる大地が足元に広がった。
道花はさらに天剣のレベル2の力を覚醒させる。
舞い散る桜吹雪の中、闇のフィールドが祓われ、妖魔王が姿を現した。
「何だこれは。天剣の新たな力なのか!」
「これが今のわたし達の勇気の力!」
立ち向かう武芸者達を前に、さすがの妖魔王ダークヴァルも焦りを見せた。
だが、それも一瞬のこと。すぐに余裕の笑みを取り戻した。
「フハハ! さすがだと認めてやる。だが、愚かである! ずっと闇に生き続けていればよいものを、我にこの秘奥義を使わせることになったのだからな!」
「秘奥義?」
「そうとも! このアルティメットファイナルダークネスドラゴンビームの中に消え去るがよい!」
妖魔王は手をかめはめ波の形に構えて突き出し、凄まじいエネルギー光線を放ってきた。
凄い攻撃だ。とても避けられる物でも受け止められる物でもない。
それでも道花は何とかしようと天剣を手に立ち向かう。
その前に躍り出た人影があった。
「俺がいないと何も出来ないようだな! 最強少女!」
「勇一君!」
戦場に駆け付けた勇一は道花に振り返って笑みを見せると、すぐに妖魔王の攻撃に向かって盾を構えた。
アルティメットファイナルダークネスドラゴンビームを盾で全て防いでしまう。
自慢の秘奥義をあっさりと止められて、妖魔王はさすがに驚いた顔を見せた。
「なんだと!?」
「お返しだ!」
さらに盾から光のファンが飛び出して回転し、妖魔王に向かって凄まじいエネルギーの光線を撃ち返した。
「うんぎょえええええええ!!」
光の中で妖魔王が悲鳴を上げる。ダメージは与えたが、まだ立っていた。
その目が信じられないように勇一を見た。
「お前が最強? 最強だというのか!?」
「違うぜ。俺は最弱だ。最強はあっち」
「ありがとう、勇一君!」
道花は桜の舞う風に乗って飛んだ。勇一は照れくさそうに鼻を掻いた。
盾で受け止めた相手の攻撃のエネルギーを全て蓄えてから跳ね返した。勇一にあんなカウンターの特技があったなんて驚いた。あの試合で兎殺しを決めていなかったら、自分もやばかったかもしれない。
そのことが嬉しい。この世界にはまだ知らないことがある。道花は戦いに興奮する。
この場に送ってくれたみんなに感謝して……
道花は妖魔王の巨体よりも高く飛んで、そこで剣を振り上げた。
見上げる妖魔王はにやりと不気味に微笑んだ。
「甘いぞ、人間! 我も飛べるのだぞ! お前達より高く! むしろ空こそ我が領域!」
妖魔王はその自慢の翼を広げようとする。だが、動かなくてびっくりして振り返った。
「ああ! 凍ってるう!?」
なぜか背中の翼が凍り付いていた。
「一仕事終えました」
兎は満足したように弓を手に額の汗を拭った。
「さすがはうさちゃん」
楓がほっこりと友達を褒めている。
妖魔王の怒りに血走った目がそんな彼女達を睨みつけた。
「お前の仕業か! 何てことしやがる!」
「何てことをやらかしたのはあなたですわ!」
動こうとした妖魔王の足の前に璃々が素早く回り込んだ。
そして、剣を鋭く突き出して、勇一が付けた傷口を容赦なく抉った。
女王の無慈悲な容赦ない攻撃に、さすがの妖魔王もみっともない悲鳴を上げた。
敵の体勢が崩れた。
「ありがとう、璃々ちゃん!」
「行きなさい、道花さん!」
妖魔王の頭を目がけて道花は剣を振り下ろす。
真の敵に相まみえた天剣はレベルを超えて世界を照らす光となった。
「いけええええええええええ!」
「おのれええ! 天剣の……ぶげええしゃあああ!」
妖魔王の体は光の中へと消滅し、現れていた妖魔の軍団も姿を消していった。
世界には平和が戻った。武芸者達の働きによって。
道花は天剣を収めて息を吐き、仲間の元へと戻っていった。
敵は戦っている連中のところに集まっていくので、勇一はのんびりと一人を楽しむことが出来ていた。
「みんな、よくやるよな。真面目な連中ばかりだぜ」
「何言ってるの。あなたも戦うのよ」
そこに昴がやってきて、勇一を見下ろして声を掛けてきた。勇一は寝転んだまま、めんどくさそうに答えた。
「戦いなんざやる気のある馬鹿に任せておけばいいのさ。有能な俺は悠々とおいしいところだけ持っていくぜ」
「そんなさぼりをお姉ちゃんが許すと思う?」
昴からはどす黒いオーラが立ち昇っていた。勇一は頬を引きつらせながら起き上がった。
「やれやれ、仕方ねえな。本当はやりたくねえんだがな。姉貴は眠れる獅子を起こしちまったらしい」
「ほら、車出すからさっさと来なさい。送っていってあげるから」
「言っておくが、俺に出来るのは影からこっそりあいつらの妖魔討伐を助けることぐらいだぜ」
「はいはい、何でもいいから早く来なさい」
「やれやれ」
勇一は肩をすくめながらも、先を歩く昴の後をついていった。
キンキンキンキンキンキン。
妖魔王との激しいバトルが続いていた。
ズガガガガアッ!
妖魔王の激しく振る尻尾が地面を薙ぎ払う。
剣で戦っていた武芸者達は一旦距離を取って下がった。
さすがは妖魔王ダークヴァル。伝説に語られるだけあって手強い相手だった。
「やはり、天剣で無ければ有効手にはならないのでしょうか」
璃々が頬に流れる汗を拭う。
迫る竜の手を豪の叩き付ける斧が迎撃する。
吠える口に兎が氷の矢を放つが、出来た氷は竜の強靭な牙にすぐに噛み砕かれてしまった。
楓は剣を構えながらも、掛かる隙を見つけられないでいた。
こんな時こそ冷静に。道花は相手を見る。
「なんとか弱点を見つけることが出来れば……」
「我に弱点など無いわ!」
ダークヴァルが吠える。その凶暴な王者の目が天剣を見る。
「かつて我を打ち倒した天剣! それを打ち砕くために我は力を蓄えて再びこの地に戻ってきたのだ!」
竜の振る爪を道花は天剣で受けた。痺れるような手応えだった。
「道花さん!」
「大丈夫だよ、璃々ちゃん。わたしはまだまだ戦えるよ!」
「だが、打つ手があるまい人間ども! ここで我はさらにスキルを発動するぞ!」
「ええ!?」
驚く人間達の前で、ダークヴァルは手のひらを大地に叩き付け、目を怪しく光らせた。
「永遠のダークゾーンに落ちるがいい!」
道花は剣で防御しようとするが、その行為は何の意味も持たなかった。
妖魔王から広がる闇が周囲を侵食していく。
なすすべもなく、人間達もその中へと呑み込まれていった。
道花は気が付くとたった一人、何も見えない闇の中にいた。
どこからともなく妖魔王ダークヴァルの声がする。
「ここは何も存在しない闇の領域。何も見えず! 何も感じず! 何も聞こえぬ中を! 滅びるまで永遠に在り続けるがいい!」
それっきり道花の耳には何も聞こえなくなってしまう。
闇の中で、自分がどこにいるのか、どの方角に向かって立っているのかも掴めない。
だが、道花は何も不安に感じなかった。手に温もりがあるから。こんな時でもともに戦う仲間がいるから。
「天剣道花!」
道花の剣が光を灯す。
「氷天弓!」
闇の中に吹雪が舞い、
「鬼岩斬!」
揺れる大地が足元に広がった。
道花はさらに天剣のレベル2の力を覚醒させる。
舞い散る桜吹雪の中、闇のフィールドが祓われ、妖魔王が姿を現した。
「何だこれは。天剣の新たな力なのか!」
「これが今のわたし達の勇気の力!」
立ち向かう武芸者達を前に、さすがの妖魔王ダークヴァルも焦りを見せた。
だが、それも一瞬のこと。すぐに余裕の笑みを取り戻した。
「フハハ! さすがだと認めてやる。だが、愚かである! ずっと闇に生き続けていればよいものを、我にこの秘奥義を使わせることになったのだからな!」
「秘奥義?」
「そうとも! このアルティメットファイナルダークネスドラゴンビームの中に消え去るがよい!」
妖魔王は手をかめはめ波の形に構えて突き出し、凄まじいエネルギー光線を放ってきた。
凄い攻撃だ。とても避けられる物でも受け止められる物でもない。
それでも道花は何とかしようと天剣を手に立ち向かう。
その前に躍り出た人影があった。
「俺がいないと何も出来ないようだな! 最強少女!」
「勇一君!」
戦場に駆け付けた勇一は道花に振り返って笑みを見せると、すぐに妖魔王の攻撃に向かって盾を構えた。
アルティメットファイナルダークネスドラゴンビームを盾で全て防いでしまう。
自慢の秘奥義をあっさりと止められて、妖魔王はさすがに驚いた顔を見せた。
「なんだと!?」
「お返しだ!」
さらに盾から光のファンが飛び出して回転し、妖魔王に向かって凄まじいエネルギーの光線を撃ち返した。
「うんぎょえええええええ!!」
光の中で妖魔王が悲鳴を上げる。ダメージは与えたが、まだ立っていた。
その目が信じられないように勇一を見た。
「お前が最強? 最強だというのか!?」
「違うぜ。俺は最弱だ。最強はあっち」
「ありがとう、勇一君!」
道花は桜の舞う風に乗って飛んだ。勇一は照れくさそうに鼻を掻いた。
盾で受け止めた相手の攻撃のエネルギーを全て蓄えてから跳ね返した。勇一にあんなカウンターの特技があったなんて驚いた。あの試合で兎殺しを決めていなかったら、自分もやばかったかもしれない。
そのことが嬉しい。この世界にはまだ知らないことがある。道花は戦いに興奮する。
この場に送ってくれたみんなに感謝して……
道花は妖魔王の巨体よりも高く飛んで、そこで剣を振り上げた。
見上げる妖魔王はにやりと不気味に微笑んだ。
「甘いぞ、人間! 我も飛べるのだぞ! お前達より高く! むしろ空こそ我が領域!」
妖魔王はその自慢の翼を広げようとする。だが、動かなくてびっくりして振り返った。
「ああ! 凍ってるう!?」
なぜか背中の翼が凍り付いていた。
「一仕事終えました」
兎は満足したように弓を手に額の汗を拭った。
「さすがはうさちゃん」
楓がほっこりと友達を褒めている。
妖魔王の怒りに血走った目がそんな彼女達を睨みつけた。
「お前の仕業か! 何てことしやがる!」
「何てことをやらかしたのはあなたですわ!」
動こうとした妖魔王の足の前に璃々が素早く回り込んだ。
そして、剣を鋭く突き出して、勇一が付けた傷口を容赦なく抉った。
女王の無慈悲な容赦ない攻撃に、さすがの妖魔王もみっともない悲鳴を上げた。
敵の体勢が崩れた。
「ありがとう、璃々ちゃん!」
「行きなさい、道花さん!」
妖魔王の頭を目がけて道花は剣を振り下ろす。
真の敵に相まみえた天剣はレベルを超えて世界を照らす光となった。
「いけええええええええええ!」
「おのれええ! 天剣の……ぶげええしゃあああ!」
妖魔王の体は光の中へと消滅し、現れていた妖魔の軍団も姿を消していった。
世界には平和が戻った。武芸者達の働きによって。
道花は天剣を収めて息を吐き、仲間の元へと戻っていった。
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