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第一章
第1話 入学試験
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三月の春の風の下、少女は土を踏みしめて剣を構えた。
周囲では先生達と、同じテストを受ける受験生達が見守っている。
その少女、春日道花は視線を感じながら、目の前で相対する対戦相手の少女を見る。
相手もかなりの実力者のようだ。少なくとも田舎で同年代でこれほどの相手は見たことがない。大人や動物を含めれば別だが。
ここは都会で名門と知られる学校の演習場だ。
主に学校の授業で実技を教える場所で、道花はここに入学試験を受けるために来ていた。
これから行われるのは実技の試験。
先生達は受験生同士を戦わせて力を見ようとしているようだ。真剣な空気に道花の身も引き締まる思いだ。
先生の決めた組み合わせで道花の戦うことになった対戦相手の少女は都会育ちのお嬢様らしく、やけに上から目線でこちらを見下してきた。
剣を構え、偉そうに宣言する。
「ここはあなたのような田舎者の来るところではありませんわ。即刻退場してもらいましょう」
大きな口を叩くだけあって実力と経験の高さを感じさせる構えだ。道花はそう察する。だが、勝てないほど手強い相手ではない。
道花に剣を教えてくれた祖父はもっと強かった。田舎の野山を駆け回って戦った動物達も強かった。でも、油断は出来ない。
相手は道花が初めて戦う相手、場所の優位も地元のお嬢様である相手の方にあるだろう。
でも、恐れはしない。強い相手と戦うのは楽しいものだ。
道花は呼吸を整え、気合いを入れた。
中央に立つ審判が手を上げて振り下ろした。
「それでは始めてください」
「やあああ!」
道花は相手の出方を待たない。一気に踏み込んでいった。
周囲の観客達がどよめき、先生達も身を乗り出した。
道花の繰り出す剣の鋭さと思い切った決断力の伴った踏み込みの速さに、対戦相手の少女の顔からすぐに嘲る笑みが消え去った。
「くっ」
道花の剣をその手に持った剣で払いのける。さすがだ、一撃で決めさせてくれなかった。
道花はそのことを嬉しく思い、笑みを浮かべた。
その笑みを挑発と受け取ったようだ。対戦相手のお嬢様は怒りの形相を見せてきた。
「わたくしを侮るのは止めなさい! この……田舎者の分際で!」
相手の繰り出す剣を道花は受け止めた。良い剣だ。腕にずしりと響いた。
「やるね、璃々ちゃん」
「気安く呼ぶんじゃありませんわ!」
さらに白刃が閃く。
数回の剣撃の音が鳴り、お互いにお互いの剣をぶつけ合い、睨み合った。
「言っておきますわ。わたくしを本気にさせたことを後悔すると」
「いいね、本気でやろう!」
剣が閃き、道花は踏み込む。
髪が風に流れる。
そして、相手の剣よりも速く一閃を繰り出した。
周囲では先生達と、同じテストを受ける受験生達が見守っている。
その少女、春日道花は視線を感じながら、目の前で相対する対戦相手の少女を見る。
相手もかなりの実力者のようだ。少なくとも田舎で同年代でこれほどの相手は見たことがない。大人や動物を含めれば別だが。
ここは都会で名門と知られる学校の演習場だ。
主に学校の授業で実技を教える場所で、道花はここに入学試験を受けるために来ていた。
これから行われるのは実技の試験。
先生達は受験生同士を戦わせて力を見ようとしているようだ。真剣な空気に道花の身も引き締まる思いだ。
先生の決めた組み合わせで道花の戦うことになった対戦相手の少女は都会育ちのお嬢様らしく、やけに上から目線でこちらを見下してきた。
剣を構え、偉そうに宣言する。
「ここはあなたのような田舎者の来るところではありませんわ。即刻退場してもらいましょう」
大きな口を叩くだけあって実力と経験の高さを感じさせる構えだ。道花はそう察する。だが、勝てないほど手強い相手ではない。
道花に剣を教えてくれた祖父はもっと強かった。田舎の野山を駆け回って戦った動物達も強かった。でも、油断は出来ない。
相手は道花が初めて戦う相手、場所の優位も地元のお嬢様である相手の方にあるだろう。
でも、恐れはしない。強い相手と戦うのは楽しいものだ。
道花は呼吸を整え、気合いを入れた。
中央に立つ審判が手を上げて振り下ろした。
「それでは始めてください」
「やあああ!」
道花は相手の出方を待たない。一気に踏み込んでいった。
周囲の観客達がどよめき、先生達も身を乗り出した。
道花の繰り出す剣の鋭さと思い切った決断力の伴った踏み込みの速さに、対戦相手の少女の顔からすぐに嘲る笑みが消え去った。
「くっ」
道花の剣をその手に持った剣で払いのける。さすがだ、一撃で決めさせてくれなかった。
道花はそのことを嬉しく思い、笑みを浮かべた。
その笑みを挑発と受け取ったようだ。対戦相手のお嬢様は怒りの形相を見せてきた。
「わたくしを侮るのは止めなさい! この……田舎者の分際で!」
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「気安く呼ぶんじゃありませんわ!」
さらに白刃が閃く。
数回の剣撃の音が鳴り、お互いにお互いの剣をぶつけ合い、睨み合った。
「言っておきますわ。わたくしを本気にさせたことを後悔すると」
「いいね、本気でやろう!」
剣が閃き、道花は踏み込む。
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そして、相手の剣よりも速く一閃を繰り出した。
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