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かたつむりなら良かったのに?
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ある雨の日だった。家に帰ってリビングに入って私は見てしまったのだ。
「ナメクジ! なんで……」
私の頭の中は真っ白になった。奴がテーブルのど真ん中に鎮座している。しかもただのナメクジじゃない。エメラルド色に輝くナメクジだ。まるで宝石のようにキラキラと光っている。
窓からの光でそう見えるのかと思って目を擦って見てみたが、やはりあれその物がエメラルド色をしているようにしか見えなかった。
「何なの、あれ? あんなの見た事ない……」
私はびっくりしてスマホでお母さんに連絡を取った。
「お母さん、部屋にナメクジがいるんだけど!」
『そりゃいるでしょう。ジメジメした季節なんだもの』
「ただのナメクジじゃないよ。エメラルドの色をしているの」
『それは突然変異種のエメラルドナメクジかもしれないわね』
「エメラルドナメクジってなに?」
『普通のナメクジとは違う種類のナメクジよ。とても珍しいの。あなたラッキーね』
「ラッキーじゃないよ~」
『連絡はそれだけ? それじゃあ切るわね』
そう言うと電話を切られた。私は途方に暮れるしかなかった。
「とりあえず珍しいらしいし、写真を撮っておくか……」
私はスマホのカメラアプリを開いて撮影ボタンを押そうとした。その時、ナメクジが動き出した。
「うわっ!? こいつ、どこ行くの!?」
私は思わず驚いてスマホを下ろしてしまった。ナメクジはゆっくりと近付いてきた。この調子なら後5分もすればこちらに到着するだろう。
もし奴がテーブルの端から降りて床に着地してしまったら……私はどうすればいいのだろう。考えるだに恐ろしい。
「ちょっと待って! 来ないで!」
その願いが通じたのだろうか。ナメクジはその胴体をクネッと曲げて回れ右してテーブルの中央に戻っていった。そして、そこで静止した。
「どうすればいいのこれ……」
這いまわられても困るけど、そこでジッとされても困る。そもそもこいつはどこから現れたのだろうか。私に分かるわけもない。
テーブルの中央にはエメラルド色をしたナメクジがいる。突然変異種でとても珍しいらしい。見つけた私はラッキーなのだとか。
そう言われても、今の私はただ呆然としていた。
雨の降る日の事だった。明日は晴れればいいのにと願った。
次の日の朝、願いは通じず再びあいにくの雨だった。
「梅雨の季節だから仕方ないよね……」
テレビを付けるとちょうどニュースをやっていて、エメラルド色のナメクジを見つけられたらラッキーだとか言っていた。
「冗談でしょ、ねえ?」
声を掛けてもそこには誰もおらず、テーブルの上には何もいなかった。
「どこから来て、どこへ行ったのか……」
私は息を吐いて立ち上がると、傘を刺して外へ出ていった。
「ナメクジ! なんで……」
私の頭の中は真っ白になった。奴がテーブルのど真ん中に鎮座している。しかもただのナメクジじゃない。エメラルド色に輝くナメクジだ。まるで宝石のようにキラキラと光っている。
窓からの光でそう見えるのかと思って目を擦って見てみたが、やはりあれその物がエメラルド色をしているようにしか見えなかった。
「何なの、あれ? あんなの見た事ない……」
私はびっくりしてスマホでお母さんに連絡を取った。
「お母さん、部屋にナメクジがいるんだけど!」
『そりゃいるでしょう。ジメジメした季節なんだもの』
「ただのナメクジじゃないよ。エメラルドの色をしているの」
『それは突然変異種のエメラルドナメクジかもしれないわね』
「エメラルドナメクジってなに?」
『普通のナメクジとは違う種類のナメクジよ。とても珍しいの。あなたラッキーね』
「ラッキーじゃないよ~」
『連絡はそれだけ? それじゃあ切るわね』
そう言うと電話を切られた。私は途方に暮れるしかなかった。
「とりあえず珍しいらしいし、写真を撮っておくか……」
私はスマホのカメラアプリを開いて撮影ボタンを押そうとした。その時、ナメクジが動き出した。
「うわっ!? こいつ、どこ行くの!?」
私は思わず驚いてスマホを下ろしてしまった。ナメクジはゆっくりと近付いてきた。この調子なら後5分もすればこちらに到着するだろう。
もし奴がテーブルの端から降りて床に着地してしまったら……私はどうすればいいのだろう。考えるだに恐ろしい。
「ちょっと待って! 来ないで!」
その願いが通じたのだろうか。ナメクジはその胴体をクネッと曲げて回れ右してテーブルの中央に戻っていった。そして、そこで静止した。
「どうすればいいのこれ……」
這いまわられても困るけど、そこでジッとされても困る。そもそもこいつはどこから現れたのだろうか。私に分かるわけもない。
テーブルの中央にはエメラルド色をしたナメクジがいる。突然変異種でとても珍しいらしい。見つけた私はラッキーなのだとか。
そう言われても、今の私はただ呆然としていた。
雨の降る日の事だった。明日は晴れればいいのにと願った。
次の日の朝、願いは通じず再びあいにくの雨だった。
「梅雨の季節だから仕方ないよね……」
テレビを付けるとちょうどニュースをやっていて、エメラルド色のナメクジを見つけられたらラッキーだとか言っていた。
「冗談でしょ、ねえ?」
声を掛けてもそこには誰もおらず、テーブルの上には何もいなかった。
「どこから来て、どこへ行ったのか……」
私は息を吐いて立ち上がると、傘を刺して外へ出ていった。
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