31 / 34
第31話 城内の戦い
しおりを挟む
城門前の掃除をあらかた終えてあたし達は城の中へと踏み込んで行く。
中でもやっぱり敵が出現するようになっているね。魔の力の影響か薄暗い霧も漂っている。
この城ではデビルアーマーやヒールスライムやインプやガーゴイルが出現するようだ。悪魔系の敵が多いね。
敵は強くなっているけどこっちも強くなっている。アタッカーが二人いると敵が早く片付くね。サカネちゃんが回復魔法を使えるのも助かった。
「ルミナ! 俺の戦いどうだった!?」
「うん、コウは順調に強くなっているね」
「ルミナ、俺も腕を上げただろう?」
「うん、ディックさんも助けてくれてありがとう」
二人が無茶して突っ込んでいくのを安心して見ていられるのはサカネちゃんが回復魔法を使ってくれるおかげだ。あたしは素直にお礼を述べた。
「サカネちゃん、来てくれてありがとう」
「いえいえ、パーティーを支えるのがヒーラー職の仕事ですから」
サカネちゃんも前衛はただモンスターを殴ってくれればいいという考え方なのだろうか。彼女の顔からはよく分からなかったけど。
ともあれ、ザコが片付いたので先に進むよ。ボスはおそらく王様のいた謁見の間にいるだろう。
そこに隠し階段のあるゲームもあるけど、まずはそこを目指して進む。
雰囲気は変わったけど城の構造が変わったわけではないので、まずは真っすぐに進めば二階に行く階段があるはずだ。
だが、そう甘くはいかなかった。階段の前にぼんやりと暗く輝く壁があったんだ。
「何だこれ。通れないぞ」
「今度のは鍵穴が見当たらないな。くそっ」
コウは初めて見たようで珍しそうに触っている。ディックも調べているが今度のは開けられそうになかった。
あたしはゲームでこれの存在を知っていた。
「これは結界だね」
「結界?」
「悪魔が用意したのか?」
「おそらく。あたし達を直通でゴールに行かせないようにしているんだよ。これが結界ならこの階のどこかに結界を守るモンスターか物があるはずだよ」
「へえ、ルミナは詳しいんだな」
「だろ? ルミナは賢いんだ」
「頭がおよろしいんですのね」
「いやー、それほどでも」
こんなゲームの常識レベルのことで褒められても照れてしまうよ。
そういうことで、あたし達は一階を探索して結界を張っている物を探すことにした。
それはすぐに見つかった。1階の廊下の突き当りに怪しく回転している宝石のような物体があった。
「あれを止めれば多分結界が解けるよ。でも、気を付けて」
「こういうことは盗賊に任せろ!」
「おい、ルミナが気を付けろって言っただろ!」
ディックが近づき、コウも後に続いていった。あたしは周囲を警戒する。こういう場所ってだいたいモンスターが出現するんだよね。
その予感は当たった。奥の石像が動き出した。
「石像が動くよ。気を付けて!」
「チッ、まだ止めてねえのに!」
「俺が止めてやる!」
装置に掛かりっきりのディックの代わりにコウが飛び出した。剣で石像の攻撃を受け止め、すぐに切り返す。
石像は固かったが、コウのレベルは海底トンネルでカニとやりあっていた時よりも高く装備もよくなっていた。何回か攻撃を繰り返して倒すことが出来た。
ディックも盗賊としての技能があるだけあって装置を止めることに成功した。
ゲームによっては警報とかのトラップがある事もあるんだけど、その心配はいらなかったようだ。
「多分これ一つだけじゃないね。同じような物が無いか探してみよう」
あたし達は再び一階の探索を再開する。歩きながらサカネちゃんが話しかけてきた。
「ルミナさんは戦わないんですか? あの石像なら攻撃魔法の方が有効だったと思うんですけど」
「あたしは導くのが仕事だから」
高嶺ちゃんと同じような事を。
でも、仕方がないんだ。あたしの力は特別な権限で強すぎるから。
この力を振るえば楽になるかもしれないが、コウの冒険を破壊してしまう。彼の勇者としての旅を台無しにしてしまう。
だから、あたしは導くしかないんだ。その為にこの世界に来たんだから。
あたしはそう信じ、前に進むことを決めていた。
装置を全て止めて結界を解除し、階段を上ったあたし達はそこでも数々のモンスター達と戦闘。
全てを打ち倒し、張ってあったトラップも解除して、ついに謁見の間の扉の前へと辿り着いた。
中からは言いしれない不気味な妖気のような物が漂ってくる。ネクロマンサーが儀式を続けているんだ。
「この大扉を開いたら多分ボスとの戦闘になるから、まずはここで立ち止まって準備して」
「ああ、分かった」
「お前の言う事なら聞いておくぜ」
あたしの言う事をコウもディックも素直に聞いてくれる。それはいいんだけど……
「ここまでは互角だったな、勇者の坊主。だが、ボスを倒すのは俺だぜ!」
「ふざけるな、盗賊が! ボスを倒して国を救うのは勇者である俺の役目だ!」
「…………」
「「見ててくれよな、ルミナ!!」」
「うん、見てるから準備が出来るまでその扉を開けないでよ」
男の子ってこうなんだろうか。戦闘や競争を楽しむ感じの。あたしにはよく分からない。
元気の有り余っている二人の体力に問題はない。サカネちゃんが回復魔法を掛けたからね。
「お待たせしました」
そのサカネちゃんがMP回復ポーションを飲んで準備は整った。
「さあ、ネクロマンサーを倒してこの国を救うよ!」
「「おお!!」」
勇者パーティーが乗り込んでいく。さあ、ボス戦の始まりだ。
中でもやっぱり敵が出現するようになっているね。魔の力の影響か薄暗い霧も漂っている。
この城ではデビルアーマーやヒールスライムやインプやガーゴイルが出現するようだ。悪魔系の敵が多いね。
敵は強くなっているけどこっちも強くなっている。アタッカーが二人いると敵が早く片付くね。サカネちゃんが回復魔法を使えるのも助かった。
「ルミナ! 俺の戦いどうだった!?」
「うん、コウは順調に強くなっているね」
「ルミナ、俺も腕を上げただろう?」
「うん、ディックさんも助けてくれてありがとう」
二人が無茶して突っ込んでいくのを安心して見ていられるのはサカネちゃんが回復魔法を使ってくれるおかげだ。あたしは素直にお礼を述べた。
「サカネちゃん、来てくれてありがとう」
「いえいえ、パーティーを支えるのがヒーラー職の仕事ですから」
サカネちゃんも前衛はただモンスターを殴ってくれればいいという考え方なのだろうか。彼女の顔からはよく分からなかったけど。
ともあれ、ザコが片付いたので先に進むよ。ボスはおそらく王様のいた謁見の間にいるだろう。
そこに隠し階段のあるゲームもあるけど、まずはそこを目指して進む。
雰囲気は変わったけど城の構造が変わったわけではないので、まずは真っすぐに進めば二階に行く階段があるはずだ。
だが、そう甘くはいかなかった。階段の前にぼんやりと暗く輝く壁があったんだ。
「何だこれ。通れないぞ」
「今度のは鍵穴が見当たらないな。くそっ」
コウは初めて見たようで珍しそうに触っている。ディックも調べているが今度のは開けられそうになかった。
あたしはゲームでこれの存在を知っていた。
「これは結界だね」
「結界?」
「悪魔が用意したのか?」
「おそらく。あたし達を直通でゴールに行かせないようにしているんだよ。これが結界ならこの階のどこかに結界を守るモンスターか物があるはずだよ」
「へえ、ルミナは詳しいんだな」
「だろ? ルミナは賢いんだ」
「頭がおよろしいんですのね」
「いやー、それほどでも」
こんなゲームの常識レベルのことで褒められても照れてしまうよ。
そういうことで、あたし達は一階を探索して結界を張っている物を探すことにした。
それはすぐに見つかった。1階の廊下の突き当りに怪しく回転している宝石のような物体があった。
「あれを止めれば多分結界が解けるよ。でも、気を付けて」
「こういうことは盗賊に任せろ!」
「おい、ルミナが気を付けろって言っただろ!」
ディックが近づき、コウも後に続いていった。あたしは周囲を警戒する。こういう場所ってだいたいモンスターが出現するんだよね。
その予感は当たった。奥の石像が動き出した。
「石像が動くよ。気を付けて!」
「チッ、まだ止めてねえのに!」
「俺が止めてやる!」
装置に掛かりっきりのディックの代わりにコウが飛び出した。剣で石像の攻撃を受け止め、すぐに切り返す。
石像は固かったが、コウのレベルは海底トンネルでカニとやりあっていた時よりも高く装備もよくなっていた。何回か攻撃を繰り返して倒すことが出来た。
ディックも盗賊としての技能があるだけあって装置を止めることに成功した。
ゲームによっては警報とかのトラップがある事もあるんだけど、その心配はいらなかったようだ。
「多分これ一つだけじゃないね。同じような物が無いか探してみよう」
あたし達は再び一階の探索を再開する。歩きながらサカネちゃんが話しかけてきた。
「ルミナさんは戦わないんですか? あの石像なら攻撃魔法の方が有効だったと思うんですけど」
「あたしは導くのが仕事だから」
高嶺ちゃんと同じような事を。
でも、仕方がないんだ。あたしの力は特別な権限で強すぎるから。
この力を振るえば楽になるかもしれないが、コウの冒険を破壊してしまう。彼の勇者としての旅を台無しにしてしまう。
だから、あたしは導くしかないんだ。その為にこの世界に来たんだから。
あたしはそう信じ、前に進むことを決めていた。
装置を全て止めて結界を解除し、階段を上ったあたし達はそこでも数々のモンスター達と戦闘。
全てを打ち倒し、張ってあったトラップも解除して、ついに謁見の間の扉の前へと辿り着いた。
中からは言いしれない不気味な妖気のような物が漂ってくる。ネクロマンサーが儀式を続けているんだ。
「この大扉を開いたら多分ボスとの戦闘になるから、まずはここで立ち止まって準備して」
「ああ、分かった」
「お前の言う事なら聞いておくぜ」
あたしの言う事をコウもディックも素直に聞いてくれる。それはいいんだけど……
「ここまでは互角だったな、勇者の坊主。だが、ボスを倒すのは俺だぜ!」
「ふざけるな、盗賊が! ボスを倒して国を救うのは勇者である俺の役目だ!」
「…………」
「「見ててくれよな、ルミナ!!」」
「うん、見てるから準備が出来るまでその扉を開けないでよ」
男の子ってこうなんだろうか。戦闘や競争を楽しむ感じの。あたしにはよく分からない。
元気の有り余っている二人の体力に問題はない。サカネちゃんが回復魔法を掛けたからね。
「お待たせしました」
そのサカネちゃんがMP回復ポーションを飲んで準備は整った。
「さあ、ネクロマンサーを倒してこの国を救うよ!」
「「おお!!」」
勇者パーティーが乗り込んでいく。さあ、ボス戦の始まりだ。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
理想の王妃様
青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。
王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。
王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題!
で、そんな二人がどーなったか?
ざまぁ?ありです。
お気楽にお読みください。
私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる