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第10話 ツギノ村を目指して
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あたしは天界から再び地上へと降り立った。そこは前に中断を選んだ時と同じ、見慣れた町の傍の草原だった。
近くから戦いの音がする。そちらへ目を向けるとコウが戦っていた。スライムや化けガラスを相手に勇敢に武器を振っている。
彼はあたしの見ていない間に銅の剣と革の盾を装備していて、その顔には勇者らしさが増している気がした。
中断したと言ってもその間完全にこの世界の時が止まっていたわけでは無いようだ。
スリープ中に派遣していた仲間が経験値やアイテムを手に入れてくれたような物だろうか。あたしはゲーム的に考えてしまう。
ここはゲームみたいな世界だもの。そう考えてしまうのは仕方ないよね。
あたしは戦闘が終わるのを待ってから、彼に近づいていった。
「コウ、頑張っているね」
「ルミナ! 来てくれたんだ!」
彼はとても嬉しそうな表情を見せてくれた。その笑顔や態度は前と何も変わらなくて。あたしはちょっと変わったかなと思ったのは気のせいだったんだなと思った。
あたしは彼の新しい装備に目を向けた。
「銅の剣と皮の盾を買ったんだね」
「ああ、お金が溜まったからな。これ買っても良かったのかな」
「うん、良いと思う。能力が上がったね。もうこの辺りのモンスターじゃ相手にならなそう」
あたしだったらもうこの辺りの戦いは切り上げて次の目的地へ向かっていただろうけど、コウは律儀にあたしの言いつけを守って待っていてくれたのだ。偉いね。
その偉いコウがあたしに訊ねてくる。
「これでもう橋を渡っても大丈夫かな?」
「うん、行けると思うよ。でも、出かけるその前にコウの家に行って休んでいこうね」
「ああ」
コウのHPは戦いで少し減っていた。まだ余裕は全然あるけど遠出をするなら全回復をしておいた方がゲームとしては望ましい。
あたしがコウの家に行くことを告げると、コウは素直に剣を収めて町へと先導してくれた。
コウに続いて町に入って家に着いたあたしを彼の母親が迎えてくれた。
「お帰り、コウ。ルミナちゃんも来てくれたの!」
「ただいま」
「お世話になります」
偉い精霊だと思われている立場のあたしだが、あたしは普通の子供のようにふるまった。
あたしの思いが伝わったのかコウの母親はもうあたしを精霊様として崇めたりはせず、普通の良家の子女のように扱ってくれた。
それでもまだ大袈裟のような気がするけど、あまり厳しく注文を付けるのも悪いよね。
あたしは今の立場を受け入れることにして、コウの家族と一緒に夕食を取った。
質素だがおいしい食事だった。
食事をしてから話をした。コウの母親が真面目な顔をして訊いてくる。子を心配する親の顔だった。
「どうですか? コウは上手くやっていけそうですか?」
「はい、彼は真面目によくやってくれています。装備を揃えてもうこの辺りの魔物なら相手にならなくなりました」
「まあ、それは凄い。よくやってるのね、コウ」
「それはルミナがこうすればいいって教えてくれるから」
「これからも息子のことをお願いします」
「はい、任せてください」
冒険は上手く行っている。その確信を持ってあたしは答えた。さて、明日に備えてもう休もう。
あたしの部屋をコウの母親が用意してくれた。荷物を整理して開けてくれたらしい。あたしは別にコウと同じ部屋でも良かったんだけど、好意は素直に受け取っておこう。
「コウ、また明日ね」
「ああ、明日もよろしくな、ルミナ」
そして、あたし達はそれぞれの部屋に入り、休むことにした。
こちらで就寝したら現実では何時になるんだろう。ゲームだと特別な夜のイベントが起きるのでなければすぐに次の日になるんだけど。数日がスキップ出来るゲームもあったっけ。
考える暇は無かった。
ベッドに横になるとあたしはすぐに眠くなり、暗い夜が訪れた。
そして、目が覚めたと思ったらもう朝だった。
「うーん、何だか夜があっという間に過ぎ去った気分」
あまり寝た気はしなかったが、体の疲れは取れていた。
さて、今日はツギノ村へ行く日だ。あまりコウを待たせるわけにはいかない。
部屋から出て一階に降りるとコウはもう起きていて明るい笑顔を見せてきた。
「おはよう、ルミナ。よく眠れたか?」
「うん、バッチリよ」
「さあ、出かける前に朝食を食べて元気を出していきなさい」
母親が料理を振る舞ってくれる。その気持ちが嬉しくて、朝から元気が出た。
あたしはコウの家で朝食をご馳走になり、そして旅立つ時が来た。
「お弁当を持って行きなさい。疲れたら食べるんだよ」
「うん、行ってくる」
コウが母親から弁当を受け取り、あたし達は町を出た。
さあ、あの橋の向こう側を目指して。いよいよ遠出をする時だ。
ツギノ村を目指してあたし達は今まで決して近づこうとしなかった橋を目指して歩いていく。あの橋を渡れば強力なモンスターが出るようになるだろう。
その前にスライムや化けガラスが現れた。
「これぐらいもう楽勝だぜ!」
コウは勇敢に銅の剣を振ってモンスターを退治した。彼は本当に強くなった。スライムや化けガラスなんてもう物ともせず、ほとんどの攻撃を跳ね返し、攻撃を受けた時も1から3ぐらいのダメージで抑えていた。
だが、油断は禁物だ。橋が近づいてくる。本番はこれからだ。そして、あたし達は橋に辿り着き、ついに渡り終えた。
短い質素な木の橋だった。その橋を渡り終えると、辺りには変わらず草原が広がり、右前方に森が広がっているのが見えた。
「ここからは油断せずに行くよ」
「ああ!」
森にうかつに踏み込むと予期せぬ強敵が現れる恐れがあるので、あたし達は森には近づかずに平原を歩いていくことにする。
ゲームでもあたしは森にはあまり近づくことはしなかった。リアルだと視界や歩きやすさの問題もあるからなおさら回避したい。
そして、ついにこの土地のモンスターが現れた。この辺りでは角ウサギや大ムカデやフロッガーなんかが出現するようだ。
「この世界では初めて見る魔物だね。コウ、気を付けて!」
「任せろ!」
さすがレベルを上げて装備を整えただけあって、コウは危な気なく勝つことが出来た。
ちょっとレベルを上げすぎたかなとあたしは思ったが、コウは緊張の息を吐いていた。
この世界はゲームよりリアルだもんね。そりゃ戦ってる本人は緊張するか。あたしは自分の呑気な態度を改めた。
「本当に敵が強くなった。旅立ってすぐに橋を渡っていたらやられていたな。ルミナの言う事を聞いて良かったよ」
「うん、この分だと大丈夫そうだね。さあ、ツギノ村を目指そう」
敵は強くなったが、変に怯える必要は無い。
あたし達は再び歩いていく。現れる平原の魔物を退治して、やがて村が見えてきた。
王国ほどではないが、ちゃんとした村のようだ。
「あそこがツギノ村ね」
「俺もここまで来るのは初めてだけど、多分そうかな」
「さあ、情報収集をするよ!」
あたしはワクワクして、コウと一緒にその村へと近づいていった。
近くから戦いの音がする。そちらへ目を向けるとコウが戦っていた。スライムや化けガラスを相手に勇敢に武器を振っている。
彼はあたしの見ていない間に銅の剣と革の盾を装備していて、その顔には勇者らしさが増している気がした。
中断したと言ってもその間完全にこの世界の時が止まっていたわけでは無いようだ。
スリープ中に派遣していた仲間が経験値やアイテムを手に入れてくれたような物だろうか。あたしはゲーム的に考えてしまう。
ここはゲームみたいな世界だもの。そう考えてしまうのは仕方ないよね。
あたしは戦闘が終わるのを待ってから、彼に近づいていった。
「コウ、頑張っているね」
「ルミナ! 来てくれたんだ!」
彼はとても嬉しそうな表情を見せてくれた。その笑顔や態度は前と何も変わらなくて。あたしはちょっと変わったかなと思ったのは気のせいだったんだなと思った。
あたしは彼の新しい装備に目を向けた。
「銅の剣と皮の盾を買ったんだね」
「ああ、お金が溜まったからな。これ買っても良かったのかな」
「うん、良いと思う。能力が上がったね。もうこの辺りのモンスターじゃ相手にならなそう」
あたしだったらもうこの辺りの戦いは切り上げて次の目的地へ向かっていただろうけど、コウは律儀にあたしの言いつけを守って待っていてくれたのだ。偉いね。
その偉いコウがあたしに訊ねてくる。
「これでもう橋を渡っても大丈夫かな?」
「うん、行けると思うよ。でも、出かけるその前にコウの家に行って休んでいこうね」
「ああ」
コウのHPは戦いで少し減っていた。まだ余裕は全然あるけど遠出をするなら全回復をしておいた方がゲームとしては望ましい。
あたしがコウの家に行くことを告げると、コウは素直に剣を収めて町へと先導してくれた。
コウに続いて町に入って家に着いたあたしを彼の母親が迎えてくれた。
「お帰り、コウ。ルミナちゃんも来てくれたの!」
「ただいま」
「お世話になります」
偉い精霊だと思われている立場のあたしだが、あたしは普通の子供のようにふるまった。
あたしの思いが伝わったのかコウの母親はもうあたしを精霊様として崇めたりはせず、普通の良家の子女のように扱ってくれた。
それでもまだ大袈裟のような気がするけど、あまり厳しく注文を付けるのも悪いよね。
あたしは今の立場を受け入れることにして、コウの家族と一緒に夕食を取った。
質素だがおいしい食事だった。
食事をしてから話をした。コウの母親が真面目な顔をして訊いてくる。子を心配する親の顔だった。
「どうですか? コウは上手くやっていけそうですか?」
「はい、彼は真面目によくやってくれています。装備を揃えてもうこの辺りの魔物なら相手にならなくなりました」
「まあ、それは凄い。よくやってるのね、コウ」
「それはルミナがこうすればいいって教えてくれるから」
「これからも息子のことをお願いします」
「はい、任せてください」
冒険は上手く行っている。その確信を持ってあたしは答えた。さて、明日に備えてもう休もう。
あたしの部屋をコウの母親が用意してくれた。荷物を整理して開けてくれたらしい。あたしは別にコウと同じ部屋でも良かったんだけど、好意は素直に受け取っておこう。
「コウ、また明日ね」
「ああ、明日もよろしくな、ルミナ」
そして、あたし達はそれぞれの部屋に入り、休むことにした。
こちらで就寝したら現実では何時になるんだろう。ゲームだと特別な夜のイベントが起きるのでなければすぐに次の日になるんだけど。数日がスキップ出来るゲームもあったっけ。
考える暇は無かった。
ベッドに横になるとあたしはすぐに眠くなり、暗い夜が訪れた。
そして、目が覚めたと思ったらもう朝だった。
「うーん、何だか夜があっという間に過ぎ去った気分」
あまり寝た気はしなかったが、体の疲れは取れていた。
さて、今日はツギノ村へ行く日だ。あまりコウを待たせるわけにはいかない。
部屋から出て一階に降りるとコウはもう起きていて明るい笑顔を見せてきた。
「おはよう、ルミナ。よく眠れたか?」
「うん、バッチリよ」
「さあ、出かける前に朝食を食べて元気を出していきなさい」
母親が料理を振る舞ってくれる。その気持ちが嬉しくて、朝から元気が出た。
あたしはコウの家で朝食をご馳走になり、そして旅立つ時が来た。
「お弁当を持って行きなさい。疲れたら食べるんだよ」
「うん、行ってくる」
コウが母親から弁当を受け取り、あたし達は町を出た。
さあ、あの橋の向こう側を目指して。いよいよ遠出をする時だ。
ツギノ村を目指してあたし達は今まで決して近づこうとしなかった橋を目指して歩いていく。あの橋を渡れば強力なモンスターが出るようになるだろう。
その前にスライムや化けガラスが現れた。
「これぐらいもう楽勝だぜ!」
コウは勇敢に銅の剣を振ってモンスターを退治した。彼は本当に強くなった。スライムや化けガラスなんてもう物ともせず、ほとんどの攻撃を跳ね返し、攻撃を受けた時も1から3ぐらいのダメージで抑えていた。
だが、油断は禁物だ。橋が近づいてくる。本番はこれからだ。そして、あたし達は橋に辿り着き、ついに渡り終えた。
短い質素な木の橋だった。その橋を渡り終えると、辺りには変わらず草原が広がり、右前方に森が広がっているのが見えた。
「ここからは油断せずに行くよ」
「ああ!」
森にうかつに踏み込むと予期せぬ強敵が現れる恐れがあるので、あたし達は森には近づかずに平原を歩いていくことにする。
ゲームでもあたしは森にはあまり近づくことはしなかった。リアルだと視界や歩きやすさの問題もあるからなおさら回避したい。
そして、ついにこの土地のモンスターが現れた。この辺りでは角ウサギや大ムカデやフロッガーなんかが出現するようだ。
「この世界では初めて見る魔物だね。コウ、気を付けて!」
「任せろ!」
さすがレベルを上げて装備を整えただけあって、コウは危な気なく勝つことが出来た。
ちょっとレベルを上げすぎたかなとあたしは思ったが、コウは緊張の息を吐いていた。
この世界はゲームよりリアルだもんね。そりゃ戦ってる本人は緊張するか。あたしは自分の呑気な態度を改めた。
「本当に敵が強くなった。旅立ってすぐに橋を渡っていたらやられていたな。ルミナの言う事を聞いて良かったよ」
「うん、この分だと大丈夫そうだね。さあ、ツギノ村を目指そう」
敵は強くなったが、変に怯える必要は無い。
あたし達は再び歩いていく。現れる平原の魔物を退治して、やがて村が見えてきた。
王国ほどではないが、ちゃんとした村のようだ。
「あそこがツギノ村ね」
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