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第9話 二日目の冒険
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あたしは流行る気持ちに足取りを弾ませて通学路を駆け抜け、急いで家に帰ってきた。
玄関前で鍵を出しながら、横の犬小屋にいるコウに話しかける。
「今から向こうの世界のあなたに会いに行ってくるからね!」
「わん!」
コウは今日も元気だ。溌剌とした瞳でこちらを見上げ、尻尾を振っている。利口で聞き分けがいいのはあっちのコウもこっちのコウも同じだ。
あたしは彼に束の間の別れを告げて家に入る。自分の部屋に直行して鞄を置いて少し暑かったのでベランダの窓を開けてゲームを起動することにした。
「ヘルプちゃんはこれで行けるって言ってたけど……」
ゲームを起動すると画面にゲームの姿のヘルプちゃんが現れて、「ゲームにしますか? それともファンタジアワールドに行きますか?」とメッセージで訊ねてきた。
あたしは迷わず、「ファンタジアワールドに行く」を選んだ。
すると瞬間に目に映る景色が変わった。ゲームでワープポイントに入った時のようなそんな感じ。
薄らいで揺らいだ景色がやがてはっきり見えてきて安定して気が付くとあたしはファンタジアワールドの天界、雲の上に来ていた。
初めて来た時と同じ場所だ。
リアルな現実となったヘルプちゃんがにこやかな笑顔であたしを迎えてくれた。
「よく来てくださいました、ルミナ様。今日も勇者を導いてくださるのですね?」
「うん、あたしも来たかったからね。コウ君の様子はどうでした?」
あたしは少し離れた場所の雲の隙間から下界を見下ろしている神様に訊ねた。
彼はいきなり声を掛けられてびっくりしたのだろう。少しビクッと肩を跳ね上げてから振り返って答えた。
「なんだ、ルミナか……旅は順調じゃ。二回ほど家に泊まってまだスライムと戦っておるよ」
「二回泊まったのか」
この世界と向こうの世界の時間の差はどうなっているのだろうか。あたしは考えてしまう。ゲームだと泊まったらすぐに次の日になるけど。
ゲームの世界と現実の世界で時間の流れる速さが違うのは常識だ。そうでないと夜にしかゲーム出来ない人は夜のゲームの世界しか見れなくなっちゃうからね。
ゲームによっては歩数で時間が経過するものもあれば、イベントで経過するものもある。ゲーム内の時間で経過するものもある。
さらに止めたり巻き戻したり出来るものまである。いろいろだ。
いかにヘルプちゃんと言えど彼女はこちらの世界の存在。他の世界の事まで知っているとは思えなかった。
現実世界の時間のことならあたしの方がずっと詳しいはずだ。一日は24時間でお昼は12時で一年は365日とばっちり知っている。
まあ、時間のことを考えてもしょうがない。あたしはここに時間について考えに来たわけではないのだから。さっさと冒険を始めよう。
「えっと、服装は……」
「それなら……」
神様に説明される必要は無かった。ゲームで装備を変更するやり方をあたしはもう知っていた。
ウインドウを開いてスクロールさせ、装備画面からお気に入りの魔法使いの服へと変更した。
これで普通の一般の学生から魔法使いの精霊ルミナへと変身だ。
「うわ、この服ステータスが高い」
そこで初めてあたしはこの服がとても良い物であることを知った。装備品の数値は装備画面で見ないと分からないからだ。
「神様が頑張りましたからねー」
「そうじゃろう、頑張ったからのう」
ヘルプちゃんに褒められて神様はとっても嬉しそう。あたしは素直にお礼を言って、転送ポータルから地上に向かうことにした。
ポータルの上に立つと場所の選択でタビダチ王国と前回中断した場所と出た。あたしは前回中断した場所を選ぶことにする。
「それじゃ、行ってきます」
「うむ、お前に任せておけば安心じゃ。今日も頑張ってきてくれ」
「はい!」
あたしは自分の冒険のことで頭が一杯で、ヘルプちゃんが『神様も頑張ってくださいよー人間に丸投げしてないで』と言いたげな目で彼を見ていたことには気が付かなかった。
天界から草原に降り立ち、あたしの冒険が再び始まる。
玄関前で鍵を出しながら、横の犬小屋にいるコウに話しかける。
「今から向こうの世界のあなたに会いに行ってくるからね!」
「わん!」
コウは今日も元気だ。溌剌とした瞳でこちらを見上げ、尻尾を振っている。利口で聞き分けがいいのはあっちのコウもこっちのコウも同じだ。
あたしは彼に束の間の別れを告げて家に入る。自分の部屋に直行して鞄を置いて少し暑かったのでベランダの窓を開けてゲームを起動することにした。
「ヘルプちゃんはこれで行けるって言ってたけど……」
ゲームを起動すると画面にゲームの姿のヘルプちゃんが現れて、「ゲームにしますか? それともファンタジアワールドに行きますか?」とメッセージで訊ねてきた。
あたしは迷わず、「ファンタジアワールドに行く」を選んだ。
すると瞬間に目に映る景色が変わった。ゲームでワープポイントに入った時のようなそんな感じ。
薄らいで揺らいだ景色がやがてはっきり見えてきて安定して気が付くとあたしはファンタジアワールドの天界、雲の上に来ていた。
初めて来た時と同じ場所だ。
リアルな現実となったヘルプちゃんがにこやかな笑顔であたしを迎えてくれた。
「よく来てくださいました、ルミナ様。今日も勇者を導いてくださるのですね?」
「うん、あたしも来たかったからね。コウ君の様子はどうでした?」
あたしは少し離れた場所の雲の隙間から下界を見下ろしている神様に訊ねた。
彼はいきなり声を掛けられてびっくりしたのだろう。少しビクッと肩を跳ね上げてから振り返って答えた。
「なんだ、ルミナか……旅は順調じゃ。二回ほど家に泊まってまだスライムと戦っておるよ」
「二回泊まったのか」
この世界と向こうの世界の時間の差はどうなっているのだろうか。あたしは考えてしまう。ゲームだと泊まったらすぐに次の日になるけど。
ゲームの世界と現実の世界で時間の流れる速さが違うのは常識だ。そうでないと夜にしかゲーム出来ない人は夜のゲームの世界しか見れなくなっちゃうからね。
ゲームによっては歩数で時間が経過するものもあれば、イベントで経過するものもある。ゲーム内の時間で経過するものもある。
さらに止めたり巻き戻したり出来るものまである。いろいろだ。
いかにヘルプちゃんと言えど彼女はこちらの世界の存在。他の世界の事まで知っているとは思えなかった。
現実世界の時間のことならあたしの方がずっと詳しいはずだ。一日は24時間でお昼は12時で一年は365日とばっちり知っている。
まあ、時間のことを考えてもしょうがない。あたしはここに時間について考えに来たわけではないのだから。さっさと冒険を始めよう。
「えっと、服装は……」
「それなら……」
神様に説明される必要は無かった。ゲームで装備を変更するやり方をあたしはもう知っていた。
ウインドウを開いてスクロールさせ、装備画面からお気に入りの魔法使いの服へと変更した。
これで普通の一般の学生から魔法使いの精霊ルミナへと変身だ。
「うわ、この服ステータスが高い」
そこで初めてあたしはこの服がとても良い物であることを知った。装備品の数値は装備画面で見ないと分からないからだ。
「神様が頑張りましたからねー」
「そうじゃろう、頑張ったからのう」
ヘルプちゃんに褒められて神様はとっても嬉しそう。あたしは素直にお礼を言って、転送ポータルから地上に向かうことにした。
ポータルの上に立つと場所の選択でタビダチ王国と前回中断した場所と出た。あたしは前回中断した場所を選ぶことにする。
「それじゃ、行ってきます」
「うむ、お前に任せておけば安心じゃ。今日も頑張ってきてくれ」
「はい!」
あたしは自分の冒険のことで頭が一杯で、ヘルプちゃんが『神様も頑張ってくださいよー人間に丸投げしてないで』と言いたげな目で彼を見ていたことには気が付かなかった。
天界から草原に降り立ち、あたしの冒険が再び始まる。
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