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第一章 闇の目覚め
第15話 決戦、フェニックス
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フェニックスの放つ炎をハーピーの能力を発動させた箒は何とか回避していた。
ひかりをも苦戦させた渦巻く風がほとんど炎に覆い尽くされていて、フェニックスの激しい強さと彼女の苦戦の様子が伺えた。
その戦いの場に辰也とひかりは突っ込んでいった。
近づいてきた二人に箒は早速苦言を呈した。
「遅いよ、二人とも!」
「悪かったな、後の始末は俺が付ける!」
「いや、わたしが付ける!」
単身突っ込んでいく黒い姿に、箒は苦笑いを辰也に向けた。
「辰也、ひかりちゃんまた調子に乗ってるんじゃない? 何を言ったの?」
「知るか。少し甘やかしてやったらこれとはな。頭の軽い奴はお前だけでたくさんだ!」
辰也も敵に向かっていく。
「ああもう、あたしの分も残しておいてよ! ここまでやらせておいて終わりなんて無しだからね!」
箒も後に続いていく。
炎の勢いで乱されて収まっていく風となおも吹き上がり続ける炎の中心に巨大なフェニックスの姿がある。
三人は一斉に掛かっていく。吹き上がる炎を避け、攻撃を加える。
燃えさかるフェニックスの体には全く通用した様子が無いが、それでも攻撃を続けるしか無い。
「決定打があればな」
「会長、紫門君と同じことを言ってる」
「俺をあんな奴と一緒にするな!」
「はいはい、仲の良い雑談は後にしてよね。焼けるから」
箒が言った直後、吹き上がる炎の大きな柱が三人の間を抜けていった。
フェニックスはさらに炎を放ってくる。三人はそれぞれに避けながら応戦していった。
星々の見守る中で戦いながら、ひかりには分かってきたことがあった。
「星々はわたし達の根絶だけを望んだわけじゃ無かった」
「何?」
その言葉に星々の意思を受けてやってきたフェニックスは不服そうな声を上げた。
ひかりは確信を力へと変えて言った。
「だって、それならおじいちゃんに準備をするようにと促す必要が無い。ただ滅ぼせば良かった。それをしなかったのはわたし達にチャンスをくれたから。お前に立ち向かえと応援のエールを送ってくれたんだ!」
「ほざくな、虫ケラがああああ!!」
自分の意義を否定されて火の鳥が吠える。咆哮が辺りを揺るがす。
だが、ひかり達も宇宙の星々も誰も震えたりはしない。
恐れたりはしない。
吹き上がる火炎を三人はそれぞれに避け、箒の風が巻き取り、辰也がブレスを浴びせ、ひかりが雷を放った。
不思議と調子が上がっていた。これが仲間と行動するということだろうか。一人で戦うよりもずっと高く力がみなぎっていた。
ひかりには雑談をする余裕も出来ていた。
「会長はわたしの付けたダメージはもう大丈夫なんですか?」
「問題ない。お節介な治癒能力者がいてな。奴が勝手に治したんだ」
「僕が治しました」
地上ではアルマジロが手を振っていた。調子の上がったひかりの目には遠くの地上の様子も見えていた。
「王たる者があんなザコの手を借りるとはな」
「辰也は元王じゃん。今の王様はひかりちゃん」
「うるさい!」
辰也と箒の仲の良いやりとりにひかりの顔にも笑みが浮かぶ。
「わたしは力を貸してもらえて嬉しいです」
普段は言えないことでも気楽に言えた。
その言葉に、辰也は顔を赤くしてそっぽを向いた。
「行くぞ、我らが手を貸して負けなど許されんからな!」
「はい!」
ひかりは体にみなぎる力を感じていた。それは今までに感じたことのない力だった。
力を合わせて敵に立ち向かう。その行為がひかりに勇気を与えてくれる。
みんなが応援してくれている。その温かさがひかりの持つ双剣に力を乗せてくれる。
一歩を踏み込めば仲間もついてきてくれる。
ひかりは炎を剣に乗せて、フェニックスに斬りかかった。フェニックスはそれを炎に燃える翼で防御した。
「わたしは炎の鳥。そのわたしに炎が通用するとでも?」
「炎と炎。同じ力なら強い者が勝つのが道理!」
「なにい!?」
そう前に発言したのはフェニックス自身だった。ひかりの強い炎はフェニックスの炎を揺るがし、爆発させて後退させた。
ひかりは勝ち誇った顔で相手を見た。
「どうだ! もうお前の得意技でもこちらが上だ!」
「ひかり、それぐらいにしておけ」
「弱い奴をいたぶるのってかわいそうじゃん」
調子づく三人をフェニックスは苦虫を噛み潰したような顔で睨み付けた。その姿、その雰囲気が不気味なおぞましさを帯びた物へと変容していく。
「ひかり、気を付けろ」
「分かっている」
ひかりは身構える。フェニックスは再び吠えた。
「この糞どもがあ! 教えてあげましょうか? 真に恐るべき物は、真に熱い物は赤い炎などでは無い! 青い炎だと言うことをなあ!」
フェニックスの炎が揺れ、赤だった存在が青い物へと塗り替えられていく。
時間にして僅か数瞬。そこには青い炎の鳥が現れていた。
「あなた達にはもう滅びの後の再生など与えません。この青い炎こそが全てを黄泉へと葬送する地獄の炎! 紺碧の猛禽!」
青い炎がひかり達を地球もろとも呑み込もうと襲い掛かってくる。
だが、ひかりの中にもう恐れはない。辰也が訊ねてくる。最後の激突に、
「立ち向かえるか?」
「もちろん!」
ひかりは双剣を構える。青い炎がなだれを打って向かってくる。
この剣で斬れるか。疑問を抱く余地など無い。やるしか無い。
緊張に唾を呑み込むひかりの肩に置かれた手があった。辰也と箒の手だった。
「それでは足りないな。あの勢いを斬るには支えが必要だ。俺達が支えてやる。だから臆せず全力の一撃を放て!」
「後の事はあたし達に任せていいから。ひかりちゃんはただ斬ることだけに全力を意識して!」
「はい!!」
ひかりは静かに剣に意識を集中させた。ただ斬ることだけを意識して……振る。
青い炎が覆い尽くす。その中に黒の一閃が走った。
さらに何発もの連撃が走っていく。
仲間と一緒に戦うのって何て気持ちが良いんだろう。
ひかりの気分も何倍にもなるようだった。
無数に閃く剣撃の前に、青い炎が散っていく。だが、それはすぐに集まってしまう。
「無駄だ! わたしはフェニックス! 何度でも復活する!」
斬った切れ目が蘇る。炎が変わらず向かってくる。
辰也と箒は呆れたような息を漏らした。
「タフな奴だ」
「あれを倒すにはどうすればいいんだろうね」
「構わない。このまま続ける」
「ん?」
「このまま力で押し切る!」
「フッ」
「それでこそひかりちゃんだ!」
ひかりはさらに黒い衝撃波を放つ。さらに攻撃を繰り出していく。
フェニックスの回復が追いつかなくなってきた。
「おのれ、わたしはフェニックス! 炎の中から何度でも……何度でもお!」
「お前は消えろ!!」
ひかりの振り上げる双剣が銀河の果てまでも届きそうな漆黒の巨剣へと変わる。
フェニックスは恐れおののいた。青い炎の勢いが退いていた。
勢いを減衰させた炎は再び赤へと戻っていた。
だが、今更逃げようとしてももう遅い。王者を前にした敵の運命はもう決まっているのだから。
ひかりはただ斬ることだけを考えて敵に向かって剣を振り下ろした。
フェニックスは真っ二つになって消えていく。
敵の消滅を確認して、心からの安堵と限界以上の力を使い切ったひかりも意識を失っていった。
地上から戦いの終わりを見届けて紫門は踵を返していく。
気づいた狼牙が声を掛けた。
「師匠を迎えないのか?」
「ああ、俺はハンターだからな。後はそっちでやってくれ」
去っていく紫門の顔には静かな笑みがあった。
「この町の連中を相手にするのは大変そうだな。フッ」
立ち去った後にはただ歓喜に沸く魔物達のパーティーがあった。
ひかりをも苦戦させた渦巻く風がほとんど炎に覆い尽くされていて、フェニックスの激しい強さと彼女の苦戦の様子が伺えた。
その戦いの場に辰也とひかりは突っ込んでいった。
近づいてきた二人に箒は早速苦言を呈した。
「遅いよ、二人とも!」
「悪かったな、後の始末は俺が付ける!」
「いや、わたしが付ける!」
単身突っ込んでいく黒い姿に、箒は苦笑いを辰也に向けた。
「辰也、ひかりちゃんまた調子に乗ってるんじゃない? 何を言ったの?」
「知るか。少し甘やかしてやったらこれとはな。頭の軽い奴はお前だけでたくさんだ!」
辰也も敵に向かっていく。
「ああもう、あたしの分も残しておいてよ! ここまでやらせておいて終わりなんて無しだからね!」
箒も後に続いていく。
炎の勢いで乱されて収まっていく風となおも吹き上がり続ける炎の中心に巨大なフェニックスの姿がある。
三人は一斉に掛かっていく。吹き上がる炎を避け、攻撃を加える。
燃えさかるフェニックスの体には全く通用した様子が無いが、それでも攻撃を続けるしか無い。
「決定打があればな」
「会長、紫門君と同じことを言ってる」
「俺をあんな奴と一緒にするな!」
「はいはい、仲の良い雑談は後にしてよね。焼けるから」
箒が言った直後、吹き上がる炎の大きな柱が三人の間を抜けていった。
フェニックスはさらに炎を放ってくる。三人はそれぞれに避けながら応戦していった。
星々の見守る中で戦いながら、ひかりには分かってきたことがあった。
「星々はわたし達の根絶だけを望んだわけじゃ無かった」
「何?」
その言葉に星々の意思を受けてやってきたフェニックスは不服そうな声を上げた。
ひかりは確信を力へと変えて言った。
「だって、それならおじいちゃんに準備をするようにと促す必要が無い。ただ滅ぼせば良かった。それをしなかったのはわたし達にチャンスをくれたから。お前に立ち向かえと応援のエールを送ってくれたんだ!」
「ほざくな、虫ケラがああああ!!」
自分の意義を否定されて火の鳥が吠える。咆哮が辺りを揺るがす。
だが、ひかり達も宇宙の星々も誰も震えたりはしない。
恐れたりはしない。
吹き上がる火炎を三人はそれぞれに避け、箒の風が巻き取り、辰也がブレスを浴びせ、ひかりが雷を放った。
不思議と調子が上がっていた。これが仲間と行動するということだろうか。一人で戦うよりもずっと高く力がみなぎっていた。
ひかりには雑談をする余裕も出来ていた。
「会長はわたしの付けたダメージはもう大丈夫なんですか?」
「問題ない。お節介な治癒能力者がいてな。奴が勝手に治したんだ」
「僕が治しました」
地上ではアルマジロが手を振っていた。調子の上がったひかりの目には遠くの地上の様子も見えていた。
「王たる者があんなザコの手を借りるとはな」
「辰也は元王じゃん。今の王様はひかりちゃん」
「うるさい!」
辰也と箒の仲の良いやりとりにひかりの顔にも笑みが浮かぶ。
「わたしは力を貸してもらえて嬉しいです」
普段は言えないことでも気楽に言えた。
その言葉に、辰也は顔を赤くしてそっぽを向いた。
「行くぞ、我らが手を貸して負けなど許されんからな!」
「はい!」
ひかりは体にみなぎる力を感じていた。それは今までに感じたことのない力だった。
力を合わせて敵に立ち向かう。その行為がひかりに勇気を与えてくれる。
みんなが応援してくれている。その温かさがひかりの持つ双剣に力を乗せてくれる。
一歩を踏み込めば仲間もついてきてくれる。
ひかりは炎を剣に乗せて、フェニックスに斬りかかった。フェニックスはそれを炎に燃える翼で防御した。
「わたしは炎の鳥。そのわたしに炎が通用するとでも?」
「炎と炎。同じ力なら強い者が勝つのが道理!」
「なにい!?」
そう前に発言したのはフェニックス自身だった。ひかりの強い炎はフェニックスの炎を揺るがし、爆発させて後退させた。
ひかりは勝ち誇った顔で相手を見た。
「どうだ! もうお前の得意技でもこちらが上だ!」
「ひかり、それぐらいにしておけ」
「弱い奴をいたぶるのってかわいそうじゃん」
調子づく三人をフェニックスは苦虫を噛み潰したような顔で睨み付けた。その姿、その雰囲気が不気味なおぞましさを帯びた物へと変容していく。
「ひかり、気を付けろ」
「分かっている」
ひかりは身構える。フェニックスは再び吠えた。
「この糞どもがあ! 教えてあげましょうか? 真に恐るべき物は、真に熱い物は赤い炎などでは無い! 青い炎だと言うことをなあ!」
フェニックスの炎が揺れ、赤だった存在が青い物へと塗り替えられていく。
時間にして僅か数瞬。そこには青い炎の鳥が現れていた。
「あなた達にはもう滅びの後の再生など与えません。この青い炎こそが全てを黄泉へと葬送する地獄の炎! 紺碧の猛禽!」
青い炎がひかり達を地球もろとも呑み込もうと襲い掛かってくる。
だが、ひかりの中にもう恐れはない。辰也が訊ねてくる。最後の激突に、
「立ち向かえるか?」
「もちろん!」
ひかりは双剣を構える。青い炎がなだれを打って向かってくる。
この剣で斬れるか。疑問を抱く余地など無い。やるしか無い。
緊張に唾を呑み込むひかりの肩に置かれた手があった。辰也と箒の手だった。
「それでは足りないな。あの勢いを斬るには支えが必要だ。俺達が支えてやる。だから臆せず全力の一撃を放て!」
「後の事はあたし達に任せていいから。ひかりちゃんはただ斬ることだけに全力を意識して!」
「はい!!」
ひかりは静かに剣に意識を集中させた。ただ斬ることだけを意識して……振る。
青い炎が覆い尽くす。その中に黒の一閃が走った。
さらに何発もの連撃が走っていく。
仲間と一緒に戦うのって何て気持ちが良いんだろう。
ひかりの気分も何倍にもなるようだった。
無数に閃く剣撃の前に、青い炎が散っていく。だが、それはすぐに集まってしまう。
「無駄だ! わたしはフェニックス! 何度でも復活する!」
斬った切れ目が蘇る。炎が変わらず向かってくる。
辰也と箒は呆れたような息を漏らした。
「タフな奴だ」
「あれを倒すにはどうすればいいんだろうね」
「構わない。このまま続ける」
「ん?」
「このまま力で押し切る!」
「フッ」
「それでこそひかりちゃんだ!」
ひかりはさらに黒い衝撃波を放つ。さらに攻撃を繰り出していく。
フェニックスの回復が追いつかなくなってきた。
「おのれ、わたしはフェニックス! 炎の中から何度でも……何度でもお!」
「お前は消えろ!!」
ひかりの振り上げる双剣が銀河の果てまでも届きそうな漆黒の巨剣へと変わる。
フェニックスは恐れおののいた。青い炎の勢いが退いていた。
勢いを減衰させた炎は再び赤へと戻っていた。
だが、今更逃げようとしてももう遅い。王者を前にした敵の運命はもう決まっているのだから。
ひかりはただ斬ることだけを考えて敵に向かって剣を振り下ろした。
フェニックスは真っ二つになって消えていく。
敵の消滅を確認して、心からの安堵と限界以上の力を使い切ったひかりも意識を失っていった。
地上から戦いの終わりを見届けて紫門は踵を返していく。
気づいた狼牙が声を掛けた。
「師匠を迎えないのか?」
「ああ、俺はハンターだからな。後はそっちでやってくれ」
去っていく紫門の顔には静かな笑みがあった。
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