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第16話
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俺はそれを確認すると、急いで国王を追って奥の部屋へと向かった。だが、そこには誰もいなかった。どうやら逃げられたみたいだな……。俺は部屋を出て階段を降りると、外にいる侍女に話しかけた。
「すまない。ちょっと聞きたいことがあるんだけど良いかな?」
「はい。なんでしょうか?」
「王様は何処に行ったんだ?」
「先程出て行かれました」
……なるほどね。どうやらあの野郎は自分の城を捨てて逃げたみたいだな。なら、もうここには用は無いか。俺達も戻るとするかね。そう思いながら歩き始めると、背後から呼び止められた。
「待て! お前を逃がすと思うのか!」
振り返ると、そこには気絶したはずのガリオンの姿があった。どうやら意識を取り戻したようだな。
「まだ動けたのか」
「当たり前だ! 貴様にはここで死んでもらうぞ!」
そう言うと、再び襲いかかってきた。だが、俺の敵ではなかった。俺は攻撃を軽くかわすと、カウンターで顔を思いっきり殴った。そして、そのまま地面に叩きつけると、馬乗りになって首を絞めつけた。
「……ガッ」
「お前は確かに強いよ。だけどな、俺の方が強かったってだけの話だよ」
「……クッ」
「お前が今まで散々見下してきた相手に殺される気分はどんな感じなんだ?」
「……お前なんかに……」
「ん? 何か言ったか?」
「……お前みたいな奴に殺されてたまるかぁー!!」
次の瞬間、俺は背中に強い衝撃を受けると、壁を突き破って吹き飛んだ。それから地面の上を転がり続けた後、ようやく勢いが収まったところで起き上がると、目の前には剣を構えた国王の姿があった。どうやらさっきの攻撃は彼のものだったようだな。
「よくもやってくれたな小僧!」
「逃げたんじゃなかったのか」
「この魔剣を取りにいってただけだ! お前らごときにこの国は渡さん!」
……なるほどね。それじゃあ、さっさと終わらせるとするか。俺は槍を手に取ると、構え直した。すると、国王も剣を大きく振り上げると、凄まじい魔力を放ち始めた。……これはかなりヤバそうだな。俺はそう判断すると、槍を構えて駆け出した。
次の瞬間、激しい衝撃波が放たれた。俺は咄嵯に身を屈めることで回避したが、それでも少しダメージを受けてしまった。……今のはかなり効いたな。だが、ここで止まるわけにはいかない。俺は痛みに耐えながら走り続けると、国王に向けて渾身の一撃を放った。だが、それは簡単に受け止められてしまった。
「無駄だ! この程度の力で私に勝つことなど不可能だ!」
「どうかな?」
「何?」
「今の俺の力はお前の想像を超えているかもしれないぜ?」
「戯言を言うな!」
国王が剣を振り下ろしてきたので、それをギリギリのところで避けると、反撃に転じた。だが、それは避けられてしまい、逆に反撃を食らうことになった。……やはり一筋縄ではいかないか。俺は体勢を整えると、今度は連続で攻撃を仕掛けることにした。そして、それを全て避けると反撃に転じてくる。そんな攻防がしばらく続いた。
やがて互いに体力の限界を迎えると、一旦距離を取ることにした。だが、お互いにこれ以上戦うことはできないようだ。国王は肩で大きく息をしており、俺も同じように荒い呼吸を繰り返していた。
「ハァ……。ハァ……。貴様はどうしてそこまでする?」
「……何の話だ?」
「惚ける必要はないぞ? 貴様がこの国の為に戦っていることくらい分かっておる」
「そうか」
「ならば何故だ? 国を思うならば王の為に尽くすのが民の義務であろう」
「決まってるだろ? 俺はお前が気に入らないんだ。お前を倒してこの国を変える」
「……愚かな。そんなことをしても何も変わらないというのに」
「お前には分からないだろうな。自分がどれだけ恵まれているかなんて」
「……どういう意味だ?」
「そのままの意味だ。お前は何でも持っている。金、権力、名声……。どれも俺にはないものだ」
「それがどうしたというのだ?」
「だから奪うことにしたんだよ。お前が持ってるもの全てをな」
「……なるほどな。つまりはお前は自分が惨めで仕方が無いということか」
「ああ、その通りだ」
「お前の考えはよく分かった。ならば、ここで死ぬといい! 誰にも知られずに死ぬのがお前にはお似合いだ」
「やってみろよ!」
俺達は同時に動き出すと、全力の一撃をぶつけ合った。そして、凄まじい轟音と共に周囲に衝撃が走った。その結果、俺達の体は激しく吹き飛び、ホールにあった調度品などが辺りに飛び散った。
「……グッ」
「……クッ」
俺はなんとか立ち上がると、国王の方へ視線を向けた。すると、相手もゆっくりと立ち上がろうとしている姿が目に入った。……流石にこのままだとマズイな。俺はそう思いながら槍を構えると、全身に魔力を流し込んだ。
「……何をするつもりだ?」
「悪いけど本気で行かせてもらう」
「面白い! ならば、こちらも本気を見せてやる!」
国王はそう叫ぶと、魔剣に膨大な量の魔力を込めた。……こっちの準備はまだ整っていないっていうのに。だが、やるしかないか。俺は覚悟を決めると、全神経を集中させて【神速】を発動させた。そして、一瞬にして距離を詰めると、強烈な蹴りを放った。
だが、それは相手の腕によって防がれてしまう。俺はすぐに足を引くと、今度は頭突きを放った。だが、それもまたガードされてしまう。俺は攻撃の手を止めることなく、ひたすら攻め続けた。
「どうした? その程度なのか!」
「まだまだこれからだ!」
俺は更に攻撃を続けると、相手が僅かに怯むのが見えた。その隙を見逃さずに、すかさず懐に入ると、拳に力を込めると思いっきり殴り飛ばした。国王は壁に激突すると大きな砂煙を上げたが、それでも何とか立ち上がった。だが、ダメージが大きいのか膝をついている。
俺はそれを見ると、一気に決着をつけるべく走り出した。そして、目の前まで行くと拳を振り上げたその時だった。突然背後から誰かに抱きつかれた。俺は慌てて振り払おうとしたが、その前に誰かが声をかけてきた。
「ダメです! それ以上進んだら貴方の命がありません!」
俺はその言葉を聞いて思わず立ち止まった。そして、自分が思っていた以上に体にダメージを受けていた事に気が付いた。
すると、国王はニヤリと笑みを浮かべた。
「……これで終わりだと思うなよ」
次の瞬間、国王は俺に向かって魔法を放つと、そのまま爆発を引き起こした。そして、俺は爆風に巻き込まれて吹き飛ばされると、壁に激突して意識を失った。……クソッ。まだ動けたのかよ。だけど、もう俺の力じゃアイツは倒せないな。それに、俺がいなくてももう大丈夫だろうしな。
俺は薄れゆく意識の中でそう考えると、静かに目を閉じた。俺の耳には黒猫団のみんなが駆けつけてくる勇敢な足音が確かに聞こえていた。
―――そして、時は流れて現在に至る。
俺は全てを話し終えると、椅子に深く腰掛けた。すると、ずっと黙っていたミーアが口を開いた。
「……なるほどね。そうしてこの国は変わったということだったのか」
「信じられないかもしれないが、これが真実だ」
「信じるよ。だって、君は嘘をつくような人じゃないからね」
「ありがとう」
「それで、これからどうするの?」
「まずは逃げた国王を追うよ。魔剣は破壊したが、あんなのはただの一本の剣だ。あいつはまだ何かを隠し持っているはずだ」
「なるほどね。でも、居場所が分かるのかい?」
「ああ、それなら問題無い。俺には心当たりがあるんだ」
「そうか。なら、ボク達も一緒に行こうか?」
「いや、今回は俺一人でやらせてくれ。仲間達には俺が戻るまではこの国を守っていてほしいんだ」
「分かったよ。その代わり、必ず戻ってきておくれ」
「もちろんだ」
俺はそう言うと、席を立った。そして、玄関へ向かうと、見送りに来てくれた三人に声をかけた。
「行ってくる」
「ええ、行ってらっしゃい」
「絶対に戻ってくるのよ」
「ご主人様、お気をつけて」
「ああ」
俺はそう返事を返すと、城を後にした。そして、草原を目指して走り出した。
その先にはきっとさらなる苦難の道が待っているのだろう。だけど、俺はそれでも進むと決めたんだ。あの日、俺を支えてくれたみんなの為にも。俺は走り続けると、決意を新たにした。
……さあ、行こうか。
俺はそう思いながら力強く大地を蹴ると、遥か遠くに見える目的地へと向かって駆け出した。
「すまない。ちょっと聞きたいことがあるんだけど良いかな?」
「はい。なんでしょうか?」
「王様は何処に行ったんだ?」
「先程出て行かれました」
……なるほどね。どうやらあの野郎は自分の城を捨てて逃げたみたいだな。なら、もうここには用は無いか。俺達も戻るとするかね。そう思いながら歩き始めると、背後から呼び止められた。
「待て! お前を逃がすと思うのか!」
振り返ると、そこには気絶したはずのガリオンの姿があった。どうやら意識を取り戻したようだな。
「まだ動けたのか」
「当たり前だ! 貴様にはここで死んでもらうぞ!」
そう言うと、再び襲いかかってきた。だが、俺の敵ではなかった。俺は攻撃を軽くかわすと、カウンターで顔を思いっきり殴った。そして、そのまま地面に叩きつけると、馬乗りになって首を絞めつけた。
「……ガッ」
「お前は確かに強いよ。だけどな、俺の方が強かったってだけの話だよ」
「……クッ」
「お前が今まで散々見下してきた相手に殺される気分はどんな感じなんだ?」
「……お前なんかに……」
「ん? 何か言ったか?」
「……お前みたいな奴に殺されてたまるかぁー!!」
次の瞬間、俺は背中に強い衝撃を受けると、壁を突き破って吹き飛んだ。それから地面の上を転がり続けた後、ようやく勢いが収まったところで起き上がると、目の前には剣を構えた国王の姿があった。どうやらさっきの攻撃は彼のものだったようだな。
「よくもやってくれたな小僧!」
「逃げたんじゃなかったのか」
「この魔剣を取りにいってただけだ! お前らごときにこの国は渡さん!」
……なるほどね。それじゃあ、さっさと終わらせるとするか。俺は槍を手に取ると、構え直した。すると、国王も剣を大きく振り上げると、凄まじい魔力を放ち始めた。……これはかなりヤバそうだな。俺はそう判断すると、槍を構えて駆け出した。
次の瞬間、激しい衝撃波が放たれた。俺は咄嵯に身を屈めることで回避したが、それでも少しダメージを受けてしまった。……今のはかなり効いたな。だが、ここで止まるわけにはいかない。俺は痛みに耐えながら走り続けると、国王に向けて渾身の一撃を放った。だが、それは簡単に受け止められてしまった。
「無駄だ! この程度の力で私に勝つことなど不可能だ!」
「どうかな?」
「何?」
「今の俺の力はお前の想像を超えているかもしれないぜ?」
「戯言を言うな!」
国王が剣を振り下ろしてきたので、それをギリギリのところで避けると、反撃に転じた。だが、それは避けられてしまい、逆に反撃を食らうことになった。……やはり一筋縄ではいかないか。俺は体勢を整えると、今度は連続で攻撃を仕掛けることにした。そして、それを全て避けると反撃に転じてくる。そんな攻防がしばらく続いた。
やがて互いに体力の限界を迎えると、一旦距離を取ることにした。だが、お互いにこれ以上戦うことはできないようだ。国王は肩で大きく息をしており、俺も同じように荒い呼吸を繰り返していた。
「ハァ……。ハァ……。貴様はどうしてそこまでする?」
「……何の話だ?」
「惚ける必要はないぞ? 貴様がこの国の為に戦っていることくらい分かっておる」
「そうか」
「ならば何故だ? 国を思うならば王の為に尽くすのが民の義務であろう」
「決まってるだろ? 俺はお前が気に入らないんだ。お前を倒してこの国を変える」
「……愚かな。そんなことをしても何も変わらないというのに」
「お前には分からないだろうな。自分がどれだけ恵まれているかなんて」
「……どういう意味だ?」
「そのままの意味だ。お前は何でも持っている。金、権力、名声……。どれも俺にはないものだ」
「それがどうしたというのだ?」
「だから奪うことにしたんだよ。お前が持ってるもの全てをな」
「……なるほどな。つまりはお前は自分が惨めで仕方が無いということか」
「ああ、その通りだ」
「お前の考えはよく分かった。ならば、ここで死ぬといい! 誰にも知られずに死ぬのがお前にはお似合いだ」
「やってみろよ!」
俺達は同時に動き出すと、全力の一撃をぶつけ合った。そして、凄まじい轟音と共に周囲に衝撃が走った。その結果、俺達の体は激しく吹き飛び、ホールにあった調度品などが辺りに飛び散った。
「……グッ」
「……クッ」
俺はなんとか立ち上がると、国王の方へ視線を向けた。すると、相手もゆっくりと立ち上がろうとしている姿が目に入った。……流石にこのままだとマズイな。俺はそう思いながら槍を構えると、全身に魔力を流し込んだ。
「……何をするつもりだ?」
「悪いけど本気で行かせてもらう」
「面白い! ならば、こちらも本気を見せてやる!」
国王はそう叫ぶと、魔剣に膨大な量の魔力を込めた。……こっちの準備はまだ整っていないっていうのに。だが、やるしかないか。俺は覚悟を決めると、全神経を集中させて【神速】を発動させた。そして、一瞬にして距離を詰めると、強烈な蹴りを放った。
だが、それは相手の腕によって防がれてしまう。俺はすぐに足を引くと、今度は頭突きを放った。だが、それもまたガードされてしまう。俺は攻撃の手を止めることなく、ひたすら攻め続けた。
「どうした? その程度なのか!」
「まだまだこれからだ!」
俺は更に攻撃を続けると、相手が僅かに怯むのが見えた。その隙を見逃さずに、すかさず懐に入ると、拳に力を込めると思いっきり殴り飛ばした。国王は壁に激突すると大きな砂煙を上げたが、それでも何とか立ち上がった。だが、ダメージが大きいのか膝をついている。
俺はそれを見ると、一気に決着をつけるべく走り出した。そして、目の前まで行くと拳を振り上げたその時だった。突然背後から誰かに抱きつかれた。俺は慌てて振り払おうとしたが、その前に誰かが声をかけてきた。
「ダメです! それ以上進んだら貴方の命がありません!」
俺はその言葉を聞いて思わず立ち止まった。そして、自分が思っていた以上に体にダメージを受けていた事に気が付いた。
すると、国王はニヤリと笑みを浮かべた。
「……これで終わりだと思うなよ」
次の瞬間、国王は俺に向かって魔法を放つと、そのまま爆発を引き起こした。そして、俺は爆風に巻き込まれて吹き飛ばされると、壁に激突して意識を失った。……クソッ。まだ動けたのかよ。だけど、もう俺の力じゃアイツは倒せないな。それに、俺がいなくてももう大丈夫だろうしな。
俺は薄れゆく意識の中でそう考えると、静かに目を閉じた。俺の耳には黒猫団のみんなが駆けつけてくる勇敢な足音が確かに聞こえていた。
―――そして、時は流れて現在に至る。
俺は全てを話し終えると、椅子に深く腰掛けた。すると、ずっと黙っていたミーアが口を開いた。
「……なるほどね。そうしてこの国は変わったということだったのか」
「信じられないかもしれないが、これが真実だ」
「信じるよ。だって、君は嘘をつくような人じゃないからね」
「ありがとう」
「それで、これからどうするの?」
「まずは逃げた国王を追うよ。魔剣は破壊したが、あんなのはただの一本の剣だ。あいつはまだ何かを隠し持っているはずだ」
「なるほどね。でも、居場所が分かるのかい?」
「ああ、それなら問題無い。俺には心当たりがあるんだ」
「そうか。なら、ボク達も一緒に行こうか?」
「いや、今回は俺一人でやらせてくれ。仲間達には俺が戻るまではこの国を守っていてほしいんだ」
「分かったよ。その代わり、必ず戻ってきておくれ」
「もちろんだ」
俺はそう言うと、席を立った。そして、玄関へ向かうと、見送りに来てくれた三人に声をかけた。
「行ってくる」
「ええ、行ってらっしゃい」
「絶対に戻ってくるのよ」
「ご主人様、お気をつけて」
「ああ」
俺はそう返事を返すと、城を後にした。そして、草原を目指して走り出した。
その先にはきっとさらなる苦難の道が待っているのだろう。だけど、俺はそれでも進むと決めたんだ。あの日、俺を支えてくれたみんなの為にも。俺は走り続けると、決意を新たにした。
……さあ、行こうか。
俺はそう思いながら力強く大地を蹴ると、遥か遠くに見える目的地へと向かって駆け出した。
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