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第6話
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「お疲れ様でした」
「お疲れさま」
受付嬢に挨拶をしてギルドを出る。今日の依頼はこれで終わりだ。さあて、今日もゆっくり休むとするかな。……なんてことを考えていると、後ろから声をかけられた。
「すみません、ちょっとよろしいですか?」
振り返ると、そこには兵士の格好をした男が立っていた。
「何でしょうか?」
「貴方に少しお聞きしたいことがありまして」
「はい?」
何だ? 一体……。
「貴方がシンさんですね?」
「え? ……ええ、そうですが……」
なんで俺の名前を知ってるんだ? ……まさかコイツら、俺の顔を知っているのか?
……いや、それは有り得ない。俺の顔を知っている人間はあの国には一人もいなかったはずだ。……一体どうして? 困惑していると、兵士が口を開いた。
「実は貴方にお願いがありまして」
「……何でしょうか?」
「単刀直入に言います。私達を護衛してもらえませんか?」
……はい?
「あの、どういう事ですか? 詳しく説明して頂いても構いませんか?」
「もちろんです」
兵士は俺を連れて近くの喫茶店へと入った。そこで詳しい事情を聞くことにする。
「まず最初に、自己紹介させていただきますね。私はこの国の兵士長をしている者です。そしてこちらが副兵士長のジギルと申します」
紹介された2人が頭を下げる。
「よろしくお願いします」
「よろしく!」
2人ともかなりの実力者みたいだ。……ただ、あまり強そうな感じはしないが……。
「早速ですが、貴方にお願いというのは他でもない。先程も申した通り、我々を護衛して欲しいのです」
「何故ですか?」
「実は、我々はある人物を追ってここまでやってきました」
「ある人物?」
「はい。……シンさん、貴方は『仮面の男』と呼ばれている冒険者の事を御存知ですか?」
……『仮面の男』? …………ああ、そういえば居たな。確か、少し前に話題になったヤツだったな。
「いえ、知りません」
「そうですか……。では、『黒猫団』という名前に心当たりはありませんか?」
……聞いたことがあるような気がするな。……どこで聞いたんだろうか?……ダメだ、思い出せない。
「……分かりません」
「そうですか……。……実は、その『仮面の男』というのが、我々の追っている『黒猫団』のリーダーなんです」
「え? ……ということは、貴方達は『黒猫団』を捕まえるためにやって来たということですか?」
「はい、そういうことです」
「なるほど。……ちなみに、その『仮面の男』とはどのような方なのですか?」
「それが、よく分からないんですよ」
「分からない? ……どういうことですか?」
「それが……顔を隠していて、素性が分からないんです」
「顔を隠す?」
「はい。彼はいつも仮面をつけており、素顔を見た者は誰もいないと言われています」
「へぇ……」
随分と徹底してるな。そこまでして正体を隠そうとする理由は何なんだ?
……もしかして、どこかの国のお偉いさんとかなのかな? ……うーん、分からないな。……あ、そう言えば……
「ところで、その方は女性なんですか?」
「いいえ、男性だと聞いています」
「そうですか……」
男か……。……そうか、男なのか……。……なら、別に気にする必要は無いな。うん、問題無い。
「それで、引き受けてくださるのでしたら報酬の件について話し合いたいと思うのですが」
「そうですね。……では、とりあえずお話を聞かせてください」
それから俺は、しばらく彼らと話を続けた。どうやら『黒猫団』のアジトの場所は特定できているらしく、明日出発する予定らしい。それを聞いた俺は、出発前に一度会わせてほしいと頼んでみた。すると、兵士達はすぐに了承してくれた。
「ありがとうございます」
「いえ、当然の事ですよ。……それで、いつ頃会いに行くつもりですか?」
「そうですね……。できれば早い方がいいと思っているのですが……」
「そうですか……。なら、明日の朝にでも向かいましょうか」
「わかりました。それで構いません」
こうして俺は、彼らの護衛を引き受けることになった。その後、俺は宿屋に戻り部屋に入ると、ベッドの上に寝転がった。
「ふう……」
今日も色々あったなぁ。……それにしても、まさかこんなことになるなんてな。……まあでも、悪い話ではないからな。俺は、ゆっくりと目を閉じた。
「お疲れさま」
受付嬢に挨拶をしてギルドを出る。今日の依頼はこれで終わりだ。さあて、今日もゆっくり休むとするかな。……なんてことを考えていると、後ろから声をかけられた。
「すみません、ちょっとよろしいですか?」
振り返ると、そこには兵士の格好をした男が立っていた。
「何でしょうか?」
「貴方に少しお聞きしたいことがありまして」
「はい?」
何だ? 一体……。
「貴方がシンさんですね?」
「え? ……ええ、そうですが……」
なんで俺の名前を知ってるんだ? ……まさかコイツら、俺の顔を知っているのか?
……いや、それは有り得ない。俺の顔を知っている人間はあの国には一人もいなかったはずだ。……一体どうして? 困惑していると、兵士が口を開いた。
「実は貴方にお願いがありまして」
「……何でしょうか?」
「単刀直入に言います。私達を護衛してもらえませんか?」
……はい?
「あの、どういう事ですか? 詳しく説明して頂いても構いませんか?」
「もちろんです」
兵士は俺を連れて近くの喫茶店へと入った。そこで詳しい事情を聞くことにする。
「まず最初に、自己紹介させていただきますね。私はこの国の兵士長をしている者です。そしてこちらが副兵士長のジギルと申します」
紹介された2人が頭を下げる。
「よろしくお願いします」
「よろしく!」
2人ともかなりの実力者みたいだ。……ただ、あまり強そうな感じはしないが……。
「早速ですが、貴方にお願いというのは他でもない。先程も申した通り、我々を護衛して欲しいのです」
「何故ですか?」
「実は、我々はある人物を追ってここまでやってきました」
「ある人物?」
「はい。……シンさん、貴方は『仮面の男』と呼ばれている冒険者の事を御存知ですか?」
……『仮面の男』? …………ああ、そういえば居たな。確か、少し前に話題になったヤツだったな。
「いえ、知りません」
「そうですか……。では、『黒猫団』という名前に心当たりはありませんか?」
……聞いたことがあるような気がするな。……どこで聞いたんだろうか?……ダメだ、思い出せない。
「……分かりません」
「そうですか……。……実は、その『仮面の男』というのが、我々の追っている『黒猫団』のリーダーなんです」
「え? ……ということは、貴方達は『黒猫団』を捕まえるためにやって来たということですか?」
「はい、そういうことです」
「なるほど。……ちなみに、その『仮面の男』とはどのような方なのですか?」
「それが、よく分からないんですよ」
「分からない? ……どういうことですか?」
「それが……顔を隠していて、素性が分からないんです」
「顔を隠す?」
「はい。彼はいつも仮面をつけており、素顔を見た者は誰もいないと言われています」
「へぇ……」
随分と徹底してるな。そこまでして正体を隠そうとする理由は何なんだ?
……もしかして、どこかの国のお偉いさんとかなのかな? ……うーん、分からないな。……あ、そう言えば……
「ところで、その方は女性なんですか?」
「いいえ、男性だと聞いています」
「そうですか……」
男か……。……そうか、男なのか……。……なら、別に気にする必要は無いな。うん、問題無い。
「それで、引き受けてくださるのでしたら報酬の件について話し合いたいと思うのですが」
「そうですね。……では、とりあえずお話を聞かせてください」
それから俺は、しばらく彼らと話を続けた。どうやら『黒猫団』のアジトの場所は特定できているらしく、明日出発する予定らしい。それを聞いた俺は、出発前に一度会わせてほしいと頼んでみた。すると、兵士達はすぐに了承してくれた。
「ありがとうございます」
「いえ、当然の事ですよ。……それで、いつ頃会いに行くつもりですか?」
「そうですね……。できれば早い方がいいと思っているのですが……」
「そうですか……。なら、明日の朝にでも向かいましょうか」
「わかりました。それで構いません」
こうして俺は、彼らの護衛を引き受けることになった。その後、俺は宿屋に戻り部屋に入ると、ベッドの上に寝転がった。
「ふう……」
今日も色々あったなぁ。……それにしても、まさかこんなことになるなんてな。……まあでも、悪い話ではないからな。俺は、ゆっくりと目を閉じた。
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