6 / 16
第6話
しおりを挟む
「お疲れ様でした」
「お疲れさま」
受付嬢に挨拶をしてギルドを出る。今日の依頼はこれで終わりだ。さあて、今日もゆっくり休むとするかな。……なんてことを考えていると、後ろから声をかけられた。
「すみません、ちょっとよろしいですか?」
振り返ると、そこには兵士の格好をした男が立っていた。
「何でしょうか?」
「貴方に少しお聞きしたいことがありまして」
「はい?」
何だ? 一体……。
「貴方がシンさんですね?」
「え? ……ええ、そうですが……」
なんで俺の名前を知ってるんだ? ……まさかコイツら、俺の顔を知っているのか?
……いや、それは有り得ない。俺の顔を知っている人間はあの国には一人もいなかったはずだ。……一体どうして? 困惑していると、兵士が口を開いた。
「実は貴方にお願いがありまして」
「……何でしょうか?」
「単刀直入に言います。私達を護衛してもらえませんか?」
……はい?
「あの、どういう事ですか? 詳しく説明して頂いても構いませんか?」
「もちろんです」
兵士は俺を連れて近くの喫茶店へと入った。そこで詳しい事情を聞くことにする。
「まず最初に、自己紹介させていただきますね。私はこの国の兵士長をしている者です。そしてこちらが副兵士長のジギルと申します」
紹介された2人が頭を下げる。
「よろしくお願いします」
「よろしく!」
2人ともかなりの実力者みたいだ。……ただ、あまり強そうな感じはしないが……。
「早速ですが、貴方にお願いというのは他でもない。先程も申した通り、我々を護衛して欲しいのです」
「何故ですか?」
「実は、我々はある人物を追ってここまでやってきました」
「ある人物?」
「はい。……シンさん、貴方は『仮面の男』と呼ばれている冒険者の事を御存知ですか?」
……『仮面の男』? …………ああ、そういえば居たな。確か、少し前に話題になったヤツだったな。
「いえ、知りません」
「そうですか……。では、『黒猫団』という名前に心当たりはありませんか?」
……聞いたことがあるような気がするな。……どこで聞いたんだろうか?……ダメだ、思い出せない。
「……分かりません」
「そうですか……。……実は、その『仮面の男』というのが、我々の追っている『黒猫団』のリーダーなんです」
「え? ……ということは、貴方達は『黒猫団』を捕まえるためにやって来たということですか?」
「はい、そういうことです」
「なるほど。……ちなみに、その『仮面の男』とはどのような方なのですか?」
「それが、よく分からないんですよ」
「分からない? ……どういうことですか?」
「それが……顔を隠していて、素性が分からないんです」
「顔を隠す?」
「はい。彼はいつも仮面をつけており、素顔を見た者は誰もいないと言われています」
「へぇ……」
随分と徹底してるな。そこまでして正体を隠そうとする理由は何なんだ?
……もしかして、どこかの国のお偉いさんとかなのかな? ……うーん、分からないな。……あ、そう言えば……
「ところで、その方は女性なんですか?」
「いいえ、男性だと聞いています」
「そうですか……」
男か……。……そうか、男なのか……。……なら、別に気にする必要は無いな。うん、問題無い。
「それで、引き受けてくださるのでしたら報酬の件について話し合いたいと思うのですが」
「そうですね。……では、とりあえずお話を聞かせてください」
それから俺は、しばらく彼らと話を続けた。どうやら『黒猫団』のアジトの場所は特定できているらしく、明日出発する予定らしい。それを聞いた俺は、出発前に一度会わせてほしいと頼んでみた。すると、兵士達はすぐに了承してくれた。
「ありがとうございます」
「いえ、当然の事ですよ。……それで、いつ頃会いに行くつもりですか?」
「そうですね……。できれば早い方がいいと思っているのですが……」
「そうですか……。なら、明日の朝にでも向かいましょうか」
「わかりました。それで構いません」
こうして俺は、彼らの護衛を引き受けることになった。その後、俺は宿屋に戻り部屋に入ると、ベッドの上に寝転がった。
「ふう……」
今日も色々あったなぁ。……それにしても、まさかこんなことになるなんてな。……まあでも、悪い話ではないからな。俺は、ゆっくりと目を閉じた。
「お疲れさま」
受付嬢に挨拶をしてギルドを出る。今日の依頼はこれで終わりだ。さあて、今日もゆっくり休むとするかな。……なんてことを考えていると、後ろから声をかけられた。
「すみません、ちょっとよろしいですか?」
振り返ると、そこには兵士の格好をした男が立っていた。
「何でしょうか?」
「貴方に少しお聞きしたいことがありまして」
「はい?」
何だ? 一体……。
「貴方がシンさんですね?」
「え? ……ええ、そうですが……」
なんで俺の名前を知ってるんだ? ……まさかコイツら、俺の顔を知っているのか?
……いや、それは有り得ない。俺の顔を知っている人間はあの国には一人もいなかったはずだ。……一体どうして? 困惑していると、兵士が口を開いた。
「実は貴方にお願いがありまして」
「……何でしょうか?」
「単刀直入に言います。私達を護衛してもらえませんか?」
……はい?
「あの、どういう事ですか? 詳しく説明して頂いても構いませんか?」
「もちろんです」
兵士は俺を連れて近くの喫茶店へと入った。そこで詳しい事情を聞くことにする。
「まず最初に、自己紹介させていただきますね。私はこの国の兵士長をしている者です。そしてこちらが副兵士長のジギルと申します」
紹介された2人が頭を下げる。
「よろしくお願いします」
「よろしく!」
2人ともかなりの実力者みたいだ。……ただ、あまり強そうな感じはしないが……。
「早速ですが、貴方にお願いというのは他でもない。先程も申した通り、我々を護衛して欲しいのです」
「何故ですか?」
「実は、我々はある人物を追ってここまでやってきました」
「ある人物?」
「はい。……シンさん、貴方は『仮面の男』と呼ばれている冒険者の事を御存知ですか?」
……『仮面の男』? …………ああ、そういえば居たな。確か、少し前に話題になったヤツだったな。
「いえ、知りません」
「そうですか……。では、『黒猫団』という名前に心当たりはありませんか?」
……聞いたことがあるような気がするな。……どこで聞いたんだろうか?……ダメだ、思い出せない。
「……分かりません」
「そうですか……。……実は、その『仮面の男』というのが、我々の追っている『黒猫団』のリーダーなんです」
「え? ……ということは、貴方達は『黒猫団』を捕まえるためにやって来たということですか?」
「はい、そういうことです」
「なるほど。……ちなみに、その『仮面の男』とはどのような方なのですか?」
「それが、よく分からないんですよ」
「分からない? ……どういうことですか?」
「それが……顔を隠していて、素性が分からないんです」
「顔を隠す?」
「はい。彼はいつも仮面をつけており、素顔を見た者は誰もいないと言われています」
「へぇ……」
随分と徹底してるな。そこまでして正体を隠そうとする理由は何なんだ?
……もしかして、どこかの国のお偉いさんとかなのかな? ……うーん、分からないな。……あ、そう言えば……
「ところで、その方は女性なんですか?」
「いいえ、男性だと聞いています」
「そうですか……」
男か……。……そうか、男なのか……。……なら、別に気にする必要は無いな。うん、問題無い。
「それで、引き受けてくださるのでしたら報酬の件について話し合いたいと思うのですが」
「そうですね。……では、とりあえずお話を聞かせてください」
それから俺は、しばらく彼らと話を続けた。どうやら『黒猫団』のアジトの場所は特定できているらしく、明日出発する予定らしい。それを聞いた俺は、出発前に一度会わせてほしいと頼んでみた。すると、兵士達はすぐに了承してくれた。
「ありがとうございます」
「いえ、当然の事ですよ。……それで、いつ頃会いに行くつもりですか?」
「そうですね……。できれば早い方がいいと思っているのですが……」
「そうですか……。なら、明日の朝にでも向かいましょうか」
「わかりました。それで構いません」
こうして俺は、彼らの護衛を引き受けることになった。その後、俺は宿屋に戻り部屋に入ると、ベッドの上に寝転がった。
「ふう……」
今日も色々あったなぁ。……それにしても、まさかこんなことになるなんてな。……まあでも、悪い話ではないからな。俺は、ゆっくりと目を閉じた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる