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新生編

第19話 闘技大会

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 公太郎とエンデは闘技大会の会場の受付へとやってきた。

「ここにサインしてくじを引いてください。予選は各ブロックに別れて行い、そこで多く勝利した8名が本戦へと進みます」
「なるほどな。じゃあ、この公太郎様がAブロックの1番を当てて一番に勝利を決めてやるぜ!」
「Aブロックは一番というわけでは……」
「うおお!」

 公太郎はくじを引いた。

「Aブロックの一番です!」
「よっしゃあ!」
「公ちゃんがAの一番なら、あたしはBの一番だー!」

 続いてエンデがくじを引く。

「Dの7番です!」
「あちゃあ!」
「お前って運がないな。まあ、元気出せよ。決勝で会おうぜ!」
「うん! 決勝で会おう!」

 そして、公太郎とエンデは別れて、それぞれの予選のブロックへと向かった。
 予選はそれほど広くない室内で行われた。

『それでは予選の1回戦を始めます! 公太郎選手VSパラゴス選手! 始め!』

 司会の掛け声とともに試合が始まる。
 公太郎の最初の相手はブーメランを持った武闘家の男だった。

「俺はブーメランを極め、ブーメランの強さを世界に教えるためにこの大会に来た。ここは軽く勝たせてもらうぞ!」

 パラゴスはブーメランを投げた。公太郎はそれを片手で弾いた。ブーメランは会場の壁に刺さった。

「お……俺のブーメランが……」
「ブーメランがどうかしたか?」

 会場からブーメラン()と失笑がもれる。

「うわーん!」

 パラゴスは逃げ出した。

「なんだったんだ、あいつ」
『続いて2回戦を始めます。公太郎選手VSヴィアン選手! 始め!』

 司会の掛け声とともに2回戦が始まる。公太郎は気を引き締めた。
 2回戦の相手は学者風の老人だった。

「わしの目は全てを見通す。お前、本当は男じゃろう!」
「うげー! な、なんのことやらあ?」

 公太郎は動揺した。老人はさらに踏み込んできた。

「とぼけても無駄じゃ。さあ、その服を脱いでお前の正体をわしにさらすのじゃあ!」
「うっせー! 触んじゃねえ! この糞じじい!」

 老人は飛びかかってくる。その目つきや手つきに寒気を感じた公太郎は慌てて彼を殴り飛ばした。

「あぎゃあ!」

 老人は吹っ飛んで倒れた。

『公太郎選手の勝利です!』
「ったく、なんで俺がこんな女みたいな気分を味合わないといけねえんだよ」

 公太郎はたいして乱れてもいない衣服を直しながらぼやいた。

『続いて3回戦です』
「お、今度はまともな相手だといいな」

 公太郎は続く試合も順調に勝ちすすみ、見事に本戦出場を決めたのだった。

「闘技大会ってこんなレベルなのか? なんか弱い者いじめみたいでつまらないんだが」

 Aブロックの予選の終わった会場の隅で公太郎がぼやいていると、そこにちっこい少女の姿をした神様が現れた。

「公太郎が強すぎるんですよ。公太郎は半チート能力を持っているんですから、少しは手加減しないと駄目ですよ」
「そんなもんなのか。俺は半チートなんてたいして役に立たない物かと思い始めてたんだが。フィオレのレベルに比べたらなあ」
「チート能力者と比べられたら、世界中のみんながかわいそうですよ」
「まあいいか。次からは手加減って奴も考えることにするぜ」

 そんなことを神様と話し合っていると会場に放送のチャイムが鳴り響いた。

『本戦に出場する8名が決まりました。出場者は係員の指示に従って本戦の会場にお進みください』
「よし、行くか」

 そして、公太郎は本戦の会場へと向かった。


 階段を昇って本戦の会場へ行くと、そこは予選の会場よりも広く、多くの観客席の人々で賑わっている場所だった。そこにはすでに他の7人もいるようだった。

「さすがは本戦。今までの予選はほんの前座に過ぎなかったんだな」

 公太郎が周囲を見回していると、近づいてきた少女がいた。

「よかった。公ちゃんも進出できたんだね」
「エンデもか。この大会ってレベルが低」
「めっちゃ苦戦したよね。これから先を勝ち抜けるかなあ」

 エンデが疲れたため息を吐くのを見て、公太郎は言いかけた言葉を変えた。

「まあ、お互い頑張ろうぜ。そして、みんなに俺達の力を見せつけるんだ」
「OK!」

 そんなことを話していると、司会のアナウンスが流れた。

『ここに本戦に出場する8名が出揃いました。では、会場のみなさまにこの栄光ある8名をご紹介しましょう!』
「お、誰か強そうな奴がいるかな」

 公太郎は同じ会場にいる他の選手に目を向けようとした。

『まずは一番。公太郎選手!』
「俺が一番か。気が利くじゃねえか」

 一番に呼ばれて公太郎が手を振ると、周囲の観客席が盛り上がった。何か男の熱い声援も聞こえたような気がしたが眉を引きつらせながらも聞き流すことにした。

『二番。セイン選手!』
「フッ、このわたしの美しさに目がくらんで、美しい剣技を見逃すんじゃありませんよ」

 妙にきらびやかな装備をしたキザッたらしい青年だった。
 観客席から女性の黄色い悲鳴がキャーッと上がった。

「よく分からんが、さすがに予選の奴よりは強そうだな」

 公太郎は感想を呟く。司会による紹介が続く。

『三番。ファルコン選手!』
「へっ、俺のタイガークローが火を噴くぜ!」

 両手に大きな爪を付けた人相の悪い盗賊風の男だった。

「身軽そうな奴だな。一応気を付けといた方がいいか」
『四番。オサダ選手!』
「やあやあ、僕のことは気楽にオッサンと呼んでくれていいからね」

 大きな六角棒を持った冴えない旅の僧のようなおっさんだった。

「ああいうのが意外と強いんだよな。気を付けておこう」
『五番。エンデ選手!』
「五番かあ」
「まあ、頑張れ」
『六番。犬選手!』
「わんわん!」

 どこからどう見てもただの犬だった。

「なんであんなのがこの会場にいるんだ」
『七番。ミスターカボチャ選手!』
「トリック・オア・トリート! ぼく悪いカボチャじゃないよ!」

 大きなカボチャの被り物を頭に被ってマントで全身を包んだよく分からない奴だった。

「六番と七番はネタ枠か。除外してよさそうだな」
『そして、みなさんお待ちかね。八番、前回の優勝者デバラン選手だー!』

 会場の声援がどよめきへと変わった。

「主役とは最後に登場するものだ。さあ、今年は俺を楽しませてくれる奴はいるのかな」

 体格のがっしりとした威圧感を持った大柄な男だった。

「さすがに一番強そうだな。少しは期待出来そうだぜ」
『今年はこの8名で決勝を戦います。ここで王様からお話があります』
「ん、なんだ?」

 公太郎が見上げると、会場の正面のよく目立つ高台に王様の姿が現れた。

「みなさん! 今年もよく我が国の大会にお越しくださいました! お待ちかねの決勝戦ですが、今年は少し趣向を変えようと思います!」
「ほう」

 前回優勝者のデバランが関心を持ったように小さく呟いた。王様の話は続く。

「伝説の三魔獣の一匹、炎のファイダを我が国の騎士団が火山へと追い返したことはみなさんの中にも聞き及んでいるものもいることでしょう。しかし、その脅威はまだ完全に去ったわけではありません。そこで今年はこの8人で一斉に火山へと赴き、ファイダに止めを刺した者を優勝とすることにします!」

セイン「フッ、王様もなかなか粋なことを考えますね」
ファルコン「伝説の魔獣か。こいつらと戦うよりは骨がありそうだ」
オサダ「王様としては優勝者が伝説の魔獣を倒した者となれば宣伝にもなると考えているんだろうねえ」
エンデ「予期せずにチャンスが回ってきたね」
犬「わんわん!」
カボチャ「トリック・オア・トリート! お菓子ちょうだい!」
デバラン「相手が伝説の魔獣といえど、この俺がいれば全滅はありえん。安心するがいい」

 各人の反応は様々だ。公太郎としてはそんなこともあるんだなと思うだけだった。

「まあいいけどよ。炎の魔獣と戦えるんならそれでもよ」

 ただ、三魔獣と戦いに行くのに、フィオレがこの場にいないことだけが気がかりだった。

「公太郎、フィオレを呼んできた方がいいのではないですか」

 神様のその言葉に公太郎は考えを振り払った。

「冗談じゃねえよ。あいつは疲れてるんだ。ヒーローがヒロインを頼るようになったら終わりだぜ。ここは俺が勝利してお姫様に安心できる報告を持ってかえってやらないとな」
「自信があるのは良いことですが、保険は掛けておくに越したことはないですよ」
「うっせえ、保険なんかじゃねえよ。あいつはな……いや、なんでもねえ」
「公太郎? 何を考えているのですか?」
「試合が始まる。今はこの戦いに集中させてくれ」

 公太郎がそう言うと神様は姿を消した。司会の放送が始まりを告げる。

『みなさん、準備はいいですね? ファイダは赤いトカゲのような姿をしたモンスターです。では、スタートしてください!』
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