地味に転生していた少女は冒険者になり旅に出た

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流れ星

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「なるほど、わかった。エタン君は白豹の先祖返りで、そして、君達は番だが、今は謎の兄妹プレイ中、と言うことなんだな」

「なっ、なんでそうなるんですか?!」
「番、では無く、俺達は兄妹です。クリスには兄と認めてもらったからな。だから、俺はクリスの兄と言う事です。それと、プレイとは?」

と言う会話が何度か行われたけど、色々と説明するのになぜか、私は恥ずかしがっていると解釈された。

えっと?もしもし!?

どうやら事前に魔道具を通して事情説明があったらしく、先程のヒャッハー兄さんは私達が番でエタンの怒りを買うと勘違いしていた事が判明した。

誤解だ!デッカイ誤解だ!

「まぁ、どちらでもあまり変わりはないだろう。ソーマ(要塞都市のギルドマスター)曰く、エタン君はクリス君が可愛くて仕方ないらしい、と言うことなのだから。だとするなら妹も番もあまり変わりはないだろう。」

と、よく分からない持論でそう締め括られた。


「なんだかたくさん大きな声を出し過ぎて頭がクラクラする。」
「大丈夫か?宿に行くか、クリス?」


頭を押さえて踞る私をヨイショと抱き上げるエタン。
過保護が悪化している?と思ったけれど、クラクラしすぎて私は考えるのを放棄。エタンの胸に頭を押し付けていた。

「これで番じゃ無いと言われてもね…」

ギルドマスターが生暖かい眼差しを向けて来た。なんか言っているけど聞こえない。

「ひとまず、養成所の方は来週からはじまるので、それまではゆっくりしていてくれ。もしすることが無ければ明日は養成所を案内したり説明をする事もできるから。必要な時はまたここに来て欲しい。では、今日はゆっくり休んでくれ。」

ギルドマスターの声にギルド職員のお兄さんが…モヒカンお兄さんが…「んじゃ、宿に案内して来やす!」とギルドマスターに言うと私達に着いてくるように言って歩き出した。

「まず、宿は二つから選べる事になってる!こっちが風呂付きが売りの宿『流れ星』」

水色の屋根の丸い屋根のお宿を指さしてヒャッハー兄さんが言う。

「ンで、こっちがふかふかなベッドが自慢の宿『癒しの森』」

丸太を使った木造りの宿を指さしてヒャッハー兄さんが「どっちにする?」と聞いてくる。

そしてエタンは「飯が美味いのはどっちだ?」と返した。

「えぇ!?飯?そっちか~。飯が美味い宿…どっちだろうなー?まぁ、流れ星の方かな?」

どうやらこのヒャッハー兄さん、見た目に反して宿選びの際は寝心地や風呂を重要視していたらしい。

「クリス、飯のうまい宿で良いか?」

「うん、流れ星でいいよー!」

と言う事は?

うわぁー!初めてお風呂に入れる!

この世界に生まれて初のお風呂だと、私は今更ながらに気付いてちょっとテンションが上がった。



───────────


ヤバイ、お風呂だ!

小さなバスタブは大人なら一人が膝を抱えて入れる広さだけど。小さな私には充分嬉しい広さだ!

「クリス、良いか?」
「……へ?」

お風呂になぜか意を決した顔のエタンが入って来た。
そして真剣な顔で私の頭を洗い出した。

「………気持ちいい…って!待って、待って、エタン?なにしてるの?」

「何をって、クリスの頭を洗っているんだが。」

えぇ!?なんか、普通の事だろ的に言われたんだけど。えっと?私がおかしいわけじゃないよね?

「獣人って兄妹だと頭を洗ったり洗ってもらったりするの?」

「さっき、宿の女将に『この洗髪剤で洗ってあげると喜んでくれるよ』と言ってこれを渡されたんだ。いい匂いだな、コレ。」

うん、たぶんそれは女将に誤解されてるよね?女の子だって言った途端にあの女将、私達を見てニタニタ笑ってたし。

くぅぅ!


恥ずかしがってる場合じゃ無い!私はまだ十二歳だし、子供だし、大丈夫!エタンだって、まぁーったく、気にしてないし!

ん?それはそれでなんかムカつくな……


結局、エタンには私は凄い恥ずかしがり屋だから、と髪を洗うのはしなくていいと説明して慌てて女将に釘を刺しに下の階へと降りていった。

─────────


金髪の毛並みの良さそうな、金色の瞳の子供。
けっこう目立つし、宿の一階と言うと外からも見えてしまう。けれどクリスはお構い無しに女将に突進して行った。

「おい、居た!アレだアレ」
宿の外にいた獣人の女子供を攫い、奴隷として売っている人族の盗賊団の男がクリスを見て「アレだ、俺が昼間に見た綺麗なガキ」と嬉しそうにニヤニヤと笑った。
「おー、これまた高値がつきそうなガキだな、おい!」

ぎゃはは、と下品に下卑た笑を浮かべた男達が宿にこっそりと近付くが…

スタッと窓から飛び降りた男。

銀と白の斑な髪。
恐ろしい程の魔力を宿した苛烈な眼差しを向けて来るその男の姿は男達から言葉を奪った。濃厚な魔力が男達から言葉と思考力を奪い、魔力による魔力酔いに顔を白くさせている。

「あっ、ぐぅ…」
「ひっ」

恐ろしくぎらついた金の目をした男は

まるで音も立てずに下卑た男達を刈り取って行く。

雑草を手に持つように無造作に男達を掴んだ男、エタンが風に舞うように男達を人の居ない場所を探して放り投げた。

「やっぱり山までが限度だな」
エタンは先祖返りの力を漸く使う気になった。今は密かに鍛えている最中だ。

可愛いクリスを守る為には力を付けなければと鍛錬に励んでいるのだ。

その成果は多少出てきているがあの魔の森までは流石に無理だった。せいぜい来る途中にあった山に届いた位だろう。肉の塊となって…

山に向かって吹き飛んで行った男達。

それをゴミ掃除が終わったと言いたげに見送ったエタンが二階の客室の窓から部屋に戻るのと彼の可愛い妹が部屋に入るのと、たぶん同時だっただろう。

────────────

私はエタンに「聞いて、エタン」と言ってエタンに詰め寄った。

「どうかしたのか?」
そう言うエタンは珍しく腰が引けていて私はちょっと興奮していた事を内心詫びながらも「女将に釘を刺しに行ったのに、更なる誤解を与えた気がするの!」と危機的状況に陥ってしまった経緯を話た。

先程、女将に私はエタンにおかしな事を吹き込まないでよ!と抗議しに行ったのだ。
髪を急に洗われてビックリしたと言うと「もう早速使ったのかい!で?どうだった!?」と聞かれて「何が?」と首を傾げると女将が「いい匂いがする、とか、この匂いは苦手だ。とか、なんか言って無かったかい?」と聞かれた。

「そう言えばエタンはいい匂いだな、って言ってた」と言うとなぜか「そりゃー良かったね!よし、この女将に任せときな!」と言ってバシバシ背中を叩かれた事を話た。


「そうか。よく分からないがいい人そうで良かったな」

「…え?そっち?!そりゃそうなんだけど。そうなんだと思うんだけど」


そーじゃないよー!


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