地味に転生していた少女は冒険者になり旅に出た

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騎士団

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要塞都市の丘にある観測所にて、周辺の観測をしていた騎士は透視遠観魔鏡を手に、とある一点を見ていた。
「ありゃぁ……なんだ?」
魔鏡のダイヤルを切り替えて再度確認する。
見えたのは、赤い鶏冠に赤黒いにょろりとした胴。
確か東の砂漠にあんな感じの魔物がいると聞いた事がある。
しかし、それだって魔の洞窟の最奥、最下層にいると言われている。

「と、兎に角知らせねぇと」

この要塞都市を守る騎士団の詰所にある警報機がけたたましい音を立てて関所のそばにある森の様子を魔映写機にて映し出す。

この地を守る騎士団、アンバンシーブル騎士団。
「関所にある森に向かえ!」
その中でも、最強の精鋭部隊が動き出した。

僅かな映像から魔物の正体を割り出した隊長アドンがバジリコックの特長と弱点を告げると隊員達はみな武器を手に走り出す。

毒を防ぐ為に毒耐性の秘薬を飲んだ五人の隊員達は「久々に手応えがありそうな予感だな」と言い身体強化をかけて走り出した。
ひとの目では到底その姿を捉えられない程の速さだ。

森の奥からバジリコックの呻き声が聞こえる。

見れば大木の上にいる冒険者がバジリコックの片目に矢を命中させてバジリコックに傷を追わせている。

更に何やら不思議な形状の武器を魔法で作り上げたらしく攻撃をしかけている。

「……なんだあれは」

そのガキを守っている男は自分とガキの周りに信じ難いほど強力な防御魔法をかけながら、近くで腰を抜かしている国境警備隊の隊員の方へ行かない様にバジリコックの体を自分達のいる木の真下に固定させようとしていた。

バンババンと派手な爆発音が鳴り響く。

先に到着した隊員達が魔法で防御しつつバジリコックの胴を押さえ込みバジリコックの弱点である鶏冠を狙って魔物殺しの魔石で作った矢を放つが、暴れ回るバジリコックにはなかなか当たらない。

「あちゃー。」

バジリコックは傷を負うと凶暴化する。長引けば不味い事態になりそうだ。

あの魔物の血には空気に溶け込む毒の作用があり、周囲の生き物全てに毒を撒き散らす。

しかし、あのバジリコックがたったの二人に手負いにされてるなんてな。アレは獣人の一般の騎士達なら五十程の人員で対処する程の魔物だ。
まぁ、俺達アンバンシーブル騎士団の精鋭部隊なら今いる八人でも可能だが。

「よし、お前ら下がってろ。」

バジリコックの血が流れ過ぎてる。さっさとやっちまうか。

毒耐性を飲んでいない隊員達を下がらせたオスカーは矢に付いている魔石に魔力を送り弓に矢筈を番えると矢を放った。

「『炎の矢』」
飛び行く矢に更に魔法を追加した。

巨大な炎を纏う矢は砂漠の悪魔バジリコックの鶏冠を、頭ごと消滅させた。
バジリコックは周囲を囲う隊員達や大木にいる餌に集中しており、横から現れた炎の矢に遅れをとった。気付いた時には目前に炎があったのだ。

バジリコックに対抗できる唯一の方法は火では無く炎だ。
火属性のバジリコックには火属性以外の魔法は威力が大幅に削がれる魔法耐性がある。

だが、同じ属性の上位の魔法なら有効になる。

脱皮中のバジリコックは呆気なくゴゥ、と炎に包まれた。
バジリコックの頭はジリジリと音を立てて焼失し、頭を失った胴はグニョグニョと蠢いたが次第に活動を停止し、今は隊員達によって捌かれて袋に入れられている。

「よう、災難だったな。あんなAランクの厄介過ぎる魔物に遭遇して。無事で何よりだ。」

そう声をかけて、はたとその冒険者を見て精鋭部隊の隊長、アドンは目を丸くして呟いた。

「白豹?」

目の前には獣人達がひれ伏したくなる最強の種が、苛烈な黄金の瞳から白き魔力と黄金の魔力を放ち、威風堂々とこちらを見下ろしていた。

「………まかさ、先祖返りか?」



────────────


「やばい、ヤバすぎる!エタン、ごめん!ごめんね!」
やらかしちゃったよ!

「防御魔法を張ってるから暫くは大丈夫だ。だからクリス。落ち着け」

弾丸をいっぱい撃ち込んだ所、胴に無数の穴が空いた。

途端にバジリコックが強烈な毒素を血と共に傷口から出して来たのだ。

ヤバイ、そう言えばアレの体液は全部毒だった。そう気づいた時には時すでに遅しで、おかげで辺りに毒の空気が充満してきた。

私とエタンの二人分の防御魔法と国境警備隊の隊員さんが襲われない様にってエタンはバジリコックを縛り付ける魔法を使っている。

そんなの長く続けたらあの隊員さんが毒で殺られちゃうし、何よりもエタンが倒れちゃうよ!

万事休す。
不味い不味い。
暗殺術に長けていたってこんな時には何の役にも立たないじゃないか。
釣り糸の様な糸をあの鳥頭に巻き付けて魔力を流して……ダメだ!魔力意味無いんだこの魔物。

私がオロオロとしていたら騎士団が来てバジリコックを取り囲んで攻撃を開始した。でもバジリコックにはまるで効いていない。
あー、そんなぁ。と私は情けなくも泣きべそをかいていた。

そんな時に、嘘みたいな事が起こった。

バジリコックの頭が炎に飲まれて消滅したのだ。

魔力の炎だからかバジリコックを殺った後は跡形もなく消えちゃったけど。
凄かった!

私が目を真ん丸にして驚いているとエタンが「…ちっ」と舌打ちした気がした。

気のせいかご機嫌斜めで下の様子を見ている。

獲物を横取りされた獣の様だ。

「エタン、あのバジリコックの肉とか欲しかったの?」
「……なんでそう言う結論にたどり着いた?」

え?違うの?

「まぁ、アレが砂漠の悪魔バジリコックなら食える場所はどこにも無い。ただ血には猛毒があるから放置するとこの森全体が死ぬ。だからああしてアイツらはバジリコックの胴を袋に入れてるんだろう」

へぇ。相変わらずの物知り博士だ。

「そんなに物知りなのにバジリコックの弱点は知らなかったの?」
「………さっき、やっと思い出したんだ。鶏冠と炎だ。くそっ」

私の質問にギロリと恐ろしくムッとした顔を向けて来たけど、マジ怒な訳じゃないとわかっているので私は余裕でニヤニヤしていた。
どうやらエタン的にはあのバジリコックの弱点をさっき思い出したんだろう。
だけど先に彼等に仕留められたからちょっぴり拗ねているんだろうと合点がいった。

「おーい!そこの冒険者達!毒処理が終わった!降りてきてくれ」

「あっ、はーい!」

「仕方ない」

エタンが嫌そうに言って私を抱え直すとふわりと飛び降りる。

「ひょわぁぁぁぁ!?」

でも、できればね?エタン。


せめて一言「飛び降りるぞ」とか言ってから飛び降りて欲しかったよ!


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