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回想していたマクシミリアンが現実に返り、クリスティナの姿を捉え、瞳を揺らす。
「あの……マクシミリっ…きゃっ!?」
何が何だか分からないと戸惑い、見上げた瞬間にマクシミリアンに横抱きで抱きしめられ悲鳴を上げたクリスティナ。
そんな彼女の様子すらマクシミリアンには愛おしいくてたまらなかった。
胸の中に収めた彼女からは柔らかな香りがした。あぁ、この香りを俺は知っている。
愛おしい俺のクリスティナ
「マクシミリアン!おーい!みんなが見てるぞー」
ぐりっと鼻先を埋めるとふわふわした物にくすぐられた。更にぐりぐりとマーキングする様に顔を埋めると堪らなく愛おしい匂いが俺の中をいっぱいにした。
「ダメだこりゃ…おい、なぁ?ライナス、もしかしてマクシミリアン、クリスティナの頭の匂い嗅いでないか?……明らかにマーキングしてやがるよな?龍種のマーキングって事は、やっぱり、そうだよな?」
「はぁぁー、くそっ(羨ましい!俺だってミーナにマーキングしてぇのに!)」
ダグラスの呆れた声とライナスの心の声がだだ漏れなため息がどこか遠くに聞こえた。
ライナスの隣りに立っていた令嬢がうふっと笑い、ライナスの腕に手を置き何やらごにょごにょと話している。
その隣に立っていたダグラスは苦笑いを浮かべ頷いていた。
「マクシミリアン様?あの、下ろして下さい!マクシミリアン様?正気に戻ってください!…もう!!どうしてこうなったのよ。
ダグラス、なぜ笑ってるの!どうにかしてよ!」
胸の中からあたふたと顔を出して叫ぶクリスティナが自分以外のオスの名を呼んだ事が気に食わず、マクシミリアンは自分に意識を向けさせるべく「クリスティナ」と彼女の耳元で名を囁いた。
クリスティナが腕の中でピキっと固まる気配を感じマクシミリアンは満足する。
「マクシミリアン隊長、恋人にぞっこんッスね。龍種は愛が重いって聞きますけど。まぁ、種族関係無く、あれだけ可愛かったら仕方ないですけど」
「くっそぉ!せっかく可愛い子を見つけたと思ったのに!マクシミリアン隊長の恋人かよ!?俺だって恋人が欲しいんだよー!!」
隊員達が羨ましげにマクシミリアンを見ながら言った。
周囲は当然、クリスティナをマクシミリアンの恋人か婚約者だと思った様だった。なんせマクシミリアンは龍種なのだ。女性に自らマーキングするなど、彼女は自分の者だと知らしめる行為だ。
そんな事にも気づくことなく、マクシミリアンはクリスティナの匂いを堪能すると言う変態行為を続行していた。最早単なる変態である。
バコっ!
「…っ、痛え」
いい音が鳴り、漸くマクシミリアンは我に返った。
「人前で盛るな」
ドスの効いたダグラスの言葉にマクシミリアンは首を傾げる。
まるで変態でも見るような眼差しがマクシミリアンに向けられていた。
目の前にはダグラスとライナスが呆れた顔で立っている。
ダグラスの片手には警棒が握られており……
まさか、あれで俺を殴ったのだろうか?と手を頭にやろうとして、ようやく意識が自分の腕の中の存在に向かった。
俺の腕の中には、ふにっと柔らかい感触があり、とても好ましい匂いがした。
「…は、離して下さい。マクシミリアン様」
マクシミリアンはビクッと我に返り、身を固くしている自分の腕の中の存在に意識を向け…理解したくない現状を理解した。
久しぶりに愛しい番の匂いを嗅いでしまった為、酩酊状態になったのかもしれない。
だが、そんなのは言い訳だ。
彼女が目の前に居る。
抱きしめて、口付けて、愛を囁き、愛を請いたい。
その欲求に抗え無かっただけなんだ。
「……………」
呆然と彼女を見下ろすと、宝石みたいに綺麗な紫の瞳と目が合った。
「……悪い」
マクシミリアンは顔を顰めて一歩後ずさった。
顔を真っ赤に染め、涙を浮かべてこちらを睨むクリスティナが、どうしようも無く可愛くて。
手を降参とばかりに上げた。
しかし、彼女の顔がくしゃりと歪み、マクシミリアンが狼狽えた瞬間、彼女が走って逃げて行く。
「クリスティナ!」
マクシミリアンは瞬時に走り出す。
しかし扉を出た瞬間、足を止めた。
クリスティナの姿を探し辺りを見渡すがクリスティナの姿は何処にも見当たらなかった。
完全に逃げられた。
ああ、やらかした。
何をやっているんだ俺は…
「あの……マクシミリっ…きゃっ!?」
何が何だか分からないと戸惑い、見上げた瞬間にマクシミリアンに横抱きで抱きしめられ悲鳴を上げたクリスティナ。
そんな彼女の様子すらマクシミリアンには愛おしいくてたまらなかった。
胸の中に収めた彼女からは柔らかな香りがした。あぁ、この香りを俺は知っている。
愛おしい俺のクリスティナ
「マクシミリアン!おーい!みんなが見てるぞー」
ぐりっと鼻先を埋めるとふわふわした物にくすぐられた。更にぐりぐりとマーキングする様に顔を埋めると堪らなく愛おしい匂いが俺の中をいっぱいにした。
「ダメだこりゃ…おい、なぁ?ライナス、もしかしてマクシミリアン、クリスティナの頭の匂い嗅いでないか?……明らかにマーキングしてやがるよな?龍種のマーキングって事は、やっぱり、そうだよな?」
「はぁぁー、くそっ(羨ましい!俺だってミーナにマーキングしてぇのに!)」
ダグラスの呆れた声とライナスの心の声がだだ漏れなため息がどこか遠くに聞こえた。
ライナスの隣りに立っていた令嬢がうふっと笑い、ライナスの腕に手を置き何やらごにょごにょと話している。
その隣に立っていたダグラスは苦笑いを浮かべ頷いていた。
「マクシミリアン様?あの、下ろして下さい!マクシミリアン様?正気に戻ってください!…もう!!どうしてこうなったのよ。
ダグラス、なぜ笑ってるの!どうにかしてよ!」
胸の中からあたふたと顔を出して叫ぶクリスティナが自分以外のオスの名を呼んだ事が気に食わず、マクシミリアンは自分に意識を向けさせるべく「クリスティナ」と彼女の耳元で名を囁いた。
クリスティナが腕の中でピキっと固まる気配を感じマクシミリアンは満足する。
「マクシミリアン隊長、恋人にぞっこんッスね。龍種は愛が重いって聞きますけど。まぁ、種族関係無く、あれだけ可愛かったら仕方ないですけど」
「くっそぉ!せっかく可愛い子を見つけたと思ったのに!マクシミリアン隊長の恋人かよ!?俺だって恋人が欲しいんだよー!!」
隊員達が羨ましげにマクシミリアンを見ながら言った。
周囲は当然、クリスティナをマクシミリアンの恋人か婚約者だと思った様だった。なんせマクシミリアンは龍種なのだ。女性に自らマーキングするなど、彼女は自分の者だと知らしめる行為だ。
そんな事にも気づくことなく、マクシミリアンはクリスティナの匂いを堪能すると言う変態行為を続行していた。最早単なる変態である。
バコっ!
「…っ、痛え」
いい音が鳴り、漸くマクシミリアンは我に返った。
「人前で盛るな」
ドスの効いたダグラスの言葉にマクシミリアンは首を傾げる。
まるで変態でも見るような眼差しがマクシミリアンに向けられていた。
目の前にはダグラスとライナスが呆れた顔で立っている。
ダグラスの片手には警棒が握られており……
まさか、あれで俺を殴ったのだろうか?と手を頭にやろうとして、ようやく意識が自分の腕の中の存在に向かった。
俺の腕の中には、ふにっと柔らかい感触があり、とても好ましい匂いがした。
「…は、離して下さい。マクシミリアン様」
マクシミリアンはビクッと我に返り、身を固くしている自分の腕の中の存在に意識を向け…理解したくない現状を理解した。
久しぶりに愛しい番の匂いを嗅いでしまった為、酩酊状態になったのかもしれない。
だが、そんなのは言い訳だ。
彼女が目の前に居る。
抱きしめて、口付けて、愛を囁き、愛を請いたい。
その欲求に抗え無かっただけなんだ。
「……………」
呆然と彼女を見下ろすと、宝石みたいに綺麗な紫の瞳と目が合った。
「……悪い」
マクシミリアンは顔を顰めて一歩後ずさった。
顔を真っ赤に染め、涙を浮かべてこちらを睨むクリスティナが、どうしようも無く可愛くて。
手を降参とばかりに上げた。
しかし、彼女の顔がくしゃりと歪み、マクシミリアンが狼狽えた瞬間、彼女が走って逃げて行く。
「クリスティナ!」
マクシミリアンは瞬時に走り出す。
しかし扉を出た瞬間、足を止めた。
クリスティナの姿を探し辺りを見渡すがクリスティナの姿は何処にも見当たらなかった。
完全に逃げられた。
ああ、やらかした。
何をやっているんだ俺は…
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