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逃げ出した悪役令嬢
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しおりを挟むダラダラしたり狩りしたりして過ごしてたら、あっという間に引っ越しの日がやってきた。
荷物なんてほとんど持ってないから、宿を出てそのまま新しい家に向かう。
周りに家ないのいいな、静かで落ち着く。
「オレはもう荷物運んでもらってるからだけど、お前ほんと何も持ってなかったのな」
「うろちょろすんのに必要ないものいらないでしょ」
「家あんだからもっと荷物増やせよ?」
欲しいのって特にないんだけど、何増やせばいんだろ。
ダートが鍵を開けて二人で中に入っていく。へぇ、玄関で靴脱ぐスタイルなのね。
「こっちのが掃除楽じゃん。室内履きここな」
可愛らしいスリッパを渡された。ダートのスリッパも可愛らしくて、ちょっと笑いそうになった。
何もなかった内見の時より更に可愛らしいがパワーアップしてる、白とベージュで統一された家具たち。厳つい顔でこんな可愛いのばっか選んだのかぁ。
「色はシンプルだし、まぁいいか」
流石にピンクとかばっかだったら文句言いたくなったかもしれないから良かった。
「メシは外のボックスに朝と夕方なー、休みの日も同じ。リビングここ、上二部屋はお互いの寝室」
「私の部屋のが広いの?」
上の二つの部屋を覗いたら部屋の大きさが倍くらい違ってびっくりした。内見したときこんな差があったっけ。
「壁ぶち抜いてサイズ変えた。オレどーせ寝る以外お前の部屋入り浸るから、狭くていーの。最終的には一部屋になる予定だし」
ダートの希望が盛り込まれているであろう大きいベッドにどう反応していいか難しいので、敢えてそこは言及を避けた。
「ソファちっさ…」
「同棲感出てるだろ♡そんでー、ここがクロゼットな。制服もう入ってんぞ」
「へぇ?試着してみようかな」
クロゼットを覗いてみたら、確かに制服もあるけど何か大量に服がハンガーにかけられてた。
犯人は一人しか居ない。
「…なにこれ」
「ディアナいつも同じ服着てたからプレゼント♡」
「それにしたって量が…これ全部着る前に季節変わるんじゃないの」
「したらまた服やる。駄目だった?」
不安げな瞳に覗き込まれて息が詰まる。
「いや…うん、普通に好み。ありがと」
途端に笑ったダートが頭を向けてきたのでとりあえず撫でるけど、家具も服もこれだけ準備するの大変だったんじゃないかな。寝る前までほとんど私と居たのにいつ選んだんだ。
「こんな色々してくれなくていーよ?」
「したくてやってんの、こんなんして良くなったのが嬉しーの」
抱っこされてソファに移動されて、ダートは超ご機嫌で私を足の上にのせたけど、相当恥ずかしい。
「これも出来た、つけていい?」
綺麗にラッピングされた包みをでっかい手で開けて、中からグレーの石がついたアクセサリーが出てきた。
そのままダートに指と腕につけられる。
「あとコレな」
真っ赤な石がついたピアスが手のひらにのせられた。
「こっちも全部オレの色が良かったんだけど、地味だし。ディアナに一番似合うのは赤だからなー」
「この、横にくっついたグレーは」
「それはオレの主張。ディアナの腰巾着感出てるだろ」
赤い石の隣に半分くらいの大きさでグレーの石もくっつけられてて、二連になってるピアスに顔が赤くなる。
「うん、ありがと…つけてみる」
今までしていたピアスを外して、左右それぞれに赤とグレーのピアスをつけた。
「やっぱ赤だな、かわいい」
満足げにうんうん頷いたダートは、頭や顔にちゅっちゅと音をたてながらキスしてくる。
そのまま下がってきて唇を舐められて、もうこの動作にすっかり慣れてしまった私はすぐに口を開いた。
半分絡めた指に嵌まった指輪を撫でられながら、入り込んできた舌に、たまに肌にかかる息に鼓動が速くなる。
「…やべぇ、これはやばい」
は、と息を吐いて顔を離したダートはそんな事を言いながら私の肩に頭をのせた。
「オレの色がディアナについてると思ったら相当くるな、刺激強いわ。これ以上危険、脱がしたくなる」
ぎゅうぎゅう抱きしめられて言われたけど、そういえば買いっぱなしの指南本はどこにいったんだろう。
「オレの部屋にある。やらしー言葉いっぱい使われてるけどディアナ読めんの?」
「う、」
「だよな、まだ無理だろこんなすぐ顔赤くなんのに。一緒にお勉強する気になるまでオレが予習しとく」
そう言ってダートは夕食をとってくると部屋を出ていった。
深呼吸して気持ちを落ち着けてから姿見に近付いて、何度も耳を触りながら鏡を見る。
うん、嬉しい。今度私もダートに何か贈ろうかな。
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