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5日目
〝まんぷく亭〟⑦
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塩味の天ぷらは、思いのほか美味しかった。
この世界の塩が、日本で高級塩と呼ばれている物と同じか、それ以上の風味や旨味があったからだろうか。カラッと揚がった天ぷらの味を、さらに引き立てているようだ。
カボチャっぽい野菜の天ぷらを、もう一口頬張り頬を緩める。
うん、美味しい。
口頭で簡単に説明しただけの〝天ぷら〟を、数日でこうも見事に再現してくれるとは……サクッとした触感に改めて感心する。
天つゆに大根おろしがあれば……
ふと、頭を過った思いに苦笑が漏れた。
60年間慣れ親しんできた――ご飯(米)と同じで、どうにも懐かしい料理が思い出される。
この世界に来てまだそれほど経っていないというのに、困ったことだ。
そのうち料理だけじゃなく、お風呂とか……日本で当たり前にあったものが恋しくなって我慢できなくなるんじゃないかと不安になる。
腕時計や魔法という新しい力を得て、はたして自重できるだろうか?
欲望のまま突き進んで悪目立ちするのも怖いし、気持ちを制御できずに周りに迷惑をかけるのも嫌だし困るのだけれど……
「〝天ぷら〟はどうだったろうか? 野菜だけじゃなくコッコ鳥の肉も試してみたのだが……」
揚げたての天ぷらを載せた皿を持ったラッシャイさんに声をかけられ、フッと身体から力が抜けた。
どうやら、コッコ鳥を天ぷらにしてくれたらしい。
差し出された皿の上の天ぷらに目を輝かせる私を、ラッシャイさんが落ち着かない様子で見てくる。
天ぷらの感想が気になっているのだろう。
私は熱々の天ぷらに手を伸ばしながら、自分の知る天ぷらと遜色ない出来栄えで驚いていることをラッシャイさんに伝えた。そして大きく開けた口で、カプッとそれを頬張る。
多少はパサつくかと思われた肉から溢れ出た肉汁に、驚いて目を見開く。
「おいひい!」
ほふほふしながら咀嚼し、思わず口を衝いて出た言葉に、ラッシャイさんが嬉しそうに目を細めた。
コッコ鳥の天ぷらは肉好きのバルトさんだけじゃなく、ガン爺やカジドワさんにも好評だったことが、二人の食べっぷりから窺え、私まで嬉しくなる。
以前注文した五百ルドの『お勧めメニュー』にあった〝コッコ鳥の香草焼き〟も美味しかったことを思い出す。
これだけの味で価格が手ごろなら、食材としても優秀だろう。
好きな揚げ物ランキングで不動の人気を誇る〝唐揚げ〟を、コッコ鳥で試してみたくなる。
塩だけでも良いし、にんにくや生姜、コショウで下味をつけても、きっと美味しいと思う。
仕入れに問題がなければ〝まんぷく亭〟で大々的に売り出しても良いかもしれない。
この店の新たな人気メニューになりそうな予感に、つい含み笑いを漏らす。
私は口の中のものをしっかり味わってから飲み込み、ラッシャイさんに改めてコッコ鳥の天ぷらの感想を伝た。そして、唐揚げの作り方もしっかり伝授させてもらった。
目の色を変えてメモを取るラッシャイさんなら、期待に応えてくれるに違いない。
大量のポポトの使い道を相談されたのが切っ掛けだったけれど、なんだかんだと私の希望を叶えてもらっている。
懐かしい料理も、ラッシャイさんのお陰で諦めなくてすみそうだ。
〝天ぷら〟に続き〝唐揚げ〟と――なんか揚げ物メニューばかりが増えてしまっていることに気付く。
偏り過ぎは良くないし、つまらないかな。
せっかくだから、蒸したり焼いたり茹でたりと、調理の仕方を変えれば違う食感が楽しめる餃子を加えるのはどうだろう。
皮から作らないといけないのでちょっと大変だけれど、具材も応用がきくし、私も実際に子供たちと手作りした経験がある。上手く具を包んで見本を披露できるはず。
それにラッシャイさんなら、餃子を発展させて〝肉まん〟とかも作ってくれるかもしれない。
調味料が足りないから、味は全く同じとはいかないだろうけれど、再現された美味しい天ぷらを思うと、十分満足できる仕上がりになりそうで期待が高まる。
この世界の塩が、日本で高級塩と呼ばれている物と同じか、それ以上の風味や旨味があったからだろうか。カラッと揚がった天ぷらの味を、さらに引き立てているようだ。
カボチャっぽい野菜の天ぷらを、もう一口頬張り頬を緩める。
うん、美味しい。
口頭で簡単に説明しただけの〝天ぷら〟を、数日でこうも見事に再現してくれるとは……サクッとした触感に改めて感心する。
天つゆに大根おろしがあれば……
ふと、頭を過った思いに苦笑が漏れた。
60年間慣れ親しんできた――ご飯(米)と同じで、どうにも懐かしい料理が思い出される。
この世界に来てまだそれほど経っていないというのに、困ったことだ。
そのうち料理だけじゃなく、お風呂とか……日本で当たり前にあったものが恋しくなって我慢できなくなるんじゃないかと不安になる。
腕時計や魔法という新しい力を得て、はたして自重できるだろうか?
欲望のまま突き進んで悪目立ちするのも怖いし、気持ちを制御できずに周りに迷惑をかけるのも嫌だし困るのだけれど……
「〝天ぷら〟はどうだったろうか? 野菜だけじゃなくコッコ鳥の肉も試してみたのだが……」
揚げたての天ぷらを載せた皿を持ったラッシャイさんに声をかけられ、フッと身体から力が抜けた。
どうやら、コッコ鳥を天ぷらにしてくれたらしい。
差し出された皿の上の天ぷらに目を輝かせる私を、ラッシャイさんが落ち着かない様子で見てくる。
天ぷらの感想が気になっているのだろう。
私は熱々の天ぷらに手を伸ばしながら、自分の知る天ぷらと遜色ない出来栄えで驚いていることをラッシャイさんに伝えた。そして大きく開けた口で、カプッとそれを頬張る。
多少はパサつくかと思われた肉から溢れ出た肉汁に、驚いて目を見開く。
「おいひい!」
ほふほふしながら咀嚼し、思わず口を衝いて出た言葉に、ラッシャイさんが嬉しそうに目を細めた。
コッコ鳥の天ぷらは肉好きのバルトさんだけじゃなく、ガン爺やカジドワさんにも好評だったことが、二人の食べっぷりから窺え、私まで嬉しくなる。
以前注文した五百ルドの『お勧めメニュー』にあった〝コッコ鳥の香草焼き〟も美味しかったことを思い出す。
これだけの味で価格が手ごろなら、食材としても優秀だろう。
好きな揚げ物ランキングで不動の人気を誇る〝唐揚げ〟を、コッコ鳥で試してみたくなる。
塩だけでも良いし、にんにくや生姜、コショウで下味をつけても、きっと美味しいと思う。
仕入れに問題がなければ〝まんぷく亭〟で大々的に売り出しても良いかもしれない。
この店の新たな人気メニューになりそうな予感に、つい含み笑いを漏らす。
私は口の中のものをしっかり味わってから飲み込み、ラッシャイさんに改めてコッコ鳥の天ぷらの感想を伝た。そして、唐揚げの作り方もしっかり伝授させてもらった。
目の色を変えてメモを取るラッシャイさんなら、期待に応えてくれるに違いない。
大量のポポトの使い道を相談されたのが切っ掛けだったけれど、なんだかんだと私の希望を叶えてもらっている。
懐かしい料理も、ラッシャイさんのお陰で諦めなくてすみそうだ。
〝天ぷら〟に続き〝唐揚げ〟と――なんか揚げ物メニューばかりが増えてしまっていることに気付く。
偏り過ぎは良くないし、つまらないかな。
せっかくだから、蒸したり焼いたり茹でたりと、調理の仕方を変えれば違う食感が楽しめる餃子を加えるのはどうだろう。
皮から作らないといけないのでちょっと大変だけれど、具材も応用がきくし、私も実際に子供たちと手作りした経験がある。上手く具を包んで見本を披露できるはず。
それにラッシャイさんなら、餃子を発展させて〝肉まん〟とかも作ってくれるかもしれない。
調味料が足りないから、味は全く同じとはいかないだろうけれど、再現された美味しい天ぷらを思うと、十分満足できる仕上がりになりそうで期待が高まる。
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