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5日目
起床
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「……2人はもう起きてたのか?」
突然バルトさんから声をかけられ、ビクッとする。
「あ、おはようございます」
「おはようじゃ」
ガン爺と話していて、ついバルトさんのことを忘れていた。
伴侶動物であるホワンのことも……
ガン爺の視界に入らないところからちょこちょこ顔を出し、こちらをうかがっているホワンの姿を目にするまで、意識から抜けてしまっていた。
不甲斐ない伴侶で申しわけなくなる。呆れられないといいのだが。
未だガン爺から隠れようとしているホワンが、いたいけで可愛い。全力で宥め落ち着かせてあげたくなる。
自分のテリトリーに現れた見知らぬ存在(ガン爺)に戸惑っているところに、緊張して身体を強張らせている私がいたのだ、警戒するなという方が無理だったのかもしれない。けれど、今なら大丈夫な気がした。
先ほどと違い、随分ガン爺と打ち解けられたと思う。親しく思う私の気持ちが伝われば、案外すんなりホワンもガン爺と仲良くなれるのではと思えた。
「ホワンおいで」
私が呼ぶと、声に反応し一瞬動きを止めるも、視線を合わせるためにしゃがんだ私の元に、おそるおそる近付いてくる。
「なんじゃ、おかしな気配がすると思っておったら、お主じゃったか。真っ白いニーリスとは、また珍しいのう」
ホワンが私の手の平に収まるのを黙って見守ってくれていたガン爺が、穏やかな声音でホワンに声をかけた。
ガン爺がホワンに向ける眼差しは優しい。
再び寝台に座らせてもらい、ホワンを包むように優しく撫でながら、ガン爺にも見えるように手を寄せる。
「ニーリスのホワンです。森の中で出会ったのですが、なぜか懐かれてしまって、一緒にいることになりました」
ガン爺に、ホワンとの出会いと経緯を簡単に説明する。
「珍しいこともあるもんじゃな。ワシならこんな街の中より森の方がはるかに魅力的に思えるがのう。よほどお前さん――ユーチのことが気に入ったとみえる」
からかうようにホワンの前で指をちょいちょいと上下させるガン爺は、子供のような笑顔だ。
ホワンもいつの間にか警戒を解いて、ガン爺の指を視線で追っている。それに合わせて動く頭と手が可愛くて、思わず笑いが漏れた。
「なんだよ、もう仲良くなったのか?」
ソファーに座ったまま大きな欠伸をしたバルトさんは、私とガン爺が寝台の上で並んで座りホワンと遊んでいるのを見て、なぜかちょっと不機嫌そうにそう言うと、寝ぼけた顔でボサボサの髪を掻いた。
「……あれ? あのまま寝ちまったのか?」
自分がソファーで寝ていたことに、今になって気付いたのだろうか。驚いたように首を傾げ「珍しく朝までちゃんとソファーで寝れてたんだな」と呟いている。
「いつもは、知らねえうちにソファーから落ちて、床で寝ているんだが。昨日は良い感じで眠れたらしい。俺の寝相も少しは良くなったのかもな」
満足そうに身体を解しだしたバルトさんに、昨日の疲れは感じられない。いつもと変わらない様子にホッとする。
私が同じソファーで寝ていたことは、このまま黙っていれば知られないですみそうだ。
もしかしたら私の身体が、ソファーから落ちるバルトさんのストッパーになっていたのかもしれない。
バルトさんの快眠に一役買ったと思えば、少しは良い気分でいられるかも。
「あ、そうだ、朝食を用意してあるので食べませんか?」
「おお、ありがたい。すげえ腹が減ってるから助かったわ。ちゃんとガン爺用の椅子も用意してくれたんだな。さすがユーチだ。ほらガン爺も一緒に食うぞ」
「それはすまんのう。ありがたく頂戴するぞい」
「はい、一緒に食べましょう。とは言っても、僕が料理したわけではないので、ただ並べただけだから恐縮なのですけどね」
嬉しそうにテーブルへ向かうバルトさんとガン爺の後ろを、照れながら追う。
肩にはいつものようにホワンが乗っていた。
突然バルトさんから声をかけられ、ビクッとする。
「あ、おはようございます」
「おはようじゃ」
ガン爺と話していて、ついバルトさんのことを忘れていた。
伴侶動物であるホワンのことも……
ガン爺の視界に入らないところからちょこちょこ顔を出し、こちらをうかがっているホワンの姿を目にするまで、意識から抜けてしまっていた。
不甲斐ない伴侶で申しわけなくなる。呆れられないといいのだが。
未だガン爺から隠れようとしているホワンが、いたいけで可愛い。全力で宥め落ち着かせてあげたくなる。
自分のテリトリーに現れた見知らぬ存在(ガン爺)に戸惑っているところに、緊張して身体を強張らせている私がいたのだ、警戒するなという方が無理だったのかもしれない。けれど、今なら大丈夫な気がした。
先ほどと違い、随分ガン爺と打ち解けられたと思う。親しく思う私の気持ちが伝われば、案外すんなりホワンもガン爺と仲良くなれるのではと思えた。
「ホワンおいで」
私が呼ぶと、声に反応し一瞬動きを止めるも、視線を合わせるためにしゃがんだ私の元に、おそるおそる近付いてくる。
「なんじゃ、おかしな気配がすると思っておったら、お主じゃったか。真っ白いニーリスとは、また珍しいのう」
ホワンが私の手の平に収まるのを黙って見守ってくれていたガン爺が、穏やかな声音でホワンに声をかけた。
ガン爺がホワンに向ける眼差しは優しい。
再び寝台に座らせてもらい、ホワンを包むように優しく撫でながら、ガン爺にも見えるように手を寄せる。
「ニーリスのホワンです。森の中で出会ったのですが、なぜか懐かれてしまって、一緒にいることになりました」
ガン爺に、ホワンとの出会いと経緯を簡単に説明する。
「珍しいこともあるもんじゃな。ワシならこんな街の中より森の方がはるかに魅力的に思えるがのう。よほどお前さん――ユーチのことが気に入ったとみえる」
からかうようにホワンの前で指をちょいちょいと上下させるガン爺は、子供のような笑顔だ。
ホワンもいつの間にか警戒を解いて、ガン爺の指を視線で追っている。それに合わせて動く頭と手が可愛くて、思わず笑いが漏れた。
「なんだよ、もう仲良くなったのか?」
ソファーに座ったまま大きな欠伸をしたバルトさんは、私とガン爺が寝台の上で並んで座りホワンと遊んでいるのを見て、なぜかちょっと不機嫌そうにそう言うと、寝ぼけた顔でボサボサの髪を掻いた。
「……あれ? あのまま寝ちまったのか?」
自分がソファーで寝ていたことに、今になって気付いたのだろうか。驚いたように首を傾げ「珍しく朝までちゃんとソファーで寝れてたんだな」と呟いている。
「いつもは、知らねえうちにソファーから落ちて、床で寝ているんだが。昨日は良い感じで眠れたらしい。俺の寝相も少しは良くなったのかもな」
満足そうに身体を解しだしたバルトさんに、昨日の疲れは感じられない。いつもと変わらない様子にホッとする。
私が同じソファーで寝ていたことは、このまま黙っていれば知られないですみそうだ。
もしかしたら私の身体が、ソファーから落ちるバルトさんのストッパーになっていたのかもしれない。
バルトさんの快眠に一役買ったと思えば、少しは良い気分でいられるかも。
「あ、そうだ、朝食を用意してあるので食べませんか?」
「おお、ありがたい。すげえ腹が減ってるから助かったわ。ちゃんとガン爺用の椅子も用意してくれたんだな。さすがユーチだ。ほらガン爺も一緒に食うぞ」
「それはすまんのう。ありがたく頂戴するぞい」
「はい、一緒に食べましょう。とは言っても、僕が料理したわけではないので、ただ並べただけだから恐縮なのですけどね」
嬉しそうにテーブルへ向かうバルトさんとガン爺の後ろを、照れながら追う。
肩にはいつものようにホワンが乗っていた。
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