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4日目つづき

魔法の練習

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「あ、ズルい! 部屋にいないと思ったら、こんなとこで隠れるように魔法の練習してるなんて。わたしが先にユーチから魔法を教えてもらう約束してたんだから、抜け駆けなんて許さないんだからね。わたしとセラちゃんも一緒にやるわよ」

 デシャちゃんがセラちゃんを連れて現れ、腰に手をやり宣言する。

 どうやら私たちに合流しようと、急いで勉強を終わりにしてきたようだ。
 先にバンチ君たちの部屋へ向かったものの、部屋そこに私たちがいなかったので探していたのだろう。2人とも少し息が上がっている。

「それで、ポポトはどんな魔法で掘り出したの? やっぱり土魔法?」

 デシャちゃんが身を乗り出すようにして聞いてきたけれど、どんな魔法と言えばいいのかわからず口籠くちごもる。
 先ほどバンチ君たちにも同じことを問われ〝そうなるようにイメージした〟とだけ答えていた。
 細かく説明すると――記憶にある芋掘り機を思い浮かべ、ポポトが埋まっていそうな土を切り離すように少し持ち上げて振動させ、土を振るい落とすようなイメージで魔法を発動させた――になるのだが、バルトさんに『洗浄』魔法のコツを尋ねたときに返された言葉が〝汚れていない状態をイメージすること〟だったから、過程を想像する必要はないかもしれないと思えてきて、余計なことは言わないことにしたのだ。

「ポポトを掘り出した魔法がどんな種類のものだったか上手く説明できないんだけど、魔法はイメージが大事だっていうことはわかる。しっかりしたイメージを持てば必要になる魔力を減らすことができるし、制御できない魔法が発現することもないと思うから安全だしね」

 私の言葉にコクコクとうなずくセラちゃんに反して、デシャちゃんは不服そうに口を尖らせた。

「わたしだってイメージが大事だってことはわかってるわよ。でもちゃんとイメージしても、その通りの魔法にならないのはなんでなのよ?」

 デシャちゃんの苛立ちが伝わってきて言葉に詰まる。

「それはデシャが自分の持ってる魔力で発現できないような凄い魔法をイメージしたからじゃないのか?」

 少し離れた場所にいたバンチ君が近付いてきてデシャちゃんにそう言うと、コブ君も「魔力の制御も必要なのかもしれないね」と思案顔で付け加える。
 不本意そうなデシャちゃんにその場が一瞬緊迫きんぱくした雰囲気になったけれど、2人の言うことが間違っていないと思ったのか、デシャちゃんから反論はなかった。

 緊張しつつ3人のやり取りを見守っていた私は、どうにか落ち着いたのを感じホッと息を吐く。
 オロオロしている様子をセラちゃんに見られていたようで、視線が合い気恥ずかしくなる。とっさに照れ笑いを浮かべ視線を逸らすも、小さく笑うセラちゃんの声が耳に届き気恥ずかしさが増した。

 何度かギクシャクすることはあったものの、少しでも魔法を上達させたいという気持ちは一緒だったのだろう。それぞれが気付いたことを出し合い、思いついたことを試してみることになった。

 一方的に教えを請われても大して役に立てなかったとわかるから、こんな風に皆で楽しく魔法を考える機会を持つことができて嬉しくなる。

 ♢

「あれ? そういえば、この場所で魔法の練習しちゃダメだって院長先生が言ってなかったっけ」

 え? デシャちゃんの呟きに緩んでいた頬が引きつる。

「あっ、でも……バンチたちが最初に始めたんだから、見つかったときは責任をとって怒られてもらえばいいか」

 悪びれた様子がないデシャちゃんの笑顔に目を見開く。

「まあ、そのための雑草取りだったからな」

「へ?」

 デシャちゃんに返したバンチ君の言葉に、驚いて変な声が出た。
 私をニヤリと見やるバンチ君に、ポカンと口が開く。

 最初は得意な魔法の威力が上がるように練習していたのに、なぜか途中から競うように魔法で草を抜きはじめた理由が、まさか院長先生に怒られないための策だったとは……
 すっかり綺麗になった庭を眺め、感心して息を吐く。

一石二鳥いっせきにちょう? いや三鳥さんちょうかな」 

 満足げにうなずくバンチ君に、コブ君たちの笑顔が向けられた。
 確かに、院長先生もこの庭を見たら叱るのを躊躇ためらうかもしれない。

 理由はどうあれ、魔法で草を抜く作業はなかなか根気がいるものだった。
 魔力切れにならないようにしっかりイメージし、魔力の制御に努めたから、どちらも向上するいい練習になったと思う。しかも楽しかったのだから文句のつけようがない。

 自慢げに笑みを深めるバンチ君に、気付けば私も笑顔を返していた。



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