46 / 88
4日目つづき
埋め立て場
しおりを挟む
バルトジャンside
ゴミ置き場から走って10分ほどか……
人目につかない、街から離れた場所にある埋め立て場だったが、思ったより早く着くことができた。
ガキの頃は、この距離に苦労したのにな……
俺も成長したってことか。
体格も体力もあの頃とは違うのだと改めて実感し、ニヤリと笑う。
アネスは2、3時間の依頼だと言っていたが、この調子なら半分の時間で終わらせられそうだ。
収納袋から先ほど入れたゴミを取り出し、穴に投げ捨てる。
ゴトン……ガシャン、ガタンと、盛大にゴミの音が響く。
「おい! ワシが確認してねえゴミを捨てるんじゃねえ」
気配を感じさせず、突然背後から声がかけられ、驚いて振り向く。
「うおっ⁈」
見覚えのある人物の登場に、思わず変な声が漏れる。
「爺さん、まだ生きてたのかよ」
18年前と変わらぬ姿のガン爺に、安堵しながらも憎まれ口を叩いてしまう。
「なんじゃ、最近見かけんと思っとったら、偉く生意気な口を利くようになったじゃねえか。あ~? バル坊よ」
「変な呼び方するなよ。もうガキじゃねえぞ!」
「見た目が多少変わっても、中身は変わっとらんようじゃから、バル坊で十分じゃわい」
子供の頃、少し(?)世話になったガン爺に「カッカッカッ」と笑われ、居心地が悪くなる。
「ここにいるってことは、もしかして、まだゴミを漁ってるのか?」
「おお、ワシの趣味じゃから止められんわ。今じゃ、ここに住んどるからな。昔みたいに、いちいち連れて来てもらわんでもいいんで楽じゃぞ」
「はあ~? 住んでるって……まさか、あそこに見えるボロい小屋が、ガン爺の家だとか言わねえよな?」
「おお、そうじゃ、あれがワシのマイホームじゃぞ」
「マイホームって……」
いつ壊れてもおかしくないような建物を前に、何を言っているんだ?
「久しぶりだし、茶~でも飲んでくか? ワシのマイホームで!」
「……いや、遠慮しとくわ。まだ依頼が終わってねえからな」
「おおっ! そうじゃった。さっきのゴミを確認せんといかんのじゃ。お宝が混ざっておるかもしれんでな」
「おいおい、危ないだろ? 何ゴミの穴に降りようとしてんだよ。次のゴミを持って来てやるから、捨てたゴミは諦めろって」
「いやいや、そうはいかんのじゃ」
俺の制止を振り切って、埋め立ての穴へ向かおうとするガン爺を無理やり止める。
「仕方ねえな。俺が取ってきてやるわ」
ガン爺の代わりにゴミの穴に下り、自分が捨てたであろうゴミをもう一度収納袋に収めた。
……何をやってんだか。
自分で自分の行動に呆れながら、ガン爺に指定された場所へそのゴミを並べる。
「ほどほどにしてくれよ。もう年なんだから、怪我でもしたら寝たきりになっちまうぞ」
ため息とともに、ガン爺に注意を促したのだが、軽く手で押しやられてしまう。
「馬鹿言うでない。ワシはまだ老いぼれてなぞおらんぞい。現役じゃ」
そう豪語し、いそいそとゴミを検分しはじめる。
昔と変わらないガン爺の姿に懐かしさが込み上げ、言葉を吞む。
――ガン爺はゴミの中から使えそうな物や部品を回収し、修理をすることで生計を立てていた。
修理して使えるようになっても、新品として売れるわけじゃないから、大して金にならなかったはずなのだが。
俺の子供の頃にはもう、そうやって生きていた。だから何十年もこの仕事を続けていることになる。
ガン爺にとって修理は、仕事というより趣味のようなものらしく全く苦ではないようだ。
もっとも、周りは好意的ではなかったようだが……
苛立たしげに『他人にとやかく言われる筋合いはないぞい』と、吐き捨てるように漏らしていたガン爺の姿が思い出された。
♢
――その後2回、ゴミの置き場と埋め立て場を行き来し、依頼を完了させる。
ガン爺は相変わらずゴミを検分するのに夢中のようだ。
こんな調子で食事がちゃんととれているのだろうか?
心配になりどうにか聞き出したところによると、定期的に食料が届くように冒険者ギルドへ依頼しているとわかりホッとする。
雨漏りがしそうな小屋には不安があるが、とりあえず最低限の食事は確保できているようだ。
ゴミ置き場から走って10分ほどか……
人目につかない、街から離れた場所にある埋め立て場だったが、思ったより早く着くことができた。
ガキの頃は、この距離に苦労したのにな……
俺も成長したってことか。
体格も体力もあの頃とは違うのだと改めて実感し、ニヤリと笑う。
アネスは2、3時間の依頼だと言っていたが、この調子なら半分の時間で終わらせられそうだ。
収納袋から先ほど入れたゴミを取り出し、穴に投げ捨てる。
ゴトン……ガシャン、ガタンと、盛大にゴミの音が響く。
「おい! ワシが確認してねえゴミを捨てるんじゃねえ」
気配を感じさせず、突然背後から声がかけられ、驚いて振り向く。
「うおっ⁈」
見覚えのある人物の登場に、思わず変な声が漏れる。
「爺さん、まだ生きてたのかよ」
18年前と変わらぬ姿のガン爺に、安堵しながらも憎まれ口を叩いてしまう。
「なんじゃ、最近見かけんと思っとったら、偉く生意気な口を利くようになったじゃねえか。あ~? バル坊よ」
「変な呼び方するなよ。もうガキじゃねえぞ!」
「見た目が多少変わっても、中身は変わっとらんようじゃから、バル坊で十分じゃわい」
子供の頃、少し(?)世話になったガン爺に「カッカッカッ」と笑われ、居心地が悪くなる。
「ここにいるってことは、もしかして、まだゴミを漁ってるのか?」
「おお、ワシの趣味じゃから止められんわ。今じゃ、ここに住んどるからな。昔みたいに、いちいち連れて来てもらわんでもいいんで楽じゃぞ」
「はあ~? 住んでるって……まさか、あそこに見えるボロい小屋が、ガン爺の家だとか言わねえよな?」
「おお、そうじゃ、あれがワシのマイホームじゃぞ」
「マイホームって……」
いつ壊れてもおかしくないような建物を前に、何を言っているんだ?
「久しぶりだし、茶~でも飲んでくか? ワシのマイホームで!」
「……いや、遠慮しとくわ。まだ依頼が終わってねえからな」
「おおっ! そうじゃった。さっきのゴミを確認せんといかんのじゃ。お宝が混ざっておるかもしれんでな」
「おいおい、危ないだろ? 何ゴミの穴に降りようとしてんだよ。次のゴミを持って来てやるから、捨てたゴミは諦めろって」
「いやいや、そうはいかんのじゃ」
俺の制止を振り切って、埋め立ての穴へ向かおうとするガン爺を無理やり止める。
「仕方ねえな。俺が取ってきてやるわ」
ガン爺の代わりにゴミの穴に下り、自分が捨てたであろうゴミをもう一度収納袋に収めた。
……何をやってんだか。
自分で自分の行動に呆れながら、ガン爺に指定された場所へそのゴミを並べる。
「ほどほどにしてくれよ。もう年なんだから、怪我でもしたら寝たきりになっちまうぞ」
ため息とともに、ガン爺に注意を促したのだが、軽く手で押しやられてしまう。
「馬鹿言うでない。ワシはまだ老いぼれてなぞおらんぞい。現役じゃ」
そう豪語し、いそいそとゴミを検分しはじめる。
昔と変わらないガン爺の姿に懐かしさが込み上げ、言葉を吞む。
――ガン爺はゴミの中から使えそうな物や部品を回収し、修理をすることで生計を立てていた。
修理して使えるようになっても、新品として売れるわけじゃないから、大して金にならなかったはずなのだが。
俺の子供の頃にはもう、そうやって生きていた。だから何十年もこの仕事を続けていることになる。
ガン爺にとって修理は、仕事というより趣味のようなものらしく全く苦ではないようだ。
もっとも、周りは好意的ではなかったようだが……
苛立たしげに『他人にとやかく言われる筋合いはないぞい』と、吐き捨てるように漏らしていたガン爺の姿が思い出された。
♢
――その後2回、ゴミの置き場と埋め立て場を行き来し、依頼を完了させる。
ガン爺は相変わらずゴミを検分するのに夢中のようだ。
こんな調子で食事がちゃんととれているのだろうか?
心配になりどうにか聞き出したところによると、定期的に食料が届くように冒険者ギルドへ依頼しているとわかりホッとする。
雨漏りがしそうな小屋には不安があるが、とりあえず最低限の食事は確保できているようだ。
15
お気に入りに追加
5,565
あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。