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4日目つづき
男の子同士②
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「僕たち孤児院の子は、5歳になる年から魔法を習いはじめるんだけど、自分の中にある魔力を意識し、魔法が使えるようになるまでに何年もかかることもあるんだ。恥ずかしながら僕も、バンチ君やデシャちゃんたちみたいにすんなりいかなくて、自分には魔力が無いんじゃないかって真剣に悩んだ時期があったんだ。だから初めて魔法が成功したときは、どんなに嬉しかったか……」
コブ君はそこで口を噤むと小さく息を吐く。
確かに私も、バルトさんに魔力を刺激してもらえなかったら、あんなに早く魔力を意識できなかったと思う。
それにそのことが切っ掛けで、この世界で前を向くことができるようになった気がするから、今でもあのときのバルトさんには感謝している。
ただ身体の中の魔力を刺激され無理やり動かされたときの気持ち悪さや、バルトさんの慌てぶりを思うと、5歳という幼い年齢の子供に試すのは躊躇われた。
コブ君は当時を思い出したのか、どこか遠い所を見るようなまなざしになり再び口を開く。
「ちょっとした魔法でも最初は苦労するものなのに、ユーチ君は畑の土を魔法で動かして、見事にポポトを掘り出してしまうんだから、ほんとにビックリだよ。それにあんな凄い魔法を使えるユーチ君が、魔法を習いはじめたばかりだったなんて……驚きすぎて言葉が出ないよ」
そう言うとコブ君は「ユーチ君みたいな魔法を僕は知らないし、使っている人を見たこともないからね」と、私の魔法が珍しくて凄いのだと念を押すように付け加える。
バンチ君からも「一度成功した魔法であっても、イメージが未熟だったり魔力の制御が上手くいかなかったりで不発に終わることもあるから、普通は同じ魔法を何度も繰り返し練習して覚えていくんだ」とか「初日に魔法を発動させられることもまれなのに、その日のうちに種類(系統)の違う魔法をいくつも発動させるなんて聞いたこともない」などと、魔法の常識と思われることを呆れ顔で教えられた。
――こんな感じで、復活したバンチ君とコブ君によって、私がいかに規格外なのかを理解させられることになったのだが、その説明の間、私は見た目通りの小さな子供になった気分で(中身60歳なのだが……)ただただ神妙に頷くしかできなかった。
この世界の常識がないことや祐一郎としての知識が、バンチ君たちが首を傾げる〝おかしな魔法〟の発想につながっていたようなのだが……それ以外にも私の魔力量や制御力、イメージ力が他より優れていることが関係しているとわかり嬉しくなる。
人前では慎重に魔法を使わなければならないけれど、これからも新しい魔法を実現させられそうでワクワクしてしまう。
今の私にとって魔法は不思議で、とてもおもしろいものだ。
思いついたら、その魔法が周りからどう思われようとも試したくなるに決まっている。
そのときは、できるだけ人目につかない場所で試し、成功したら人前で使う前にバルトさんに確認するようにしよう。そうすればきっと大丈夫なはず。
私はそう結論を出し、頬を緩ませたのだった。
♢
「俺が魔物の討伐にいっている間、ユーチとコブの2人で依頼を受けたらどうだ?」
バンチ君の言葉に私は驚いて目を見開く。
コブ君と一緒にギルドの依頼を受けることに異論はない。土地勘がない私にはむしろありがたいことだけれど、バンチ君が〝魔物の討伐〟に行くかもしれないと考えると狼狽えてしまう。
「バンチ君は、明後日からの討伐依頼を受けたのですか?」
「ああ、魔物を見てみたいっていうのもあるが、討伐依頼は実入りが良いっていうからな。先輩冒険者の戦い方も間近で観察できそうだし、一石二鳥だろ」
興奮を隠さず瞳を輝かせるバンチ君は、本当に魔物の討伐に参加する気のようだ。凄く楽しみにしているのがわかる。
領収主導で行われる依頼だから危険は少ないと聞いているけれど、冒険者になりたての10歳の子供が参加しても大丈夫なのだろうか?
バルトさんと一緒でも、魔物の生息する場に近付きたいと思えない私は、どうしても心配になる。
コブ君も私と同じように不安な顔でバンチ君を見ていた。
「僕も一緒に行けたらよかったんだけど……攻撃魔法は使えないし、武器も上手く扱えないから、足手まといにしかならない。……それに僕、怖がりだから、攻撃手段があったとしても魔物を前にしたら足が竦んで何もできないんじゃないかと思う……」
コブ君は身体を小さくして「これからも討伐の依頼は受けられないかもしれない……ごめんね」とバンチ君に頭を下げていた。
私も魔物と戦えるとは思えないから、コブ君の気持ちがよくわかる。他人ごととは思えなかった。
私の感覚では、10歳の子供が危険な仕事〝魔物討伐〟に参加するなどあり得ないことだと思うのに、申し訳なさそうに俯くコブ君の姿を目にし、ショックを受ける。
この世界が平和な日本とは違うのだと改めて感じ、10歳のバンチ君の危うさを感じずにはいられなかった。
コブ君はそこで口を噤むと小さく息を吐く。
確かに私も、バルトさんに魔力を刺激してもらえなかったら、あんなに早く魔力を意識できなかったと思う。
それにそのことが切っ掛けで、この世界で前を向くことができるようになった気がするから、今でもあのときのバルトさんには感謝している。
ただ身体の中の魔力を刺激され無理やり動かされたときの気持ち悪さや、バルトさんの慌てぶりを思うと、5歳という幼い年齢の子供に試すのは躊躇われた。
コブ君は当時を思い出したのか、どこか遠い所を見るようなまなざしになり再び口を開く。
「ちょっとした魔法でも最初は苦労するものなのに、ユーチ君は畑の土を魔法で動かして、見事にポポトを掘り出してしまうんだから、ほんとにビックリだよ。それにあんな凄い魔法を使えるユーチ君が、魔法を習いはじめたばかりだったなんて……驚きすぎて言葉が出ないよ」
そう言うとコブ君は「ユーチ君みたいな魔法を僕は知らないし、使っている人を見たこともないからね」と、私の魔法が珍しくて凄いのだと念を押すように付け加える。
バンチ君からも「一度成功した魔法であっても、イメージが未熟だったり魔力の制御が上手くいかなかったりで不発に終わることもあるから、普通は同じ魔法を何度も繰り返し練習して覚えていくんだ」とか「初日に魔法を発動させられることもまれなのに、その日のうちに種類(系統)の違う魔法をいくつも発動させるなんて聞いたこともない」などと、魔法の常識と思われることを呆れ顔で教えられた。
――こんな感じで、復活したバンチ君とコブ君によって、私がいかに規格外なのかを理解させられることになったのだが、その説明の間、私は見た目通りの小さな子供になった気分で(中身60歳なのだが……)ただただ神妙に頷くしかできなかった。
この世界の常識がないことや祐一郎としての知識が、バンチ君たちが首を傾げる〝おかしな魔法〟の発想につながっていたようなのだが……それ以外にも私の魔力量や制御力、イメージ力が他より優れていることが関係しているとわかり嬉しくなる。
人前では慎重に魔法を使わなければならないけれど、これからも新しい魔法を実現させられそうでワクワクしてしまう。
今の私にとって魔法は不思議で、とてもおもしろいものだ。
思いついたら、その魔法が周りからどう思われようとも試したくなるに決まっている。
そのときは、できるだけ人目につかない場所で試し、成功したら人前で使う前にバルトさんに確認するようにしよう。そうすればきっと大丈夫なはず。
私はそう結論を出し、頬を緩ませたのだった。
♢
「俺が魔物の討伐にいっている間、ユーチとコブの2人で依頼を受けたらどうだ?」
バンチ君の言葉に私は驚いて目を見開く。
コブ君と一緒にギルドの依頼を受けることに異論はない。土地勘がない私にはむしろありがたいことだけれど、バンチ君が〝魔物の討伐〟に行くかもしれないと考えると狼狽えてしまう。
「バンチ君は、明後日からの討伐依頼を受けたのですか?」
「ああ、魔物を見てみたいっていうのもあるが、討伐依頼は実入りが良いっていうからな。先輩冒険者の戦い方も間近で観察できそうだし、一石二鳥だろ」
興奮を隠さず瞳を輝かせるバンチ君は、本当に魔物の討伐に参加する気のようだ。凄く楽しみにしているのがわかる。
領収主導で行われる依頼だから危険は少ないと聞いているけれど、冒険者になりたての10歳の子供が参加しても大丈夫なのだろうか?
バルトさんと一緒でも、魔物の生息する場に近付きたいと思えない私は、どうしても心配になる。
コブ君も私と同じように不安な顔でバンチ君を見ていた。
「僕も一緒に行けたらよかったんだけど……攻撃魔法は使えないし、武器も上手く扱えないから、足手まといにしかならない。……それに僕、怖がりだから、攻撃手段があったとしても魔物を前にしたら足が竦んで何もできないんじゃないかと思う……」
コブ君は身体を小さくして「これからも討伐の依頼は受けられないかもしれない……ごめんね」とバンチ君に頭を下げていた。
私も魔物と戦えるとは思えないから、コブ君の気持ちがよくわかる。他人ごととは思えなかった。
私の感覚では、10歳の子供が危険な仕事〝魔物討伐〟に参加するなどあり得ないことだと思うのに、申し訳なさそうに俯くコブ君の姿を目にし、ショックを受ける。
この世界が平和な日本とは違うのだと改めて感じ、10歳のバンチ君の危うさを感じずにはいられなかった。
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