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4日目
商業ギルド
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ホワンが入った鞄を肩にかけ、出かける準備が完了する。
私の姿を改めて眺めたバルトさんは「それじゃあ、行くとしますかね」とニヤリと笑った。その顔がおかしくて、また笑いが込み上げてくる。2人して肩を震わせながら玄関に向かうと、ちょうど呼び鈴が鳴らされた。
「おはようございます。こちら、バルトジャン様のお宅でしょうか?」
聞き覚えのない男の人の声に、バルトさんと視線を合わせ首を傾げる。
来客を確認するためドアを開けたバルトさんは、目の前の若い男性に不躾な視線を向け答えた。
「俺がバルトジャンだが? なんの用だ?」
「失礼いたします。私ブーティック商会のシャーインと申します。本日は、支店長シューセントよりこちらの書状を預かって参りました」
バルトさんはシューセントさんからの手紙(?)というかカードのような物を受け取り、その場で中を確認している。
シューセントさんには、私が着ていた衣服を貸し出しているのだけれど、何かあったのだろうか?
内容が気になり、バルトさんに近付いて様子を窺う。
短い文面だったようですぐに読み終えたバルトさんは、少し眉根を寄せた。
「わかった。今日の午前中に商業ギルドに用があるから、その後に寄らせてもらうと伝えてくれ」
「承りました」
シャーインさんは丁寧に頭を下げ挨拶をすると、足早に去って行った。
「シューセントさんは、なんて?」
「ああ、なんかユーチの服のことで相談があるんだってよ。貸し出し期間は10日だったはずだから、6日後に受け取りに行く予定でいたんだが……それまで待てないらしい」
「相談ですか?」
魔法紙による契約書には、貸し出された物の所有者を口外しないことや、衣服らに関する知識を私に求めないことが記載されている。
なので、悪いことにはならないはずだけれど……
貸し出し期間の延長とかだろうか?
「急用のようなので、気になりますね」
「ああ、……まあ、話を聞いてみないとわからねえからな。さっさと特許申請の手続きを済ませて、ブーティック商会に行くとするか」
「はい、そうですね。今日も忙しくなりそうなので急ぎましょう」
予定が1つ増えてしまったから、孤児院へ向かう時間が遅くなりそうで気持ちがはやる。
バルトさんを急かすようにして、慌ただしくカジドワさんの家にやってくると、そこには準備万端な出で立ちのカジドワさんが待機していた。
いつもの寝ぐせがなくなった、キッチリ整えられた髪型のカジドワさんは、シンプルなシャツにズボンをビシッと着こなしておりカッコいい。私たち以上に余所行きな恰好のカジドワさんに目を見張る。
一緒に朝食をとるつもりで、簡単に食べられる料理を収納袋に入れて持ってきていたのだけれど……
もう食べ終えたというカジドワさんに、急かされながら朝食を詰め込むことになってしまった。
確かに早めに用事を済ませたいと思っていたから「早く行こう!」と張り切って準備をしていたカジドワさんに、文句を言ったらいけないのかもしれないが……
もう少しゆっくり食べたかったと、最後の一口をどうにか飲み込み、フーっと息を吐きながら思う。
すかさず、食べ終えた私を急かしてくるカジドワさんの嬉しそうな笑顔が、ちょっと恨めしくなる。
こうして私たちは、9時になる前に3階建ての大きな建物の前に到着した。
その建物には同じようなドアが並んでいる。
左が先日ホワンの〝伴侶動物登録〟と私の〝冒険者登録〟をしてもらった【冒険者ギルド】で、右が【商業ギルド】の入り口になっているようだ。
早すぎたのではないかと心配だったけれど、既にそれらのドアから出入りしている人を見かけたから、この時間でも問題ないのだろう。
――冒険者ギルドでは、バルトさんのような冒険者に依頼を斡旋し、報酬の支払いを行っている。
依頼料の何割かが、手数料として自動的に冒険者ギルドへ支払われる仕組みになっているようだが、難しい手続きの必要がなく、手っ取り早く現金を手にできるから、多少報酬が減ったとしても不満はないらしい。
むしろ最新の情報を無償で提供し、依頼にない物でも積極的に買い取ってくれるギルドは、冒険者にとってありがたい存在なのだそうだ。
私も発行してもらった『ギルド証』により、身分を証明することができるようになったし、いつでもギルドの依頼を受けられるようになったはずなので、頻繁に冒険者ギルドに通うことになる予定でいる。
――商業ギルドは、貴族のようなお偉いさんが多く利用しているというけれど、冒険者ギルドと同じ組織なのだそうだ。
そこでは冒険者に回される依頼の他にも様々な依頼を受けているようで、街の店では取り扱っていない商品の売買や管理をはじめ、大金が動く大口の取引も行われているらしい。
今日の目的である特許に関する事柄も、全て商業ギルドで請け負っているというから、冒険者ギルドより複雑で大変そうに思えた。
ギルドの建物の前で立ち止まっていた私の背中を押し、カジドワさんの後に続くように促してきたバルトさんと一緒に、私も商業ギルドへ足を進める。
私の姿を改めて眺めたバルトさんは「それじゃあ、行くとしますかね」とニヤリと笑った。その顔がおかしくて、また笑いが込み上げてくる。2人して肩を震わせながら玄関に向かうと、ちょうど呼び鈴が鳴らされた。
「おはようございます。こちら、バルトジャン様のお宅でしょうか?」
聞き覚えのない男の人の声に、バルトさんと視線を合わせ首を傾げる。
来客を確認するためドアを開けたバルトさんは、目の前の若い男性に不躾な視線を向け答えた。
「俺がバルトジャンだが? なんの用だ?」
「失礼いたします。私ブーティック商会のシャーインと申します。本日は、支店長シューセントよりこちらの書状を預かって参りました」
バルトさんはシューセントさんからの手紙(?)というかカードのような物を受け取り、その場で中を確認している。
シューセントさんには、私が着ていた衣服を貸し出しているのだけれど、何かあったのだろうか?
内容が気になり、バルトさんに近付いて様子を窺う。
短い文面だったようですぐに読み終えたバルトさんは、少し眉根を寄せた。
「わかった。今日の午前中に商業ギルドに用があるから、その後に寄らせてもらうと伝えてくれ」
「承りました」
シャーインさんは丁寧に頭を下げ挨拶をすると、足早に去って行った。
「シューセントさんは、なんて?」
「ああ、なんかユーチの服のことで相談があるんだってよ。貸し出し期間は10日だったはずだから、6日後に受け取りに行く予定でいたんだが……それまで待てないらしい」
「相談ですか?」
魔法紙による契約書には、貸し出された物の所有者を口外しないことや、衣服らに関する知識を私に求めないことが記載されている。
なので、悪いことにはならないはずだけれど……
貸し出し期間の延長とかだろうか?
「急用のようなので、気になりますね」
「ああ、……まあ、話を聞いてみないとわからねえからな。さっさと特許申請の手続きを済ませて、ブーティック商会に行くとするか」
「はい、そうですね。今日も忙しくなりそうなので急ぎましょう」
予定が1つ増えてしまったから、孤児院へ向かう時間が遅くなりそうで気持ちがはやる。
バルトさんを急かすようにして、慌ただしくカジドワさんの家にやってくると、そこには準備万端な出で立ちのカジドワさんが待機していた。
いつもの寝ぐせがなくなった、キッチリ整えられた髪型のカジドワさんは、シンプルなシャツにズボンをビシッと着こなしておりカッコいい。私たち以上に余所行きな恰好のカジドワさんに目を見張る。
一緒に朝食をとるつもりで、簡単に食べられる料理を収納袋に入れて持ってきていたのだけれど……
もう食べ終えたというカジドワさんに、急かされながら朝食を詰め込むことになってしまった。
確かに早めに用事を済ませたいと思っていたから「早く行こう!」と張り切って準備をしていたカジドワさんに、文句を言ったらいけないのかもしれないが……
もう少しゆっくり食べたかったと、最後の一口をどうにか飲み込み、フーっと息を吐きながら思う。
すかさず、食べ終えた私を急かしてくるカジドワさんの嬉しそうな笑顔が、ちょっと恨めしくなる。
こうして私たちは、9時になる前に3階建ての大きな建物の前に到着した。
その建物には同じようなドアが並んでいる。
左が先日ホワンの〝伴侶動物登録〟と私の〝冒険者登録〟をしてもらった【冒険者ギルド】で、右が【商業ギルド】の入り口になっているようだ。
早すぎたのではないかと心配だったけれど、既にそれらのドアから出入りしている人を見かけたから、この時間でも問題ないのだろう。
――冒険者ギルドでは、バルトさんのような冒険者に依頼を斡旋し、報酬の支払いを行っている。
依頼料の何割かが、手数料として自動的に冒険者ギルドへ支払われる仕組みになっているようだが、難しい手続きの必要がなく、手っ取り早く現金を手にできるから、多少報酬が減ったとしても不満はないらしい。
むしろ最新の情報を無償で提供し、依頼にない物でも積極的に買い取ってくれるギルドは、冒険者にとってありがたい存在なのだそうだ。
私も発行してもらった『ギルド証』により、身分を証明することができるようになったし、いつでもギルドの依頼を受けられるようになったはずなので、頻繁に冒険者ギルドに通うことになる予定でいる。
――商業ギルドは、貴族のようなお偉いさんが多く利用しているというけれど、冒険者ギルドと同じ組織なのだそうだ。
そこでは冒険者に回される依頼の他にも様々な依頼を受けているようで、街の店では取り扱っていない商品の売買や管理をはじめ、大金が動く大口の取引も行われているらしい。
今日の目的である特許に関する事柄も、全て商業ギルドで請け負っているというから、冒険者ギルドより複雑で大変そうに思えた。
ギルドの建物の前で立ち止まっていた私の背中を押し、カジドワさんの後に続くように促してきたバルトさんと一緒に、私も商業ギルドへ足を進める。
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