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デンマーク

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 デンマーク
 北ヨーロッパに位置する国。首都はコペンハーゲンで、ロイヤルコペンハーゲンと言えば高級陶器で有名。

~*~*~

「みぱぱ、8WMって使ったことあったよな」

 8WMとはポンプの型式です。みぱぱ達が作っている装置の重要なポンプですが、特別な装置にのみ使われます。

「まあ、ありますよ」
「じゃあ、ちょっと工場見学行って来い。そんでもって改善点を打ち合わせしてこい」
「はい、わかりました。それで工場はどこですか? 静岡?」

 みぱぱの問いに上司は歌いながら踊り始めました。

「デン、デン、デンマ~ク アウフ ブリューダ ザウフ ブリューダ ラウフ ブリューダ インマーヴィダ。ラスト ノッォカ ホーレン、オッホッホッホー。デン ヴィア ジン モンゴレン、アッハッハッハー。ウン デア トイフェル クリ ウンズ フリュー ゲヌーク。 デン、デン、デンマ~ク」
「それ、ジンギスカンの歌ですよね。まあ、デンマークですね。わかりました。ヴィンランド・サガで山を描いて、山が無いよってツッコまれたデンマークですね」

 なんと今回、ポンプメーカーさん案内による工場見学です。
 成田空港からポンプの代理店さん十名ほどの中に混じってみぱぱは行動することになりました。
 団体行動!
 チェックインから出入国審査も一緒。
 デンマーク、コペンハーゲン空港に到着!
 とりあえずホテルにチェックイン。
 川のすぐ側のホテル。

 あ……ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
 おれは 川だと思ったら そこは海だった。
 な……何を言っているのか、わからねーと思うが、おれも何を言っているかわからねえ。

 突然のポルナレフが説明してくれたように、川と思った海でした。対岸は見えるのですが、水は海水で両端は海らしいので海になります。
 つまり運河なんでしょう。あとで地図を確認すると空港がある側は島になっていました。

「荷物を置いたら、ロビーに集まってください。市内観光に行きますよ~」

 ガイドのおばさんに連れられてバスに乗り、市内観光に出発します。

「デンマークは第一次世界大戦は中立を保ち、第二次世界大戦はドイツに攻め込まれましたが、一日と持たずに降伏したため、街は破壊されることなく古い町並みを残しています」

 空港から街に来るときも思ったのだが、背の低いカラフルな古い町並みが多くあり、美しい町並みです。
 日本の場合、第二次世界大戦で焼失した物を復刻している建物も多いですが、デンマークは当時の物がそのまま残っているそうです。
 みぱぱ一行はバスはデンマーク王宮へ行きます。

「デンマークの王家は民衆に大変慕われており、王家の人も普通にそのあたりを歩いている事があります。特に王女の夫である皇太子は元々庶民なので、特に……あ! あの人です! あそこにいいる男性は皇太子です」

 ガイドの女性は興奮気味にバスの外を指さします。
 みぱぱ達も慌てて道路に男性を見ます。
 どれ?
 歩道には結構の数の人が歩いています。
 話によると普通の格好のようですし、芸能人のように周りから握手やサインを求められている人などいません。
 何よりみぱぱ達は肝心の皇太子の顔を知りません。
 誰が皇太子だったか分からないまま、みぱぱ達は王宮へ到着しました。

 アマリエンボー城。
 今でもここに王族が住んでいるそうです。
 こんな観光客が一杯の所に住んでたらうるさくてしょうがないだろうなと思うみぱぱでした。
 ちょうど衛兵交代式がやっている時間です。
 衛兵交代式で有名なのはロンドンはバッキンガム宮殿ですが、こちらでも衛兵交代式が見られます。
 二~三階建ての四つの建物で囲まれた八角形の広場で行われる衛兵交代式は、ロンドンの衛兵と同じように黒いふさふさの長い帽子をかぶって、銃を持っていました。衛兵も慣れているのでしょう。観光客に目もくれず、ロボットのように交代式を行います。
 衛兵の移動する所にはロープが張られて、入れないようにしているにもかかわらず、正面から取ろうとするロープの内側に入る観光客がいました。
 退場~。
 係の人が観光客をロープの外に連れ出されました。
 ルールは守らないとね。

 次はデンマークで一、二を争う有名な観光地。
 人魚姫の像。
 アマリエンボー城から約1キロメートルの海岸。
 岩の上に腰掛けて、海を見ている人魚姫。
 それを見た感想。
 ちっちゃ。
 意外と小さいな。座っているとは言え、1メートルちょっとの大きさ。
 道路からちょっと離れた岩の上にあるので、見た目にはもっと小さく見える。
 うん、人魚姫だね。さすが三大残念観光地のひとつ!

 次はデンマークで一、二を争う有名な観光地。
 チボリ公園。
 岡山のチボリ公園ではありません。残念ながら岡山の倉敷チボリ公園はもう閉園しております。
 いや、そうではなくてデンマークのチボリ公園は世界で三番目に古いテーマパークです。
 古い、うん、古い。
 そして、一応、仕事で来ているため、初対面のおっさんばかりでテーマパークに来ても、どういうテンションでいれば分からないみぱぱ。
 完全に遊びでテーマパークに行くのなら、気持ちを切り替えてテンションを上げていくのだが、今回はテンション低めです。
 そのため、ジェットコースターに乗ることもせず、一通り見終わったころ、日が暮れてきました。

 夜はみんなでレストランで食事をします。
 デンマーク料理!
 デンマーク料理と言えば、ビール! カールスバーグ!
 え!? 料理はうん、美味しかった。そしてビール超美味しかったです!
 いい気持ちでレストランを出てホテルへ向かうみぱぱ。
 月明かりに照らされて、アンデルセン像にあいさつするみぱぱは、ふとある中華屋の前で立ち止まった。

「あ、あった!」

 みぱぱのジンギスカンを踊り狂っていた上司が、学生時代にヨーロッパを貧乏旅行したときに皿洗いをしていたという中華屋。
 すでに何十年前の出来事のはずですが、まだ存在していました。店名も上司から聞いていた店名のままです。
 みぱぱ的には何のつながりもありませんが、不思議な気持ちになりました。

 さて、次の日はやっとお仕事です。
 しかし、工場があるのはコペンハーゲンからかなり離れています。
 その日は移動だけになりました。
 工場へバスで移動。
 そして、ポンプメーカーの宿舎に到着。
 大きなゲストハウス。大きい会社はいいですね~。
 そこはお客だけではなく、世界中の社員が研修に訪れた時にも使用するそうです。
 その場所は良い言い方をすれば緑豊かな場所。悪い言い方をすれば田舎。
 ちょっと森に入ればゴブリンに襲われそうです。い、異世界転生しちゃったか?
 まあ、実際にはそんなことはなく、次の日の朝、ゲストハウスで朝食をとって、工場へ出発です。
 寝ぼけまなこで朝食会場にいったみぱぱはびっくりしました。
 テーブルの上にドーンと置かれた生ハムの原木。
 自由に切って食べていいそうです。大きい会社は違いますね~。
 それまで生ハムなどほとんど食べたことがなかったみぱぱはこのチャンスにと、厚めに切ります。
 噛み切れね~。
 生ハムは薄いから美味しいのです。厚過ぎると硬くて噛み切れません。
 そして、生ハム以外にも、ラクレットチーズがドーンと置いて、例の溶かす機械もあります。
 自由に溶かして食べていいそうです。大きい会社は太っ腹ですね~。
 好きなだけ食べたら胸焼けしました。
 そんな大会社の資本力をまざまざと見せられたみぱぱは、みんなと一緒に工場見学をします。
 会社の歴史や生産体制、これからの展望など一通り聞いた後、質問タイムになりました。
 ここからが、わざわざデンマークまで来たみぱぱの仕事です。
 びしっと手をあげて聞きます。

「弊社では8WMを使用していますが、その見学は可能でしょうか?」

 ザワザワ。ザワザワ。
 まるでカイジの一幕のようにざわつくほかの人々。
 また、俺何かやっちゃいましたか? 某ラノベ主人公のような気分になるみぱぱ。

「すみませんが、8WMは特注品のため、ここから車で50分ほど行った別の工場になります。その申し訳ありませんが、今回の見学プログラムに組み込まれていません。実は日本では御社しか出していない物なんですよ」

 ガーン!
 みぱぱの仕事終了!
 え! 何のためにわざわざデンマークまで来たの? 時間かけてポンプの問題点をまとめてきたのに……。

 後で代理店のおじさんたちがみぱぱに何? その型式? と聞いてくるほど実際に特殊仕様だったそうです。
 よくうちの会社で買ってたな、そんなポンプとその時になって初めてみぱぱの会社の特殊性を知りました。
 そうして、何日もかけてやって来たみぱぱの仕事は5分で終わりました。
 そのほか、別のおじさんたちがいろいろと質問をしたりして、工場見学は終了しました。

 そして、失意のみぱぱを含む、おじさん一行はデンマークからドイツに行くのであった。
 そう、ドイツ語の歌、ジンギスカンはこの伏線だったのです!
 え! 何のためにドイツへ?
 観光です。てへ。
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